Sep 1, 2012

2012.03.29 「A v. 和光純薬」 東京地裁平成22年(ワ)2535

職務発明~「発明者が誰であるかは,知らない」: 東京地裁平成22年(ワ)2535

【背景】

被告(和光純薬)の従業員であった原告(A)が、在職中に職務発明として、「成分の分析方法」に関する発明(特許番号2965563)をし、当該発明について特許を受ける権利を被告に譲渡したとして、被告に対し、特許法35条(平成16年法律第79号による改正前のもの。)3項所定の相当の対価の支払を求めた職務発明補償金請求事件。

争点は、①本件各発明の発明者は原告か、②本件各発明により被告が受けるべき利益の額、③本件各発明がされるについて被告が貢献した程度、④相当対価額であった。

【要旨】

主文

被告は,原告に対し,150万4000円及びこれに対する平成22年2月2日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。(他略)

1. 争点①(本件各発明の発明者は原告か)について

被告は、

「本件各発明の発明者が誰であるかは,知らない。」

と主張した。

裁判所は、

「発明とは,自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいうところ(特許法2条1項),特許法35条3項に基づいて相当の対価の支払を請求し得る発明者とは,特許請求の範囲の記載に基づいて定められた技術的思想の特徴的部分の創作行為に現実に加担した者をいうものと解するのが相当である。」

と判示した上で、

「原告は,~本件各発明の課題につき,~という解決手段を着想するとともに,~という実験によってその効果を確認したのであるから,本件特許に係る特許請求の範囲に基づいて定められた技術的思想の特徴的部分の創作行為に現実に加担した者ということができ,原告が本件各発明の発明者であることは明らかである。

Bは,~管理職を務めていた者にすぎず,本件各発明の解決手段を着想したものとも,実験によってその効果を確認したものとも認めることができないから,本件特許に係る特許請求の範囲に基づいて定められた技術的思想の特徴的部分の創作行為に現実に加担した者ということができず,Bが本件各発明の発明者であるということができないことは明らかである。」

と判断した。

この点につき、被告は、

「Bが分析の分野に詳しく,原告の上司を務めたこともある先輩であったことや,本件各発明にはBの専門である有機合成の技術が多く用いられていること,被告においては管理職と研究員が日常的に接触していること等から,Bが原告から相談を受けて本件各発明を着想し,原告に対して本件各発明に関する具体的な提案や実験材料の提供をした可能性が高く,Bが本件各発明の発明者であった可能性がある」

と主張した。

しかしながら、裁判所は、

「Bは本件各発明やその発明に至る経緯を覚えていない旨陳述していること,被告においては,研究員による職務発明の大半について,当該研究員とその上司である管理者や研究所長の共同発明として特許出願されてきたことも認めることができ,これらの事実に照らして考えると,前記認定の事実から,Bが本件各発明を着想したとも,本件各発明に関する具体的な提案や実験材料の提案をしたとも推認することはできず,他にこの事実を認めるに足りる証拠はない。したがって,Bが本件各発明の発明者であるという被告の主張は,これを採用することができない。~以上によれば,本件各発明の発明者は,原告だけであると認めるのが相当である。」

と判断した。

2. 争点②③④について

裁判所は、本件各発明による独占の利益の額は1510万円であり、本件各発明がされるについて被告が貢献した程度は90%と認め、従って、本件各発明の相当対価額は次の計算式のとおり、本件各発明により被告が受けるべき利益の額1510万円に、本件各発明がされるについて原告が貢献した程度である10%を乗じた151万円となり、被告の未払額は、既払の報奨金6000円を控除した150万4000円となると判断した。

【コメント】

管理職を務めていた者にすぎず、技術的思想の特徴的部分の創作行為に現実に加担した者ということができない者は、発明者ではない。

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