Sep 15, 2009

2009.06.29 「グラクソスミスクライン バイオロジカルズ ソシエテアノニム v. 特許庁長官」 知財高裁平成20年(行ケ)10397

子宮頸がん予防ワクチンの進歩性: 知財高裁平成20年(行ケ)10397

【背景】

「新規組成物」に関する発明(特願2003-296403)の拒絶審決取消訴訟。出願人は審判請求をするとともに手続き補正書を提出したが、本願補正発明は特29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないとして、補正却下した上で、審判請求は成り立たないとの審決を下した。

補正後の請求項1:
HPV16 L1 VLP,HPV18 L1 VLP,水酸化アルミニウム,及び3D-MPLを含む,HPV感染及び/又は疾患の予防ワクチン
(以下「本願補正発明」という。)

(1) 引用発明の内容
同時に免疫されて,HAI力価を作り出す,HPV-6b,HPV-11,HPV-16,及びHPV-18に由来する4つのVLP調製物。
(2) 一致点
HPV16 VLP及びHPV18 VLPが同時に投与される,HPV感染及び/又は疾患の予防ワクチンである点。
(3) 相違点
ア相違点1
本願補正発明は,抗原としてHPV16 L1 VLP,HPV18 L1 VLPを含むのに対し,引用発明は,HPV16 VLP,HPV18 VLPを含む点。
イ相違点2
本願補正発明は,ワクチン中に,HPV16 L1 VLPとHPV18 L1 VLPとを含むのに対し,引用発明は,HPV16 VLPとHPV18 VLPを同時に投与するものであるが,それらがワクチン中に一緒に含まれているものであるかどうか記載されていない点。
ウ相違点3
本願補正発明は,水酸化アルミニウム及び3D-MPLを含むのに対し,引用発明はそれらを含まない点。

【要旨】

裁判所は、

「引用例1には,L1 VLPsでの免疫化は,高い力価の中和抗体の産生を刺激することや,L1 HPV-16VLPでの免疫は,L1+L2 HPV-16VLPでの免疫と同様に高いHAI力価を誘導することが記載されている。そうすると,引用発明であるHPV感染及び/又は疾患の予防ワクチンに使用するHPV16 VLP,HPV18 VLPとして,HPV16 L1 VLP,HPV18 L1 VLPをそれぞれ採用し,多価ワクチンとなるようにその両者を一緒に含むHPV感染及び/又は疾患の予防ワクチンとすることは,当業者が容易に想到し得ることである。」

と判断した。

原告は

「100種以上という多数の遺伝子型が存在するHPVの抗原の中から,HPV16 VLPとHPV18 VLPの組合せのみを選択して,HPV感染/及び疾患の予防ワクチンの抗原として使用することが容易であったとはいえない」

と主張した。

しかし、裁判所は

「本願補正発明は,「HPV16 L1 VLP,HPV18L1 VLP・・を含む,HPV感染及び/又は疾患の予防ワクチン。」であり,抗原としてHPV16 VLPとHPV18 VLPのみを選択したとはいえない。また,抗原としてHPV16 VLPとHPV18 VLPを選択する点では本願補正発明と引用発明とで相違はなく(この点は当事者間に争いがない。),前記のとおりハイリスク生殖器HPV型として引用例1に記載されていることであるから,本願補正発明は,多数の遺伝子型から特に上記抗原を選択したというわけではない。」

として原告主張を採用せず。

また、原告は、

「本願補正発明に係るワクチン開発及びアジュバント選択が技術的に困難であるから,本願補正発明を容易に想到し得ない」

旨主張した。

しかし、裁判所は、

「L1 VLP自体は本願出願前から存する従来技術であるから,仮にその製造上の技術的困難性があったとしても,そのことは,本願補正発明の相違点3に係る構成を採用することの困難性を意味するものではない。また~3D-MPL及び水酸化アルミニウムは,アジュバントとして優れたものであることが引用例2に記載されており,しかも,適用できるワクチンとしてHPVも記載されているのであるから,HPVワクチンのアジュバントとして3D-MPL及び水酸化アルミニウムを選択することが当業者にとって困難であったということはできない。」

として原告主張を採用せず。

さらに原告は、

「審決が甲7の結果を参酌せず,本願補正発明の顕著な作用効果を看過した」

と主張した。

しかし、裁判所は、

「引用例2の記載によれば,アジュバントとして3D-MPL及び水酸化アルミニウムを用いることが記載され,しかもその併用により体液性免疫応答と細胞性免疫応答の両者に対して改善効果を奏するとされるのであるから,たとえ甲7から本願補正発明においてアジュバントとして水酸化アルミニウム単独を用いる場合に比較して優れたものであることがいえるとしても,それをもって,本願補正発明が引用例1,2の記載から当業者が予測し得ない顕著な作用効果を奏し得たということはできない。」

として原告主張を採用せず。

請求棄却。

【コメント】

出願人は、アジュバントとして水酸化アルミニウム単独を用いる場合に比較して3D-MPL及び水酸化アルミニウムを併用することに顕著な効果がある旨主張したが、そもそも単独使用より併用使用が優れていることは当業者が予測できることであったため、その主張は認められなかった。本願は分割出願であり、原出願(特願2001-521339)は特許庁に係属中のようである。

参考:


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