Aug 1, 2015

2015.06.10 「国 v. レクサン」 知財高裁平成26年(コ)10004; 10005

補正ミスに気付かず特許査定に。特許査定を取り消せるのか?: 知財高裁平成26年(コ)10004; 10005

(原審: 2014.03.07 「レクサン v. 国」 東京地裁平成24年(行ウ)591

【背景】

「1-[(6,7-置換-アルコキシキノキサリニル)アミノカルボニル]-4-(ヘテロ)アリールピペラジン誘導体」に関する特願2007-542886(WO2006/054830; 特表2008-520653)について、出願人である本件被控訴人(レクサン及びコーリアリサーチ)は、誤った内容を記載した手続補正書を提出したまま特許査定(2011年11月7日)となったことに気付き、特許査定の取消しを求める旨の行政不服審査法に基づく異議申立てをした(2012年1月6日)が、特許庁長官は却下決定をした(同4月26日)。本件被控訴人は、この却下決定の取消し等を求めて訴訟を提起した(同8月27日)。

本件特許査定の取消しの訴えの適法性についての控訴人(国)の主張骨子は下記のとおり。
本件特許査定の取消しの訴えは、被控訴人らが処分があったことを知った日(特許査定謄本の送達日である2011年11月7日)から6か月(行訴法14条1項)を経過して提起されたものであることは明らかであり、出訴期間を経過した不適法なものである。
そして、行服法4条1項ただし書は「・・・他の法律に審査請求又は異議申立てをすることができない旨の定めがある処分については,この限りでない。」として、行服法による不服申立てができない場合を規定しているところ、特許法195条の4は「査定又は審決及び審判又は再審の請求書の却下の決定並びにこの法律の規定により不服を申し立てることができないこととされている処分については、行政不服審査法による不服申立てをすることができない。」と規定しているから、「査定」については、行服法による不服申立てをすることはできないこととされており、本件異議申立てをしたとしてもそれ自体不適法である。
原審は、特許法195条の4の「査定」には特許査定の全てが含まれるのではなく、処分に審査官の手続違背があると主張される場合の特許査定は含まれないものと解し、被控訴人らがした上記異議申立ては適法であるからこれを不適法とした本件却下決定は誤りであると判断した。

控訴人(国)は、原判決が被控訴人らの請求を一部認容した部分を不服として控訴した。特許法195条の4の「査定」に特許査定が含まれるか否かが主な争点のひとつである。

【要旨】

主 文
1 本件控訴について
(1) 原判決中,控訴人敗訴部分を取り消す。
(2) 被控訴人らの予備的請求のうち,特許庁審査官がした特許査定の取消しを求める部分に係る訴えを却下する。
(3) 被控訴人らの予備的請求のうち,特許庁長官がした行政不服審査法による異議申立てを却下する旨の決定の取消しを求める部分に係る請求を棄却する。
2 本件附帯控訴について(略)
裁判所の判断

1.本件特許査定の取消しの訴えの適法性について
法における「査定」の用法,法195条の4の規定の制定経過等に照らして,「査定」の文言は文理に照らして解することが自然であり,このように解しても,特許査定の不服に対する司法的救済の途が閉ざされるものではないこと,特許査定に対し,司法的救済のほかに行政上の不服申立ての途を認めるべきかどうかは立法府の裁量的判断に委ねられており,その判断も不合理とはいえないことからすれば,法195条の4の「査定」が拒絶査定のみに限定され,あるいは,処分に審査官の手続違背があると主張される場合の特許査定はこれに含まれないと解すべき理由があるとは認めることができない。
そうすると,法195条の4の規定により,本件特許査定に対して行服法による不服申立てをすることは認められないから,本件異議申立ては不適法なものであって,これを前提として,本件訴訟における本件特許査定の取消しの訴えについて行訴法14条3項の規定を適用することはできない。
そして,本件特許査定の取消しの訴えが,本件特許査定謄本の被控訴人らへの送達から6か月を経過した後に提起されていることは,前記(1)のとおりである。また,その期間の徒過に正当な理由があることについては,被控訴人らから何らの主張立証もない。
よって,本件特許査定の取消しの訴えは,行訴法14条1項の定める出訴期間を徒過して提起された不適法な訴えであるといわざるを得ず,却下を免れない。
したがって,予備的請求に係る本件特許査定の取消しの訴えについて,出訴期間を遵守した適法な訴えであるとした原判決は,取消しを免れない。
2.本件却下決定についての取消事由の有無について
前記1において説示したとおり,法195条の4の「査定」には拒絶査定のみならず特許査定も含まれると解される。そうすると,特許査定は,行服法4条1項ただし書の「他の法律に審査請求又は異議申立てをすることができない旨の定めがある処分」に当たる。したがって,本件特許査定に対して行服法に基づく異議申立てをすることは認められないから,本件異議申立ては,同項に違反し不適法であり,却下を免れない。
そうすると,これと同旨の理由に基づき,本件異議申立てを却下した本件却下決定に誤りはなく,同決定に取消事由があるということはできない。
したがって,原判決中,予備的請求に係る本件却下決定の取消請求を認容した原判決は,取消しを免れない。
3.本件附帯控訴について
不適法または理由がないからいずれも却下または棄却。
【コメント】

補正書の作成時における代理人の問題もあるが、出願人もfinal draftをしっかり確認する必要がある。開発化合物が補正ミスで保護できなくなってしまったら・・・出願人(会社)側としては知財担当者だけの責任問題では済まされない。想像するだけで恐ろしい(原審(2014.03.07 「レクサン v. 国」 東京地裁平成24年(行ウ)591)のコメント参照)。

特許査定の取消しを求める旨の行政不服審査法に基づく異議申立てをしたのが2012年1月6日。
このときはまだ、処分があったことを知った日(特許査定謄本の送達日である2011年11月7日)から6か月は経過していなかった(行訴法14条1項)。
特許法195条の4の「査定」には、通常、特許査定も含まれるというのが、もともと一般的な解釈であったはずであるから、なぜその時査定取消しのための法的手段として、行訴法での処分取消し訴訟を選択しなかったのだろうか。出願人(代理人)の判断に疑問がある。補正書の記載ミスだけでなく、法手続きの選択にもミスがあったのか(それともその時、敢えて行訴法での取消し訴訟を提起しなかった特別な理由があったのだろうか)。

参考:
行政不服審査法 第4条1項
行政庁の処分(この法律に基づく処分を除く。)に不服がある者は、次条及び第六条の定めるところにより、審査請求又は異議申立てをすることができる。ただし、次の各号に掲げる処分及び他の法律に審査請求又は異議申立てをすることができない旨の定めがある処分については、この限りでない。
特許法 第195条の4
査定、取消決定又は審決及び特許異議申立書、審判若しくは再審の請求書又は第百二十条の五第二項若しくは第百三十四条の二第一項の訂正の請求書の却下の決定並びにこの法律の規定により不服を申し立てることができないこととされている処分については、行政不服審査法 による不服申立てをすることができない。
行政事件訴訟法 第14条1項
取消訴訟は、処分又は裁決があつたことを知つた日から六箇月を経過したときは、提起することができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。

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