Oct 20, 2012

2012.05.07 「沢井製薬 v. ワーナー・ランバート」知財高裁平成23年(行ケ)10091

アトルバスタチンの安定化製剤特許: 知財高裁平成23年(行ケ)10091

【背景】
ワーナー・ランバート(被告)が保有する「安定な経口用のCI-981製剤およびその製法」に関する特許(3254219)に対して、沢井製薬(原告)がした無効審判請求を不成立とした審決(無効2009-800236)の取消訴訟。

請求項1:
混合物中に,活性成分として,〔R-(R*,R*)〕-2-(4-フルオロフェニル)-β,δ-ジヒドロキシ-5-(1-メチルエチル)-3-フェニル-4-〔(フェニルアミノ)カルボニル)-1H-ピロール-1-ヘプタン酸半-カルシウム塩および,少なくとも1種の医薬的に許容し得る塩基性の安定化金属塩添加剤を含有する改善された安定性によって特徴づけられる高コレステロール血症または高脂質血症の経口治療用の医薬組成物。
(以下、「〔R-(R*,R*)〕-2-(4-フルオロフェニル)-β,δ-ジヒドロキシ-5-(1-メチルエチル)-3-フェニル-4-〔(フェニルアミノ)カルボニル)-1H-ピロール-1-ヘプタン酸」を「CI-981」という。)

審判請求の中で、原告は、無効理由のひとつとして、「本件発明は特開平2-6406号公報(甲1),特開平3-58967号公報(甲2)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができた」と主張したが、審決は、(ア)甲1記載の発明におけるプラバスタチンに代えて、甲2記載のCI-981半カルシウム塩を使用することを当業者が容易に想到し得たとすることはできない、(イ)甲2を主引用例としても、本件発明1の進歩性は否定できない、と判断した。なお、審決は、本件発明1と甲2発明との対比をしていない。

【要旨】

主文
特許庁が無効2009-800236号事件について平成23年2月8日にした審決を取り消す。(他略)

裁判所は、下記のとおり判断し、原告主張の取消事由2(甲2に記載された技術内容の認定誤りによる容易想到性判断の誤り)は理由があるとした。
「~甲2の特許請求の範囲の請求項6には,本件発明1のCI-981半カルシウム塩に相当する化合物~が記載されている。 ~そしてCI-981半カルシウム塩に該当する化合物が「最も好ましい態様」であることが記載されている。
そうすると,審決が判断の前提としたように,CI-981半カルシウム塩がラクトン体に比べて有利な化合物であり,そのことは本件発明において見出された,と評価することはできないのであり,本件発明1は,単に「最も好ましい態様」としてCI-981半カルシウム塩を安定化するものと認めるべきである。 したがって,甲1発明との相違点判断の前提として審決がした開環ヒドロキシカルボン酸の形態におけるCI-981半カルシウム塩についての認定は,本件発明1においても,また甲2に記載された技術的事項においても,硬直にすぎるということができる。この形態において本件発明1と甲2に記載された技術的事項は実質的に相違するものではなく,この技術的事項を,甲1発明との相違点に関する本件発明1の構成を適用することの可否について前提とした審決の認定は誤りであって,甲1発明との相違点の容易想到性判断の前提において,結論に影響する認定の誤りがあるというべきである。」
【コメント】

審決はなぜ、甲2にCI-981が記載されていることを認定しておきながら、しっかり対比しなかったのか。
2つの引用例を組み合わせる論理付けを検討する際に、発明の特徴部にあたる部分が記載されている引用発明と、発明の基本構成にあたる部分が記載されている他方の引用発明の、どちらを主引用例とし、どちらを副引用例として互いを組み合わせるか、その組み合わせ手法が論理付けに与える影響に注意する必要がある。

CI-981とはAtorvastatinのこと。米国ワーナー・ランバート社(現:米国ファイザー社)により新規に合成されたHMG-CoA還元酵素阻害作用を有する化合物。アトルバスタチンカルシウム水和物(Atorvastatin Calcium Hydrate)の製剤であるリピトール®錠として、日本では山之内製薬(現:アステラス製薬)とワーナー・ランバート(現:ファイザー)が共同開発し、2000年に承認された。高コレステロール血症、家族性高コレステロール血症に対し優れた有用性が認められている。製剤中の添加物として、本件特許発明の特徴である「塩基性の安定化金属塩添加剤」に相当する沈降炭酸カルシウムが含まれている。

本件無効審判請求人である沢井製薬は2011年7月にリピトールの後発品としての製造販売承認を取得し同年11月から販売している。

参考:

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