Dec 29, 2012

2012年、医薬系"特許的"な判決を振り返る。

プロダクト・バイ・プロセスで記載された特許発明の技術的範囲と発明の要旨認定との関係
2012年、最もホットだった"特許的"ニュースのひとつは、大合議判決が出たということもあり、プロダクト・バイ・プロセスで記載された特許発明の技術的範囲と発明の要旨認定との関係をどう考えればよいのかという問題だったのではないでしょうか?

侵害事件の大合議判決(2012.01.27 「テバ v. 協和発酵キリン」 知財高裁平成22年(ネ)10043)は、プロダクト・バイ・プロセスで記載された特許発明の技術的範囲は、「特許請求の範囲に記載された製造方法により製造される物」に限定されると解釈・確定するいう原則論を示した。ただし例外として、「物の特定を直接的にその構造又は特性によることが出願時において不可能又は困難であるとの事情が存在する場合(真正プロダクト・バイ・プロセス)」の特許発明の技術的範囲は、「特許請求の範囲に記載された製造方法に限定されることなく,同方法により製造される物と同一の物」に及ぶと解釈・確定すると判示した。裁判所は、上記のように原則と例外といった理論を構築し、無効の抗弁のときの発明の要旨認定も同様に考えると判示した。

一方、同日付の無効審判取消訴訟判決(2012.01.27 「協和発酵キリン v. テバ」 知財高裁平成21年(行ケ)10284)は、「特許権の設定登録後になされる手続である特許無効審判請求において,特許庁がその審理の対象として把握すべき請求項の具体的内容(発明の要旨)は,特許公報に記載された請求項(特許請求の範囲)によりなされるべきものであり,・・・特に,特許公報の公示機能を考慮すると,無効審判事由の有無の前提となる発明の要旨の認定においては,特許請求の範囲の記載の全てが基準になるのが原則であるというべきである。」との前提条件を置いた上で、プロダクト・バイ・プロセスで記載された発明の要旨認定は「特許請求の範囲に記載された製造方法により製造される物」に限定されると解釈・確定されるのが原則であり、ただし例外として、「物の特定を直接的にその構造又は特性によることが出願時において不可能又は困難であるとの事情が存在する場合(真正プロダクト・バイ・プロセス)」の発明の要旨認定は、「特許請求の範囲に記載された製造方法に限定されることなく,同方法により製造される物と同一の物」に及ぶと解釈・確定すると判示した。

注目すべきは、同無効審判取消訴訟判決で裁判所は、「特許公報公示機能」や「特許権の設定登録後になされる手続きである特許無効審判において」といった前提条件を置いて判示しているところである。従って、上記侵害事件判決も無効審判取消訴訟判決も、いずれも特許権の設定登録についてのプロダクト・バイ・プロセス・クレームの発明の要旨認定をどうすべきかについては何も言及していないと解釈される。


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Dec 17, 2012

2012.12.14 「AstraZeneca v. Aurobindo」 CAFC Docket No.2010-1460

クレストールANDA訴訟CAFC判決、アストラゼネカ・塩野義が勝訴: CAFC Docket No.2010-1460

【背景】

The drug product here at issue is the “statin” having the brand name Crestor®. The active ingredient of Crestor® is rosuvastatin. In suit is United States Reissue Patent No. 37,314 (“the ’314 patent”), which is a reissue of United States Patent No.5,260,440 (“the ’440 patent”). The patentee is “Shionogi” and the exclusive licensee is “Astrazeneca” (collectively “Plaintiffs”). Several generic producers (Defendants) initiated a challenge to the ’314 patent by filing an Abbreviated New Drug Application (ANDA) accompanied by a Paragraph IV certification. The Defendants argued that the ’314 patent is invalid on the ground of obviousness and improper reissue, and that the patent is unenforceable for inequitable conduct in the USPTO. The district court ruled that the ’314 patent is valid, enforceable, and infringed. All of the Defendants appeal the rulings of validity and enforceability.

【要旨】

I VALIDITY
The district court concluded that the Defendants did not demonstrate the required motivation for selecting Sandoz Compound 1b as a lead compound, or for making this specific sulfonyl change in the Compound 1b molecule. See Eli Lilly & Co. v. Zenith Goldline Pharms.,471 F.3d 1369, 1379 (Fed. Cir. 2006) (considering whether a prior art compound would have been chosen as a lead compound). We agree that “obvious to try” was negated by the general skepticism concerning pyrimidine-based statins, the fact that other pharmaceutical companies had abandoned this general structure, and the evidence that the prior art taught a preference not for hydrophilic substituents but for lipophilic substituents at the C2 position. See Takeda Chem.
Indus., Ltd. v. Alphapharm Pty., 492 F.3d 1350, 1357 (Fed.Cir. 2007) (“[I]n cases involving new chemical compounds, it remains necessary to identify some reason that would have led a chemist to modify a known compound in a particular manner to establish prima facie obviousness of a new claimed compound.”). The district court correctly held that patent invalidity on the ground of obviousness had not been shown for the compound rosuvastatin. That ruling is affirmed.
II INEQUITABLE CONDUCT
1. Materiality
Although the references were held by the PTO not to negate patentability of rosuvastatin, as affirmed ante, we do not disturb the district court’s finding of materiality.
2. Intent
The district court found that the Defendants did not establish that either Ms. Kitamura or Mr. Shibata withheld the Sandoz and Bayer references with deceptive intent. Although deceptive intent may be inferred from circumstantial evidence, the inference “must not only be based on sufficient evidence and be reasonable in light of that evidence, but it must also be the single most reasonable inference able to be drawn from the evidence to meet the clear and convincing standard.” Star Scientific, 537 F.3d at 1366; see also Therasense, 649 F.3d at 1290. We agree that clear and convincing evidence did not show that Ms. Kitamura and Mr. Shibata made a deliberate decision to withhold references from the PTO. The court in Therasense sought to impart objectivity to the law of inequitable conduct by requiring that “the accused infringer must prove that the patentee acted with the specific intent to deceive the PTO,” 649 F.3d at 1290. Recognizing the complexity of patent prosecution, negligence—even gross negligence—is insufficient to establish deceptive intent. We affirm that unenforceability based on inequitable conduct was not established.
III REISSUE
The Defendants also argued that the ’314 patent was improperly reissued, arguing that the statutory reissue requirement of error without deceptive intent had not been met. The Defendants argued that (1) there was no error, and (2) there was deceptive intent. In view of the circumstances necessitating the reissue procedure in order to bring the uncited references before the examiner, it is not clear how the limitation of the claims to the compound of commercial interest suggests that the prior flawed procedures were based on deceptive intent. In sum, the district court correctly found that reissue was available, and that the scope of the reissue was in accordance with law.
IV INFRINGEMENT
The judgment of infringement against all of the Defendants is affirmed.
AFFIRMED

【コメント】

Deceptive intentがあったのかなかったのかの判断がどっちに転んでもおかしくないくらいの非常にスレスレの事案だったかもしれない。Mayer判事は、不適法なreissueのためにreissue特許は無効であり従って侵害はないとの反対意見を述べている。

参考:

Dec 9, 2012

2012.06.26 「フェリング v. 特許庁長官」 知財高裁平成23年(行ケ)10198

ミニリンメルト®OD錠に関する出願の進歩性: 知財高裁平成23年(行ケ)10198

【背景】

「デスモプレシンの口腔内分散性医薬製剤」に関する特許出願(特願2004-502972, 特表2006-502972, WO03/94886)の拒絶審決(不服2008-30442号)取消訴訟。

請求項1:
デスモプレシン酢酸塩とゼラチンとマンニトールとを含み,口腔内で10秒以内に崩壊し,口腔粘膜からデスモプレシン酢酸塩を吸収するための口腔内分散性医薬製剤。
審決は、本願発明は、WO00/61117号(「引用例1」、引用例1に記載された発明を「引用発明」という)、特開平5-148154号公報(「引用例2」)に記載された事項及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから特許法29条2項により特許を受けることができない、とするものであった。
審決は、上記結論を導くに当たり、引用発明、同発明と本願発明との一致点及び相違点を次のとおり認定した。

引用発明:
「ペプチド活性成分と魚類ゼラチンとマンニトールとを含み,口腔内で10秒以内に崩壊する,経口投与のために設計され,口腔内で活性成分をすばやく放出する,急速分散型投与形態の薬理学的組成物。」
一致点:
「ペプチド活性成分とゼラチンとマンニトールとを含み,口腔内で10秒以内に崩壊する,口腔内分散性医薬製剤」
相違点:
(ア) 相違点1
本願発明では,ペプチド活性成分が,「デスモプレシン酢酸塩」と特定されているのに対して,引用発明ではそのような特定がされていない点。

(イ) 相違点2
本願発明では,口腔内分散性医薬製剤が,「口腔粘膜からデスモプレシン酢酸塩を吸収するための」ものであるのに対して,引用発明ではそのような特定がされていない点。
【要旨】

主文
原告の請求を棄却する。(他略)
1 取消事由1(相違点1に係る容易想到性判断の誤り)について
「引用例2の記載によれば,生理活性ポリペプチド含有の経口投与用または口腔内投与用製剤に使用できるポリペプチドは,比較的低分子量のものであればよく,そのようなものの一つとしてデスモプレシンが周知であったことが認められる。そうすると,ペプチドを活性成分とし,口腔内で分散させる,すなわち口腔内投与される引用発明の製剤において,活性成分のペプチドとしてデスモプレシンを使用することは容易であったといえる。
したがって,相違点1に係る構成は,引用発明に引用例2に記載された事項及び周知技術を適用することにより,容易に想到できたといえる。
~引用例1には,活性成分としてペプチドを用いることが記載されているところ,引用例2~によれば,引用例2に記載されるようなゼラチンを基剤とする口腔内投与用製剤には,生理的に活性なポリペプチドのうち比較的低分子量のものであれば広く使用でき,デスモプレシンもそのようなものとして周知であったことが理解できる。そうすると,引用例2の発明の課題が,引用発明の課題と共通でないとしても,口腔内投与される引用発明の製剤において,活性成分のペプチドとして,引用例2に記載されたデスモプレシンを使用することに想到することは容易であったと認められ,上記原告の主張は採用することはできない。」
2 取消事由2(相違点2に係る容易想到性判断の誤り)について
「本願発明に係る特許請求の範囲の記載のうち「口腔粘膜からデスモプレシン酢酸塩を吸収するための」との記載の意義について,本願明細書には,「本発明の医薬製剤は活性成分を口腔に供給するのに適している。活性成分は舌下粘膜を通して及び/又は(例えば頬側及び/又は歯肉粘膜を通して)他の経路で口腔から及び/又は全身分配用として胃腸管から吸収させることができる。」(甲1段落【0013】)と記載されており,活性成分の吸収部位を口腔粘膜に限定していないものと理解することができる(この点に関し,原告自身,本願発明に係る特許請求の範囲の「口腔粘膜からデスモプレシン酢酸塩を吸収するための」という文言は,デスモプレシン酢酸塩が口腔粘膜から吸収されるものであれば足り,吸収部位を口腔粘膜に限定するものではなく,他の部位からの吸収の可能性を排除するものではない旨主張している。)。他方,引用例1には,ペプチドを活性成分とする口腔内投与用速溶性製剤が記載されており,この製剤は,口腔中で活性成分を放出するためのものであるから(甲4段落【0017】,【0031】),それが口腔内に投与されて崩壊すれば,活性成分が唾液とともに口腔内に広がり,活性成分であるペプチドの一部は,当然本願発明と同様に口腔粘膜から吸収されるものと考えられる。
以上によれば,本願発明と引用発明の相違点2について,実質的な相違点とは認められないとした審決の判断に誤りはない。」
3 取消事由3(本願発明の顕著な作用効果の看過)について
「原告は,上記実施例,比較例の薬物動態分析の結果から,本願発明に係る製剤のバイオアベイラビリティの向上は,顕著な作用効果であると主張する。この点,上記本願明細書の記載によれば,実施例7と比較例4(なお,比較例4で投与される,比較例2,3は,慣用錠剤処方例であり,比較例4において「投与」とされているのは,口からの投与直後に嚥下するような一般的な経口投与であると認められる。)の薬物動態分析を比較すると,本願発明に係る製剤である実施例4ないし6の製剤を舌下投与した場合,従来の錠剤を経口投与した場合と比較して,バイオアベイラビリティが向上したことが一応認められる。しかし,実施例7が比較例4よりもバイオアベイラビリティに優れているのは,製剤の口腔内投与の中でも,特に,薬剤を分散し難くし,舌下小血管から直接吸収させる方法である舌下投与という投与法に起因する効果と考えるのが相当である上,本願発明に係る製剤と従来の舌下に長時間留めておく舌下剤との間でバイオアベイラビリティを比較した的確な資料はないから,本願発明において活性成分のポリペプチドとしてデスモプレシン酢酸塩を用いた口腔内急速分散性製剤としたことによる顕著な効果があるとまでは認めることができない。」
【コメント】

本願明細書には、従来の口からの投与直後に嚥下するような一般的な経口錠剤を経口投与した比較例に比べて本願発明が優れているデータは示されていた。しかし、進歩性で問題となった引用発明は口腔内崩壊錠であったため、本願発明に顕著な効果があると認められるには、従来の口腔内崩壊錠(舌下錠)と比べたデータを示す必要があった。

フェリング・ファーマ及び協和発酵キリンより販売されているミニリンメルト®OD錠の有効成分であるデスモプレシン酢酸塩水和物(Desmopressin Acetate Hydrate)は、フェリング社で開発されたアルギニンバソプレシン(AVP)の誘導体合成ペプチド。添加物にはゼラチン及びD-マンニトールが含有されていることから、本願はミニリンメルト®OD錠を保護する出願だったと考えられる。

本願に相当する欧米出願は既に特許として成立している(US7,560,429; EP1501534B1)。

参考:

Dec 5, 2012

2012.12.05 「ファイザー リピトール®錠 結晶特許 知財高裁 審決取消判決」

2012年12月5日、ファイザーのプレスリリースによれば、「リピトール®錠」(一般名:アトルバスタチンカルシウム水和物)の結晶形に関する特許の有効性を争っていた審決取消訴訟について、知財高裁は審決を取り消す判決を下した、とのことです。

参考: