Nov 29, 2011

アリセプト後発品 薬価基準追補初収載

2011年11月の後発医薬品薬価追補収載で初収載となったアルツハイマー型認知症治療薬「アリセプト」(一般名: 塩酸ドネペジル、先発会社: エーザイ)の後発品は30社101品目でした。

先発品の【効能・効果】が「アルツハイマー型認知症における認知症症状の進行抑制」であるのに対して、いずれの後発品も【効能・効果】は「軽度及び中等度のアルツハイマー型認知症における認知症症状の進行抑制」となっており、「高度のアルツハイマー型認知症」は除外されているようです。後発品メーカー(沢井製薬・シオノケミカル・大正薬品工業・大洋薬品工業・東和薬品・日医工・日本薬品工業・陽進堂)とエーザイとで繰り広げられた追加適応(効能・効果)に関する存続期間延長登録の有効性の争いは下記を参照。

2011.02.22 「沢井製薬等の後発品メーカー8社 v. エーザイ」 知財高裁平成21年(行ケ)10423/10424/10425/10426/10427/10428/10429

後発品申請会社は以下の通り。

Nov 28, 2011

第7回 特許権の存続期間の延長制度検討ワーキング・グループ議事録

2011年10月24日に開催された、産業構造審議会知的財産政策部会特許制度小委員会 第7回特許権の存続期間の延長制度検討ワーキング・グループの議事録が公開されました。現在パブコメ募集中の審査基準案に最終合意した各委員のコメントを見ることができます。

Nov 4, 2011

「特許権の存続期間の延長」の審査基準改訂案に対する意見募集

「特許権の存続期間の延長」の審査基準改訂案が作成され、意見募集が行われています。意見提出期限は2011年12月1日となっています。下記のような問題点があるのではないかと思いますが。

  • 最高裁判決の限定的な判断との整合は取るにしても、他の知財高裁で示されている判示事項に基づく考え方(事務局案1)との整合を取らなくてもよいのか。その結果、法律上定められている特許権者の権利を、審査基準で限定的に狭めていることになるのではないか。




  • 「医薬発明」の審査基準によれば、「医薬用途」とは、(i)特定の疾病への適用、又は、(ii)投与時間・投与手順・投与量・投与部位等の用法又は用量(以下、「用法又は用量」という。)が特定された、特定の疾病への適用、を意味する。つまり、上記(ii)のような用法・用量で特定された、特定の疾病への適用も用途である。審査基準上で医薬用途発明として認めている。一方で、改定案(2.4 願書の記載事項)では、用途とは、「原則として、医薬品の場合は効能・効果」としている。医薬用途発明の審査基準で定めた「用途(用法用量による特定も含む)」の概念と、特許権延長登録出願の審査基準改定案で意味している「用途」の概念はどのように整合させられるだろうか。具体的には、用法又は用量についての追加承認時の取り扱い、小児適用追加承認の取り扱い等。



  • 審査基準改定案の3.1.1(2)の例5を説明する基本的な考え方が明確でない。なぜ例5の請求項2(注射剤限定)が錠剤の先行処分によって結果的に実施できるようになっているといえるのか、理解し難い。改定案によれば「先行処分によって実施できるようになっているか否かの判断に当たっては、通常、複数の請求項のうちの発明特定事項が最も少ない請求項から検討する」としているが、最高裁判決で示された「先行医薬品が延長登録出願に係る特許権のいずれの請求項に係る特許発明の技術的範囲にも属しないときは,先行処分がされていることを根拠として,当該特許権の特許発明の実施に後行処分を受けることが必要であったとは認められないということはできない」との判示事項と全く相反しているのではないか。下記知財高裁判決でも、発明特定事項が最も少ない請求項1~11は実施できるようになっていたという場合であっても、請求項12では実施できるようになっていたとは認められず延長登録が認められている。



  • 有効成分を複数含有する合剤、または、他の有効成分との併用について追加承認を得た単剤について、単一の有効成分「物質A」のみをクレームした物質特許は延長登録が認められるのか。具体的には、本件処分の対象となった医薬品の「発明特定事項に該当する事項」は「物質A」となってしまうのか、それとも、クレームには記載されていない本件処分の併用相手である有効成分も「発明特定事項に該当する事項」として捉えるという取り扱いをするのか?



  • 物の製法特許についての取り扱いについての記載が、改定案では削除されているが、具体的にどのように取り扱うのか明記すべきでは。


  • 2012年4月1日に予定されている法改正が施行されると通常実施権の登録は不要となるが、特許権者と処分を受けた通常実施権者との関係を確認するために、特許庁はどのような手続きを延長登録出願人に求めるのか。


  • これまで認められてきた延長登録において、改定案に基づけば無効理由を有する登録が出てくるのかわからないが、いずれにしてもこの改定案はretroactiveに適用されるのか。


Nov 1, 2011

2011.05.23 「メルク v. 特許庁長官」 知財高裁平成22年(行ケ)10073

ヒトパピローマウイルス遺伝子の進歩性: 知財高裁平成22年(行ケ)10073

【背景】
「ヒトパピローマウイルス18型をコードするDNA」に関する出願(特願平8-528535; 特表平11-502704; WO96/29413)の拒絶審決(不服2006-28563)取消訴訟。

請求項7:
下記の配列番号1で表されるヌクレオチド配列からなる単離精製されたヒトパピローマウイルス18型のL1DNA分子または,下記の配列番号3で表されるヌクレオチド配列からなる単離精製されたヒトパピローマウイルス18型のL2DNA分子。
(配列番号1及び3は省略)
審決の要点は、本願発明のうち,配列番号3で表されるL2DNA分子の発明(本願発明7-2)は引用発明(J.Mol.Biol. (1987), Vil.193, p599-608)に基づいて当業者が容易に発明することができたから特29条2項により特許を受けることができない、というものだった。

審決が認定した本願発明7-2と引用発明との一致点及び相違点は次のとおり。
  • 一致点
    特定のヌクレオチド配列を含むヒトパピローマウイルス18型のDNA分子である点。

  • 相違点(1)
    引用発明においては、配列番号3で表されるヌクレオチド配列とは1389bpのうち39bpが相違している(すなわち97%が同一である)点。

  • 相違点(2)
    該DNA分子が、本願発明7-2においては単離精製されたL2DNA分子であるのに対して、引用発明においては全長ゲノムDNA分子の一部であり、実際にL2DNA分子を単離精製していない点。


【要旨】
取消事由1(相違点(1)についての認定の誤り)について

原告は、塩基対の相違に伴い14個のアミノ酸が相違し、その中で4個の相違がプロリンに関するものであり、プロリンがアミノ酸配列中に入ることによりねじれやターンに影響を及ぼしその結果立体構造が大きく変化する点を主張した。

しかし、裁判所は、立体構造が必ず大きく変化することが当業者の技術常識と認めることができず、単に影響を与える可能性が高いという程度にすぎないというべきであるとした。また、

「仮に,プロリンがアミノ酸配列中に入ることによりねじれやターンに影響を及ぼしその結果立体構造が大きく変化するという原告の主張が正しいとしても,上記主張は本願発明7-2と引用発明がコードするタンパク質に関する主張にすぎないところ,本願発明7-2はあくまでもDNA分子そのものに関する発明であって,DNA分子がコードするタ
ンパク質は発明を特定するための事項には含まれない。このことは,たとえ本願発明の目的が,原告が主張するように,HPV18L1タンパク質とVLPを形成するという観点から,構造上機能的なHPV18L2の配列を得ることであったとしても,本願発明7-2はL2DNA分子という物の発明であるから,そのことは発明を特定するための事項には含まれないというべきである。
したがって,該DNA分子がコードするタンパク質と引用発明がコードするタンパク質が立体構造上の相違を示すか否かは,本来本願発明7-2の進歩性の判断に影響を与える事項ではないというべきである。
以上のとおり,相違点(1) の認定に誤りがあるとの原告の上記主張は採用することができない。」

と判断した。

取消事由2(容易想到性の判断の誤り)及び取消自由3(顕著な作用効果の看過)についても裁判所は原告の主張を採用せず。

請求棄却。

【コメント】

欧米では特許が成立している(EP 0817851B1; US 5,840,306)。そして両審査とも本件で問題となった文献が引用されている。三極で結論の違いが生じたのはなぜか。日本における審査が厳しいのか。本件は、日本における遺伝子関連発明の進歩性を検討する良い事例かもしれない。

GARDASIL®(ガーダシル®)水性懸濁筋注シリンジ・同水性懸濁筋注は、Merck & Co., Inc.が開発・製造したHPV 感染及びHPV 関連疾患の予防を目的としたHPV6、11、16 及び18 型のL1 たん白質のウイルス様粒子(virus-like particle:VLP)を含む酵母細胞由来の遺伝子組換え型4 価ワクチン。米国では2006年6月8日に承認され、日本では2011年7月にMSD(旧万有製薬)が製造販売承認を得た。