Sep 2, 2008

2007.02.28 「エスエス v. 東光薬品」 知財高裁平成18年(行ケ)10375

「イブペイン」と「EVEPAIN」と「EVE」と「PAIN」: 知財高裁平成18年(行ケ)10375

【背景】
被告(東光薬品)は「イブペイン」の片仮名文字を横書きしてなり、指定商品を第5類「薬剤」等とする商標権者。原告(エスエス)は、被告を被請求人として、本件商標権の通常使用権者が指定商品についての登録商標に類似する商標の使用であって、原告の業務に係る商品と混同を生ずるものをしたとして、商53条1項の規定に基づき、使用権者の不正使用による商標登録取消審判を請求したが、請求は成り立たないとの審決だっため、審決取消を求め訴訟を提起した。審決では、本件通常使用権者による商品「解熱・鎮痛剤」についての本件商標に類似する「EVEPAIN」の使用は、他人の業務に係る商品(具体的には原告の解熱・鎮痛剤「EVE/イブ」)と混同を生ずるものをしたとは認められないから、本件商標登録は、商53条1項の規定により取り消すことはできないとし判断していた。

【要旨】
審決は、「EVEPAIN」は不可分一体に構成され「EVE」と「PAIN」とが分離不能なほどに一体的な強い結合状態をなしていると判断したが、裁判所は、その判断は肯定し難いとした。
「EVEPAIN」に接した取引者、需要者は、「EVE」と「PAIN」とからなるものと理解し、「EVE」の部分においては、周知著名な引用商標を想起するとともに、「PAIN」の部分は、「痛み」との観念を生じ、その商品の特性に係る部分であり、周知著名な引用商標に係る原告商品の関連商品の特性を示す部分として認識され、それ自体としては自他識別力を欠くものと認めるのが相当であるとし、出所につき混同を生ずる恐れがあるというべきである、と判断した。
被告は、「イブペイン」の名称で医薬品製造承認を得、「一般薬/日本医薬品集」に掲載され、市販している事実から、本件使用商標は広く知られているものであり、引用商標と混同することはないと主張したが、裁判所はその主張を認めなかった。
審決を取り消す。

【コメント】
審決が取り消された事例。
本件のように、片仮名文字の場合には、言葉の区切れがわかりにくいため一体不可分な造語として判断されやすいが、ローマ字の場合において、そこに観念が生じれば、分離して判断され、本件のような結論に至る可能性があることに注意が必要だろう。
また、不使用による商標登録取消審判(商50条)は、片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであって同一の称呼及び観念を生じる商標は、登録商標の使用の概念に含まれるが、本件のような不正使用による商標登録取消審判(商53条)における登録商標の使用の概念に、そのような表示の変換は含まれないので、この点についても注意が必要だろう。
片仮名だけでなく、ローマ字との二段併記にして商標を登録させておけば(片仮名及びローマ字の二段併記の登録商標において、併記使用のみならず、片仮名、ローマ字各々の単独使用も登録商標の(類似使用でない)使用と判断されるかについては勉強不足のため自信ないが)、本件のような類似使用を防げたのかもしれない。
とにかく、原則として、商標は使用する態様のものを取得すべき。
「イブ」という先願先登録商標が存在することから商4条1項11号違反を理由に無効審判を請求するというオプションもあったのかもしれないが、もともと「イブペイン」という一体の造語として登録が許されたのかもしれない。

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