Jul 19, 2010

2010.02.24 「アルカフロイ(脱退原告 バイエル) v. 特許庁長官」 知財高裁平成21年(行ケ)10399

フルダラ即開放性錠剤: 知財高裁平成21年(行ケ)10399

【背景】
「活性成分の即開放性を有する高純度配合物の経口フルダラ」に関する脱退原告がした出願(WO 2003/053418; 特表2005-519043号)の拒絶審決取消訴訟。
本願発明と引用例1発明とは、「活性成分フルダラ(fludara)10mgを含んで成る即開放性錠剤配合物」との点で一致していたが、本願発明では、5種の配合物質が特定されているのに対し、引用例1発明ではそのような言及がない点(相違点1)について相違しており、この相違点1についての容易想到性の判断が争点となった。

請求項1:

50 ~ 100mg のラクトース一水和物,
0.1 ~ 5mg のコロイド状二酸化珪素,
40 ~ 100mg の微晶性セルロース(avicel),
1~ 10mg のクロスカラメロース- Na(ナトリウムカルボキシメチ
ルセルロース),及び
0.5 ~ 10mgのステアリン酸マグネシウムと共に,
99.19 %以上の純度での活性成分フルダラ(fludara)1 ~ 70mg を含
んで成る即開放性錠剤配合物であって,前記フルダラ中の汚染物が次
のような%を越えない:
(中略)
ことを特徴とする配合物。


【要旨】

裁判所は、

「引用例3(甲3)に記載された「即開放性錠剤」,及び引用例4(甲4)の【請求項32】に記載の「非徐放性医薬錠剤組成物」は,いずれも,本願発明の即開放性錠剤配合物に相当するものである。
そして,上記(ア),(イ)によれば,引用例3,4には,いずれも本願発明に含まれる5種の配合物質~が即開放性錠剤に製剤化するための成分として配合されていることが明らかである。
そうすると,本願発明の有効成分(活性成分)である純度99.19 %以上のフルダラは既に公知であるところ,即開放性錠剤に製剤化するための成分として公知となっている5種の配合物質を配合することは,医薬の有効成分の製剤化を企図する当業者(その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者)にとって,通常の創作能力の発揮であるということができる。そうすると,引用例1(甲1)から公知のリン酸フルダラビン即ち本願発明にいう活性成分フルダラ(fludara)の即開放性錠剤において,同じく即開放性錠剤に製剤化するための成分として配合することが引用例3(甲3)・引用例4(甲4)により公知となっている上記5種の配合物質を採用して配合することに当業者が格別の創意を要したものとはいえない。
以上の検討によれば,本願発明と引用例1発明との相違点1につき,容易想到とした審決の判断に誤りはないというべきである。」

と判断した。

当事者参加人は、

「本願発明は,引用例1発明との相違点1にかかる発明特定事項を採用することによって,フルダラは非常に不安定な物質であり錠剤の設計に当たっては錠剤配合物質の選択において特別の考慮が必要である,との欠点が克服できたものであり,これは本願明細書の段落【0006】~【0012】に記載されており,平成18年10月13日付け上申書(甲8)の記載の測定データを参酌すれば明らかである」

と主張した。

しかし、裁判所は、

「本願明細書において,引用例1発明との相違点1にかかる特定事項である5つの配合物質を採用することにより不安定な物質であるフルダラの錠剤の設計に当たっての欠点が克服できた旨の記載を見出すことはできない。また,本願明細書の段落【0012】の記載も,5つの配合物質について好ましい配合量を示しているが,その配合量がいかなる意味で好ましく,どのような意義を有するものであるかについては何らの記載がない。本願明細書において,唯一5つの配合物質の配合量を示す実施例である段落【0019】の記載も,上記2(1)イ摘記のとおり,一例としての数値を挙げるのみでありこれによる効果の記載もない。そうすると,相違点1に係る上記5種の配合物質を同時に含むフルダラの錠剤配合物が,そのすべてを規定量含むことで貯蔵安定性に優れるという顕著な作用効果を奏するものであることも,本願明細書には何ら記載されていないものであるから,かかる効果は引用例3~5を参酌しても予測し得るものではないとの当事者参加人の主張も本願明細書に基づくものとはいえない。」

と判断した。

また当事者参加人は、

「相違点1に係る5種の配合物質のうち1種でも欠ければフルダラの十分な安定性が得られないことは,~上申書(甲8)記載の実験結果から明らかである」

と主張した。

しかし、裁判所は、

「その構成及び作用効果に関する主張は本願明細書の記載に基づくものではないことにつき既に検討したとおりであるから,上記上申書(甲8)を参酌する根拠を欠くものである。当事者参加人の上記主張は採用することができない。」

と判断した。

請求棄却。

【コメント】

引用例発明との相違点に係る上記5種の配合物質を含むことにより本願発明が安定性に優れた効果を奏する点について、本願明細書には全く記載されていなかった。従って、当事者参加人の効果の主張及び上申書記載の実験結果も本願明細書に基づくものとはいえず、参酌する根拠を欠くとされてしまった。

この出願、米国及び欧州では上記5種の配合物質について数値限定することなく特許になっているところが驚きである(US7,148,207B2; EP1455760B1)。

参考:

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