Dec 25, 2008

2008.10.29 「X v. 三菱化学」 知財高裁平成20年(ネ)10039

職務発明の相当の対価請求権の消滅時効: 知財高裁平成20年(ネ)10039

原判決: 2008.02.29 「A v. 三菱化学」 東京地裁平成19年(ワ)12522

【背景】
被控訴人(三菱化学)の元従業員である控訴人(X)が、被控訴人に対し、職務発明に係る特許権について相当対価の支払を求めた。被控訴人は、相当の対価請求権は時効により消滅したと主張した。
本件発明は、職務発明であり、被控訴人は控訴人ら共同発明者から特許を受ける権利を承継、特許出願をし、特許(第1466481号;第1835237号)を得た。本件発明に係る医薬品は、商品名「アンプラーグ」(ANPLAG、一般名: 塩酸サルポグレラート(Sarpogrelate Hydrochloride)、5-HT2ブロッカー)であり、被控訴人は、製造承認を受け、平成5年10月7日に発売を開始していた。

原審の東京地裁は、控訴人の本件発明に係る相当の対価請求権は、その時効起算点から既に10年以上が経過しており、消滅時効が完成したとして、控訴人の請求を棄却した。これを不服とする控訴人が本件控訴を提起した。

【要旨】
裁判所は、
「勤務規則等に,使用者等が従業者等に対して支払うべき対価の支払時期に関する条項がある場合には,その支払時期が相当の対価の支払を受ける権利の消滅時効の起算点となると解するのが相当である(最高裁平成15年4月22日第三小法廷判決・民集57巻4号477頁参照)。そして特許法旧35条3項に基づく相当の対価の支払を受ける権利は,同条により認められた法定の債権であるから,権利を行使することができる時から10年の経過によって消滅する(民法166条1項,167条1項)。」
との一般原則を示し、以上の見地に立って本件について検討した。

裁判所は、
「~実績補償は本件発明等取扱規則9条が定めるように「会社が…発明等を実施し,その効果が顕著である」ときに支払時期が到来するものであるが,会社が発明を実施し,その効果を判定するためには一定の期間経過を必要とすることは道理であるから,上記規則9条は,会社が発明を実施しその効果を判定できるような一定期間の経過をもって実績補償に係る対価請求債権の支払時期が到来することを定めたものと解するのが相当である。」
とし、
本件社内規則の記載内容から解釈して、
「~本件発明等取扱規則9条における実績補償の支払時期を決する前提となる発明の客観的価値を認定するために必要とされる期間は5年ということになる。以上によれば,本件発明等取扱規則9条における実績補償に係る相当対価の支払請求債権は,各職務発明の実施から5年を経過した時点が消滅時効の起算点となる」
と判断した。

従って、
「控訴人の本訴請求債権は時効消滅しておらず,本訴請求の当否を判断するには,相当対価額について実体審理をする必要がある。」
と結論した。

原判決を取り消す。本件を東京地方裁判所に差し戻す。

【コメント】
職務発明対価の支払時期については特許法に規定はないため、勤務規則等に支払時期に関する条項がある場合には、その支払時期が対価支払を受ける権利の消滅時効の起算点となる。本件のように、その支払時期が明確でないときは、社内規定の内容から導くことになるようである。

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