Sep 23, 2008

2007.03.27 「武田薬品 v. 特許庁長官」 知財高裁平成17年(行ケ)10587

ランソプラゾールの効能・効果である「ヘリコバクター・ピロリの除菌の補助」は「抗菌」用途と実質的に違うのか: 知財高裁平成17年(行ケ)10587

【背景】
ランソプラゾール(Lansoprazole、プロトンポンプインヒビター、販売名タケプロンカプセル15)の一変承認に基づく特許権存続期間延長登録出願(2000-700166)の拒絶審決取消訴訟。本件処分は、「効能及び効果」について、「胃潰瘍又は十二指腸潰瘍におけるヘリコバクター・ピロリの除菌の補助」を追加するものであり、本件特許発明(特許第1997968号)は「抗菌剤」であった。審決の理由は、「胃潰瘍又は十二指腸潰瘍におけるヘリコバクター・ピロリの除菌の補助」と「抗菌(剤)」とは文言上一致しないし、実質的にも重複しないとして、本件処分は本件特許発明の「抗菌剤」という用途についてなされたものでないから、本件特許発明を実施するために本件処分が必要であったと(特67条2項)は認められない、とするものであった。本件処分は、ランソプラゾール、アモキシシリン、クラリスロマイシンの3剤併用療法によるヘリコバクター・ピロリ除菌作用において、ランソプラゾールによる胃内pHの上昇が、アモキシリン及びクラリスロマイシンの胃酸による分解を抑制し、アモキシリン及びクラリスロマイシンの抗菌作用を高め、アモキシシリン及びクラリスロマイシン2剤の除菌に係る相加・相乗的効果をもたらすことを認めてなされたものであった。

【要旨】
原告は、審決は著しい理由不備があり、また、本件処分において特定された用途が「抗菌(剤)」と実質的に重複しないと誤って判断したものであるから取り消されるべきである、と主張した。
また、ある論文の記載から、
「プロトンポンプインヒビターに含まれるランソプラゾールの胃内pHの調節作用も、抗菌作用をもたらすメカニズムの一つであり、ランソプラゾールの「除菌の補助」の意義を、「胃内pHの調節作用のみによってもたらされる除菌の補助」と解した場合であっても、本件処分によって承認された効能、効果(用途)は、本件特許発明の用途と重複する。」
と主張した。

しかし、裁判所は、
「本件処分に係る「除菌の補助」との文言と、用途発明である本件特許発明の用途である「抗菌(剤)」との文言が一致しない場合に、これが実質的に重複するか否かを判断するために、ランソプラゾールの「除菌の補助」という効能、効果をもたらす作用機序について検討することを要する」
と言及し、
「本件処分が、3剤併用療法による除菌作用において、ランソプラゾールによる胃内pHの上昇が、アモキシシリンの胃内での分解を抑制し、クラリスロマイシンの抗菌作用を高め、アモキシシリン及びクラリスロマイシン2剤の除菌に係る相加・相乗的効果をもたらすことを認めてなされたものであることは、上記のとおりであり、本件審査報告書及び本件添付文書情報には、ランソプラゾールの胃内pHの調節作用が、ヘリコバクター・ピロリの抗菌作用をもたらし、その作用がアモキシシリン及びクラリスロマイシン2剤の除菌に係る相加・相乗的効果をもたらすというような作用機序については記載も示唆もされておらず、他に、本件処分がそのような作用機序を認めてなされたことを認めるに足りる証拠もない。そうすると、ランソプラゾールの胃内pHの調節作用が、ヘリコバクター・ピロリの抗菌作用をもたらすメカニズムの一つであるとしても、本件処分におけるランソプラゾールの「除菌の補助」という効能、効果が、「抗菌作用によってもたらされる除菌の補助」を概念上包含するということはできず、原告の上記主張も失当である。」
とした。
請求棄却。

【コメント】
承認された効能・効果「抗菌の補助」と、本件発明の用途「抗菌剤」は文言上ぴったり一致しないまでも、「抗菌」という言葉は重複、また、適応症患者も重複するであろうと想定されることから、特許権者としては実質上同一としてもらいたいところである。しかし、本件一変承認は、ランソプラゾールが抗菌剤として認められたのではなく、他の抗菌剤の分解を抑えることにより抗菌活性を高める用途が認められたというのが本質であるとされてしまった。「除菌の補助剤」との用途クレームにすれば良かったのかもしれない。
クレームの用途に関する文言が、将来の承認されるであろう効能・効果とできるだけ文言上一致するように注意しなければならない。

参考:
  • タケプロンカプセル15(タケプロンカプセル35)添付文書情報より↓
    【効能 ・ 効果】
    〇カプセル15
    胃潰瘍、十二指腸潰瘍、吻合部潰瘍、逆流性食道炎、Zollinger-Ellison症候群、非びらん性胃食道逆流症、胃潰瘍又は十二指腸潰瘍におけるヘリコバクター・ピロリの除菌の補助
    〇カプセル30
    胃潰瘍、十二指腸潰瘍、吻合部潰瘍、逆流性食道炎、Zollinger-Ellison症候群、胃潰瘍又は十二指腸潰瘍におけるヘリコバクター・ピロリの除菌の補助
    【用法・用量】
    〇胃潰瘍又は十二指腸潰瘍におけるヘリコバクター・ピロリの除菌の補助の場合
    通常、成人にはランソプラゾールとして1回30㎎、アモキシシリンとして1回 750㎎(力価 )及びクラリスロマイシンとして1回200㎎(力価)の3剤を同時に1日2回、7日間経口投与する。なお、クラリスロマイシンは、必要に応じて適宜増量することができる。ただし、1回400㎎(力価)1日2回を上限とする。
  • 2007.03.27 「武田薬品 v. 特許庁長官」 知財高裁平成17年(行ケ)10588
    はタケプロンカプセル30の承認に基づく事件であり、本判決内容と同じ。

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