Dec 31, 2014

2014年、医薬系"特許的"な判決を振り返る。

どうなる?延長された特許権の効力。

2014年、最もホットだった"特許的"ニュースは、何と言っても、特許権の存続期間延長登録についての大合議判決です。最高裁へ上告されているようですが、かならずしも先発メーカーにとっては大手を振って喜ぶことのできない大合議判決。今後、日本の特許期間延長制度はどうなっていくのか非常に不安です。

過去の「医薬系"特許的"な判決を振り返る。」
  • 「2013年、医薬系"特許的"な判決を振り返る。」はこちら
  • 「2012年、医薬系"特許的"な判決を振り返る。」はこちら
  • 「2011年、医薬系"特許的"な判決を振り返る。」はこちら
  • 「2010年、医薬系"特許的"な判決を振り返る。」はこちら
  • 「2009年、医薬系"特許的"な判決を振り返る。」はこちら
  • 「2008年、医薬系"特許的"な判決を振り返る。」はこちら

Dec 30, 2014

2014.12.25 「日産化学 リバロ後発品 特許権侵害訴訟を提起(第5報)」

2014年12月26日付けの日産化学のpress release(高コレステロール血症治療剤「リバロ」後発品に対する特許権侵害訴訟の提起について(第5報))によれば、日産化学は、リバロ後発品製造販売会社であるキョーリンリメディオ、三和化学研究所に対し、同社が保有する当該有効成分の結晶形についての特許権侵害行為の差止訴訟を、12月25日付で大阪地裁に提起したとのことです。

参考:

中外 オキサロール®特許侵害訴訟で勝訴(東京地裁)

オキサロール®軟膏の後発品を販売する岩城製薬、高田製薬、ポーラファルマ及びこれら後発医薬品の原薬等国内管理人であるDKSHジャパンに対し、中外製薬が保有する製法特許(特許第3310301号)の侵害を理由とする特許権侵害行為の差し止めを求めていた訴訟で、2014年12月24日、東京地裁は中外製薬の請求を全面的に認める判決を下した。

オキサロール®軟膏は活性型ビタミンD3誘導体マキサカルシトール(maxacalcitol)を有効成分とする角化症治療剤。適応症は尋常性乾癬、魚鱗癬群、掌蹠角化症、掌蹠膿疱症の 4 疾患。2001年6月20日承認。

特許第3310301号の出願日は1997年9月3日。掌蹠膿疱症に対して2008年11月に効能・効果が追加承認されたときに、本件製法特許について存続期間延長登録(2009-700014)がなされ、満了日は2022年9月3日となっている。原薬製造会社であるセルビオス―ファーマ及び上記4社が本件特許の無効審判を請求中。

中外製薬press release:

Dec 27, 2014

2014.12.18 「ユーロ-セルティック v. 特許庁長官」 知財高裁平成26年(行ケ)10059

保存安定性に優れたポビドンヨード調製物のパッケージ: 知財高裁平成26年(行ケ)10059

【背景】

「ヨードホールを含有する乾燥リポソーム製薬組成物を含むパッケージ及び同組成物を適用する方法」に関する特許出願(特願2004-129590; 特開2004-346064)拒絶審決(不服2011-14812)取消訴訟。争点は進歩性。

請求項1:
プラスチック材料,紙又は厚紙製のパッケージ中に,ヨードホールを含有する乾燥リポソーム製薬組成物を含む,保存安定性を備えたパッケージ。
審決が認定した引用例1発明との一致点:
「(使用時に水(媒体)を添加することで医薬製剤として再構築される,)ヨードホールを含有する乾燥リポソーム製薬組成物」である点。
審決が認定した引用例1発明との相違点:
本願発明では,乾燥リポソーム製薬組成物を,(A)「プラスチック材料製のパッケージ中に」,かつ,(B)「保存安定性を備えたパッケージ」に含む(保存する)ことが特定されているのに対し,引用例1発明ではこのような特定はされていない点。
【要旨】

主 文
原告の請求を棄却する。(他略)
裁判所の判断
1. 相違点(A)に係る構成の容易想到性について

技術常識を考慮すれば,引用例1発明のポビドンヨードを含有する凍結乾燥させたリポソーム固体は,医薬製剤として使用されるものである以上,長期間安定に保存できる容器に入れることは自明の課題であり,その容器の材質として,医薬品の容器として通常用いられているガラス又はプラスチック等の材質の中から長期間安定に保存できるものを当業者が選択するものということができる。~さらに,薬剤のキャリアーとしてのリポソームについて,これを凍結乾燥させることによって医薬品として使用するに足りる程度の保存安定性が得られることは,周知の事項である。~凍結乾燥させたリポソームが,合成樹脂と反応する等の合成樹脂容器では保存できない事情があることをうかがわせるに足りる証拠は見当たらない。そして,これらのことに照らすと,当業者であれば,引用例1発明のポビドンヨードを含有する凍結乾燥させたリポソーム固体も,引用例2のポビドンヨード粉末と同様に,特にガラス容器に保存する必要はなく合成樹脂容器に保存することもできることに想到することは容易であり,医薬品の容器として通常用いられているガラス又はプラスチック等の材料の中から,引用例2においてポビドンヨード粉末を保存できるとされた合成樹脂容器(「プラスチック材料製のパッケージ」に相当する。)を保存容器として選択し,相違点(A)の構成に至ることは,当業者が容易に想到し得たものといえる。

2. 相違点(B)に係る構成の容易想到性について

引用例1発明におけるヨードホール含有乾燥リポソーム製薬組成物について,保存容器の素材の如何にかかわらず本願発明の「保存安定性を備えた」を満足するとして,相違点(B)を実質的な相違点ではないと判断した審決には,この点において誤りがあるといわざるを得ない。~しかしながら,引用例1発明において,相違点(A)に係る本願発明の構成とすることに当業者は容易に想到し得たものであり,それと同時に相違点(B)に係る本願発明の構成も達成されるものであるから,引用例1発明において,相違点(B)に係る本願発明の構成とすることも当業者が容易になし得たものといえる。したがって,本願発明は,引用例1及び引用例2に記載された発明に基づいて,当業者が容易に想到し得たものというべきであるから,審決の判断に結論において誤りがあるということはできない。相違点(B)の判断に関する審決の上記誤りは,審決の結論に影響するものではない。
【コメント】

出願人自らの出願が引用例となり、進歩性が否定された。欧州でも同じ引用例1(特表2002-516265; WO99/60998)が審査で問題となったが成立(EP1479379B1)。

Dec 1, 2014

2014.10.30 「興和 v. 沢井製薬」 東京地裁平成26年(ワ)768

ピタバスタチンのピタバとPITAVA(その2): 東京地裁平成26年(ワ)768

【背景】

薬剤を指定商品とする商標権(第4942833号)を有する原告(興和)が、被告(沢井製薬)が薬剤に付した被告標章「ピタバ」が原告の商標権の登録商標(PITAVA)に類似すると主張して、被告に対し、被告標章の使用の差止め及び被告標章を付した薬剤の廃棄を求めた事案。

【要旨】

主 文
原告の請求をいずれも棄却する。
裁判所の判断
「~被告各標章は本件商標に類似すると解されるところ,被告各商品への使用がいわゆる商標的使用に当たるとすれば本件商標権を侵害するとみる余地があることから,本件商標の商標登録が審判により無効にされるべきか否かについて検討することとする。~需要者ないし取引者のうち一般に医療従事者においては,医薬品に付された「PITAVA」の記載から本件物質を想起すると認められる。そうすると,本件商標の指定商品のうち本件物質を含有しない薬剤に本件商標を使用した場合には,需要者等が当該薬剤に本件物質が含まれると誤認するおそれがあるので,本件商標は「商品の品質…の誤認を生ずるおそれがある商標」(商標法4条1項16号)に当たると判断するのが相当である。したがって,本件商標の商標登録は無効審判により無効にされるべきものであり,原告は本件商標権を行使することができない(同法39条,特許法104条の3第1項)。」
【コメント】

2014.08.28 「興和 v. Meiji Seikaファルマ」 東京地裁平成26年(ワ)770では、被告( Meiji Seikaファルマ)標章の使用は被告商品の出所を表示するものではなく有効成分の説明的表示であると認識されるものであり商標的使用に当たらず本件商標権を侵害するものではないと東京地裁(第47部)は判断した。一方、本件では、東京地裁(第46部)は、被告各標章が出所識別機能を有しないとはいえないと判断し、被告各商品への使用がいわゆる商標的使用に当たるとすれば本件商標権を侵害するとみる余地があるとしたうえで、本件商標権を権利行使できるかどうかまで判断した。判決の結論は同じであるが、医薬品の有効成分の一般名の略称を付した被告標章に関して商標の出所識別機能の考え方がこれら二つの判決で異なっていることは興味深い。

参考:

関連判決: