May 31, 2009

2009.05.27 「武田薬品 v. 特許庁長官」 知財高裁平成20年(行ケ)10477

処分の対象が「特許発明の構成要件として明確に特定され」ていることが必要?: 知財高裁平成20年(行ケ)10477

「有核顆粒およびその製造法」に関する特許(第2138026号)の特許権者である原告(武田薬品)が、タケプロンOD錠15(有効成分: ランソプラゾール)の製造承認事項の一変に係る処分に基づき、本件特許につき特許権の存続期間の延長登録の出願(延長登録出願2006-700069)をしたが、拒絶査定/拒絶審決を受けたので審決取消訴訟を提起した。判決内容は下記判決と同じ。

参照:


May 28, 2009

2009.05.27 「武田薬品 v. 特許庁長官」 知財高裁平成20年(行ケ)10476

処分の対象が「特許発明の構成要件として明確に特定され」ていることが必要?: 知財高裁平成20年(行ケ)10476

【背景】

「有核顆粒およびその製造法」に関する特許(第2138026号)の特許権者である原告(武田薬品)が、タケプロンカプセル15(有効成分: ランソプラゾール)の製造承認事項の一変に係る処分に基づき、本件特許につき特許権の存続期間の延長登録の出願(延長登録出願2006-700068)をしたが、拒絶査定を受けたので不服審判を請求した。

しかし特許庁は、本件処分が本件特許に係る特許発明の実施に必要な処分であったか否かを判断するに当たり、"設定登録時"の特許請求の範囲の記載に基づくのではなく、"公告時"発明の特許請求の範囲の記載に基づいて特許発明の内容を認定、さらに、「医薬品についての処分が特許発明の実施に必要であったというためには少なくともその処分によって特定される『物』すなわち『有効成分』が特許発明の構成要件として明確に特定されていることを要するというべきである」とも説示し、本件出願は特67条の3第1項1号の規定により拒絶すべきであるとの理由で審判の請求は成り立たないとの審決をした(不服2007-34782号)。

原告は、これらの点について、本件特許に係る特許発明の内容の認定を誤った違法(取消事由1)及び特許法の解釈・適用を誤った違法(取消事由2)があるから、取り消されるべきであるとして審決取消訴訟を提起した。

【要旨】

取消事由1(本件特許に係る特許発明の内容の認定の誤り)について

裁判所は、

「特67条の3第1項1号は,「その特許発明の実施に第六十七条第二項の政令で定める処分を受けることが必要であつたとは認められないとき。」と規定する。同号にいう「特許発明」とは,「特許法を受けている発明」(特2条2項)を意味するというべきであるから,本件出願について同号の規定する拒絶理由の有無を判断するに当たり,本件特許に係る特許発明の内容は,出願公告時の特許請求の範囲の記載ではなく,設定登録時の特許請求の範囲の記載に基づいて,確定されるべきであることは当然である。~審決は,本件処分が本件特許に係る特許発明の実施に必要な処分であったか否かを判断するに当たり,設定登録時の特許請求の範囲の記載に基づくのではなく,公告時発明の特許請求の範囲の記載に基づいて,特許発明の内容を認定した点において,誤りがあるというべきである。」

と判断した。

被告(特許庁)は、

「特許権の存続期間の延長登録の出願の審査及び審判は,その出願時に出願人が提出した資料に基づいて行われるのであるから,本件出願の願書に添付された本件公告公報の特許請求の範囲の記載に基づいてした審決の認定,判断に,違法はない」

と主張した。

しかし、裁判所は、

「そもそも,特許原簿のように特許庁に備えられているものまで,「証明するため必要な資料」に該当すると解することには疑問があるのみならず,そのことによって,審査,審判を担当する特許庁審査官,特許庁審判官が,特許原簿など特許庁に備えられている資料との照合を省略することが正当化される理由はない。」

と特許庁の主張を退け、結論として、審決は本件特許に係る特許発明の内容の認定を誤ったものであり、この誤りが審決の結論に影響することは明らかであるとして、原告主張の取消事由1は理由があるとし、取消事由2について検討するまでもなく、審決は取消しを免れないと判断した。

また、裁判所は、事案にかんがみ、再開されるべき審判手続における審理に資するよう、特67条2項及び67条の3第1項1号の解釈について下記のとおり見解を付言した。

「特許権の存続期間が延長された場合の当該特許権の効力が,「政令で定める処分の対象」となった「物」(又は「物」及び「用途」)についてのみ及ぶとする制度の下においては,特許権の存続期間満了後に当該特許発明を実施しようとする第三者に対し,不測の不利益を与えないという観点からの考慮が必要であることはいうまでもない。
しかし,そのような観点から,「政令で定める処分」の対象となった「物」(又は「物」及び「用途」)が,客観的な要素によって特定され,かつ,「特許請求の範囲」,「発明の詳細な説明」の各記載及び技術常識に基づいて,十分に認識,理解できることが必要となるとはいい得ても,特許請求の範囲によって明確に記載されていることが必要となるとはいえない。
したがって,「政令で定める処分の対象」となった「物」(又は「物」及び「用途」)が,特許請求の範囲に明確に記載されていないという理由で,特許権の存続期間の延長登録の出願を拒絶することは,許されないものというべきである。」

審決を取り消す。

【コメント】

特許発明の内容は、"出願公告時"の特許請求の範囲の記載ではなく、"設定登録時"の特許請求の範囲の記載に基づいて確定されるべきであることは当然。特許原簿のように特許庁に備えられているものまで「証明するため必要な資料」として提出しろという特許庁のお役所的スタンスに対して、武田薬品は、出願公告後に補正された資料を審査・審判において特許庁に提出すれば済んだかもしれないのに、御上に逆らって、裁判にまでもつれ込んだというストーリーは面白い。

なお、「特許請求の範囲に処分の対象の記載がないときは当業者といえども延長された特許権の効力が及ぶ範囲を予見することは困難であって~存続期間満了後に特許発明を実施しようとする第三者に不足の不利益を及ぼす不都合が生じる」から、特67条の3第1項1号の該当性を「処分の対象となった物、又は物と用途が、特許請求の範囲に特定されているか否か」によって判断すべきであると特許庁は主張した。しかし、この特許庁の論理はおかしい。「特許請求の範囲に処分の対象の記載がない」場合には、特許権の効力が及ぶ範囲を予見することは困難なのか?

判決文を見る限り、全ての点において特許庁しっかりしてくれと言いたくなる事案である。

May 20, 2009

1976.12.21 「5-ニトロ安息香酸エステル製法事件」 東京高裁昭和48年(行ケ)20

製造中間体の有用性: 東京高裁昭和48年(行ケ)20

【背景】
「2―アルコキシ―4―アルカノイルアミノ―5―ニトロ安息香酸エステルの製法」に関する特許出願の進歩性判断において、中間体の製造方法のクレームの有用性が問題となった。
特許庁は、ニトロ基の導入位置に関して進歩性を欠くとする理由の他に、
「本願発明の目的物質が医薬物質製造の中間体として使用できることは認められるが、その有用性はあくまで最終目的物質である医薬物質が得られたときにはじめて実現される有用性であるから、最終目的物質である医薬物質に至るまでの一連の工程について特許を請求するのであればともかく、中間体製造までの段階に止つている本願発明において、該有用性をもつて本願発明が格別の進歩性あるものと判断すべきいわれはない。」
との理由で、本願発明を拒絶する審決を下した。

【要旨】
裁判所は、
ニトロ基の導入位置は3-位および5-位に限られるとした特許庁の判断は合理的根拠を欠くと判断し、さらに、
「新規物質を得る製法発明において、特許要件としての目的物質の有用性につき、目的物質がそれ自体有用な医薬物質である場合と、目的物質が有用な医薬を製造するための中間体である場合とを、特に区別して評価すべき合理的根拠はないというべきである。けだし、有用性に関する特許要件は、目的物質が新規であるというだけで何らの有用性をもたないところの製法発明、換言すれば無用の新規物質を得るにすぎない製法発明を特許付与の対象から排除することを趣旨とするものであり、かつそれにとどまるものと解されるからである。」
と判断した。
審決を取消す。

【コメント】
最終目的物である医薬物質が有用であれば、その中間体にも有用性がある。

May 17, 2009

2009.03.25 「X v. 特許庁長官」 知財高裁平成20年(行ケ)10261

キシリトール調合物: 知財高裁平成20年(行ケ)10261

【背景】
「上気道状態を治療するためのキシリトール調合物」に関する特許出願(特願2000-537427)の拒絶審決取消訴訟。

請求項1:
鼻の鬱血,再発性副鼻洞感染,又はバクテリアに伴う鼻の感染又は炎症を治療又は防止するために,それを必要としている人に対して鼻内へ投与するための鼻洗浄調合物であって,キシリトールを水溶液の状態で含有しており,キシリトールが水溶液100cc当たり1から20グラムの割合で含有されている調合物。

進歩性なしの審決において、

引用発明との一致点は、再発性副鼻洞感染又はバクテリアに伴う鼻の感染を治療又は防止するためにそれを必要としている人に対して投与するためのキシリトールを水溶液の状態で含有している調合物である点であり、相違点は下記のとおりと認定された。

相違点1:
本願発明が鼻内へ投与するための鼻洗浄調合物であるのに対し,引用発明は経口投与用溶液製剤である点

相違点2:
本願発明がキシリトールが水溶液100cc当たり1から20グラムの割合で含有されているのに対し,引用発明は水溶液1mlあたり400mgのキシリトールを含有する点

【要旨】
(1) 引用例2の記載内容の認定の誤りについて

裁判所は、
「引用例2~における「鼻の中に投与されることができる。」との記載部分は,エアロゾル粒子を,抗炎症剤及び/又は抗感染剤を感染部位である「気道下部」に直接的に投与するために,通過経路の入り口に当たる鼻孔から「鼻の中」に向けて投与されることができるという意味に理解すべきであり,鼻自体が感染部位であることを前提として,鼻を治療する目的等で,鼻に抗炎症剤及び/又は抗感染剤を投与するという意味に理解することはできない。」
として審決の認定は誤りであると判断した。

これに対して被告(特許庁)は、
「当業者であれば,引用例2~の記載は,「気道下部」のみならず,「上気道」を含めて感染性の呼吸性疾患について述べたものと理解することができる」
主張した。

しかし裁判所は、
「引用例2は,前記のとおり感染部位を「気道下部」とする疾患の治療方法を提供しようとするものであることを,繰り返し述べている記載態様に照らすならば,被告引用に係る上記記載部分は,感染部位を「気道下部」とする疾患に関する記述であると解するのが自然である。」
として、特許庁の主張を採用しなかった。

(2) 引用発明と引用発明2との組合せの容易想到性について

裁判所は、特許法29条2項が定める要件を充足することについての判断過程についての一般原則を示した(2009.01.28 知財高裁平成20年(行ケ)10096参照)。

「特許法29条2項が定める~要件である,当業者が先行技術に基づいて出願に係る発明を容易に想到することができたとの点は,先行技術から出発して,出願に係る発明の先行技術に対する特徴点(先行技術と相違する構成)に到達することが容易であったか否かを基準として判断されるべきものであるから,先行技術の内容を的確に認定することが必要であることはいうまでもない。また,出願に係る発明の特徴点(先行技術と相違する構成)は,当該発明が目的とした課題を解決するためのものであることが通常であるから,容易想到性の有無を客観的に判断するためには,当該発明の特徴点を的確に把握すること,すなわち,当該発明が目的とする課題を的確に把握することが必要不可欠である。そして,容易想到性の有無の判断においては,事後分析的な判断,論理に基づかない判断及び主観的な判断を極力排除するために,当該発明が目的とする「課題」の把握又は先行技術の内容の把握に当たって,その中に無意識的に当該発明の「解決手段」ないし「解決結果」の要素が入り込むことのないように留意することが必要となる。さらに,当該発明が容易想到であると判断するためには,先行技術の内容の検討に当たっても,当該発明の特徴点に到達できる試みをしたであろうという推測が成り立つのみでは十分ではなく,当該発明の特徴点に到達するためにしたはずであるという示唆等の存在することが必要であるというべきである」

これらの点を踏まえ、本件について裁判所は、

「引用発明~と引用発明2~とは,解決課題,解決に至る機序,投与量等に共通性はなく,相違するから,それらを組み合わせる合理的理由を見いだすことはできないし,そもそも,エアロゾルの形態のままでは吸気しながら鼻へ投与すると,有効成分(キシリトール)が感染部位とは異なる気道下部にまで到達することがあるため,感染部位である鼻内への局所投与の実現は,困難であるというべきである。以上のとおりであり,引用例1に接した当業者は,~引用例2を適用することによって,~本願発明の構成(相違点1の構成)に容易に想到できたと解することはできない。
この点について,成分や用途に係る医薬品等に係る発明が存在する場合に,その投与量の軽減化,安全性の向上等を図ることは,当業者であれば,当然に目標とすべき解決課題といえるであろうし,そのための手段として格別の技術的要素を伴うことなく,課題を解決することができる場合もあり得よう。しかし,そのような事情があるからといって,審決が,本願発明の相違点1の構成は,引用例2の記載内容から容易であるとの理由を示して結論を導いている場合に,その理由付けに誤りがある以上,上記のような事情が存在することから直ちに審決のした判断を是認することは許されない。」

と判断した。

審決を取り消す。

【コメント】
そもそも引例の記載内容の認定に誤りがあり、結果、引用発明同士を組み合わせる合理的理由は見出せないとされた事案。
裁判所は、特29条2項における容易想到性の判断手法について、2009.01.28 知財高裁平成20年(行ケ)10096を参照して同様のセリフを判示している。
引用発明同士の組合せ容易想到性の有無を判断するには、「課題」及び「解決手段(発明の特徴点)」を的確に把握することが必要不可欠であること、発明の特徴点に到達できる試みをしたであろうではなく、したはずであるという示唆等の存在することが必要であること、といった裁判所のメッセージは、EPOのproblem-solution approachやcould-would approachに非常に近い印象。

May 13, 2009

2009.01.27 「惠民製藥 v. 特許庁長官」 知財高裁平成20年(行ケ)10166

発明の要旨の認定と特許請求の範囲の用語の意義の解釈: 知財高裁平成20年(行ケ)10166

【背景】
「直接錠剤化用調合物および補助剤の調合方法」に関する特許出願(特願2001-310741)の拒絶審決取消訴訟。

請求項1:

A)一種または一種以上の希釈賦形剤約5~約99重量%及び/または薬学的活性成分0~約99重量%,
B)結合剤約1~約99重量%,及び
必要に応じて,
C)崩壊剤0~約10重量%
の全部または一部を使用した混合物を含み,
初期水分を約0.1~20%,及び/または薬学的に許容できる有機溶剤を約0.1~20%含む条件下において,約30℃~約130℃の温度範囲まで加熱し,密閉系統中で転動回転,混合しつつ顆粒を形成することを特徴とする直接錠剤化用調合物または補助剤を調合するための熱粘着式造粒方法。

審決では、引例記載の造粒方法は本願発明の熱粘着式造粒方法と一致しており、両者の唯一の相違点は引例が「直接錠剤化用調合物または補助剤を調合するため」のものであるか否か明確でない点であるとされ、本願発明の進歩性が否定された。

【要旨】

(1) 本願発明の「熱粘着式造粒方法」の技術的意義に関する審決の認定ついて

被告(特許庁)は、

「本願発明に関して特許請求の範囲の記載に何ら不明確な点はなく,発明の詳細な説明の記載を参酌すべき特段の事情も存在しないから,審決が本願発明の「熱粘着式造粒方法」は加熱して粒状物を製造する方法であるとした点に誤りはない」

と主張した。

しかし、裁判所は、

「特段の事情が存在しない限り発明の詳細な説明の記載を参酌することが許されないのは,あくまでも特許出願に係る発明の要旨の認定との関係においてであって,上記のように特許請求の範囲に記載された用語の意義を解釈するに当たっては,特許出願に関する一件書類に含まれる発明の詳細な説明の記載や図面を参酌すべきことは当然であるから,被告の上記主張は採用することができない。」

と判断した。

(2) 以上を前提として,引用発明における「粒状物の製造方法」が本願発明の「熱粘着式造粒方法」に相当するものであるかについて

裁判所は、

「引用発明は,従来の湿式造粒法における欠点を克服し,多量の水分を含有させずに粒状物を製造するという点では本願発明と共通の目的を有するものの,その目的を達成するための手段として低融点物質を加熱して溶融させるという方法を採用している点で,本願発明とは異なる方法によるものである。したがって,引用発明における「粒状物の製造方法」が本願発明の「熱粘着式造粒方法」に相当するものとした審決の判断は誤りである。」

と判断した。

これに対して被告は、

「引用例(甲1)の実施例にはトウモロコシデンプンを15重量部添加することが記載され,薬剤製造過程で使用されるトウモロコシデンプンの水分含有量が通常10%程度であることに照らせば,引用発明の諸材料中には本願発明における初期水分「約0.1~20%」の範囲内である1.5%程度の水分が含有されている」

と主張した。

しかし、裁判所は、

「仮に,引用発明の諸材料中に1%を超える水分が含まれ,これを密閉系で加熱することによって容器内で水分が凝結することがあるとしても,引用例(甲1)には凝結した水分が結合剤に吸収されて粘性を生じさせるという記載はなく,低融点物質を溶融させて造粒を行うことが上記のとおり記載されているのである。そうすると,引用発明の諸材料中に通常含まれる水分が粒状物の製造に寄与するか,仮に寄与するとしてどのような役割を果たすのかについては,引用例には教示も示唆もされていないといわざるを得ない。したがって,引用発明の諸材料中に本願発明における「約0.1~20%」の範囲内の水分が含まれているとしても,それを根拠として引用発明における「粒状物の製造方法」が本願発明の「熱粘着式造粒方法」に相当するということはできない。
以上のとおり,審決は,本願発明と引用発明がいずれも「熱粘着式造粒方法」であるとした点で一致点の認定を誤ると共に,この点に係る相違点を看過したものであるところ,引用例(甲1)に「熱粘着式造粒方法」に関する教示も示唆もみられないことは,上記のとおりである。したがって,本願発明が引用発明との関係で進歩性を有しないとした審決の判断は誤りである。」

と判断した。

審決を取り消す。

【コメント】
本願発明の「熱粘着式造粒方法」は加熱して粒状物を製造する方法であると決めつけた審決はやはり取り消されるべきものだろう。

裁判所は、「特段の事情が存在しない限り発明の詳細な説明を参酌することが許されないのは発明の要旨認定との関係において」のことであるというリパーゼ判決と同様の考え方を示しながら、一方、特許出願に係る特許請求の範囲に記載された「用語の意義を解釈」するに当たっては明細書等を参酌することは当然であるとした。
本判決の結論に賛成。しかし、結論の導き方についてであるが・・・特許出願に係る特許請求の範囲に記載された「用語の意義を解釈」するために明細書等を参酌することができるのは、発明の要旨認定作業の中で、且つ、リパーゼ判決において例示された「技術的意義が一義的に明確に理解することができない」等の「特段の事情」の場合に限り、許されるものなのだと私自身rigidな理解をしていた。どうも裁判所のニュアンスでは、特許出願に係る特許請求の範囲に記載された「用語の意義を解釈」するために明細書等を参酌するのは当然の作業であって、「発明の要旨認定」とは別のようである。とにかく特許請求の範囲の用語の解釈に疑義が生じないように気を配り、どうしても一義的に明確に理解できないのであれば明細書にきっちり説明しておくことが重要であることに変わりはない。

参考:
1991.03.08 「リパーゼ事件」 最高裁昭和62年(行ツ)3

「特許法二九条一項及び二項所定の特許要件、すなわち、特許出願に係る発明の新規性及び進歩性について審理するに当たっては、この発明を同条一項各号所定の発明と対比する前提として、特許出願に係る発明の要旨が認定されなければならないところ、この要旨認定は、特段の事情のない限り、願書に添付した明細書の特許請求の範囲の記載に基づいてされるべきである。特許請求の範囲の記載の技術的意義が一義的に明確に理解することができないとか、あるいは、一見してその記載が誤記であることが明細書の発明の詳細な説明の記載に照らして明らかであるなどの特段の事情がある場合に限って、明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌することが許されるにすぎない。」

May 10, 2009

2009.04.28 「先端医療分野における特許保護の在り方について(案)」に関する意見募集

知的財産戦略本部 知的財産による競争力強化専門調査会の先端医療特許検討委員会が取りまとめた「先端医療分野における特許保護の在り方について(案)」についてのパブリックコメントを募集中。期間は5月17日(日)まで。特に、用法・用量に特徴のある発明についての特許保護の今後の在り方として、「新用法・用量の医薬の発明を「物」の発明として保護すべく、審査基準を改訂すべきである。」とまとめています。詳細はこちら

用法・用量に特徴のある発明について特許保護の対象としないとする特許法上の規定はない。一定の条件(患者群または適用部位が引用発明と異ならなければならない)を満たさない限り用法・用量に特徴のある発明について特許保護の対象としない現在の取り扱いが、あくまで審査基準という特許庁の運用規定に基づいているという点、及び、用法・用量に特徴のある発明について特許保護の対象としないという判決が存在するのかしないのかという点は明記してほしいところです。

参考:
  • 特許・実用新案審査基準 第VII部 第3章 医薬発明


審査基準「医薬発明」に引用されている判決:


用法・用量に特徴のある発明についての最近の判決: