Apr 26, 2010

2010.04.22 「湧永製薬 v. 大日本住友」 ライセンス契約の解除に伴う訴訟

湧永製薬と大日本住友製薬との間で争っていたニューキノロン化合物のライセンス契約の解除に伴う訴訟について、湧永製薬が最高裁に上告していましたが、2010年4月22日付けで上告棄却の決定があったとのことです。これにより、大阪高等裁判所の判決(大日本住友製薬勝訴)が確定しました。

参考:


Apr 16, 2010

2010.04.15 「フロモックス(Flomox): 大阪地裁、塩野義の請求棄却」

「フロモックス®(Flomox®)」(一般名:セフカペンピボキシル塩酸塩水和物(Cefcapene Pivoxil Hydrochloride Hydrate))の後発品販売を開始した沢井製薬と塩野義との間で争われている特許侵害訴訟で、大阪地裁は、塩野義の請求を棄却しました。塩野義が保有する「フロモックス®」の結晶特許(特許番号:2960790号)の存続期間満了日は2011年3月25日。

沢井製薬プレスリリース:


過去関連記事:


Apr 12, 2010

2010.01.28 「ベーリンガー インゲルハイム v. 特許庁長官」 知財高裁平成21年(行ケ)10033

医薬用途発明のサポート要件(特36条6項1号)とは?: 知財高裁平成21年(行ケ)10033

【背景】

「性的障害の治療におけるフリバンセリンの使用」に関する出願(特願2003-537639; 特表2005-506370)の拒絶審決取消訴訟。審決は、特許明細書には、フリバンセリン類の性欲障害治療用薬剤としての「有用性を裏付ける薬理データ又はそれと同視すべき程度」の記載がされていないことのみを理由として特36条6項1号(サポート要件)を満たしていないとした。

請求の範囲(本願発明):
場合により薬理学的に許容可能な酸付加塩形態にあってもよいフリバンセリンの,性欲障害治療用薬剤を製造するための使用。

【要旨】

裁判所は、

「法36条6項1号は,前記のとおり,「特許請求の範囲」と「発明の詳細な説明」とを対比して,「特許請求の範囲」の記載が「発明の詳細な説明」に記載された技術的事項の範囲を超えるような広範な範囲にまで独占権を付与することを防止する趣旨で設けられた規定である。そうすると,「発明の詳細な説明」の記載内容に関する解釈の手法は,同規定の趣旨に照らして,「特許請求の範囲」が「発明の詳細な説明」に記載された技術的事項の範囲のものであるか否かを判断するのに,必要かつ合目的的な解釈手法によるべきであって,特段の事情のない限りは,「発明の詳細な説明」において実施例等で記載・開示された技術的事項を形式的に理解することで足りるというべきである。」

との一般原則を判示した上で、本件については、

「審決は,発明の詳細な説明の記載によって理解される技術的事項の範囲を,特許請求の範囲との対比において,検討したのではなく,「薬理データ又はそれと同視すべき程度の記載」があるか否かのみを検討して,そのような記載がないことを理由として,法36条6項1号の要件充足性がないとしたものであって,本願の特許請求の範囲の記載が,どのような理由により,発明の詳細な説明で記載された技術的事項の範囲を超えているかの具体的な検討をすることなく,同条6項1号所定の要件を満たさないとした点において,理由不備の違法があるというべきである。また,本件においては,「特許請求の範囲」が特異な形式で記載され,法36条6項1号の要件を充足しないと解さない限り,産業の発展を阻害するおそれが生じるなど特段の事情は存在しない。

~なるほど,本願明細書の発明の詳細な説明においては,「フリバンセリンが,性欲強化特性を有する」等の技術的事項が確かであること等の論証過程に関する具体的な記載はされていない。
しかし,発明の詳細な説明に記載された技術的事項が確かであること等の論証過程に解する具体的な記載を欠くとの点については,専ら,法36条4項1号の趣旨に照らして,その要件の充足を判断すれば足りるのであって,法36条6項1号所定の要件の充足の有無の前提として判断すべきでないことは,前記説示のとおりである(なお,発明の詳細な説明に記載された技術的事項が確かであるか否か等に関する具体的な論証過程が開示されていない場合において,法36条4項1号所定の要件を充足しているか否かの判断をするに際しても,たとえ具体的な記載がなくとも,出願時において,当業者が,発明の解決課題,解決手段等技術的意義を理解し,発明を実施できるか否かにつき,一切の事情を総合考慮して,結論を導くべき筋合いである。)。~審決には,本願に係る特許請求の範囲の記載は,法36条6項1号の要件を満たしていないとした点に,理由不備の違法がある。」

と判断した。

審決を取り消す。

【コメント】

実施可能要件とは何か、サポート要件とは何か、そもそもの法の趣旨とその判断手法を確認した判決である。
裁判所は当たり前の判断をしたのであって、実施可能要件とサポート要件の判断手法を混同した特許庁は、審査基準を再度確認すべきだろう。たとえ、実施可能要件を満たさないことによって結論が同じ拒絶になるとしても、実施可能要件とサポート要件はそもそも異なるものであり、それぞれの法律の趣旨に従ってしっかり記載要件を判断していただきたい。

特許・実用新案審査基準 第VII部第3章 医薬発明には、特36条6項1号違反となる例として、以下の場合を挙げているが、本判決によれば事例(1)はまさに判断手法としては適切でないことになるだろう。
(1) 請求項においては成分Aを有効成分として含有する制吐剤が特許請求されているが、発明の詳細な説明には、成分Aが制吐作用を有することを裏付ける薬理試験方法、薬理データ等についての記載がなく、しかも、成分Aが制吐剤として有効であることが出願時の技術常識からも推認できない場合(第I部第1章2.2.1.1例9参照)、
(2) 請求項においては、所望の性質により定義された化合物を有効成分とする特定用途の治療剤として、包括的に特許請求されているが、発明の詳細な説明では、請求項に含まれるごくわずかな具体的な化合物についてのみ特定用途の治療剤としての有用性が確認されているにすぎず、これを超えて請求項に包含される化合物一般について、その治療剤としての有用性を出願時の技術常識からみて当業者が推認できない場合(第Ⅰ部第1章 2.2.1.1例7参照)。
(参考:東京高判平15.12.26(平成15(行ケ)104)、知財高判平19.3.1(平成17(行ケ)10818))

ここで上記参考として挙げられているうちのひとつである東京高判平15.12.26(平成15(行ケ)104)は、上記事例(2)の参考であり、事例(1)の参考には当たらない。もう一方の参考として挙げられている知財高判平19.3.1(平成17(行ケ)10818)は、上記事例(1)の参考に当たるものであり、特許請求の範囲の記載が発明の詳細な説明の裏付け(つまり有用性を示す薬理データ)を欠いているとしてサポート要件違反と判断した判決であるが、サポート要件を実施可能要件の"裏返し"として混同した判断手法を採用したものである。


参考:
  • 医薬用途発明の記載要件として明細書に根拠データは必要か?...こちら
  • Wikipedia: フリバンセリン (Flibanserin)


Apr 4, 2010

2010.01.27 「三笠製薬 v. 久光製薬」 知財高裁平成21年(行ケ)10209

貼り薬の意匠: 知財高裁平成21年(行ケ)10209

【背景】

意匠に係る物品を「貼り薬」とする原告(久光)の意匠登録第1322072号について、原告(三笠)が無効審判請求をしたところ請求不成立の審決をしたことから、原告がその取消しを求めた事案。原告は、引用意匠(原告が意匠権者である意匠登録第1189179号)との類比判断の誤り(取消事由1)及び創作容易性判断の誤り(取消事由2)を主張した。

本件意匠登録第1322072号:




引用意匠(意匠登録第1189179号):


【要旨】

1. 取消事由1(類比判断の誤り)の有無について

裁判所は、

「本件登録意匠は,上記のような2色の色分けを採用することにより,上記背割線の形状を際立たせるとともに,機能的にも中央分離帯部と左右の剥離シート部の両部分を明瞭に見分けることを可能とするものであるのに対し,引用意匠の剥離シートは透明であるため,透明シートの切断線の視認性は相対的に低いものとなっているから,本件登録意匠における上記差異点は,全体として背割線を含む形状における共通性を凌駕する影響を美感に与えるものである。
そうすると,本件登録意匠と引用意匠は,上記共通点を考慮に入れたとしても,全体としては両意匠に係る物品「貼り薬」の需要者である使用者に与える印象が大きく異なるというべきであるから,本件登録意匠と引用意匠が類似するということはできない。」

と判断した。

2. 取消事由2(創作容易性判断の誤り)の有無について

裁判所は、

「左右の剥離シートの中央分離帯部に接する上下全長に帯状部を設け,その帯状部を中央分離帯部よりも明色とした態様が本件登録意匠の出願前に公然知られていたことを認めるに足りる証拠はない。
そして,左右の剥離シートの中央分離帯部に接する上下全長に帯状部を設けることや,その配色をどのように施すかについては創意工夫を要するものというべきであるから,本件登録意匠は,公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に創作することができたものとは認められない。」

と判断したが、これに対し原告は、

「医療用の物品に係る意匠の創作をする当業者(その意匠の属する分野における通常の知識を有する者)にとっては,引用意匠に日本国内に公然知られた色彩を結合して,容易に本件登録意匠の創作をすることができた」

と主張した。

しかし、裁判所は、

「本件登録意匠は単に色彩の結合(配色)のみで構成されるものでないことは前記2に説示したとおりであるから,原告の上記主張は採用することができない。」
と判断した。

請求棄却。

【コメント】

物品名を「貼り薬」で意匠公報テキスト検索してみると、いろいろな剥離シートの背割線の形状のものを見ることができる。物品名を「貼り薬」で意匠公知資料テキスト検索してみると、三笠製薬のスミルテープ(公知資料番号HJ2002389200)がヒット。一方、参考までに、久光の貼付薬ラインナップのなかに下記のものがある。