Oct 28, 2008

2007.05.16 「ロレアル v. 特許庁長官」 知財高裁平成18年(行ケ)10291

公知成分同士の組合せ: 知財高裁平成18年(行ケ)10291

【背景】
「(a)グラフトシリコーンポリマーと、(b)アミノシリコーン、シリコーン樹脂、及びシリコーンガムから選択される少なくとも1つのシリコーンとを含有する、ケラチン物質をトリートメントすることを意図した化粧用または皮膚病用組成物」に関する発明についての、進歩性なしとの拒絶審決に対する取消訴訟。
引例との相違点は、本願発明が、組成物の構成成分として、更に、上記(b)成分を併用しているのに対して、刊行物発明は、該(b)成分を併用することは明記されていない点であった。

【要旨】
裁判所は、
「ヘアーケア製品に(b)成分に相当する成分を使用することができることが技術常識であったといえることを考慮すると,本件優先日当時,刊行物1に記載された,(a)成分と組み合わせて使用することができるとされたヘアーケア製品に慣用的に使用されているポリシロキサンポリマーとして,(b)成分~を使用することは,当業者が容易に想到することがことができたものと認められ,当業者は,相違点に係る本願発明の構成に容易に想到することができたというべきである。」
と判断した。

これに対し、原告は、
多数のシリコーン物質を挙げるほか、刊行物1等にも(b)成分ではないシリコーン物質が記載されていることなどを挙げ、本件優先日当時、当業者は、化粧品の分野において公知である多数のシリコーン物質群から、(a)成分と組み合わせて使用するものとして(b)成分を特に選択することに容易に想到することができたとはいえない旨主張するとともに、比較実験によれば、本願発明は、(a)成分に(b)成分を組み合わせることにより予測し得ない顕著な効果を奏する旨主張した。

しかしながら、裁判所は、
「比較実験1において用いられた,(b)成分に相当するポリシロキサンポリマーであるアミノ変性シリコーンが,毛髪に滑らかな感触を与えるヘアーケア製品に使用されることは,本件優先日前に広く知られていたのであるから,それを含む組成物が毛髪に滑らかさを与えることが,直ちに当業者の予測を超える格別顕著な効果ということはできない。そして,比較実験1は,(a)成分に相当する成分に(b)成分に相当する一種類のポリシロキサンポリマーを組み合わせた組成物と,(a)成分に相当する成分に(b)成分に相当しない一種類のポリシロキサンポリマーを組み合わせた組成物との比較実験を行ったものにすぎず,比較実験1において選択されたもの以外に,(b)成分に相当するポリシロキサンポリマー及び(b)成分に相当しないポリシロキサンポリマーが多数存在するところ,(a)成分と組み合わせて使用するものとして,比較実験1で選択された以外の,(b)成分に相当するポリシロキサンポリマーと(b)成分に相当しないポリシロキサンポリマーを用いた組成物間においても,上記同様の結果を得ると認めるに足りる証拠はなく,比較実験1の結果をもって,本願発明について,(a)成分と組み合わせて使用するものとして,(b)成分を選択したことにより,予測し得ない顕著な効果を奏していると認めるには足りない。」
と判断した。
請求棄却。

【コメント】
公知成分同士の組合せ発明として進歩性を主張するためには、該組合せ以外の全ての組合せと比較しても格別顕著な効果を奏していると認められるに足るデータが必要とされる。

Oct 26, 2008

2007.09.27 「スリーエム(3M) v. 特許庁長官」 知財高裁平成19年(行ケ)10016

プロピオン酸ベクロメタゾンの存続期間延長登録出願: 知財高裁平成19年(行ケ)10016

本件処分は「キュバール100エアゾール」承認番号21400AMY00147000に対しての事案。
「キュバール50エアゾール」承認番号21400AMY00146000について同内容の判決が同日付で下されている。

参照:

Oct 21, 2008

クラビット®の特許権存続期間延長登録

2007.09.27 「スリーエム(3M) v. 特許庁長官」 知財高裁平成19年(行ケ)10017の記事で寄せられたコメント

アリセプト®の特許権存続期間延長登録の記事で寄せられたコメント

に関してのメモです。コメントありがとうございました。



クラビット(Cravit)®(有効成分はレボフロキサシン(levofloxacin))の製造承認は1993年10月1日であり、その後、2000年8月28日に腸チフス、パラチフスの効能追加承認、2002年3月6日に炭疽、ペスト、野兎病、ブルセラ症、Q 熱の効能追加承認、そして・・・2006年2月23日、〈適応菌種〉レジオネラ属の効能追加承認された。

つまり、現在の効能又は効果は下記のとおり。

〈適応菌種〉
本剤に感性のブドウ球菌属、レンサ球菌属、肺炎球菌、腸球菌属、淋菌、モラクセラ(ブランハメラ)・カタラーリス、炭疽菌、大腸菌、赤痢菌、サルモネラ属、チフス菌、パラチフス菌、シトロバクター属、クレブシエラ属、エンテロバクター属、セラチア属、プロテウス属、モルガネラ・モルガニー、プロビデンシア属、ペスト菌、コレラ菌、インフルエンザ菌、緑膿菌、アシネトバクター属、レジオネラ属、ブルセラ属、野兎病菌、カンピロバクター属、ペプトストレプトコッカス属、アクネ菌、 Q 熱リケッチア(コクシエラ・ブルネティ)、トラコーマクラミジア(クラミジア・トラコマティス)
〈適応症〉
表在性皮膚感染症、深在性皮膚感染症、リンパ管・リンパ節炎、慢性膿皮症、ざ瘡(化膿性炎症を伴うもの)、外傷・熱傷及び手術創等の二次感染、乳腺炎、肛門周囲膿痬、咽頭・喉頭炎、扁桃炎(扁桃周囲炎、扁桃周囲膿痬を含む)、急性気管支炎、肺炎、慢性呼吸器病変の二次感染、膀胱炎、腎盂腎炎、前立腺炎(急性症、慢性症)、精巣上体炎(副睾丸炎)、尿道炎、子宮頸管炎、胆嚢炎、胆管炎、感染性腸炎、腸チフス、パラチフス、コレラ、バルトリン腺炎、子宮内感染、子宮付属器炎、涙嚢炎、麦粒腫、瞼板腺炎、外耳炎、中耳炎、副鼻腔炎、化膿性唾液腺炎、歯周組織炎、歯冠周囲炎、顎炎、炭疽、ブルセラ症、ペスト、野兎病、Q熱


第一製薬(現: 第一三共)はクラビット®の〈適応菌種〉レジオネラ属の効能追加承認に基づいて特許権(特許番号: 1659502及び2008845)の存続期間延長登録(延長登録出願番号: 2006-700042及び2006-700043)をした。

Levofloxacin - Thirteen generic companies file request for invalidation of Daiichi's patent term extension.でもお伝えしたとおり、現在無効審判に係属中。


    承認番号: 20500AMZ00563000(クラビット錠) 処分の対象となった物: レボフロキサシン 処分の対象となった物について特定された用途: <適応菌種> 本剤に感性のブドウ球菌属、レンサ球菌属、肺炎球菌、腸球菌属、淋菌、モラクセラ(ブランハメラ)・カタラーリス、 炭疽菌、大腸菌、赤痢菌、サルモネラ属、チフス菌、パラチフス菌、シトロバクター属、クレブシエラ属、エンテロバクター属、セラチア属、プロテウス属、モルガネラ・モルガニー、プロビデンシア属、ペスト菌、コレラ菌、インフルエンザ菌、緑膿菌、アシネトバクター属、レジオネラ属、ブルセラ属、野兎病菌、カンピロバクター属、ペプトストレプトコッカス属、アクネ菌、Q熱リケッチア (コクシエラ・ブルネティ)、トラコーマクラミジア (クラミジア・トラコマティス) <適応症> 表在性皮膚感染症、深在性皮膚感染症、リンパ管・リンパ節炎、慢性膿皮症、ざ瘡(化膿性炎症を伴うもの)、外傷・熱傷及び手術創等の二次感染、乳腺炎、肛門周囲膿瘍、咽頭・喉頭炎、扁桃炎(扁桃周囲炎、扁桃周囲膿瘍を含む)、急性気管支炎、肺炎、慢性呼吸器病変の二次感染、膀胱炎、腎盂腎炎、前立腺炎(急性症、慢性症)、精巣上体炎(副睾丸炎)、尿道炎、子宮頸管炎、胆嚢炎、胆管炎、感染性腸炎、腸チフス、パラチフス、コレラ、バルトリン腺炎、子宮内感染、子宮付属器炎、涙襄炎、麦粒腫、瞼板腺炎、外耳炎、中耳炎、副鼻腔炎、化膿性唾液腺炎、歯周組織炎、歯冠周囲炎、顎炎、炭疽、ブルセラ症、ペスト、野兎病、Q熱 ただし、 「<適応菌種> 本剤に感性のブドウ球菌属、レンサ球菌属、肺炎球菌、腸球菌属、淋菌、モラクセラ(ブランハメラ)・カタラーリス、炭疽菌、大腸菌、赤痢菌、サルモネラ属、チフス菌、パラチフス菌、シトロバクター属、クレブシエラ属、 エンテロバクター属、セラチア属、プロテウス属、モルガネラ・モルガニー、プロビデンシア属、ペスト菌、コレラ菌、インフルエンザ菌、緑膿菌、アシネトバクター属、ブルセラ属、野兎病菌、カンピロバクター属、 ペプトストレプトコッカス属、アクネ菌、Q熱リケッチア(コクシエラ・ブルネティ)、トラコーマクラミジア(クラミジア・トラコマティス) <適応症> 表在性皮膚感染症、深在性皮膚感染症、リンパ管・リンパ節炎、慢性膿皮症、ざ瘡(化膿性炎症を伴うもの)、外傷・熱傷及び手術創等の二次感染、乳腺炎、肛門周囲膿瘍、咽頭・喉頭炎、扁桃炎(扁桃周囲炎、扁桃周囲膿瘍を含む)、急性気管支炎、肺炎、慢性呼吸器病変の二次感染、膀胱炎、腎盂腎炎、前立腺炎(急性症、慢性症)、精巣上体炎(副睾丸炎)、尿道炎、子宮頸管炎、胆嚢炎、胆管炎、感染性腸炎、腸チフス、パラチフス、コレラ、バルトリン腺炎、子宮内感染、子宮付属器炎、涙襄炎、麦粒腫、瞼板腺炎、外耳炎、中耳炎、副鼻腔炎、化膿性唾液腺炎、歯周組織炎、歯冠周囲炎、顎炎、炭疽、ブルセラ症、ペスト、野兎病、Q熱」 を除く。


参照:

Levofloxacin - Daiichi's patent term extension revoked in appeal proceedings.



Oct 20, 2008

アリセプト®の特許権存続期間延長登録

2007.09.27 「スリーエム(3M) v. 特許庁長官」 知財高裁平成19年(行ケ)10017の記事で寄せられたコメントに関してのメモです。コメントありがとうございました。

エーザイはアリセプト®の承認に基づいて有効成分をカバーする化合物特許権(特許番号: 2578475)について下記の存続期間延長登録をした。

    延長登録出願番号: 平11-700114 延長登録の年月日: 平13.12.19 延長の期間: 2年11月17日 承認番号: 21100AMZ00662000号 処分の対象となった物: 塩酸ドネペジル 処分の対象となった物について特定された用途: 軽度及び中等度のアルツハイマー型痴呆における痴呆症状の進行抑制 延長登録出願番号: 平11-700113 承認番号: 21100AMZ00661000号 処分の対象となった物: 塩酸ドネペジル 処分の対象となった物について特定された用途: 医薬品の製剤原料

その後、エーザイはアリセプト®について国内における高度アルツハイマー型認知症の新効能・新用量追加の承認(2007.08.23 プレスリリース)に基づいて、アリセプト®をカバーする特許権(ひとつは有効成分をカバーする化合物特許、もうひとつはD錠をカバーする製剤特許)の存続期間延長登録出願をし、下記のとおり登録させることに成功した。
注目すべきは、化合物に関する特許権を2度延長登録させている点と、先の処分と本件処分の用途の異同の判断である。

    延長登録出願番号: 2007-700112 延長登録の年月日: 平20.5.19 特許番号: 2578475 延長の期間: 5年 承認番号: 21100AMZ 00663000号(錠5mg) 処分の対象となった物: 塩酸ドネペジル 処分の対象となった物について特定された用途: アルツハイマー型認知症における認知症症状の進行抑制(但し、軽度及び中等度のアルツハイマー型認知症における認知症状症の進行抑制を除く。) 他、下記の延長登録出願も同様に登録。
    • 延長登録出願番号: 2007-700116(承認番号 21900AMX01198000号)(D錠10mg)
    • 延長登録出願番号: 2007-700113(承認番号 21900AMX01197000号)(錠10mg)
    • 延長登録出願番号: 2007-700117(承認番号 21300AMZ00373000号)(細粒0.5%)
    • 延長登録出願番号: 2007-700114(承認番号 21600AMZ00405000号)(D錠3mg)
    • 延長登録出願番号: 2007-700111(承認番号 21100AMZ00662000号)(錠3mg)
    • 延長登録出願番号: 2007-700115(承認番号 21600AMZ00406000号)(D錠5mg)

    延長登録出願番号: 2007-700119 延長登録の年月日: 平20.5.19 特許番号: 3770518 延長の期間: 1年6月5日 承認番号: 21600AMZ00406000号(D錠5mg) 処分の対象となった物: 塩酸ドネペジル 処分の対象となった物について特定された用途: アルツハイマー型認知症における認知症症状の進行抑制(但し、軽度及び中等度のアルツハイマー型認知症における認知症状症の進行抑制を除く。) 他、下記の延長登録出願も同様に登録。
    • 延長登録出願番号: 2007-700118(承認番号 21600AMZ00405000号)(D錠3mg)
    • 延長登録出願番号: 2007-700120(承認番号 21900AMX01198000号)(D錠10mg)



Oct 19, 2008

2007.09.27 「スリーエム(3M) v. 特許庁長官」 知財高裁平成19年(行ケ)10017

プロピオン酸ベクロメタゾンの存続期間延長登録出願: 知財高裁平成19年(行ケ)10017

【背景】
原告(スリーエム)は、

処分の対象になった物: プロピオン酸ベクロメタゾン、
処分の対象となった物について特定された用途: 
気管支喘息
ただし、
「下記の気管支喘息
・全身性ステロイド剤依存の患者におけるステロイド剤の減量又は離脱
・ステロイド剤以外では治療効果が十分得られない患者」
を除く。

とする薬事承認処分(申請者は大日本製薬、販売名:キュバール50エアゾール)に基づいて
「ベクロメタゾン17,21ジプロピオネートを含んで成るエアロゾン剤」に関する特許(特許第2769925号)の存続期間延長登録を試みた。

しかし、特許庁は、本件承認前に、同有効成分(プロピオン酸ベクロメタゾン)について、効能・効果を

「下記の気管支喘息
・全身性ステロイド剤依存の患者におけるステロイド剤の減量又は離脱
・ステロイド剤以外には治療効果が十分得られない患者」

とする医薬品を承認(「先の承認」)する処分が既にされているから、本件発明の実施のため本件承認を受けることが必要であったとはいえない、という拒絶審決を下した。本事案は、その審決取消訴訟である。

【要旨】
原告は、
「本件承認の効能効果は,何らの限定も付されていない「気管支喘息」であるから、軽症の気管支喘息,中等症の気管支喘息,重症の気管支喘息の全てを含んでいる。これに対し,先の承認の効能効果は,「下記の気管支喘息…ステロイド剤以外では治療効果が十分得られない患者」であるから,~本件効能効果と先の承認の効能効果は,上位概念と下位概念の関係に立つものといえる。
したがって,本件承認によって,先の承認によっては未だ薬事法上の禁止が解除されていなかった,気管支拡張薬で治療効果が十分得られる気管支喘息患者における気管支喘息という用途について,新たに同禁止が解除されたものであり,少なくとも,かかる用途について本件発明を実施するために本件承認が必要であったことは明らかである。」
と主張(取消事由1)、
また、特68条の2に基づいて特67条の3を判断するという解釈は誤りであるとも主張した(取消事由2)。

しかし、先の承認の気管支喘息と、本件承認の気管支喘息との違いについて、裁判所は、
「喘息症状の程度と症状の頻度との組み合わせで判定される重症度の違いに止まるものである~ことが認められる。これらに照らすと~両者の病態が実質的に異なる疾患であることを導くことはできない。~また,医薬品の薬理作用の点でも~異なるものであるとも認められない。以上によれば,先の承認と本件承認に係る医薬品は,いずれも「気管支喘息」を適用対象としており,疾患名が同一であって,先の承認及び本件承認に係る医薬品の適用対象となる疾患の病態,薬理作用等を考慮して実質的な見地から判断すると,両者の用途(効能・効果)は,同一であるというべきである。したがって,両者の用途(効能・効果)が同一である旨判断した審決に誤りはないから,取消事由1は理由がない。」
と判断した。

また、特68条の2に基づいて特67条の3を判断するという解釈は誤りであるとの原告の主張(取消事由2)に対して、裁判所は、
「延長後の特許権の効力について規定した法68条の2の規定を考慮することによって,特許権の存続期間の延長制度全体について統一的な解釈が可能になるというべきであるところ,法68条の2にいう「物」は「有効成分」を,「用途」は効能・効果を意味するものと解するのが相当である。このように解することは,新薬の特許が「有効成分」又は「効能・効果」に与えられることが多いという実情にかなうものであるし,またこれによって,「物」と「用途」の範囲が明確になるということができる。」
と判断し、
「原告の上記主張は,特許法上の観点からの解釈ではなく,~特許発明の実施が薬事法上の禁止が解除されたことにより同法上可能になったかどうかという観点から判断すべきとするものである。しかし~特許法は,薬事法が承認の対象としている医薬品にかかわる各要素のうち,物(有効成分)と用途(効能・効果)という観点から承認が必要であったときに限って,特許権の存続期間の延長を認めることとしているものであって,特許法としての独自の観点から,特許権の存続期間の延長の要件を定めていると解されるものである。原告の上記主張による解釈は,かかる見地からすると,採用することができない。」
と補足した。
請求棄却。

【コメント】
特許権の存続期間の延長登録出願について、先の処分との用途(効能効果)の異同が争われた。
本件における裁判所の判断によれば、先の処分と用途が異なると認められるには、
1) 疾患の病態
2) 薬理作用
の点で異なるといえることがポイントのようである。
「症状の程度と症状の頻度との組み合わせで判定される重症度の違いに止まるもの」は、用途(効能効果)は同一とされるようだ。

裁判所の判断は理解できるが、両処分の効能効果を違うものとした薬事行政当局の処分をある意味無視して、知財高裁が「実質的に同一だ」とする独自の判断をしたことにはやはり違和感を感じる。

また、「用途(効能・効果)」の異同について裁判所は、2007.01.18 「エーザイ v. 特許庁長官」 知財高裁平成17年(行ケ)10724等において、承認書の形式的な記載により直ちに決することができるものではないとも言及している。

薬事法上の処分の同一性と特許権存続期間延長の登録要件として適用される同一性との間に、形式的にしろ実質的にしろ食い違いが生じており、このことが薬事法に対する存続期間延長制度の整合性及び法的安定性に問題を生じさせている。特許権存続期間延長制度自体を、制度の趣旨との整合性を失わせること無く、より画一的で且つより実情に即したものに改正するための検討をすべき時期が来ているのではないだろうか。

特68条の2に基づいて特67条の3を判断するという解釈は誤りであるとの原告の主張に対する裁判所の判断は、2007.07.19 「武田 v. 特許庁長官」 知財高裁平成18年(行ケ)10311と同様の結論である。

本件処分は「キュバール50エアゾール」承認番号21400AMY00146000に対してのもの。「気管支喘息」を効能効果とする吸入ステロイド喘息治療剤として大日本住友製薬が製造販売(外国製造元は3M pharmaceuticals)しているプロピオン酸ベクロメタゾン吸入用エアゾールである。
なお、「キュバール100エアゾール」承認番号21400AMY00147000については、
2007.09.27 「スリーエム(3M) v. 特許庁長官」 知財高裁平成19年(行ケ)10016
で同様の判決が下された。

Oct 15, 2008

2007.03.28 「ノバルティス v. 特許庁長官」 知財高裁平成18年(行ケ)10371

バルサルタンの固体経口剤形: 知財高裁平成18年(行ケ)10371

【背景】
「バルサルタンの固体経口剤形」に関する発明(特表2000-506540; WO97/49394)について、拒絶査定を受け、審判請求とともに手続補正書を提出したが、手続補正を却下された上で、審判請求は成り立たない旨の審決をされたため、取消決定取消訴訟を提起した。
審決の理由は、補正後の本願発明は(ノバルティス自身の出願公開公報「特開平4-235149号」記載の)引用発明と同一であるから、特29条1項3号違反で特許を受けることができないとするものであった。

請求項1
a)バルサルタンもしくは薬学的に許容されるその塩の有効量を含む活性成分
および
b)圧縮法による固体経口剤形の製造に適当な薬学的に許容される添加剤
を含み、活性成分が固体経口剤形の全重量に対し35(重量)%以上の量で存在する圧縮固体経口剤

【要旨】
原告は、
「請求項1に記載の「圧縮法」は、乾式法による間接打錠法であると理解することができる。一方、引用例に記載の錠剤の製造法は、「湿式法による間接打錠法」であるから、製造法において相違する。」
と主張した。

しかし、裁判所は、本願明細書に「乾式法による間接打錠法」に限定されることを定義した記載はないので原告の主張を採用することはできないとした。

また、原告は、
「引用例の記載では、「組成(10,000個の錠剤)」と記載されているが、「錠剤(重量:280mg)」等との記載と矛盾しており、引用発明は実施不能のものである。」
と主張した。

しかし、裁判所は、
「当業者は、引用例の記載が誤記であることを容易に理解することができるものと認められる。従って、引用発明を実施不能ということはできず、原告の主張は失当である。」
とした。

請求棄却。

【コメント】
原告主張の内容では、審決を取消すのはかなり困難であろう。原告もダメモトでチャレンジしたのでは? 分割出願(特開2003-231634; 特開2007-238637)もしており、そちらのほうで再度勝負といったところだろうか。

ところで、US familyは特許として成立し、そのひとつのUS 6,294,197はValsartanをカバーする特許としてOrange bookに収載されている。

それにしても、引例とされた出願公開(特開平4-235149号)は、そもそも原告自身のしたバルサルタンの物質特許出願であり、そのUS family patentであるUS 5,399,578Orange bookにも収載されている重要な特許。それを「実施不能のものである」と自ら特許性を否定するかのような主張をするのはいかがなものだろうか?

Valsartan(バルサルタン)はノバルティスが製造販売するディオバン(DIOVAN)錠の有効成分。アンジオテンシンII受容体サブタイプAT1受容体に結合し、昇圧系として作用するアンジオテンシンIIに対して拮抗することによって降圧作用をあらわす選択的AT1受容体ブロッカー。

Oct 13, 2008

2008.10.06 「TevaがAstraZeneca(Crestor®)に対して特許侵害訴訟を提起」

2008年10月6日、Teva(テバ)は、AstraZeneca(アストラゼネカ)が販売する高コレステロール血症治療薬「Crestor(クレストール)®」(一般名:Rosuvastatin Calcium(ロスバスタチンカルシウム)、HMG-CoA 還元酵素阻害剤、塩野義(シオノギ)がAstraZenecaに導出。)がTevaの保有する米国特許(RE39,502)を侵害するとして、特許侵害訴訟を提起した。

Tevaの米国特許(RE39,502)は、HMG-CoA 還元酵素阻害剤に特徴的な化学構造(7-substituted-3,5-dihydroxyheptanoic acid又は7-substituted-3,5-dihydroxyheptenoic acid)を有する有効成分を含有する安定化製剤に関するもの。他のスタチン製剤にも影響?
INPADOC family searchによれば、日本には出願されていないようである。


Crestor®に関する情報:


参考:


Oct 8, 2008

2007.03.28 「大正薬品 v. アステラス製薬」 知財高裁平成18年(行ケ)10427

ハルナールとハルンナート: 知財高裁平成18年(行ケ)10427

【背景】
大正薬品(原告)は、「ハルンナート」の片仮名文字と「HARNNAT」の欧文字とを上下二段に書してなり指定商品を第5類「薬剤」とする登録商標の商標権者であったが、アステラス製薬(被告(請求人))の「前立腺肥大症の排尿障害改善剤」を表示するものとして「ハルナール」、「HARNAL」又は「Harnal」との標章(使用標章)が使用されており、商品の出所混同を生じさせるから商4条1項15号違反であるとして無効審判請求された。無効とすべき審決に対して原告は取消訴訟を提起した。

【要旨】
裁判所は、
「本件商標と使用標章の称呼、外観の類似性の高さの程度に、使用標章の著名性及び本件商標と使用標章の取引者、需要者の共通性を考慮すれば、本件商標は、これを指定商品である薬剤について使用した場合には、その取引者、需要者に、商品の出所について混同を生じさせる恐れがあると認めることができ、本件商標の登録は商4条1項15号に違反してされたものであるとした審決の判断に誤りはないというべきである。」
と判断した。

原告は、
「医師等は医薬品の取扱いに相当の注意力を有する専門家であること、患者に対して医療用医薬品を提供するには必ず医師の処方箋が必要であること、医療用医薬品において、一字違い又はこれに近い商品名のものが合計58件もあり、「ハル」を含む医療用医薬品が現在販売されているものでも、本件商標及び引用商標が付された2件のほかに、「ハルトマン」等8件、合計10件もあることなどから、本件商標と引用商標の相違が強調され、出所の混同のおそれはない」
と主張した。

しかし、裁判所は、
「本件商標と使用標章の類似性、使用標章の著名性に、医療用医薬品に関する取引の実情を併せ考慮すれば、医療関係者が医薬の知識を有する専門家であるとしても、~本件商標を使用した薬剤が、被告又は被告と資本関係ないし業務提携関係にある者の業務に係る商品(被告商品)であるかのように混同するおそれがあることを否定することはできない」
し、一字違い又はこれに近い商品名のものが合計58件あるとしても、
「出所の混同のおそれがないとの事実について明らかになっているわけではないから、~原告主張の事実だけでは、~取引者、需要者において出所の混同のおそれがないことを認めるに足りない。」
と判断した。
請求棄却。

【コメント】
アステラス製薬のハルナール(米国での販売名:Flomax、一般名:塩酸タムスロシン(TAMSULOSIN HYDROCHLORIDE)、α1ブロッカー、前立腺肥大症に伴う排尿障害)のジェネリック医薬品は日本では既に多数販売されているが、大正製薬のハルンナートもそのひとつ。今回の商標権無効とする判決がその後のハルナールの売り上げにどの程度好影響を与たのか・・・
ちなみに、アステラス製薬は、ハルナールについてカプセル剤から口腔内崩壊錠(ハルナールD錠)に剤型変更を果たしている。ハルナールD錠における血漿中未変化体濃度の推移がハルナールカプセルの場合とほぼ同じであり、生物学的に同等であることを示すことで承認を獲得したわけであるが、ジェネリックメーカーも同様に、薬価削除となったハルナールカプセルとの生物学的同等性を示すことでジェネリック医薬品の承認を得て販売している。


参考:

ハルナールに関するアステラス製薬の最近のプレスリリース:


Wikipedia: Tamsulosin

Oct 5, 2008

2008.08.06 「スキーペンズ アイ リサーチ v. 特許庁長官」 知財高裁平成19年(行ケ)10304

局所投与の有用性を裏付ける記載: 知財高裁平成19年(行ケ)10304

【背景】
「シェーグレン症候群における眼のアンドロゲン療法」に関する特許出願(WO93/20823; 特表平07-508716)について、明細書の記載要件を満たしていないと判断された拒絶審決の取消しを求めた事案。
本願明細書には、アンドロゲン等の有用性に関する薬理試験として、マウスを用いた「全身投与」の実験結果の記載があるのみだった。

請求項1:
局所適用において有効量のアンドロゲンまたはアンドロゲン類似体,および当該アンドロゲンまたはアンドロゲン類似体を患者の眼球表面または眼の直ぐ近傍に局所的に投与するための賦形剤を含む医薬的に許容できる物質を含む,当該患者の眼の乾性角結膜炎の症状を治療する治療組成物。

【要旨】
原告は、種々の理由を挙げて、全身投与の実験結果の記載であっても局所投与に係る本件有用性を裏付けるものである旨主張した。

しかし、裁判所は、

(5) 全身投与と局所投与との関係について、

「薬剤の全身投与においては,注射等により直接血管に注入され,あるいは消化器系を通じるなどして血液中に取り込まれた薬剤が,全身の血管系を循環し,全身の臓器,器官等を経由しつつ,標的とされる病変部位に到達するものであるから,そのような過程を経ない局所投与が,全身投与と本質的に異なるものであることは明らかである。また,とりわけ,シェーグレン症候群のような全身性の疾患においては,現実に症状が発現している具体的な部位以外の部位(全身性の疾患の根源と考えられる部位)に薬剤が到達することにより,当該薬剤の効果が生じるということも十分に考えられるところである。そうすると,シェーグレン症候群に基づく乾性角結膜炎について,全身投与において有用であった薬剤が,直ちに,局所投与においても有用であるということができないことは明らかであり~」

と判断するなど、

最終的に、

「アンドロゲン等の有用性に関する薬理試験として,マウスを用いた全身投与の実験結果の記載があるのみである本願明細書の発明の詳細な説明に,局所投与に係る本件有用性を裏付ける記載があるといえる旨の原告の各主張は,いずれも採用することができず,その他,本願明細書の発明の詳細な説明に,本件有用性を裏付ける記載があるものと認めるに足りる証拠はない。」

として、実施可能要件(特36条4項)を満たさないと判断した。

請求棄却。

【コメント】
投与方法の実施可能要件が争われた。
医薬発明である以上、実施可能要件を満たすためには、医薬用途を裏付ける実施例として、通常、薬理試験結果の記載が求められる。局所投与が発明の特徴なのであれば、局所投与による薬理試験結果を明細書に記載しておくべきだった。

特許・実用新案審査基準 第VII部 第3章 医薬発明 1.2.1 実施可能要件 参照。

Oct 1, 2008

「医薬系"特許的"判例」ブログ 2008年9月の検索ワード/フレーズ/コメント

「医薬系"特許的"判例」ブログでは、最近の日本における医薬特許判決、特に医薬特許のライフサイクル最大化に関する側面についてコメントしています。
Iyakukei-"Tokkyoteki"-Hanrei blog provides comments about recent pharmaceutical patent cases in Japan, especially aspects relating to maximizing pharmaceutical patent life cycles.

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