Jan 25, 2009

2008.11.26 「グラクソ v. 特許庁長官」 知財高裁平成19年(行ケ)10379

薬を含む加圧容器の貯蔵方法および包装: 知財高裁平成19年(行ケ)10379

【背景】
「薬を含む加圧容器の貯蔵方法および包装」に関する発明(特表2002-532216、WO2000/037336)について、本願発明と引用発明との相違点である包装を備えている点は周知技術であり、引用発明の容器に該周知技術を適用することは当業者であれば容易に想到し得ることであるとして進歩性無しとした拒絶審決に対して、原告は審決取消訴訟を提起した。

請求項16:
噴射剤およびこの噴射剤に分散し若しくは溶解した薬剤を有する加圧された薬物製剤をその内部に含む容器と,
前記容器を封入するフレキシブルな材料製の包装であって,水分不浸透性若しくは実質的に水分不浸透性の材料から製造された包装と,
を備えることを特徴とする包装容器。

本願発明と引用発明との一致点:
「噴射剤およびこの噴射剤に分散し若しくは溶解した薬剤を有する加圧された薬物製剤をその内部に含む容器。」

相違点:
本願発明においては,容器を封入するフレキシブルな材料製の包装であって,水分不浸透性若しくは実質的に水分不浸透性の材料から製造された包装を備えているのに対して,引用発明においては,そのような構成を備えていない点。

【要旨】

取消事由2(動機付けの不存在による相違点についての判断の誤り)について

原告は、
「本願発明と引用刊行物2,3記載の発明との間には,技術分野の関連性,課題の共通性,作用・機能の共通性が存在しないから,引用発明と,引用刊行物2,3記載の発明とを組み合わせて本願発明の構成とすることを動機付けるものは存在しない」
と主張した。

(1) 技術分野の関連性について

原告は、
「引用刊行物2,3記載の発明はレトルト製品に関する技術分野に属しており,本願発明の技術分野と関連しない」
と主張した。

しかし裁判所は、
「引用刊行物2,3の包装容器がレトルト処理を施すものであるとしても,当該包装容器の内容物が薬剤であることに変わりはないから,薬物を含む容器を包装する技術という点で両者の技術分野が関連していることは明らかである。」
と判断した。

(2) 課題の共通性について

裁判所は、
「引用刊行物2,3には,容器内の薬剤が保存中に水分等の進入により変質することを問題とし,その解決手段として,水分不透過性の包装材を使用して,その内部に容器を密封することが示されているから,~発明の目的ないし課題として,容器内の薬剤の性質を維持することが開示されていると認められる。また~薬剤の保存中における成分の変質のおそれという問題は薬剤全般に共通するものといえるから,~薬剤の保存中の変質を防ぎ,寿命を延ばすために,酸素や水分等による影響を防止することは当然に考慮される事項であるといえる。したがって,本願発明の課題と引用刊行物1ないし3記載の発明の目的ないし課題には,共通性があると認められる。」
と判断した。

(3) 作用・機能の共通性について

裁判所は、
「引用刊行物2,3の包装は,加熱滅菌後の保存中も酸素や水分の進入を防止する性質を保持するものであるから,包装材の作用・機能の点においては,原告の主張する本願発明の包装の作用・機能と共通性を有していると認められる。」
と判断した。


取消事由3(阻害事由の存在による相違点についての判断の誤り)について

原告は、
「引用刊行物1にはMDI缶に充填するエーロゾル配合物が水を含有することが記載されており,この記載は,引用発明が,本願発明の課題とは逆の効果を与える構成を採用していることを示している」
と主張した。

しかし裁判所は、
「水を含有する物質では水分量の変化により濃度等が変化するおそれがあるから,水を含有する物質であっても水分不浸透性の材料からなる包装体により包装することが当該物質の変質防止にとって有効であることは自明である。以上の点に鑑みれば,引用刊行物1においてMDI缶に充填された配合物に水を含有することが記載されているとしても,その記載が,水分不浸透性の材料から製造された包装を引用発明に適用し,水分進入の防止を想到することを阻害する事由になるとは認められない。」
と判断した。


取消事由4(顕著な効果の看過による相違点についての判断の誤り)について

原告は、
「本願発明は,計量投与吸入器ヘの水蒸気の進入のレベルを制御することにより製品の性能を改善する顕著な効果がある」
と主張した。

しかし裁判所は、
「計量投与吸入器への水蒸気の進入のレベルを制御することにより得られる発明の効果は,内部に乾燥剤等の水分吸収手段を収納した包装により達成されることが本願明細書に記載されているだけであり,水分吸収手段の収納を必須としない本願発明の包装によって上記の効果を奏することは本願明細書に記載されていない。したがって,本願発明の効果に関する原告の主張は,特許請求の範囲の記載に基づかないものであり,失当というほかない」
と判断した。

請求棄却。

【コメント】
引用発明に周知技術を適用する動機付けが存在するかどうかが主な争点。
本件PCT出願のpriority applicationである下記米国出願はいずれも特許成立。

U.S.application No.09/290,351
-Patent No.6,179,118

U.S.application No.09/216,183
-Patent No.6,119,853

欧州では現在審査係属中(European publication No.EP1150905)。

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