Mar 29, 2014

2014.03.07 「レクサン v. 国」 東京地裁平成24年(行ウ)591

補正ミスに気付かず特許査定に。特許査定を取り消せるのか?: 東京地裁平成24年(行ウ)591

【背景】

「1-[(6,7-置換-アルコキシキノキサリニル)アミノカルボニル]-4-(ヘテロ)アリールピペラジン誘導体」に関する特願2007-542886(WO2006/054830; 特表2008-520653)について、出願人(原告)は、誤った内容を記載した手続補正書を提出したまま特許査定となったことに気付き、特許査定の取消しを求める旨の行政不服審査法に基づく異議申立てをしたが、特許庁長官は却下決定をした。これに対し、原告が下記請求を求めた事案である。

主位的請求:
①本件特許査定が無効であることの確認(行政事件訴訟法3条4項所定の抗告訴訟としての無効確認訴訟)
②本件却下決定の取消し(行訴法3条3項所定の裁決取消訴訟)
③特許庁審査官につき本件特許査定を取り消すことの義務付け(行訴法3条6項2号所定の申請型義務付け訴訟)

予備的請求:
①本件特許査定の取消し(行訴法3条2項所定の抗告訴訟としての取消訴訟)
②本件却下決定の取消し(上記主位的請求②と同じ)
③特許庁審査官につき本件特許査定を取り消すことの義務付け(上記主位的請求③と同じ)

本件手続補正書では、
「・・・R1はフッ素であり,R2は水素原子,C1-C3アルコキシ,C1-C3アルキルまたは塩素であり・・・」
との記載でクレームを補正すべきところを、担当弁理士が、上記下線部分を削除してしまい、
「・・・R1はフッ素であり,R2は塩素であり・・・」
の記載で手続補正書が提出され、そのまま特許査定となってしまった。

【要旨】

原告の予備的請求①及び②は容認。
主位的請求③及び予備的請求③はいずれも不適法であるとされ却下。
主位的請求①及び②はいずれも理由がないとされ棄却。

拒絶理由と補正書の内容が全くかみ合っておらず当該補正書が出願人の真意に基づき作成されたものとはおよそ考え難い場合であって、そのことが審査の経緯及び補正の内容等からみて審査官に明白であるため審査官において補正の正確な趣旨を理解して審査を行うことが困難であるような場合には、このような補正に係る発明につき適正に審査を行うことが困難であり、また、発明の適正な保護にも資さないのであるから、審査官は、特許出願人の手続的利益を確保し、自らの審査内容の適正と発明の適正な保護を確保するため、補正の趣旨・真意について特許出願人に対し確認すべき手続上の義務を負うものというべきである。

本件において、担当審査官は、本件特許査定に先立つ審査に当たり、特許出願人である原告らに対し、本件補正の内容が原告らの真意に沿うものであるかどうかを確認すべき手続上の義務があったところ、上記義務を怠ったものであり、担当審査官には手続上の義務違背があったものと認められる。

上記手続上の瑕疵により、本件特許査定の内容に影響が及ぶものであることは明らかであるから、本件特許査定はこの点において取消しを免れない。

また、本件却下決定には、特許法195条の4の解釈を誤った点において瑕疵があり、その結果、本来、手続的瑕疵を理由として取り消すべきであった本件特許査定を取り消さず、申立てを却下したものであるから、違法として取消しを免れない。

【コメント】

INPADOC patent family searchによると、対応する欧米特許は下記のとおり。
  • EP1819698 (B1)
  • US8314100 (B2)
  • US8598173 (B2)

そして上記米国特許番号に言及しているレクサン(REXAHN PHARMACEUTICALS INC)のプレスリリース(下記)によれば、本件出願が開発中の抗がん剤であるSupinoxin (RX-5902)をカバーする特許であることが分かる。

そして、レクサン発表のポスターの記載から、RX-5902は、1-(3,5-dimethoxyphenyl)-4-[(6-fluoro-2-methoxyquinoxalin-3-yl) aminocarbonyl] piperazineである。

すなわち、本件補正ミスによって、このRX-5902は本件出願クレームでカバーされなくなってしまったのである。この代理人の誤りは、起きてはならないミスであった。

2 comments:

Anonymous said...

いつも興味深い記事をありがとうございます。

本件のJP出願に対応するEPとUSの特許の情報もありがとうございました。特許クレームを確認してみましたが、確かに実施品(Supinoxin (RX-5902))がカバーされてますね。

代理人の重大な補正ミスのようですが、補正クレームの「R1=フッ素」かつ「R2=塩素」の化合物は、電話応対で審査官が特許可能という心証を伝えたとされる範囲内に入っているので、すべての実施例が含まれなくなるからとって、そのクレームで特許査定したことが審査官の手続違背だというのは、かなり酷なような気がします。

ところで、提示されたレクサン社のプレスリリースのリンクが切れていました。また、2013.12.11のプレスリリースと2012.11.21のプレスリリースの標題が逆になっているようです。

正くは、次のとおりだと思います。

●2011.02.28 Rexahn press release:
Rexahn Pharmaceuticals Granted European Patent for New Quinoxalinyl-piperazine Compounds
http://investors.rexahn.com/releasedetail.cfm?ReleaseID=827483

●2012.11.21 Rexahn press release:
Rexahn Pharmaceuticals Issued US Patent for Quinoxalinyl-piperazine Compounds
http://investors.rexahn.com/releasedetail.cfm?ReleaseID=826913

●2013.12.11 Rexahn press release:
Rexahn Receives Method Patent for Treatment of Solid Tumor Cancers for SupinoxinTM (RX-5902)
http://investors.rexahn.com/releasedetail.cfm?ReleaseID=826884

Fubuki Tokkyoteki said...

コメント、ご指摘ありがとうございました。リンクをご指摘のとおり修正しました。