Jun 21, 2014

沢井製薬の実用新案登録 「切り離し両面カード付き製品包装箱」

2014年6月20日の沢井製薬のプレスリリースによれば、同社は実用新案登録された「切り離し両面シート」を製品化した。
IPDLで検索したところ、その実用新案登録は下記のとおり。

【登録番号】実用新案登録第3189942号
【考案の名称】切り離し両面カード付き製品包装箱
【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】
両面印刷されたカードを備えたことを特徴とする製品包装箱であって、該両面印刷されたカードはミシン目により切り離し可能な製品包装箱。
【請求項2】
両面印刷されたカードの、
(1)表面には製品の製品名、成分名、製造番号、使用期限又はバーコードから選択される少なくとも2以上の項目が、
(2)裏面には製品名のみが
印刷されていることを特徴とする請求項1に記載の製品包装箱。
【請求項3】
切り離したカードが安全管理及び製品識別ラベルとして使用可能な請求項1または2に記載の製品包装箱。


Jun 16, 2014

2014.06.16 「沢井製薬 米国でリバロ後発品申請」

2014年6月16日付けの沢井製薬のpress releaseによれば、沢井製薬は、子会社Sawai USA, Inc.を通じて、FDAに対し、LIVALO®の後発品「Pitavastatin Tablets, 1 mg, 2 mg and 4 mg」について、ANDAを提出したとのことです。

参考:

Jun 8, 2014

2014.05.30 「帝人 v. 特許庁長官」 知財高裁平成24年(行ケ)10399

特許権の存続期間延長登録が認められなった事例(リノコートパウダースプレー鼻用のノズル(カウンター付)): 知財高裁平成24年(行ケ)10399

【背景】

「粉末薬剤多回投与器」に関する特許権の存続期間延長登録出願(特願2010-700060)の拒絶審決(不服2010-28132)取消訴訟。

本件処分(販売名: リノコートパウダースプレー鼻用25μg)は、粉末薬剤としての成分及び分量、用法、用量、効能、効果等は、本件先行処分と全く同じ。変更事項は、製造方法として、一体型多回噴霧器の「ノズル」を「ノズル(カウンター付)」に変更するもので、容器の形態は、本件先行処分のものから、ノズル部分に噴霧回数を表示するカウンターを設けるため、旧製剤と比較して、噴霧器本体の全高を若干高くし、ノズルの長さも若干短くすることで、容器内にカウンターの搭載スペースを確保し、噴霧操作のノズルの回転動作に連動して噴霧回数を計測し表示するカウンターをノズルに搭載した点で、変更を加えたものだった(カウンターの説明はこちら)。

【要旨】

主 文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。

裁判所は、特許法67条の3第1項1号を理由とする拒絶査定の要件について
「特許法67条の3第1項1号は,特許権の存続期間の延長登録出願を拒絶する要件~のうち,前記①の「『政令で定める処分』を受けたことによっては,禁止が解除されたとはいえないこと」との第1の要件の有無を判断するに当たっては,医薬品の審査事項である「名称,成分,分量,用法,用量,効能,効果,副作用その他の品質,有効性及び安全性に関する事項」の各要素を形式的に適用して判断するのではなく,存続期間の延長登録制度を設けた特許法の趣旨に照らして実質的に判断することが必要となる。
本件においては,本件先行処分は薬事法14条1項に基づく医薬品の製造販売に係る承認であり,本件処分は同条9項に基づく承認事項の一部変更の承認である。
これに対し,特許権の存続期間の延長登録の出願の対象となった本件発明は,粉末薬剤の多回投与器という,特定の薬物を前提としない特許発明であり,前記1(1)カのとおり,多種多様な粉末薬剤を使用することが想定されており,また,前記1(1)オ,キ及びクのとおり,容器の材質,構造等についても多様な実施形態が想定されている。そうすると,本件において,薬事法14条1項又は9項に基づく承認を受けることによって禁止が解除される「その特許発明の実施」の範囲は,本件先行処分及び本件処分の具体的な内容と本件発明の内容とを照らし合わせて,個別具体的に判断する必要がある。」
と言及し、本件について下記のとおり判断した。
「本件処分を受けたことによって禁止が解除された行為は,ノズルにカウンターを搭載したことのみにあると認められる。~ノズルに,噴霧回数を計測し表示するカウンターを搭載することは,本件特許の特許請求の範囲には記載がなく,本件明細書にも記載がないことは,当事者間に争いがない。~本件製剤は,本件発明1の実施品である旧製剤のノズルにカウンターを付すことによって,旧製剤が奏する~本件発明1の効果に対し,噴霧回数の表示という付加的機能を実現したものにすぎず,カウンターの設置に伴い,ノズルの面積や構造などに若干の設計変更が加えられたものの,旧製剤と形態や機能において異なるものではないことが認められる。
以上によれば,まず,本件製剤と旧製剤とは,粉末薬剤としては,成分,分量,用法,用量,効能,効果等において全く同じであると認められる。
そして,本件製剤は,本件先行処分により禁止が解除された本件発明1の実施形態である旧製剤のノズルについて,カウンターを搭載する実施形態に限定したものにすぎないから,本件製剤は,本件発明1の実施形態としては,旧製剤に含まれるというべきである。
そうすると,本件処分は,本件先行処分により禁止が解除された本件発明1の実施形態について,ノズルにカウンターを搭載するという,より限定した形態について本件処分の承認事項の一部を変更したものにすぎないから,本件出願については,前記①の「『政令で定める処分』を受けたことによっては,禁止が解除されたとはいえないこと」の要件を充足するということができる。
したがって,本件出願は,特許法67条の3第1項1号の「その特許発明の実施に第67条第2項の政令で定める処分を受けることが必要であつたとは認められないとき」に該当するというべきである。」
原告は、下記の主張をした。
「①本件発明1において,手段(13)は,回転することによって一回分の投与量を秤量する機能を有する部材であり,回転回数を記録するカウンターも,回転する部材と密接な関係にあり,医薬品として大きな技術的意味を有し,本件発明1の手段(13)の一部を形成しているから,手段(13)は,発明特定事項として,少なくともカウンターを有しないもの(旧製剤)と,カウンターを有するもの(本件製剤)の2つの下位概念を含むものである,②本件製剤の本質的な特徴は,有効成分ではなく,多回投与器の構造に基づく性能にあるから,カウンターを付加した構造に関する創意工夫に基づく患者の利便性の向上につき,延長登録による保護が与えられるべきである,③カウンターの付加は,旧製剤と比較して,利便性を大きく向上させた重要な相違点であり,多回投与器を適用して患者の利便を図るという基本的な技術的思想の中には手段(13)においてカウンターを付加するという下位概念も含まれており,本件発明の目的(定量噴霧性や操作の簡便性・迅速性)がより一層高いレベルで実現されるのであって,カウンターの付加は,本件発明の技術的思想として大きな関連性を有する改良であるところ,カウンターを有する本件製剤は,本件処分によって初めて禁止が解除されたのであるから,本件製剤の実施態様について,本件発明を実施するためには本件処分が必要であったことは自明である」
しかし、裁判所は、
「本件発明1において,手段(13)は,前記のとおり,薬剤貯蔵室(5a)底面の下部に設けた穴(5c)に連通するものであり,かつ薬剤導出部(2)を充填位置と投与位置との間で移動させる機能を奏しているものであるのに対し,カウンター自体はそのような機能を奏するものではなく,噴霧回数の表示という付加的機能を実現するものにすぎない。そして,カウンターを付加することは,本件先行処分で禁止が解除された実施形態の範囲内において,これを限定付加するものにすぎない。したがって,本件処分を受けたことによって,新たに禁止が解除されたとはいえない。」
として、原告の上記主張はいずれも採用することができないと判断した。

【コメント】

知財高裁大合議判決(2014.05.30 「ジェネンテック v. 特許庁長官」 知財高裁(大合議) 平成25年(行ケ)10195, 10196, 10197, 10198)と同日に下された判決である。本事案では拒絶審決は維持された(大合議で特許庁の審査基準が否定されたので、そのロジックは異なるが)。知財高裁は、第一に、粉末薬剤としては、医薬品の「成分,分量,用法,用量,効能,効果」に着目しており、本件処分では、それらが先行処分と全く同じであったこと、そして第二に、一変承認事項が特許発明の特徴とは無関係の付加的事項だったこと、を理由として、「特許発明を実施すること」が一変承認によって新たに禁止が解除されたということはできない、従って、特許権の存続期間の延長登録は認められない(特許法67条の3第1項1号)、と判断した。

本件発明は、医薬品の成分を対象とする特許ではなく、「粉末薬剤多回投与器」を対象とする特許であるから、大合議判決で判断された事件のような“医薬品の成分”を対象とする特許と同じように、「成分,分量,用法,用量,効能,効果」にだけ着目して同じように判断するだけでは妥当でない。本事案において、裁判所は、カウンターを搭載したノズルという点で新たな審査が必要とされた一変承認事項と特許発明の特徴(奏する効果)との関係も検討し、旧製剤における先行処分で、本来の特許発明の特徴は、既に禁止が解除されていたとの結論を導いた。

大合議判決以後、延長登録が認められた事例と認められなかった事例が蓄積することで、判断の予見性が高まることを期待する。

延長された特許権の効力についての考察:

本判決では、本件製剤と特許発明との関係を検討するに当たり、「本件製剤は,本件発明1の実施形態としては,旧製剤に含まれるというべきである。」と解釈している。この関係性(発明の一実施形態にすぎない製剤は、旧製剤の処分によって禁止が解除された発明に含まれる)の解釈を、後発品は、先発品の処分によって延長された特許権の効力範囲に含まれるどうかという点にまで飛躍して考えてみると・・・まず初めに「成分、効能、効果、用法、用量」に着目して検討するとしても、「特許発明の奏する効果に付加的機能を加えた一実施形態に過ぎないもの」(例えば、添加剤を含めた成分が完全一致しない医薬品であっても一実施形態に過ぎない後発品)に対しては、発明の一実施形態とみなされて、延長された特許権の効力が及ぶ、という考え方が可能と思われる。いわゆる「完全一致製剤にしか延長特許権の効力が及ばない」というrigidな考え方ではなく、後発品の実態と発明の内容も具体的に検討して結論を導き出すという考え方は、大合議判決で言及された下記下線部分

「特許権の延長登録制度及び特許権侵害訴訟の趣旨に照らすならば,医薬品の成分を対象とする特許発明の場合,特許法68条の2によって存続期間が延長された特許権は,「物」に係るものとして,「成分(有効成分に限らない。)」によって特定され,かつ,「用途」に係るものとして,「効能,効果」及び「用法,用量」によって特定された当該特許発明の実施の範囲で,効力が及ぶものと解するのが相当である(もとより,その均等物や実質的に同一と評価される物が含まれることは,延長登録制度の立法趣旨に照らして,当然であるといえる。)」。

と不整合な点はないように思われる。

参考:

Jun 2, 2014

2014.05.30 「ジェネンテック v. 特許庁長官」 知財高裁(大合議) 平成25年(行ケ)10195, 10196, 10197, 10198

特許権存続期間延長登録出願の登録要件について知財高裁大合議判決: 平成25年(行ケ)10195, 10196, 10197, 10198

【背景】

原告(ジェネンテック)は、アバスチン点滴静注用400mg/16mL及び100mg/4mL(一般名: ベバシズマブ(遺伝子組換え))について、用法及び用量に関する事項を追加することを主な変更内容とする製造販売承認事項一部変更承認(本件処分)を受け、本件医薬品を保護する「血管内皮細胞増殖因子アンタゴニスト」に関する特許権(第3398382号)及び「抗VEGF抗体」に関する特許権(第3957765号)について存続期間延長登録出願をした。
しかし、特許庁は、同じ有効成分及び同じ効能又は効果である先行処分がされていたことを理由に、本件延長登録出願を拒絶とする審決(不服2011-8105; 不服2011-8106; 不服2011-8107; 不服2011-8108)をした。
そこで、原告は特許庁の拒絶審決の取消を求め訴訟を提起した。

特許権3398382号 請求項1:
抗VEGF抗体であるhVEGFアンタゴニストを治療有効量含有する,癌を治療するための組成物。
特許第3957765号 請求項1:
以下の超可変領域アミノ酸配列~(省略)~を含む重鎖可変ドメイン,並びに以下の超可変領域アミノ酸配列~(省略)~を含む軽鎖可変ドメインを有している,約1x10-8Mを超えないKd値でヒト血管内皮細胞増殖因子(VEGF)と結合するヒト化抗VEGF抗体。
【要旨】

本判決は,以下のとおり判断して,審決を取り消した。

(1) 特許法67条の3第1項1号該当性判断の誤り(取消事由1)について
  • 特許権の存続期間の延長登録の出願を拒絶すべきとした審決の判断の当否を検討するに当たっては,拒絶すべきとの査定(審決)の要件を規定した根拠法規である特許法67条の3第1項1号の要件適合性を判断することにより結論を導くべきである(先行処分を理由として存続期間が延長された特許権の効力がどの範囲まで及ぶかという点は,特許発明の実施に政令で定める処分を受けることが必要であったか否かとの点と,必ずしも常に直接的に関係する事項であるとはいえない。)。
    同法67条の3第1項1号の「その特許発明の実施に政令で定める処分を受けることが必要であった」との事実が存在するといえるためには,①「政令で定める処分」を受けたことによって禁止が解除されたこと,及び,②「政令で定める処分」によって禁止が解除された当該行為が「その特許発明の実施」に該当する行為に含まれることが前提となり,その両者が成立することが必要であるといえる。上記規定は「その特許発明の実施に・・・政令で定める処分を受けることが必要であつたとは認められないとき。」と,審査官(審判官)が延長登録出願を拒絶するための要件として規定されているから,審査官(審判官)が,当該出願を拒絶するためには,①「政令で定める処分を受けたことによっては,禁止が解除されたとはいえないこと」(第1要件),又は,②「『政令で定める処分を受けたことによって禁止が解除された行為』が『その特許発明の実施に該当する行為』には含まれないこと」(第2要件)のいずれかを選択的に論証することが必要となる。
  • 薬事法14条1項又は9項に基づく承認の対象となる医薬品は,「名称,成分,分量,用法,用量,効能,効果,副作用その他の品質,有効性及び安全性に関する事項」によって特定された医薬品である。したがって,上記承認によって禁止が解除される行為態様は,当該承認の対象とされた,上記事項によって特定された医薬品の製造販売等の行為である。
    特許法67条の3第1項1号の規定する前記第1要件の有無を判断するに当たっては,医薬品の審査事項である「名称,成分,分量,用法,用量,効能,効果,副作用その他の品質,有効性及び安全性に関する事項」の各要素を形式的に適用して判断するのではなく,存続期間の延長登録制度を設けた特許法の趣旨に照らして実質的に判断することが必要である。
    医薬品の成分を対象とする特許(製法特許,プロダクトバイプロセスクレームに係る特許等を除く。)については,薬事法14条1項又は9項に基づく承認を受けることによって禁止が解除される「特許発明の実施」の範囲は,上記審査事項のうち「名称」,「副作用その他の品質」や「有効性及び安全性に関する事項」を除いた事項(成分,分量,用法,用量,効能,効果)によって特定される医薬品の製造販売等の行為であると解するのが相当である。
  • 本件先行処分では,「他の抗悪性腫瘍剤との併用において,通常,成人にはベバシズマブとして1回7.5mg/kg(体重)を点滴静脈内注射する。投与間隔は3週間以上とする。」との用法・用量によって特定される使用方法による本件医薬品の使用行為,及び上記使用方法で使用されることを前提とした本件医薬品の製造販売等の行為の禁止は解除されておらず,本件処分によってこれが解除されたのであるから,本件処分については,延長登録出願を拒絶するための前記の選択的要件のうち,「政令で定める処分を受けたことによっては,禁止が解除されたとはいえないこと」との要件(前記第1要件)を充足していないことは,明らかである。本件処分については,延長登録出願を拒絶するための前記の選択的要件のうち,「『政令で定める処分を受けたことによって禁止が解除された行為』が『その特許発明の実施に該当する行為』には含まれないこと」との要件(前記第2要件)を充足していないことも,明らかである。
  • 以上のとおりであり,本件においては,「本件処分を受けたことによって本件特許発明の実施行為の禁止が解除されたとはいえない」とはいえず,特許法67条の3第1項1号の定める,拒絶要件があるとはいえない。
(2) 特許法68条の2に基づく延長された特許権の効力の及ぶ範囲について
  • 本判決では,念のためとして,特許法68条の2に基づく延長された特許権の効力の及ぶ範囲についても検討し,特許権の延長登録制度及び特許権侵害訴訟の趣旨に照らすならば,医薬品の成分を対象とする特許発明の場合,同法68条の2によって存続期間が延長された特許権は,「物」に係るものとして,「成分(有効成分に限らない。)」によって特定され,かつ,「用途」に係るものとして,「効能,効果」及び「用法,用量」によって特定された当該特許発明の実施の範囲で,効力が及ぶものと解するのが相当であると判断した。
【コメント】

1.特許権の存続期間延長登録の要件(特許法67条の3第1項1号)について

今回の知財高裁大合議判決により、医薬品の「成分,分量,用法,用量,効能,効果」いずれかについての追加・一部変更承認が得られれば、原則、その度ごとに特許権の延長登録の機会があることになる。例えば、有効成分に関する物質特許は、医薬品としての最初の承認以降、効能追加、製剤変更、用量追加、用法追加などの追加・一部変更承認の場面で、特許権の延長登録が認められうることになる。もちろん、有効成分に関する特許以外でも、その医薬品がその特許発明の実施に該当する限り、同様に延長登録が認められうることになる。

2.特許権の存続期間延長の審査基準について

改訂されてからまだ2年半足らずの審査基準は、再度改められなければならない。

3.医薬品の製造方法を対象とする特許について

本事案は製造方法特許でなかったため、判決は、医薬品の製造方法を対象とする特許(製法特許,プロダクトバイプロセスクレームに係る特許等)についてまで検討しなかった。医薬品の製造方法に関わる事項は、承認にとって欠かせない審査事項であるが、医薬品としての実質的な同一性に直接関わる事項とはいえないため、判決で示されたような、医薬品の成分を対象とする特許発明の場合における「禁止が解除されたかどうか」の判断要素(「成分,分量,用法,用量,効能,効果」)を、形式的にそのまま製造方法の特許の場合に適用することはできない。医薬品の製造方法を対象とする特許発明の場合における「禁止が解除されたかどうか」の判断は、当該製造方法と承認審査内容を実質的に検討する必要があるだろう。

4.延長された特許権の効力の及ぶ範囲について

知財高裁大合議は、医薬品の成分を対象とする特許発明の場合,「成分(有効成分に限らない。)」によって特定され,かつ,「効能,効果」及び「用法,用量」によって特定された特許発明の実施の範囲で、効力が及ぶものと解するのが相当であるとしている。

まさか、添加剤を含む全ての成分が一致した医薬品にしか、延長された特許権の効力が及ばないということではないだろう・・・。大合議の検討に従えば、延長された特許権の効力が及ぶと解する特許発明の実施の範囲は下記のとおりになるのではないかと思われる。
  • 医薬品の有効成分を対象とする特許発明の場合: 「有効成分」によって特定され,かつ,「効能,効果」及び「用法,用量」によって特定された特許発明の実施の範囲。

    例えば、本件であれば、

    • 「有効成分」が「ベバシズマブ(遺伝子組換え)」であり、
    • 「効能又は効果」が「治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌」であり、
    • 「用法及び用量」が「他の抗悪性腫瘍剤との併用において,通常,成人にはベバシズマブとして1回7.5mg/kg(体重)を点滴静脈内注射する。投与間隔は3週間以上とする。」であり、且つ、
    • 特許発明の実施の範囲である、第三者医薬品に対して延長された特許権の効力が及ぶ。

    先行処分として承認されていた「他の抗悪性腫瘍剤との併用において,通常,成人にはベバシズマブとして1回5mg/kg(体重)又は10mg/kg(体重)を点滴静脈内投与する。投与間隔は2週間以上とする。」のみとする用法及び用量によって特定された医薬品に対しては、延長された特許権の効力は及ばないということになる。

    例えば、2011.03.28 「シャイアー v. 特許庁長官」 知財高裁平成22年(行ケ)10177の事案(単剤併用から合剤としての承認)であれば、当該特許発明は、ラミブジンの物質特許(請求項1~11。請求項12のみ、ラミブジンと付加的な活性成分と組み合わせて含む抗ウイルス用医薬組成物。)であるが、延長登録は有効成分の合剤の承認に基づいて認められたのであるから、

    • 「有効成分」が「ラミブジンおよび硫酸アバカビル」であり、
    • 「効能又は効果」が「HIV感染症」であり、
    • 「用法及び用量」が「通常、成人には1回1錠(ラミブジンとして300mg及びアバカビルとして600mg)を1日1回経口投与する。」であり、且つ、
    • 特許発明の実施の範囲である、第三者医薬品に対して延長された特許権の効力が及ぶ。
  • 医薬品の用途を対象とする特許発明の場合: 「成分(有効成分に限らない。)」によって特定され,かつ,「効能,効果」及び「用法,用量」によって特定された特許発明の実施の範囲。

    例えば、2000.02.10 「グラクソ v. 特許庁長官」 東京高裁平成10年(行ケ)361の事案(小児適用)であれば、当該特許発明(請求項1)は、
    活性成分として、1、2、3、9-テトラヒドロ-9-メチル-3-[(2-メチル-1H-イミダゾル-1-イル)メチル]-4H-カルバゾル-4-オン又はその生理学的に許容される塩又は溶媒和物を含むことを特徴とする、吐気及び嘔吐の軽減及び/又は胃内容物排出の促進のためにヒト及び獣医学で用いるための薬剤組成物。
    であるから、

    • 「有効成分」が「塩酸オンダンセトロン」であり、
    • 「効能又は効果」が「抗悪性腫瘍剤(シスプラスチン等)投与に伴う消化器症状(悪心、嘔吐)の軽快」であり、
    • 「用法及び用量」が「小児: 通常、小児にはオンダンセトロンとして1回2.5mg/m2、1日1回緩徐に静脈内投与する。なお、年齢、症状により適宜増減する。また、効果不十分な場合には、同用量を追加投与できる。」(小児先行処分では適用対象を成人に限るとしていたのに対して、本件処分では小児をも適用対象としてた点で異なる)であり、且つ、
    • 特許発明の実施の範囲である、第三者医薬品に対して延長された特許権の効力が及ぶ。

    このケースでは、成人を適用対象のみとする「用法及び用量」によって特定された医薬品に対しては、延長された特許権の効力は及ばないということになる。

  • 医薬品の有効成分以外の成分を対象とする特許発明の場合(例えば製剤特許): 「製剤成分」によって特定され、かつ、「効能,効果」及び「用法,用量」によって特定された特許発明の実施の範囲。

    例えば、パシーフカプセル事件(2009.05.29 「武田薬品 v. 特許庁長官」 知財高裁平成20年(行ケ)10460)であれば、当該特許発明(請求項1)は、
    薬物を含んでなる核が,(1)水不溶性物質,(2)硫酸基を有していてもよい多糖類,ヒドロキシアルキル基またはカルボキシアルキル基を有する多糖類,メチルセルロース,ポリビニルピロリドン,ポリビニルアルコール,ポリエチレングリコールから選ばれる親水性物質および(3)酸性の解離基を有しpH依存性の膨潤を示す架橋型アクリル酸重合体を含む被膜剤で被覆された放出制御組成物。
    であるから、

    • 「製剤成分」が「薬物=塩酸モルヒネ」、「(1)水不溶性物質=エチルセルロース」、「(2)親水性物質=ヒドロキシプロピルセルロース」及び「(3)被膜剤=カルボキシビニルポリマー」を含有するものであり、
    • 「効能又は効果」が「中等度から高度の疼痛を伴う各種癌における鎮痛」であり、
    • 「用法及び用量」が「通常、成人にはモルヒネ塩酸塩水和物として1日30~120mgを1日1回経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減する。」であり、且つ、
    • 特許発明の実施の範囲である、第三者医薬品に対して延長された特許権の効力が及ぶ。

    成分がエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、または、カルボキシビニルポリマーのいずれか一つでも使用しない後発品に対しては延長された特許権の効力は及ばないと考えられる。判決では、特許権の存続期間の延長登録の制度が設けられた趣旨に関して、政令で定める処分を受けるために特許発明を実施することができず、実質的に侵食される特許期間について、
  • このような期間においても,特許権者が「業として特許発明の実施をする権利」を専有していることに変わりはなく,特許権者の許諾を受けずに特許発明を実施する第三者の行為について,当該第三者に対して,差止めや損害賠償を請求することが妨げられるものではない。したがって,特許権者の被る不利益の内容として,特許権の全ての効力のうち,特許発明を実施できなかったという点にのみ着目したものであるといえる。
    と言及しているが、第三者のフリーライドを容易に許すようであれば、延長された特許権の意味は無い。合議体は、
    もとより,その均等物や実質的に同一と評価される物が含まれることは,延長登録制度の立法趣旨に照らして,当然であるといえる
    と言及しているが、そのような評価はまた容易なことではない。添加剤の成分が異なる後発品への権利行使可能性については、具体的なラインが示せない以上、個別具体的な判断にならざるを得ないだろう。

参考: