Jun 1, 2015

2015.03.11 「コスメディ製薬 v. バイオセレンタック」 知財高裁平成26年(行ケ)10204

訂正が特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるというためには: 知財高裁平成26年(行ケ)10204

【背景】

被告(バイオセレンタック)が保有する「経皮吸収製剤,経皮吸収製剤保持シート,及び経皮吸収製剤保持用具」に関する特許第4913030号に対して原告(コスメディ製薬)がした無効審判請求について、本件訂正を認め無効審判請求は成り立たないとした審決(無効2012-800073)の取消しを求めて原告が提起した審決取消訴訟。原告主張の取消事由1は本件訂正を認めた審決の判断は誤りであるというものだった。

【要旨】

主 文
1 特許庁が無効2012-800073号事件について平成26年8月12日にした審決を取り消す。(他略)
特許法134条の2第1項ただし書について、裁判所は、
「訂正が特許請求の範囲の減縮(1号)を目的とするものということができるためには,訂正前後の特許請求の範囲の広狭を論じる前提として,訂正前後の特許請求の範囲の記載がそれぞれ技術的に明確であることが必要であるというべきである。」
と言及した上で、下記のとおり、訂正事項3による訂正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は、技術的に明確であるとはいえないから、訂正事項3は特許請求の範囲の減縮を目的とするものとは認められないと判断した。
「訂正事項3は,訂正前の特許請求の範囲の請求項1に「皮膚に挿入される,経皮吸収製剤」とあるのを,「皮膚に挿入される,経皮吸収製剤(但し,・・・及び経皮吸収製剤を収納可能な貫通孔を有する経皮吸収製剤保持用具の貫通孔の中に収納され,該貫通孔に沿って移動可能に保持された状態から押し出されることにより皮膚に挿入される経皮吸収製剤を除く)」に訂正するものである。
そうすると,本件発明は,「経皮吸収製剤」という物の発明であるから, 本件訂正発明も,「経皮吸収製剤」という物の発明として技術的に明確であることが必要であり,そのためには,訂正事項3によって除かれる「経皮吸収製剤を収納可能な貫通孔を有する経皮吸収製剤保持用具の貫通孔の中に収納され,該貫通孔に沿って移動可能に保持された状態から押し出されることにより皮膚に挿入される経皮吸収製剤」も,「経皮吸収製剤」という物として技術的に明確であること,言い換えれば,「経皮吸収製剤を収納可能な貫通孔を有する経皮吸収製剤保持用具の貫通孔の中に収納され,該貫通孔に 沿って移動可能に保持された状態から押し出されることにより皮膚に挿入される」という使用態様が,経皮吸収製剤の形状,構造,組成,物性等により経皮吸収製剤自体を特定するものであることが必要というべきである
しかし,「経皮吸収製剤を収納可能な貫通孔を有する経皮吸収製剤保持用 具の貫通孔の中に収納され,該貫通孔に沿って移動可能に保持された状態か ら押し出されることにより皮膚に挿入される」という使用態様によっても, 経皮吸収製剤保持用具の構造が変われば,それに応じて経皮吸収製剤の形状や構造も変わり得るものである。また,「経皮吸収製剤を収納可能な貫通孔を有する経皮吸収製剤保持用具の貫通孔の中に収納され,該貫通孔に沿って移動可能に保持された状態から押し出されることにより皮膚に挿入される」という使用態様によるか否かによって,経皮吸収製剤自体の組成や物性が決まるというものでもない。
したがって,上記の「経皮吸収製剤を収納可能な貫通孔を有する経皮吸収 製剤保持用具の貫通孔の中に収納され,該貫通孔に沿って移動可能に保持された状態から押し出されることにより皮膚に挿入される」という使用態様は, 経皮吸収製剤の形状,構造,組成,物性等により経皮吸収製剤自体を特定するものとはいえない。
以上のとおり,訂正事項3によって除かれる「経皮吸収製剤を収納可能な 貫通孔を有する経皮吸収製剤保持用具の貫通孔の中に収納され,該貫通孔に沿って移動可能に保持された状態から押し出されることにより皮膚に挿入される経皮吸収製剤」は,「経皮吸収製剤」という物として技術的に明確であるとはいえない。」
したがって、裁判所は、
「本件訂正を認めた審決の判断の誤りは,審決の結論に影響を及ぼすものであるから,原告主張の取消事由1は理由がある。以上によれば,その余の取消事由について判断するまでもなく,審決は違法であり取消しを免れない。」
と判断した。

【コメント】

裁判所は、訂正が特許請求の範囲の減縮を目的とするものということができるための前提として、訂正前後の特許請求の範囲の記載がそれぞれ技術的に明確であることが必要であることを判示した。

中でも、いわゆる除くクレームのように、但し書きによりある使用態様をクレームから除く訂正を行う場合には、物の発明であれば、訂正発明も物の発明として技術的に明確であること、言い換えれば、除かれた使用態様が、形状、構造、組成、物性等によりその物自体を特定するものであることが必要である、として本件を判断した。訂正前後の範囲の変更が明確であるためには至極当然の判断といえるだろう。



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