May 1, 2014

2014.04.16 「林原 v. 日本食品化工」 知財高裁平成25年(行ケ)10125

先願発明との同一性(酵素の微生物の由来の相違: 知財高裁平成25年(行ケ)10125

【背景】

被告(日本食品化工)が保有する「新規分岐グルカン並びにその製造方法および用途」に関する特許許4397965号について、原告(林原)による特許無効審判請求を不成立とした審決の取消訴訟。争点は、先願発明との同一性の有無(特許法29条の2)である。

請求項4(本件訂正発明4):
シクロデキストリン生成酵素と糖転移作用を有する酵素とを,デンプン原料に作用させる工程を含んでなる,α-1,4-結合により構成された直鎖状グルカンと,少なくともその直鎖状グルカンの非還元末端に導入された分岐構造とからなる構造を有する,重合度11~35のグルカンまたはその還元物であって,分岐構造がα-1,4-結合以外の結合様式により直鎖状グルカンの非還元末端に結合した1個以上のグルコース残基であるグルカンまたはその還元物を含有する液糖または粉糖の製造法であって,糖転移作用を有する酵素がアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)またはアクレモニウム・エスピー(Acremonium sp.)由来の α-グルコシダーゼである,製造法。
原告が主張する無効理由:
先願明細書(原告の出願である再公表公報WO2008/136331)に記載された先願発明と同一であるから、本件特許は、特許法184条の13の規定により読み替えて適用される同法29条の2の規定に違反して特許されたものである。
【要旨】

主 文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。

裁判所の判断
「先願明細書には,特定の菌株由来の新規な酵素を用いた発明(先願発明1)が開示されているのであって,「α-グルコシル転移酵素」について,上記のバチルス・サーキュランスPP710及びアルスロバクター・グロビホルミスPP349との特定の微生物由来の酵素以外のα-グルコシル転移酵素について開示があると認めることはできない。」
「原告の指摘するように,段落【0031】には,先願発明1のα-グルコシダーゼは給源によって制限されず,「本発明者らが土壌より単離した微生物PP710株又はPP349株が好適に用いられる。」旨の記載があるが,微生物の株により産生される酵素は異なり,一般に,所望の活性を有する酵素を産生する微生物を単離するには相当の試行錯誤が必要であるにもかかわらず,先願明細書には,バチルス・サーキュランスPP710及びアルスロバクター・グロビホルミスPP349と同様の他の微生物等からα-グルコシル転移酵素を得るための手段についての開示がないことに照らすと,この一文をもって,上記二つの微生物以外の微生物由来の糖転移作用を有するα-グルコシル転移酵素一般,あるいは,α-1,4グルカンの非還元末端にα-1,6グルコシル転移する酵素作用及びα-1,3グルコシル転移する酵素作用を有するα-グルコシル転移酵素一般が開示されているものと認めることはできない。」
「そもそも,前記のとおり,先願発明1には,所望の酵素として,もっぱらバチルス・サーキュランスPP710及びアルスロバクター・グロビホルミスPP349由来のα-グルコシル転移酵素が開示されているのであり,それらは「従来公知の真菌由来α-グルコシダーゼ・・・とは異なる酵素である。」(段落【0027】)と明記されており,単に糖転移作用を有する酵素であれば用いられるというものではない。したがって,従来から広く知られ,市販されてきた真菌由来α-グルコシダーゼであるアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)由来 α-グルコシダーゼが,先願明細書に開示された新規なα-グルコシル転移酵素と同等であると解釈する余地はない。」
【コメント】

先願明細書に開示されたα-グルコシダーゼが由来とされるバチルス・サーキュランス(Bacillus circulans)及びアルスロバクター・グロビホルミス(Arthrobacter globiformis)は細菌(bacteria)に属するが、本件訂正発明4記載のα-グルコシダーゼが由来とされるアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)またはアクレモニウム・エスピー(Acremonium sp.)は菌類に属する点でそもそも異なる。

由来が異なってもα-グルコシダーゼ自体が同じである、というのであれば原告の主張は理解できるが、性質や効果の観点で両酵素は異ならないという原告の主張は認められなかった。

参考:

林原press release: 2013.03.05 新規機能性糖質素材「多分岐グルカン」に肝臓への脂肪蓄積抑制効果などを確認 -世界のメタボリックシンドローム予防に新たな光-

日本農芸化学会2013年度大会
商標登録番号5590511(出願番号2012-101909):
【商標】多分岐グルカン
【権利者】(株)林原
【商品及び役務の区分並びに指定商品又は指定役務】
1 化学品,植物成長調整剤類,肥料,写真材料,人工甘味料,工業用粉類,原料プラスチック
3 口臭用消臭剤,動物用防臭剤,塗料用剥離剤,せっけん類,歯磨き,化粧品,香料,薫料
5 薬剤,歯科用材料,サプリメント,食餌療法用飲料,食餌療法用食品,乳幼児用飲料,乳幼児用食品,栄養補助用飼料添加物(薬剤に属するものを除く。)
19 建築用又は構築用の非金属鉱物,陶磁製建築専用材料・れんが及び耐火物,リノリューム製建築専用材料,プラスチック製建築専用材料,合成建築専用材料,アスファルト及びアスファルト製の建築用又は構築用の専用材料,ゴム製の建築用又は構築用の専用材料,しっくい,石灰製の建築用又は構築用の専用材料,石こう製の建築用又は構築用の専用材料,繊維製の落石防止網,セメント及びその製品,木材,石材,建築用ガラス
29 乳製品,肉製品,加工水産物,加工野菜及び加工果実,油揚げ,凍り豆腐,こんにゃく,豆乳,豆腐,納豆,カレー・シチュー又はスープのもと,お茶漬けのり,ふりかけ,食用たんぱく
30 茶,コーヒー,ココア,菓子,パン,サンドイッチ,中華まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,ホットドッグ,ミートパイ,調味料,穀物の加工品,即席菓子のもと,食用粉類
32 ビール,清涼飲料,果実飲料,飲料用野菜ジュース,ビール製造用ホップエキス,乳清飲料

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