Mar 29, 2008

2008.03.29 「エーザイ 米国「アリセプト®」特許侵害訴訟における仮差止め請求で勝訴」

エーザイ(Eisai)が販売するアルツハイマー型認知症治療剤「アリセプト(Aricept)®」(一般名:塩酸ドネペジル(donepezil hydrochloride)、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤(acetylcholinesterase inhibitor))の後発品をFDAに申請(ANDA)したテバ(Teva)に対し、エーザイが、保有する物質特許(U.S. Patent No. 4,895,841)に基づいて、米国ニュージャージー州連邦地方裁判所に提起していた特許侵害訴訟において、同裁判所は、エーザイの仮差止め(preliminary injunction)請求を認める判断を下した。テバは同特許がunenforceableであると主張しており、具体的な侵害の認定・特許の有効性は今後の公判で争われることになる。

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過去記事:

Mar 26, 2008

2008.02.29 「ティロッツ・ファルマ v. 特許庁長官」 知財高裁平成19年(行ケ)10236

原告主張の実施例は本願発明の実施例とはいえないとされた: 知財高裁平成19年(行ケ)10236

【背景】
「オメガ-3ポリ不飽和酸の経口投与剤」に関する発明についての出願(特表平11-509523)の拒絶審決取消訴訟。
争点は、本願の特許請求の範囲の記載が、明細書の発明の詳細な説明に記載されているかどうか(特36条6項1号、いわゆるサポート要件)であった。

請求項1:
有効成分としてオメガ3-ポリ不飽和酸を遊離酸として又は薬学的に許容可能なその塩として含有する経口製剤において,
カプセルのコーティングが,pH依存性態様ではなく時間依存性態様で溶解する中性のポリアクリル酸エステルから成り而もpH5.5において30乃至60分間溶解することがなく,
かくして前記酸が,回腸内において放出されることになることを特徴とする経口製剤。

【要旨】
原告は、
「当業者(その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者)の本願出願当時の技術常識,Aの文献及び本願明細書(甲4)の実施例2の記載(下記のとおり,そこには「小腸」との記載がある)からすれば,本願明細書には本願発明の発明特定事項であるオメガ3-ポリ不飽和酸が回腸で放出されることが記載されているといえるから,審決の認定は誤りである」
と主張した。

しかし裁判所は、
「本願発明は,「カプセルのコーティングが,pH依存性態様ではなく時間依存性態様で溶解する中性のポリアクリル酸エステルから成り而もpH5.5において30乃至60分間溶解することがな」いことを発明特定事項として記載するところ,ここに記載されたpH値については,上記(3)ウによれば,単に溶解試験を行ったpH値を示すにすぎず,コーティングの溶解条件とは何ら関係がないことが認められる。」
とした上で、
「回腸内において放出される」という発明特定事項について、
「小腸は,初部約25センチメートルを十二指腸といい,その余の部分のうちの前半5分の2が空腸で後半5分の3が回腸であるから,カプセルの小腸内の通過速度が一定だとすると,小腸通過時間の30%にあたる時間では,カプセルはまだ空腸の中にある。これは,上記のとおり絶食患者を前提とした最短の時間で通過することを仮定した場合である。この位置で,既にコーティングの崩壊後15分が経過して,カプセルも崩壊し,カプセルの内容物は既に放出されていると考えられ,これより遠位の回腸においてカプセルの内容物が放出されるとは考えられない。そうすると,原告の主張する本願明細書の実施例2においても,本願発明の「前記酸が,回腸内において放出される」ものに該当するとはいえない。
ウ以上の検討によれば,実施例2は本願発明の実施例ということはできず,また本願明細書(甲4)のそのほかの部分にもこれが記載されているとはいえないから,審決が本願発明は明細書の発明の詳細な説明に記載した発明ということはできないとした認定に誤りはない。」
と判断した。
請求棄却。

【コメント】
実施例2の結果及びその他の証拠から、早く見積もってもカプセルはまだ空腸内にあり(つまり空腸で内容物が放出されるだろうから)、回腸内において放出されるとは考えられないと裁判所は判断。実施例2の結果からの考察ではクレームをサポートしていることにはならない(つまり原告主張の実施例2は本願発明の実施例にならない)とされた。同感。サポート要件は、あくまでも明細書の記載に基づいて判断されるので、出願後にした原告の追加の主張は採用されなかった。

ところで、本願発明である経口製剤を構成する発明特定事項は、下記の4つに大別できる。

(1) オメガ3-ポリ不飽和酸を遊離酸として又は薬学的に許容可能なその塩を含有する
(2) カプセルのコーティングが、中性のポリアクリル酸エステルである
(3) 中性のポリアクリル酸エステルが、pH依存性態様ではなく時間依存性態様で溶解する
(4) カプセルのコーティングが、pH5.5において30乃至60分間溶解しない
(5) オメガ3-ポリ不飽和酸を遊離酸が、回腸内において放出される

上記発明特定事項(1)及び(2)は、経口製剤を構成する具体的な構成要件を示している。
しかしながら、発明特定事項(3)、(4)及び(5)については、もたらされる結果(効果または願望)により発明を特定しようとするものであるから、「願望型」発明特定事項(または「願望型」構成要件)とでも呼ぶべきものであって、サポートがしっかりしていない限り、そもそも許されるべきものではないだろう。

参考:
  • 回腸(ileum): 回腸とは,小腸の一部をいうところ,消化管のうち胃と大腸との間をなす長さ6~7メートルの管状の器官が小腸であるが,その初部約25センチメートルを十二指腸といい,その余の部分のうちの前半5分の2を空腸と,後半5分の3を回腸という(南山堂「医学大辞典」第19版1160頁。甲20)。(判決文より)


  • Wikipedia: small intestine

Mar 24, 2008

2006.10.25 「ノバルティス v. 特許庁長官」 知財高裁平成17年(行ケ)10773

薬剤耐性という観点で疾患を限定した医薬発明に進歩性は認められるか?: 知財高裁平成17年(行ケ)10773

【背景】
ノバルティス(Novartis)を出願人とする本願発明(出願番号: 平成8年特許願第533792号)は、テルビナフィン(terbinafine)とアゾール系14 α-メチルデメチラーゼ阻害剤の併用抗真菌剤であり、対象疾患を「アゾール耐性真菌感染症」と限定していた。同一併用抗真菌剤だが、耐性菌株について記載のない引用例が進歩性を否定するか否かが争われた。

【要旨】
原告は、
「本願発明の相乗的な薬理効果を予測することは困難であった」
と主張したが、
裁判所は、
「審決は~本願発明にいう相乗効果を奏するか否かについて,判断しているのではなく,既に2種の抗真菌剤の併用の相乗効果を奏するとされた引用例によって,~テルビナフィンとアゾール系阻害剤という具体的組合せについて,アゾール耐性真菌株に対しても,その組合せによる相乗効果が奏されることを困難なく予測ないしは期待して,用いることができるか否かを判断したものである。
そして,本願明細書~によれば,本願当時,既に,耐性真菌の出現は当該技術分野における重要な課題であったものであり,~テルビナフィンとアゾール系阻害剤を含む抗真菌組成物が,ある種のアゾール耐性真菌株誘起の真菌感染症に対しても,それぞれ単独で用いる場合とは異なる作用機序による相乗的な治療効果が得られることを期待することは,当然のことであるというべきである。したがって,引用例に接した当業者においては,その引用例に記載されたテルビナフィンとアゾール系阻害剤を含む抗真菌組成物が,アゾール耐性真菌株誘起の真菌感染症に対しても治療効果を有することを予測ないしは期待し,これを確認しようと動機付けられるものというべきである。したがって,引用例に接した当業者が耐性菌に対しても引用例記載の2剤併用の抗真菌組成物を用いることは容易に想到できるものであり,原告主張の取消事由は理由がないことが明らかである。」
と判断し、進歩性を否定した。
請求棄却。

【コメント】
課題が知られている場合には、動機付けは確立され易い。
本事件では、進歩性判断において、積極的な動機付けがあるという点が問題となった。一方、効果の参酌という点は、既に2種の抗真菌剤の併用の相乗効果を奏するとされた引用例が存在していたことによって、主な議論の対象とはならなかった。
本願発明は、上位概念である「真菌感染症」という用途(疾患)を「アゾール耐性真菌感染症」という特定の用途(疾患)に限定した選択発明である(ありえる)、という見方で捉えることもできるだろう。しかし、特定の用途(疾患)を特徴とする選択発明として進歩性を担保するためには、上位概念用途(疾患)で包含される他の下位概念用途(疾患)と比較して、その選択発明として選択した特定用途(疾患)に顕著な効果・異質な効果があることを主張する必要がある。「アゾール耐性真菌感染症」以外の真菌感染症、すなわち、普通(?)の真菌感染症にも優れた効果がある以上、それに比べて格別顕著な効果を「アゾール耐性真菌感染症」という選択肢に見出すことは困難であり、効果の参酌が議論されたとしても、進歩性なしの結論に変わりはなかったと思われる。

参考:

Mar 20, 2008

2008.03.18 「OSI Pharmaceuticals Announces That the Prior Revocation of Its European DP-IV Patent Has Been Upheld」

OSI pharmaceuticalsのpress releaseによると、
EPO審判部は、OSIが保有する、ジペプチジルペプチダーゼIV(dipeptidyl peptidase IV(DP-IV、DPPIV又はDPP-4))に関する特許のひとつ(EP0896538: USE OF ACTIVITY INHIBITING DIPEPTIDYL EPTIDASE IV EFFECTORS FOR LOWERING THE BLOOD GLUCOSE LEVEL IN MAMMALS; ApplicantはOSIの子会社Prosidion)を無効と判断したとのこと。
本特許クレームは、糖尿病等を治療するためのDP-IV inhibitorの使用をカバーする機能クレームであり、2002年に大手製薬メーカー8社(Novartis, Bristol-Myers Squibb, Takeda, Pfizer, Boehringer Ingelheim, Glaxo, Novo Nordisk, Mitsubishi Tanabe)から異議を申立てられ、約6年間の歳月を費やして今回の審決に至った(Appeal No. T1151/04)。

参考:
  • EP0896538 B1

    Claims:

    1. The use of activity lowering effectors of dipeptidyl peptidase IV (DP IV) or DP IV-like enzyme activity for the preperation of a medicament for the oral therapy of diseases which are based on glucose concentrations in the serum of mammals characteristic of hyperglycemia.

    2. The use according to claim 1 for the preparation of a medicament for the prevention or alleviation of pathological abnormalities of the metabolism of mammals such as glucosuria, hyperlipidemia, metabolic acidosis and Diabetes mellitus.

    3. The use according to claim 1 or 2, characterized in that inhibitors, pseudosubstrates, inhibitors of DP IV expression, binding proteins, or antibodies against said enzyme proteins or combinations of the designated effectors are used as activity lowering effectors of Dipeptidyl Peptidase IV (DP IV) or DP IV-like enzyme activity.

    4. The use according to any one of the procedeing claims, characterized in that the effectors lower the activity of DP IV or DP IV-like enzyme activity with respect to GIP1-42 and/or GLP-17-36.

    5. The use according to claim 4, characterized in that substrates are used as effectors.

    6. The use according to any one of the preceding claims wherein a combination of effectors is used.

    7. The use according to any one of the preceding claims, characterized in
    that the effectors are alanyl pyrrolidide, isoleucyl thiazolidide, N-valyl-prolyl, O-benzoyl hydroxylamine.

    8. The use according to any one of the preceding claims, characterized in that the effectors are used in combination with at least one carrier substance such as glucose.


  • OSI Pharmaceuticals press release: 2008.03.18 Pharmaceuticals Announces That the Prior Revocation of Its European DP-IV Patent Has Been Upheld


  • Wikipedia: Dipeptidyl peptidase-4; Dipeptidyl peptidase-4 inhibitors


Mar 18, 2008

2008.02.29 「A v. 三菱化学」 東京地裁平成19年(ワ)12522

職務発明の相当の対価請求権の消滅時効: 東京地裁平成19年(ワ)12522

【背景】
被告(三菱化学)の元従業員である原告(A)が、被告に対し、職務発明に係る特許権について相当対価の支払を求めた。被告は、相当の対価請求権は時効により消滅したと主張した。
本件発明は、職務発明であり、被告は原告ら共同発明者から特許を受ける権利を承継、特許出願をし、特許(本件発明1: 第1466481号; 本件発明2: 第1835237号)を得た。本件発明に係る医薬品は、商品名「アンプラーグ」(ANPLAG、一般名: 塩酸サルポグレラート(Sarpogrelate Hydrochloride)、5-HT2ブロッカー)であり、被告は、製造承認を受け、平成5年10月7日に発売を開始していた。

【要旨】
裁判所は、

「勤務規則等に,使用者等が従業者等に対して支払うべき対価の支払時期に関する条項がある場合には,その支払時期が相当の対価の支払を受ける権利の消滅時効の起算点となると解するのが相当である(最高裁平成15年4月22日第三小法廷判決・民集57巻4号477頁参照)。特許法35条3項に基づく相当の対価の支払を受ける権利は,同条により認められた法定の債権であるから,権利を行使することができる時から10年の経過によって消滅する(民法166条1項,167条1項)。」

との一般原則について言及し、
本件については下記のように当てはめ、対価請求権の時効により消滅したと判断した。

「本件発明等取扱規則は,~その対価として出願補償,登録補償,実績補償を支払うこと,このうち,出願補償の支払時期については出願した時点,登録補償の支払時期については特許権の設定登録がされた時点とすることを定めているものと認められる。他方,本件発明等取扱規則は,実績補償については,~実績補償の支払時期を特許権等に係る発明等の実施開始時(「特許権等に係る発明等を実施し」と規定されていることから,特許発明の実施開始時,又は特許権の設定登録時のいずれか遅い時点)と定めているものと解するのが相当である(「その効果が顕著であると認められた場合その他これに準ずる場合」とは,支払時期を定めたものではなく,支給の要件を定めたものと解すべきである。)。~そうすると,本件発明等取扱規則により,

本件発明1についての相当の対価の支払時期は,
出願補償については出願時である昭和56年8月20日となり,
登録補償については設定登録時である昭和63年11月10日となり,
実績補償については,設定登録日よりも実施開始時の方が遅いため,実施開始時である平成5年10月7日となり,上記の各時点が消滅時効の起算点となる。

また,本件発明2についての相当の対価の支払時期は,
出願補償については出願時である平成元年5月18日となり,
登録補償については設定登録時である平成6年4月11日となり,
実績補償については,設定登録日の方が実施開始時よりも遅いため,設定登録日である平成6年4月11日となり,上記の各時点が消滅時効の起算点となる。

そうすると,原告の本件発明~に係る相当の対価請求権は,いずれも,原告が,被告に対し,その履行を催告した平成19年2月1日(甲7の1,弁論の全趣旨。なお,本件訴えは,同催告から6か月以内の同年5月18日に提起された。)までに,その時効起算点から既に10年以上が経過しており,消滅時効が完成したというべきである。」

原告は,

「本件発明等取扱規則の規定(9条)が不明確であるために,被告が実施による効果を認定し,褒賞金を支払ってくれるものと信じて,あえて相当の対価請求権を行使しなかった原告に対し,このような規定を設けた被告が消滅時効を援用することは信義則に反し,許されない」

旨主張したが、
裁判所は、

「上記条項の文言は,褒賞金(実績補償)の支払時期について(支払時期を定めたものであるか否かについても含め)やや明確さを欠くものではあるものの,原告が主張するように,実施後5年間又は各年度ごとの実績に相当する分につき当該年度末が経過するまで支払期日が到来しないことを定めた規定であると誤認させるようなものであるとはいえず,本件発明の実施後,消滅時効の期間が経過するまでの間に,被告に実績補償の請求をすることを思い止まらせるようなものであったということはできないから,原告の上記主張も理由がない。」

と原告主張を退けた。

請求棄却。

【コメント】
職務発明の相当の対価請求権の消滅時効の起算点は、職務発明に関する社内規定の対価の支払い時期に関する条項が重要となる。多くの場合、リタイア後に会社を訴えることになるだろうから、転職した場合は別として、請求権が時効消滅していることが多いのでは?
三菱化学の職務発明規定が明らかにされており、実務上興味深い。

参考: 対価請求権の消滅時効が問題となった医薬系判決
  • 2007.01.17 「X v. 三共有機合成」 東京地裁平成18年(ワ)18196
  • 2006.11.21 「X v. 大塚製薬」 知財高裁平成17年(ネ)10125


Mar 16, 2008

2006.10.17 「X v. 日立製作所」 最高裁平成16年(受)781

職務発明 - 外国特許を受ける権利の譲渡に伴う対価請求: 最高裁平成16年(受)781

【背景】
原告Xは、職務発明について、我が国の特許を受ける権利と共に外国の特許を受ける権利を使用者に譲渡したことにつき、使用者に対し、特35条所定の相当の対価の支払を求めた。日立は、外国特許に基づき、複数の企業との間で実施許諾契約を締結し、その実施料を収受するなどして利益を得ていた。

【要旨】
「従業者等が特35条1項所定の職務発明に係る外国の特許を受ける権利を使用者等に譲渡した場合において,当該外国の特許を受ける権利の譲渡に伴う対価請求については、同条3項及び4項の規定が類推適用されると解するのが相当である。」

【コメント】
従業者は、使用者に職務発明に係る外国特許を受ける権利を譲渡したときは、相当の対価の支払を受ける権利を有する。

Mar 13, 2008

2006.09.28 「アボット・セントラル硝子 v. バクスター」 東京地裁平成17年(ワ)10524

セボフルラン(Sevoflurane)- 貯蔵方法の特許権が後発品排除に有効に働いた事例: 東京地裁平成17年(ワ)10524

【背景】
ルイス酸抑制剤で被覆する工程を含むセボフルランの貯蔵方法に関する特許(第3664648号)を有する原告(アボット、アエントラル硝子)が、被告(バクスター)に対し、被告が輸入および販売の準備をしている後発品で全身吸入麻酔剤「セボネス」(一般名:セボフルラン)の生産方法が本件特許の技術的範囲に属するとして、被告製品の輸入、販売および販売の申出の差止めを求めた。

請求項1:

「一定量のセボフルランの貯蔵方法であって,該方法は,
内部空間を規定する容器であって,かつ該容器により規定される該内部空間に隣接する内壁を有する容器を供する工程,
一定量のセボフルランを供する工程,
該容器の該内壁を空軌道を有するルイス酸の当該空軌道に電子を供与するルイス酸抑制剤で被覆する工程,及び
該一定量のセボフルランを該容器によって規定される該内部空間内に配置する工程
を含んでなることを特徴とする方法。」

【要旨】
本件特許のルイス酸抑制剤は、明細書に具体的に記載された化合物に限定されず、被告方法のエポキシフェノリックレジンのラッカーもこのルイス酸抑制剤に含まれるとして、被告方法は本件特許発明の構成要件を充足する。被告は、本件特許が36条及び補正要件違反に基づく無効理由を有すると主張したが、裁判所は採用できないと判断した。
請求認容。仮執行できると判決。

【コメント】
不安定な性質を有する有効成分の貯蔵に関する特許が、有効にジェネリックメーカーの実施を差し止めた事案。方法でなく、物を製造する方法の発明とされた(被告は争わなかった)点も、輸入・販売等を差止めできたポイントでは。
セボフルランは1968年に米国トラベノール社(Travenol Laboratories、現米国バクスター(Baxter)社)によって合成された。丸石製薬がトラベノール社より開発権を取得し、日本並びに海外における開発に着手、1990年に「セボフレン」の販売名で世界に先駆けて日本で製造承認申請を行い販売開始。1992年には米国アボットが日本など一部の国を除く全世界の開発権を取得、その開発過程で、本件特許発明を創作したのであろう。セボフルランの合成に成功したバクスターは開発権を手放したにもかかわらず、セボフルランが吸入麻酔剤として成功すると後発品を販売しようとした。しかし、開発権を取得し、本件特許も取得していたアボットにより特許権侵害を理由に差し止められてしまった。
それにしても、分割出願も多いが、無効審判の数も多い・・・(下記)。本判決後にバクスターが請求した無効審判の結果は・・・。

原告特許に関連した日本出願ファミリー:
  • 親出願
    特願平10-532168/特表2000-510159/特許3183520
    無効審判2005-080139(平17.5.6): 高裁出訴
    無効審判2006-080095(平18.5.22): 審判請求取下
    無効審判2007-800138(平19.7.20): 係属中
    (審判請求人はいずれもバクスター)
  • 分割(1世代)
    特願2000-349024/特開2001-187729/特許3664648
    無効審判2006-080264(平18.12.15): 結審通知(平20.2.13)
    無効審判2006-080265(平18.12.15): 結審通知(平20.2.13)
    無効審判2007-800195(平19.9.14): 結審通知(平20.2.13)
    (審判請求人はいずれもバクスター)
  • 分割(2世代)
    特願2005-109476/特開2005-279283: 出願却下処分
  • 分割(3世代)
    特願2005-374621/特開2006-143742: 出願却下処分
  • 分割(3世代)
    特願2005-374622/特開2006-137769: 出願却下処分


参考:

Mar 11, 2008

2006.09.27 「エーザイ v. 東和薬品」 知財高裁平成18年(ネ)10011

カプセル及びPTPシートの外観は商品等表示?: 知財高裁平成18年(ネ)10011

(原審: 2006.01.18 東京地裁平成17年(ワ)5651 標章目録

【背景】
被控訴人販売のジェネリック医薬品のカプセル及びPTPシートの色彩構成が、エーザイ(控訴人)販売の先発医薬品(胃炎・胃潰瘍治療剤「セルベックスカプセル50mg」、有効成分はテプレノン(teprenone))と類似しているため、不競法2条1項1号の「商品等表示」に当たり、不正競争行為に該当する、と主張して、エーザイがジェネリック医薬品の販売等の差止め等を請求した。
エーザイ商品のカプセル及びPTPシートの色彩構成は、2色の組合せからなるカプセル及び銀色地に青色の文字等が書かれているPTPシートという色彩構成だった。

【要旨】
エーザイ商品の表示(配色を含む)は、不正競争防止法2条1項1号にいう「商品等表示」に当たらない。
控訴棄却(エーザイ敗訴)。

【コメント】
カプセル及びPTPシートの色彩構成に基づいて不正競争に該当すると主張してジェネリック医薬品を排除することは、よほどの識別力を有していない限り困難だろう。

参考:
  • エーザイ 「セルベックス(Selbex)」製剤写真はこちら


  • 東和薬品 「エクペックカプセル」製剤写真はこちら



同内容(エーザイ敗訴)の判決:

Mar 10, 2008

2006.09.27 「バイエル v. 国」 東京地裁平成18年(行ウ)186

年金支払いは確実に!: 東京地裁平成18年(行ウ)186

【背景】
原告は、「殺虫剤組成物」に関する特許権(第2017484号)の特許料の納付事務を年金管理会社であるCPAに委任していたが、CPA担当者が退職前に引継ぎしなかったため、追納期間内に年金納付できず、特許料納付書を却下する手続却下の処分を受けた。原告は、前記追納期間を徒過したことについて、特112条の2第1項の「その責めに帰することができない理由」があるとして、本件却下処分の取消しを求めた(発明は殺虫剤)。

【要旨】
CPAの過失は、特許権者である原告の過失と同視されるものであるので、「その責めに帰することができない理由」は存在しない。
請求棄却。

【コメント】
年金支払い要否の変更の連絡は確実に。気づいたら年金が支払われていなかったということが無い様に。

Mar 9, 2008

2008.03.05 「財務省、知的財産侵害医薬品の輸入差止状況を発表」

財務省の発表によると、2007年に税関が差し止めた医薬品は96,591点(2006年の4,213点から大幅に増加)。2006年以降、複数の医薬品に関する輸入差止申立てを受理し取締りを強化したことが、差止点数の大幅な増加につながったとのこと。

参考:

Mar 8, 2008

2007.09.10 「大洋薬品 v. アステラス」 知財高裁平成19年(ネ)10034

セフジニルの結晶形特許の有効性は?: 知財高裁平成19年(ネ)10034

【背景】
2007.03.13 「アステラス v. 大洋薬品」 東京地裁平成17年(ワ)19162の控訴審。
抗生物質セフジニル(商品名:セフゾン®カプセル)のA型結晶に関する発明(特許第1943842)の特許権者であるアステラス製薬が、その後発医薬品としてセフジニルを有効成分とする大洋薬品製剤の製造販売の差止め及び同製剤の破棄を求め特許侵害訴訟を提起。主に、本件特許の出願日前に公開されたセフジニルの物質発明に係る引例に基づき、本件特許が新規性を欠く発明に対してなされたもので無効にされるべきか否か、が争われた。

地裁は、引例明細書中の実施例に開示されたセフジニルとA型結晶とのIRスペクトルが一致しないことから、両者は同一であるとはいえない、と判断した。また、同引例実施例に記載された方法によりセフジニルのA型結晶が得られるか否かについて、原告・被告両者からの鑑定合戦となったが、結局地裁は、被告(大洋薬品)の追試によっては実験工程を忠実に再現してもA型結晶を得ることはできず、原告(アステラス製薬)の追試によれば無晶形のみが得られると判断し、当時の技術常識に基づいて上記実施例においては当業者において容易に実施し得る程度にセフチジニルのA型結晶の製造方法が開示されているとはいえないから、新規性欠如を理由とする本件特許の無効主張は認められないとし、原告(アステラス製薬)の主張を認めた。大洋薬品はこれを不服として控訴した。

【要旨】
知財高裁も、原判決をほぼ引用し、
「①被告(大洋薬品)製剤は本件特許発明の技術的範囲に属するとの原告(アステラス製薬)の主張は理由があり,②本件特許は特許無効審判により無効にされるべきである等の被告(大洋薬品)の主張はいずれも失当である」
と判断した。
控訴棄却。

【コメント】
結晶特許が後発品排除に有効に働いた事例。
同剤の物質特許は2003年に特許期間満了したが、本件結晶特許は2008年8月まで存続するとのことである。
本件判決内容とは直接関係無いが、出願当時は別結晶(元結晶)として得られたものが、その後、結晶多形が明らかとなり安定晶が得られると、先の出願明細書に記載した方法ではもはや元結晶を再現して得られないという事態(安定晶が得られてしまう)が起こりうる。特許取得上に限らず、後の争いを想定して、既に開示された元結晶と、新結晶とが明確に区別できるような対策や証拠の準備をしておくことは非常に重要だろう。

なお、本件特許侵害訴訟は、最高裁が大洋薬品の上告を棄却したため、アステラスの勝訴が確定した(関連記事: 2007.12.27 「アステラスのセフゾン®カプセル特許侵害訴訟で最高裁が大洋薬品の上告を棄却」)。

参考:

2008.03.05 「アステラス v. 大洋薬品 セフゾン訴訟和解へ」

セフゾン(Cefzon、一般名:セフジニル(Cefdinir)、経口用セフェム系製剤)の特許侵害訴訟に勝訴したアステラス製薬は、大洋薬品に対して、セフゾン特許存続期間中に大洋薬品がした後発品薬価申請行為が不法行為であるとして、セフゾンの2006年4月の薬価改定時の特例引下げ(通常改定に加えて8%の追加引下げ)分を逸失利益とする損害賠償請求訴訟も提起していたが、大洋薬品がアステラス製薬へ和解金を支払うことなどを内容とする和解契約を締結したことで一連の係争が終結した。

参考:


Mar 1, 2008

「医薬系"特許的"判例」ブログ 2008年2月の検索ワード/フレーズ/コメント

「医薬系"特許的"判例」ブログでは、最近の日本における医薬特許判決、特に医薬特許のライフサイクル最大化に関する側面についてコメントしています。
Iyakukei-"Tokkyoteki"-Hanrei blog provides comments about recent pharmaceutical patent cases in Japan, especially aspects relating to maximizing pharmaceutical patent life cycles.

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