Apr 22, 2009

2009.04.22 第一三共 新用法・用量クラビット製剤承認

2009年4月22日、第一三共は、広範囲経口抗菌製剤「クラビット®錠250mg・錠500mg・細粒10%」(一般名: レボフロキサシン水和物)の製造販売承認を取得した。クラビット 500mg 1日1回投与法は、従来の100mg 1日3回投与法と比較して最高血中濃度を上げることにより、殺菌作用が増強されると共に耐性菌の出現を抑制することが期待できるとのこと。クラビット製剤はこれまで1錠又は細粒1g中当たり有効成分(レボフロキサシン水和物)が100mgの製剤しかなく、しかも用法・用量は、通常、成人に対して、レボフロキサシン水和物として1回100mgを1日2~3回経口投与とされていた。



今回の承認による後発品との差別化が「クラビット」のライフサイクル延命化に功を奏するか、今後の「クラビット」の売れ行きに注目したい。しかし、とにかくまず注目すべきは現在争われている訴訟の行方である。



Apr 21, 2009

知的財産戦略本部 先端医療特許検討委員会

首相官邸 知的財産戦略本部 知的財産による競争力強化専門調査会の先端医療特許検討委員会(第6回)の資料。



用法・用量等に特徴のある発明についての論点は下記のとおり。
①から④の答えは自明のことでもはや議論してもあまり意味のないことでしょう。⑤及び⑥についてもっと議論を深めるべきと思いますが・・・。次回は2009年4月24日開催。

①国民一般の生活水準の向上や公衆衛生・医療水準の向上に伴い、患者や医師からは、効能・効果が同じであっても、より副作用や身体への負担が少なく、快適な生活の継続に支障とならない医薬の開発が一層求められているのではないか。

②専門家の予測を超える効果を示す新用法・用量の医薬の発明を特許対象とし企業に開発インセンティブを付与することにより、このような医薬の開発が促進されるのではないか。それとも、このような医薬は特許がなくても盛んに開発されるのか。

③新用法・用量に関する研究開発が世界的に見て活発化していった場合に、我が国において新用法・用量のみに特徴がある医薬を特許保護していないことが当該医薬の我が国市場への投入の阻害要因となるおそれはないか。

④新用法・用量の医薬を特許対象とした場合、患者が負担する医療費に影響を及ぼすのか。

⑤専門家の予測を超える効果を示す新用法・用量の医薬の発明を特許対象とする場合、医薬における用法・用量の一体性等に照らし、「物」の発明として保護すべきではないか。また、「方法」の発明として保護することは、患者が使用する発明となるので産業上利用することができる発明とは認めがたい等の問題があり、困難ではないか。

⑥専門家の予測を超える効果を示す新用法・用量の医薬を「物」として特許対象とした場合、医師の処方は特許権の侵害とならず、医師の裁量、患者の選択等に負の影響を及ぼすことにならないのではないか。この場合、現行の用途発明と同様に、医療のフリーアクセス等の現行の医療制度には負の影響を及ぼさないのではないか。

Apr 19, 2009

2008.12.25 「バイエルクロップサイエンス v. 特許庁長官」 知財高裁平成20年(行ケ)10302

木材及び木質合板類浸み込用: 知財高裁平成20年(行ケ)10302

【背景】
「工芸素材類を害虫より保護するための害虫防除剤」に関する特許(特許第3162459号)に関し、原告が訂正審判請求したところ、特許庁が請求不成立との審決をしたことから、原告がその取消しを求めた事案。争点は、本件訂正が、独立特許要件を満たしているか(すなわち特開昭61-267575号公報(「刊行物1」)に記載された発明との関係で進歩性を有するか。)であった。

本件訂正後の本件特許の特許請求の範囲は,次のとおりである(本件訂正発明。下線部は訂正部分。)。

【請求項1】
1-(6-クロロ-3-ピリジルメチル)-2-ニトロイミノ-イミダゾリジンを有効成分として含有することを特徴とする木材及び木質合板類をイエシロアリ又はヤマトシロアリより保護するための木材及び木質合板類浸み込用害虫防除剤。

  • 1-(6-クロロ-3-ピリジルメチル)-2-ニトロイミノ-イミダゾリジン: 一般名 「イミダクロプリド」


【要旨】
取消事由3(相違点3(害虫防除剤を「木材及び木質合板類浸み込用」と規定したこと)の判断の誤り)について

原告は、
「刊行物1(甲8)の「極めて卓越した殺虫作用」又は「強力な殺虫作用」は,実施例5~7の「散布」による殺虫効果にしかすぎず,本件訂正発明の「浸み込用」は,「散布」とはほど遠い害虫防除剤の適用形態である」
と主張した。

しかし、裁判所は、
「害虫防除剤の適用形態が「散布」であっても「浸み込用」であっても,害虫は,害虫防除剤の有効成分に接触して殺虫されるものであることに変わりはない。そして,害虫防除剤を「散布」するか「浸み込用」とするかは,同剤が害虫に接触する過程の違いにすぎず,殺虫作用自体は,害虫防除剤の有効成分の性質によるものというべきである。そうすると,このような害虫防除剤の適用形態の違いによって,害虫防除剤の殺虫作用に違いが出ることを直ちに導くことはできない。」
として原告の主張を採用せず。

また、原告は、
「害虫の種類に応じて害虫防除剤の適用方法を変えるのは当然のことであるが,刊行物1(甲8)の記載からイミダクロプリドがシロアリに対して殺虫作用を有することが知られていたとすることはできないから,イミダクロプリドを木材等の内部に浸み込ませてシロアリの侵襲を防除する方法は当業者が容易になし得るとすることはできない」
と主張した。

しかし、裁判所は、
「原告の上記主張は,刊行物1(甲8)にイミダクロプリドがシロアリに対して殺虫作用を有することが記載されているといえないことを前提とするものであるから,前記2(2)の説示に照らし,採用することができない。」
とし、よって取消事由3は理由がないと判断した。

請求棄却。

【コメント】
原告は、新たな修飾語「浸み込み用」をクレームに付け加えたが、裁判所は、適用形態の違いによって結局作用に違いが出ることを導くことはできないと判断した。本件は医薬発明のケースではないが、適用形態の違い(治療の態様)により特定しようとする医薬発明の考え方にとっても参考になる(?)かもしれない。
その他の原告の主張に対する裁判所の判断は下記判決内容とほぼ同様。

参照:
2008.11.20 「バイエルクロップサイエンス v. エンシステックス」 知財高裁平成20年(行ケ)10068

Apr 13, 2009

2009.04.09 「医療用後発医薬品の薬事法上の承認審査に係る医薬品特許の取扱いについて」に関する意見募集について

厚生労働省医薬食品局審査管理課がパブリックコメントを募集中(「医療用後発医薬品の薬事法上の承認審査に係る医薬品特許の取扱いについて」に関する意見募集について)。「医療用後発医薬品の薬事法上の承認審査及び薬価収載に係る医薬品特許の取扱いについて」を通知することを予定しており、最終的な決定に際してパブリックコメントを参考にするとのこと。募集期間は2009年5月11日まで。
以下はその抜粋。(2)の文章は不明確だし、それだけですべての取り扱いをカバーしているようには思えないのだが・・・


「医療用後発医薬品の薬事法上の承認審査に係る
医薬品特許の取扱いについて」に関する意見募集について


平成21年4月9日
厚生労働省医薬食品局審査管理課


<中略>

医療用後発医薬品の薬事法上の承認審査に係る
医薬品特許の取扱いについて


後発医薬品の薬事法上の承認審査にあたっては次のとおり取り扱うこと。

(1)先発医薬品に有効成分に係る物質特許が存在する場合((2)の場合は除く。)には、後発医薬品を承認しないこと。この場合の特許の存否は、承認予定日で判断するものであること。

(2)先発医薬品の一部の効能・効果、用法・用量(以下、「効能・効果等」という。) に特許が存在する場合等については、後発医薬品を承認すること。この場合、特許が存在する効能・効果等については承認しない方針であるので、後発医薬品の申請者は事前に十分確認を行うこと。

(3)なお、効能・効果等の開発に伴い、既に製造販売の承認を与えられている医薬品と明らかに異なる効能・効果等が認められた医薬品については、原則として、4年間の再審査期間を付すこととされているので、申し添える。


Apr 12, 2009

2009.04.09 「Daiichi Sankyo Files Patent Infringement Actions against 11 Generics Companies for CRAVIT® TABLETS and FINE GRANULES」

第一三共は、レボフロキサシン水和物製剤(「クラビットⓇ錠」、「クラビットⓇ細粒」)の物質特許第2008845号および用途特許第1659502号の延長登録に基づき、同製剤の後発品の製造・販売の差止を求めて、後発品の製造販売承認を取得した計11社に対し、特許侵害差止訴訟を提起した。今回の提訴は2009年3月23日の後発品企業13社に対する提訴(参照: 2009.03.23 「Daiichi Sankyo Files Patent Infringement Actions against 13 Generics Companies for CRAVIT® TABLTETS and FINE GRANULES」)に続くもの。

第一三共ニュースリリース:


Apr 5, 2009

2008.12.16 「訴訟記録閲覧等制限申立事件 申立人 萬有製薬」 知財高裁平成20年(行タ)10007

独メルクと米メルクの合意: 知財高裁平成20年(行タ)10007

【背景】
基本事件(知財高裁平成20年(行ケ)10308)の訴訟記録中、別紙記録目録記載の部分について、基本事件原告(メルク・コマンデイトゲゼルシヤフト・アウフ・アクチエン)の親会社であるE.Merck(現在の名称:Merck KGaA,独メルク)と申立人(萬有製薬)の親会社であるMerck & Co., Inc.(米メルク)との合意の内容が記載されていた。申立人は、本件合意は申立人の保有する営業秘密に該当することを理由として、当該記載部分について閲覧制限の申立てをした。閲覧制限を申立てた部分には、基本事件訴訟中に証拠として提出された本件合意に係る契約書及び合意に係る書簡が含まれていた。

なお、基本事件原告は、疎明資料として下記(1)ないし(5)を提出した。
(1) 基本事件原告の日本子会社であるメルク株式会社のウェブサイト(www.merck.co.jp/japan/about/content_history.html)をプリントアウトした書面
(2) インターネット上の百科事典「ウィキペディア(Wikipedia)」(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A1%E3%83%AB%E3%82%AF)をプリントアウトした書面
(3) 米メルクのオーストラリア子会社のウェブサイト(www.msd-australia.com.au/page.asp?e_page=376739&3570=376571§ion=376565&subsection=377267&article=376571)をプリントアウトした書面
(4) WIPOのウェブサイト(www.wipo.int/amc/en/domains/decisions/html/2003/d2003-0203.html)に公開されたWIPO仲裁調停センターの2003年5月27日付け裁定をプリントアウトした書面
(5) 基本事件原告の商標統括担当者作成に係る平成20年11月10日付け陳述書

【要旨】
裁判所は、上記疎明資料(1)~(4)について誰でもアクセス可能であること、また本件合意に係る契約書に守秘義務条項が存在していないこと、及び本件合意に係る書簡には秘密として保持すべき旨の記載は見当たらない、等から、本件合意の内容は申立人の保有に係る営業秘密であると認めることはできない、と判断した。

申立却下。

【コメント】
萬有製薬にしてみれば、その合意内容が周知であろうがなかろうが、建前として、親会社に関わる"契約書"を閲覧可能にさせるわけにはいかなかった・・・のかもしれない。

参考:


Apr 1, 2009

2008.12.15 「ニプロファーマ v. 富田製薬」 知財高裁平成20年(行ケ)10144

重炭酸透析用人工腎臓潅流用剤: 知財高裁平成20年(行ケ)10144

【背景】
被告(富田製薬)が特許権者である「重炭酸透析用人工腎臓潅流用剤の製造方法及び人工腎臓潅流用剤」に関する特許(第2769592号)の請求項9及び10について、無効審判請求不成立の審決に不服の原告(ニプロファーマ)が審決取消訴訟を提起した。

争点は、
①実施可能要件及びサポート要件違反の有無、
②特開平2-311419号公報(甲2文献)に記載された発明との関係で新規性及び進歩性を有するか、
である。

請求項9:
塩化ナトリウム粒子の表面に塩化カリウム,塩化カルシウム,塩化マグネシウム及び酢酸ナトリウムからなる電解質化合物及びブドウ糖を含むコーティング層を有し,かつ,複数個の塩化ナトリウム粒子が該コーティング層を介して結合した造粒物からなる顆粒状乃至細粒状の重炭酸透析用人工腎臓潅流用剤。

請求項10:
さらに酢酸を含有してなる請求項9に記載の重炭酸透析用人工腎臓潅流用剤。

【要旨】

1. 実施可能要件及びサポート要件違反の有無について

原告は、
「本件特許明細書記載の方法によっても本件各特許発明の構成を有する造粒物は得られない」
と主張したが、裁判所は、
「本件特許明細書の発明の詳細な説明には,本件各特許発明の目的,構成及び効果が記載されると共に,かかる構成を有する造粒物を形成する方法が当業者が容易に実施できる程度に記載されているということができる。」
と判断した。

具体的には、
原告は、
「本件実施例3において酢酸ナトリウムを添加した混合物に特異な粘りが生じ粒子同士が付着し始めた後にブドウ糖が添加されていることを根拠として,コーティング層はブドウ糖が添加される前に既に形成されている,あるいはブドウ糖がコーティング層に含まれるとしても複数の塩化ナトリウム粒子が結合した造粒物の表面をコーティングしているものにすぎない」
と主張。
しかし、裁判所は、
「ブドウ糖が添加される以前に付着した塩化ナトリウム粒子が一部に存在するとしても,製造された造粒物を全体としてみれば,ブドウ糖を含むコーティング層を介して複数の塩化ナトリウム粒子が結合しているということができる。」
とした。

また、原告は、
「本件実施例3記載の方法に基づいて行われた甲1実験の結果,本件実施例3記載の方法によっては本件各特許発明の造粒物は得られないことが判明した」
と主張。
しかし、裁判所は、
「甲1実験においては各原料の分量につき,本件実施例3に記載された分量の約800分の1としており,添加する水の量も同様に約800分の1としていることが認められ,水の絶対量が少なくなった状態で本件実施例3と同様の条件下での加熱が行われたために,本件実施例3における造粒の進行に比べて乾燥が早く進行し,ブドウ糖が添加された段階では既に水分が失われ,酢酸ナトリウムは粘りを有する状態ではなかったと推測される。したがって,甲1実験の結果をもって原告主張のように本件実施例3記載の方法に基づき本件各特許発明の造粒物が得られないことの根拠とすることはできない。」
とした。

裁判所は、被告が提出した甲8実験の報告書について、
「甲8実験により得られた上記結果は,発明の詳細な説明の記載と矛盾するものではなく,これを裏付けるのに十分なものといえる。そうすると,本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載された方法では本件各特許発明の造粒物を得られないという原告の主張は採用することができない。」
と判断した。

2. 新規性・進歩性について

裁判所は、
「甲2文献に記載の造粒方法は,~塩化ナトリウム粒子及びブドウ糖粒子を核として,これらの粒子に塩化ナトリウム以外の電解質化合物によるコーティング層を形成する点で,ブドウ糖をコーティング層に含ませる本件特許発明9とは発想が異なるものである。したがって,本件特許発明9は甲2文献に記載された発明と同一であるということはできず,またこの発明に基づいて当業者が容易に想到しうるものであるともいえない。」
と判断した。

請求棄却。

【コメント】
2006.07.31 「富田製薬 v. ニプロ」 知財高裁平成17年(行ケ)10736及び2008.05.15 「ニプロ v. 富田製薬」 知財高裁平成19年(行ケ)10347では、請求項9及び10の進歩性が争われ、ニプロの無効請求は棄却されたが、本事件では記載要件を争点にニプロが再攻撃した事案。本件も富田製薬に軍配。

ニプロと富田製薬との間で争われていた一連の特許係争は、富田製薬の本件特許の一部クレームが無効とされ、"ブドウ糖を塩化ナトリウムのコーティング層中に含む"という構成で限定された剤クレームしか特許として生き残らなかったため、ニプロの透析液粉末製剤「リンパック」が特許発明の技術的範囲外となったことで、一旦終結した。

ニプロの「リンパック」の構成は以下の製剤の組合せからなる。「リンパック」は、わざわざA-1剤とA-2剤(ブドウ糖)を分離した製剤である。

A-1剤: 塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、無水酢酸ナトリウム、氷酢酸(pH調整剤)。
A-2剤: ブドウ糖。
B剤: 炭酸水素ナトリウム。

これに対し、富田製薬・扶桑薬品販売の人工腎臓用粉末型透析用剤「キドライムT-30」の構成は以下の組み合わせ。ブドウ糖が他成分と混合済みの製剤である。

A剤: 塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム水和物、塩化マグネシウム、無水酢酸ナトリウム、、氷酢酸(pH調整剤)、ブドウ糖。
B剤: 炭酸水素ナトリウム。

但し、ニプロの「リンパック透析剤TA1」、「リンパック透析剤TA3」は、ブドウ糖が他成分と混合済みの製剤である。

本件で無効とされなかった請求項9及び10の存在は、ニプロにとって、使い勝手のよいブドウ糖混合済製剤への改良品のfreedom to operateに対して一定の障害となって残ることになると思われる。

参考: