Apr 4, 2015

2015.01.22 「エフ. ホフマン-ラ ロシュ v. 特許庁長官」 知財高裁平成25年(行ケ)10286

イバンドロネート多形Bの同一性: 知財高裁平成25年(行ケ)10286

【背景】

「イバンドロネート多形B」に関する特許出願(特願2007-553501)の拒絶審決(不服2012-2606)取消訴訟。審決理由は、本願発明は先願発明(特願2006-536948(出願人: テバ ファーマシューティカル))と同一であるので特許法29条の2により特許を受けることができないというものだった。

本願発明(請求項1):
角度2θで表される,
角度2θ±0.2°
9.7°
12.2°
14.4°
16.8°
25.8°
の特徴的なピークを有する,CuKα放射線を用いて得られたX線粉末回折パターンにより特徴付けられる,3-(N-メチル-N-ペンチル)アミノ-1-ヒドロキシプロパン-1,1-ジホスホン酸一ナトリウム塩一水和物(イバンドロネート)の結晶多形。
【要旨】

主 文
1 特許庁が不服2012-2606号事件について平成25年6月10日にした審決を取り消す。(他略)
裁判所の判断
1 取消事由1(先願発明の認定の誤り,一致点の認定の誤り及び相違点の看過)について
先願明細書には,フォームQQは一水和物~三水和物の範囲で存在することができる旨記載されているところ,熱重量分析(TGA)による重量損失が約5~12%であること,異なる複数の調製方法により調製できることからすれば,フォームQQが一水和物とは異なる水和形態で存在し得る結晶形であることは明らかである。~したがって,本件審決が,先願発明であるフォームQQを一水和物と認定したことには誤りがあるというほかない。~そして,本件審決は,先願発明を一水和物であると誤って認定した結果,次の相違点(以下「相違点B’」という。)を看過した誤りがある。
相違点B’:本願発明は3-(N-メチル-N-ペンチル)アミノ-1-ヒドロキシプロパン-1,1-ジホスホン酸一ナトリウム塩の一水和物であるのに対して,先願発明においては水分子の存在形態が不明である点。
そして,この相違点B’により,本願発明は先願発明と同一であるとはいえないことから,本件審決による先願発明の認定の誤り,一致点の認定の誤り及び相違点の看過は,審決の結論に影響を及ぼすものである。
2 取消事由2(相違点についての判断の誤り)について
本願明細書には「特徴的なピーク」又は「特性ピーク」という用語について特段の説明や定義はないが,「特徴的な」又は「特性」の通常の用語例からすれば,「その結晶を特徴づける特有のピーク」と解するのが相当であり,先願明細書において「特徴づけられる」として挙げられ,図18からも看取できる上記10個のピークも,これと同様の意味で用いられているものと解される。そうすると,先願明細書には,フォームQQの特徴的なピークとして,2θが9.7±0.2°,12.2±0.2°及び14.4±0.2°のものが記載されているということはできない。
また,先願明細書中でフォームQQが「特徴づけられる」ピークであるとして挙げられている10個のピークは,いずれも,図18において相応の強度を有し,明確に把握できるものである。これに対して,図18において,本件審決が特徴的なピークとして挙げた2θが9.7±0.2°,12.2±0.2°及び14.4±0.2°の位置には,たとえピークが把握できるとしても強度が低いものであり,先願明細書においても指摘されていないのであるから,ことさらこれらを「特徴的なピーク」として取り上げるべき事情は見出せない。
したがって,本件審決が,先願発明は特徴的なピークを示す角度2θ±0.2°として「9.7°」,「12.2°」及び「14.4°」も含むものであり,本願発明と先願発明との前記第2の3(3)イの相違点は実質的な相違点ではないと判断したことには誤りがあるというべきである。
3 結論
以上によれば,原告主張の取消事由1及び2はいずれも理由があるから,取消事由3について検討するまでもなく,本件審決は取消しを免れない。
【コメント】

下記X線粉末回折パターンの上部は本願発明である多形Bのものであり、下部は先願発明フォームQQのものである。本願発明の特徴的ピークとして挙げられている5つの位置(角度2θ±0.2°が9.7°、12.2°、14.4°、16.8°、25.8°)とそれらに該当する位置にある先願発明フォームQQのピークを赤線にて見比べた。


X線粉末回折パターンを比べれば同じものなのでは?そもそも「特徴的なピーク」と指摘したか指摘していないかで同一か否かの判断が分かれてしまうというのは腑に落ちない感じがある。確かに、先願発明は水和物の形態も含めて何だかよくわからない不明の形態であるということが明らかな場合には、引用発明の適格性に問題があろう。

しかし、(先願であるテバからの立場で考えれば)せっかく結晶多形の発明をして出願した(特許になった)にもかかわらず、マイナーなピークを特徴的なピークとして指摘していなかったがために、第三者による後願でそのようなマイナーピークを特徴的ピークとして同一の結晶形発明の特許を取られてしまうという事態が起こりうることには納得がいかないだろう。このようなケースを回避するために、マイナーなピークもすべて特徴的なピークだとして明細書に指摘しておくということも一つのアイデアかもしれないが、果たしてそんなことまでしなければいけないのだろうか…。

関連判決:

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