スポンサーリンク

2013.11.27 「大長企画 v. 特許庁長官」 知財高裁平成25年(行ケ)10027

育毛剤の予測し得ない効果?: 知財高裁平成25年(行ケ)10027

【背景】

「皮膚用剤」に関する特許出願(特願2002-303878; 特開2004-182600)の拒絶審決(不服2009-14415)取消訴訟。争点は進歩性。

請求項1:

A.シムノールまたはシムノール硫酸エステル
B.大豆イソフラボンまたは大豆イソフラボン配糖体
C.クルクミン
のA,BおよびCの成分を含むことを特徴とする皮膚用剤。

審決が認定した引用発明の内容,本願発明と引用発明との一致点及び相違点は,以下のとおり。

引用発明の内容:

シムノールサルフェート(魚肝の有効成分)及びダイズイン(大豆の有効成分)を含む,生体活動改善用の組成物

一致点:

A.シムノール硫酸エステル,及びB.大豆イソフラボン配糖体を含む組成物

相違点1:

本願発明は「皮膚用剤」であるのに対し,引用発明は「生体活動改善用の組成物(美肌作用やアトピー性皮膚炎~などの皮膚疾患の改善作用含む)」である点

相違点2:

本願発明は,さらに成分C.としてクルクミンを含むのに対し,引用発明はクルクミンを含まない点

【要旨】

主 文

1 原告の請求を棄却する。(他略)

裁判所の判断

(1) 相違点2に係る構成の容易想到性の判断の誤り(取消事由1)について

引用例2における津液改善剤は引用例1における補血・活血作用を有する成分に相当すると解され,また,いずれも,2種以上を組み合わせて使用することもあり得る点で共通している。そして,引用例2には,津液改善剤の例として,カプサイシン,シナピンと共に「クルクミン」が挙げられている。

以上によれば,「クルクミン(ウコンエキス)」は,引用例1において,補血・活血作用を有する生薬として例示され,実施例6でも使用され,また,引用例2に津液改善剤の例として記載されていることに照らすならば,引用例1に接した当業者が,津液作用をより向上させるために,引用発明に係る組成物に,補血・活血作用を有する成分として「クルクミン(ウコンエキス)」を付加して,相違点2に係る構成に至ることは,容易であるといえる。

以上のとおり,当業者が本願発明のうち相違点2に係る構成に至るのは容易であり,この点に関する審決の判断に誤りはない。

(2) 本願発明の効果についての判断の誤り(取消事由2)について

本願明細書には,本願発明に係る皮膚用剤の効果に関し,美白,しみ,しわ~等の医薬としてすぐれた効果が得られ,また,抗癌剤による副作用,例えば,脱毛,内出血などに有効であるとの記載がある(段落【0036】)。また,本願明細書には,本願発明の実施例である実施例7の効果として,発毛促進作用のほか,美肌作用,アトピー性皮膚炎治療作用~等の効果が確認できたとの記載がある(段落【0035】)。

しかし,上記の効果の大部分は,引用例1における,津液作用を有する成分と補血・活血作用を有する成分とを含有した生体活動改善用の組成物の効果(段落【0010】【0034】)や,引用例2における,津液改善剤の効果(段落【0026】)と共通するものであり,上記生体活動改善用の組成物や津液改善剤の効果から予測し得る範囲内のものにすぎない。

したがって,本願発明が当業者が引用発明や引用例2から予測し得ない効果を有するとは認められない。

【コメント】

顕著な効果について、原告は、本願発明に係る3成分からなる皮膚用剤が2成分の場合より優れた効果を有していると主張したが、本願明細書にはその効果の違いに関する記載はなく、3成分としたことにより、2成分の場合と比べ、予測し得ない優れた効果を奏しているとは認められないとして、原告の主張は失当であると判断されている。

審判請求書に添付した書面も、効果が明確に記載されていないものも多く、効果の対比もなかった。

現在分割出願が存在している。

本件発明に関連すると思われる出願の判決事例:
2013.03.27 「大長企画 v. 特許庁長官」 知財高裁平成24年(行ケ)10284
こちらは拒絶審決が取り消され、差戻し審決で特許となっている。

2013.11.21 「大長企画 v. 特許庁長官」 知財高裁平成25年(行ケ)10114
こちらは進歩性なしと判断された。

関連製品: 髪精丸α

コメント

スポンサーリンク
タイトルとURLをコピーしました