Sep 18, 2008

2007.03.15 「X v. 大塚製薬」 知財高裁平成18年(ネ)10074

物質発明において生物系研究者が発明者たるには?: 知財高裁平成18年(ネ)10074

【背景】
抗血小板剤プレタール®(Pletaal®、一般名: シロスタゾール(Cilostazol)に関する職務発明対価請求事件。
テトラゾリルアルコキシカルボスチリル誘導体とそれを含有する医薬成分に関する米国特許権にかかる発明(抗血小板薬プレタール)について、元従業員である控訴人(原告)が、控訴人は本件発明の発明者として被控訴人(大塚製薬)に特許を受ける権利を承継させたものであるとして、特35条3項に基づいて職務発明譲渡対価支払いを求めた事案。原判決は、主位的請求については外国の特許を受ける権利について特35条3項の適用はないと判断し、予備的請求については控訴人は本件発明の発明者でないとして、控訴人の請求を棄却した。元従業員である控訴人は、生物系研究者であり、本件発明は物質発明及び用途発明であった。

【要旨】
米国特許を受ける権利の承継による対価の支払請求については、当事者争わず、準拠法は日本法とされるべきであると判断された。

発明者の認定について、裁判所は、
「発明者と認められるためには、当該特許請求の範囲の記載に基づいて定められた技術的思想の創作行為に現実に加担したことが必要であり、~補助をしたにすぎない場合には、創作行為に現実に加担したということはできない。」
と一般原則を示し、本件発明について、
「本件発明は、物質発明及び用途発明であるところ、本件用途発明は物質発明に基づく用途発明であり、その本質は物質発明の場合と同様に考えることができる。」
と捉え、"加担した者"といえるかどうかは
「①本件発明に係る化合物の構造の研究開発に対する貢献、②生物活性の測定方法に対する貢献、③本件研究における目標設定や修正に対する貢献、を総合的に考慮し、認定されるべきである。」
とした。
具体的には、
上記①について、「生物系研究者である控訴人が本件発明の技術的思想の創作行為に現実に加担したというには、単に化合物の生物活性の測定及びその分析等に従事しただけでは足りず、その測定結果の分析・考察に基づき、新たな化合物の構造の選択や決定の方向性について示唆を与えるなど、化合物の創製に実質的に貢献したと認められることを要するというべきである。」とされ、本件において、その点を認めるに足る的確な証拠は存在しないと判断された。
上記②について、控訴人が研究開発した測定方法が独自の工夫に基づくものであると主張したが、当業者が通常行う程度の工夫であり、独自に考案したと評価することはできないと判断された。
上記③について、本件研究の目標は既に知られていたのであり、控訴人が新たに着想し、提唱したものということはできないと判断された。
控訴棄却。

【コメント】
医薬分野における物質発明の発明者認定において、生物系研究者をどのように扱うべきかが示された。
米国特許を受ける権利の承継による対価の支払請求については、準拠法は日本法とされる判断については、2006.10.17 「X v. 日立製作所」 最高裁平成16年(受)781を参照。

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