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2006.01.25 「メディカライズ v. 特許庁長官」 知財高裁平成17年(行ケ)10438

限られた数の組合せの中から選択した発明に進歩性はあるか?: 知財高裁平成17年(行ケ)10438

【背景】

「ヒアルロン酸とデルマタン硫酸を含有する健康食品」の発明に関して、進歩性なしとの拒絶審決に対して取消訴訟を提起。本願発明と引例との相違点は、本願発明において含有されているものが「デルマタン硫酸」であるのに対して、引用発明はその上位概念であるムコ多糖類となっている点のみであった。

原告は選択発明であると主張した。

請求項1: 少なくともヒアルロン酸とデルマタン硫酸を含有することを特徴とする健康食品。

【要旨】

裁判所は、

組合せの容易想到性について、

「引用例1が示唆するところに従って,限られた数の組合せの中から,ヒアルロン酸と組合せて使用する効果を確認しつつ,適するものを特定し,結果的にデルマタン硫酸を含有する組合せを特定するに至ることは,当業者(その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者)にとっては容易であるというべきである」

とし、

本願発明の効果については、

「このような発明が,常に格別顕著な効果を奏するものであることを裏付けるためには,本願発明1に包含される任意の組合せの任意の配合比率の態様が,引用例1に示唆された31通り又は15通りの全組合せのうちの,本願発明1に相当しない15通り又は7通りの組合せの任意の配合比の態様と比較しても,また,引用例1に明示されたムコ多糖類の各々を単独に含有する態様と比較しても,常に格別顕著な効果を奏するものであることを証明する必要がある

~前記のとおり,その格別顕著な効果を主張するための根拠となるべき比較試験が記載されていないことに変わりはないから,ヒアルロン酸とデルマタン硫酸を含む組合せである本願発明1が,その配合比によらず,常に引用例1及び刊行物2の記載事項から予測し得ない,際だって優れた効果あるいは異質な効果を有するものであるということができないことにも変わりはない。

~したがって~本願発明1が,任意の含有量において,格別顕著な効果を奏するものであると認めることはできないというほかない」

と判断した。

請求棄却。

【コメント】

ムコ多糖類の成分の一つとしてデルマタン硫酸が知られていることから、その組み合わせは当業者にとって容易であり、格別顕著な効果を奏するとの証拠もない、と判断され進歩性なしと判断された。

組み合わせの上位概念が公知だが、公知物質同士の新規な特定の組合せを選択発明として進歩性を主張するためには、該選択発明以外の全ての組合せの任意の配合比と比較しても、常に格別顕著な効果を奏するものであることを証明する必要があるとされたことに注意する必要がある。

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