Apr 19, 2015

2015.01.21 判定2014-600018; 2014-600019; 2014-600020

単剤承認で延長された特許権の効力は配合剤に及ぶか?: 判定2014-600018; 2014-600019; 2014-600020

請求人が求める請求の趣旨は、判定請求書の記載によれば、
  • 判定2014-600018: 「イ号物品(テルミサルタン+アムロジピンベシル酸塩 配合剤)は、特許第2709225号に係る特許権存続期間延長登録出願2002-700138号により延長された当該特許発明の技術的範囲に属さない、との判定を求める」
  • 判定2014-600019: 「イ号物品(テルミサルタン+アムロジピンベシル酸塩 配合剤)は、特許第2709225号に係る特許権存続期間延長登録出願2002-700137号により延長された当該特許発明の技術的範囲に属さない、との判定を求める」
  • 判定2014-600020: 「イ号物品(原料テルミサルタン)は、特許第2709225号に係る特許権存続期間延長登録出願2002-700137号により延長された当該特許発明の技術的範囲に属さない、との判定を求める」
というもの。

同特許第2709225号は特許権者であるベーリンガーインゲルハイムが開発したアンジオテンシンII受容体拮抗薬テルミサルタン(telmisartan)の化合物特許であり、テルミサンタンを有効成分とする商品名ミカルディスの承認に基づき特許期間が延長登録された(延長登録出願2002-700137、2002-700138)。つまり、当時、延長登録において処分の対象となった物は「テルミサルタン」であった。一方、イ号物品は、「テルミサルタン+アムロジピンベシル酸塩配合剤(判定2014-600018; 判定2014-600019)」または「同配合剤にのみ用いる原料テルミサルタン(判定2014-600020)」であった。

特許庁は、
「判定について、特許法71条1項には「特許発明の技術的範囲については、特許庁に対し、判定を求めることができる。」と規定されている。そして、この規定に基づき判定を求めることができる対象である「特許発明の技術的範囲」については、平成14年改正前の特許法70条1項に「特許発明の技術的範囲は、願書に添付した明細書の特許請求の範囲の記載に基づいて定めなければならない。」と規定され、同2項には「前項の場合においては、願書に添付した明細書の特許請求の範囲以外の部分の記載及び図面を考慮して、特許請求の範囲に記載された用語の意義を解釈するものとする。」と規定されている。これに対して、本件特許第2709225号の特許請求の範囲及び明細書の特許請求の範囲以外の部分(図面の添付はない)の記載は、これに対して、本件特許第2709225号の特許請求の範囲及び明細書の特許請求の範囲以外の部分(図面の添付はない)の記載は、特許権存続期間延長登録出願2002-700137号に基づく存続期間の延長(登録日:平成15年6月25日)の前後において変わらないのであるから、「特許権存続期間延長登録出願2002-700137号により延長された」という事実は、特許法70条の規定に基づいてなされるものである、本件特許発明の技術的範囲の判断には影響を及ぼさない。よって、本件判定の請求の趣旨は、「イ号物品が、特許第2709225号発明の技術的範囲に属さない、との判定を求める」ものであると解し、以下判断を行う。」
と前置きしたうえで、本件請求項に係る発明とイ号物品を対比した結果、イ号物品は、本件請求項に係る発明の構成要件を充足するから、特許第2709225号発明の技術的範囲に属する、と判定した。

なお、特許庁は、
「判定請求書において、請求人は、「現在本件特許権の効力は特許法68条の2,70条に基づいて、その技術的範囲が解釈される。」との前提の下、イ号製品には本件特許権の効力が及ばない旨の判定を求めているようであるが、特許法68条の2の規定による特許権の効力が及ぶ範囲について、特許庁に判定を求めることができる旨の規定は特許法に存在しないから、特許法68条の2の規定による本件特許権の効力が及ぶ範囲について、請求人は、特許庁に対して判定を求めることはできない。」
として、延長された特許権の効力が及ぶ範囲については判断をしなかった。

【コメント】

当該特許第2709225(出願日1992年2月5日)の存続期間は4年11月20日延長され(延長登録出願番号2002-700137; 延長登録出願番号2002-700138)、満了日は2017年1月25日。
  • 延長登録出願番号2002-700137(延長登録年月日: 2003.06.25)
    (1)特許権の存続期間の延長登録の理由となる処分
    薬事法第14条第1項に規定する医薬品に係る同法第23条において準用する同法第14条第1項の承認
    (2)処分を特定する番号
    承認番号 第21400AMY00234000号
    (3)処分の対象となった物
    テルミサンタン
    (4)処分の対象となった物について特定された用途
    医薬品の製造原料として用いる
  • 延長登録出願番号2002-700138(延長登録年月日: 2003.06.25)
    (1)特許権の存続期間の延長登録の理由となる処分
    薬事法第14条第1項に規定する医薬品に係る同項の承認
    (2)処分を特定する番号
    承認番号 第21400AMZ00616000号
    (3)処分の対象となった物
    テルミサンタン
    (4)処分の対象となった物について特定された用途
    高血圧症
請求人は、イ号物品は当該特許第2709225の延長登録出願番号2010-700173の「ミカムロ配合錠AP」に相当すること(判定2014-600018; 判定2014-600019)、または、延長登録出願番号2010-700173の「ミカムロ配合錠AP(テルミサルタン40mg/アムロジピンベシル酸塩6.93mg(アムロジピンとして5mg)含有)」の製造等のためにのみ用いるテルミサルタンであること(判定2014-600020)を主張した。
  • 延長登録出願番号2010-700173: 拒絶査定。
    (1)特許権の存続期間の延長登録の理由となる処分
    薬事法第14条第1項に規定する医薬品に係る同項の承認
    (2)処分を特定する番号
    承認番号 22200AMX00868000
    (3)処分の対象となった物
    ミカムロ配合錠AP
    (4)処分の対象となった物について特定された用途
    高血圧症
延長された特許権(延長登録出願番号2002-700137; 延長登録出願番号2002-700138)の効力が仮にミカルディス(テルミサンタンを有効成分とする単剤)にしか及ばず、テルミサルタンと他剤との配合剤には及ばないとなれば、出願からすでに20年経過した現在において、同特許はテルミサルタンと他剤との配合剤に対して無力ということになる。延長された特許権の効力範囲について、本件で特許庁は判断しなかったため、侵害事件として裁判の場での判断が待ち望まれる。それとも最高裁の判決で何かしらの道しるべがでてくるのか。

関連事件: 2014.10.14 「沢井製薬 v. ベーリンガー インゲルハイム」 判定2014-600007; 2014-600008

Apr 14, 2015

製薬協 「特許権存続期間延長に関する知財高裁大合議判決に対する意見(その2)」

2015年4月14日、日本製薬工業協会の知的財産委員会は「特許権存続期間延長に関する知財高裁大合議判決に対する意見(その2)」を出しました。

日本製薬工業協会webpage: 「特許権存続期間延長に関する知財高裁大合議判決に対する意見(その2)」

(引用)
 大合議判決文の傍論には、権利の効力について一部記載されているが、この記載から、延長された特許権(有効成分に係る特許権)の効力が細分化され延長対象処分の用法・用量により制限を受けるという考え方になるのだとしたら、当委員会はこれを許容することはできない。
 大合議判決の事案は、用法用量の追加承認に基づいて特許権の延長登録出願が行われたものであるが、傍論の考え方をアバスチン事件における処分に限定するとの記載はない。特許法施行令第3条には延長登録の理由となる処分として、薬事法第14条第1項の承認、同条第9項の承認、第19条の2第1項の承認等が規定されている。これらの処分に基づいて特許権が延長された場合に、延長された特許権の効力が用法・用量で制限されるとすれば、新薬開発のインセンティブとして導入された延長制度本来の趣旨に反する事例が発生するのではないかと懸念している。
参考:

2015.01.05 日本製薬工業協会webpage: 「特許権存続期間延長に関する知財高裁大合議判決に対する意見」

Apr 12, 2015

2015.01.27 「日産化学・興和 v. ダイト・持田・東和・鶴原・科研・小林化工・Meiji Seikaファルマ」 東京地裁平成25年(ワ)33993

ピタバスタチン結晶の粉末X線回折ピークの回折角は一致するか: 東京地裁平成25年(ワ)33993

【背景】

ピタバスタチンカルシウム塩の結晶に関する特許権(特許第5186108号)及びその保存方法に関する特許権(特許第5267643号(前者の分割))を有する原告(日産化学)が、被告らによる原薬及び製剤の製造・販売等が上記各特許権の侵害に当たる旨主張して、特許法100条1項に基づきその差止めを求めた事案。

本件結晶発明1:
式(1)
で表される化合物であり,7~13%の水分を含み,CuKα放射線を使用して測定するX線粉末解析において,4.96°,6.72°,9.08°,10.40°,10.88°13.20°,13.60°,13.96°,18.32°,20.68°,21.52°,23.64°,24.12°及び27.00°の回折角(2θ)にピークを有し,かつ,30.16°の回折角(2θ)に,20.68°の回折角(2θ)のピーク強度を100%とした場合の相対強度が25%より大きなピークを有することを特徴とするピタバスタチンカルシウム塩の結晶(但し,示差走査熱量測定による融点95℃を有するものを除く)。

(下線部が本件で争点となった構成要件C・C’)
【要旨】

主 文
原告の請求をいずれも棄却する。(他略)
裁判所の判断
本件各発明の技術的範囲に属するというためには構成要件C・C’の回折角の数値が15本全てのピークについて小数点第2位まで一致することを要するというべきである。

ピタバスタチンカルシウム塩の結晶形態には,本件明細書の結晶形態A~C及びチバ特許明細書の結晶多形A~F以外にも未知の結晶多形が存在し得るところ,粉末X線回折測定の回折角の数値により結晶形態を特定した医薬化合物の発明の特許出願には,ピークの回折角に±0.1°~0.2°の許容誤差を設けるものが多数存在し,結晶形態を特定するピークの本数も数本~十数本で特定するものなど多様であって,その技術的範囲が一定の許容誤差ないし一定のピーク本数によって判断されるとの技術常識は存在しないことがうかがわれるから,構成要件C・C’に記載された15本の数値のうち一部のみが一致し,又は一定の誤差の範囲で一致するにとどまる結晶がこれに含まれると解する場合には,本件各発明の技術的範囲への属否が一義的には定まらないこととなる。また,上記のように解すると,原告自身が本件各発明の技術的範囲に属しないことを認めている結晶形態までもがこれに属する結果になるなど(例えば,チバ特許明細書に記載の結晶形態Eは,構成要件C・C’に記載の15本のピークが全て±0.2°以内で一致する回折角を含んでいる。),不合理な結果となる。さらに,原告は,本件結晶特許の出願当初は1本のピークの回折角(許容誤差のない小数点以下2桁の数値)及び相対強度をもって発明を特定していたが,拒絶理由通知を受けて構成要件Cの回折角に係る補正をし,この補正が限定的減縮に当たる旨の意見を表明したのであるから,上記補正により,発明の技術的範囲を字義どおり小数点以下2桁の回折角の数値が15個全て一致する結晶に限定したとみるほかなく,このように解釈することが補正の趣旨に沿うものというべきである。

以上によれば,本件各発明の構成要件C・C’を充足するためには,15本のピークの全ての回折角の数値が小数点第2位まで一致することを要し,その全部又は一部が一致しないピタバスタチンカルシウム塩の結晶又はその保存方法はその技術的範囲に属するということができないものと解するのが相当である。

これを被告原薬等についてみると,~原告測定においては,15本全てのピークについて回折角の数値が小数点第2位まで一致するような測定結果は得られなかったというのである。そして,原告が被告原薬等に含まれるとするピタバスタチンカルシウム塩における15本のピークの回折角は別紙物件目録記載1のとおりであり,うち9本は構成要件C・C’と相違している。そうすると,同目録記載の回折角自体から,被告原薬等は構成要件C・C’を充足しないと判断すべきことになる。

以上の認定判断に対し,原告は,①本件発明の対象は本件明細書記載の結晶形態Aであり,その充足性は当該ピタバスタチンカルシウム塩の結晶の粉末X線回折測定で得られたチャートにおいて結晶形態Aとの同一性を判断するのに十分な数のピークが確認されれば足りる,②上記の同一性の判断は,日本薬局方等の記載によれば,X線粉末回折法において±0.2°以内の誤差で一致するピークが10本以上確認されるなどすれば十分である,③別紙原告測定結果によればモチダ錠及びこれに用いられた被告原薬は構成要件C・C’の回折角を充足すると主張する。

しかしながら,本件各発明の特許請求の範囲に結晶形態Aという記載はなく,また,前記発明の詳細な説明によっても,結晶形態Aとの同一性は構成要件C・C’の回折角の数値が全て一致するか否かにより判定すべきものと解されるから,構成要件C・C’の回折角の充足性は,端的に,当該結晶がその数値を全て充足するか否かにより判断すべきものであって,上記①の主張は失当である。
また,日本薬局方は,厚生労働大臣が医薬品の性状及び品質の適正を図るため,医薬品,医療機器等の品質,有効性及び安全性の確保等に関する法律41条(平成25年法律第84号による廃止前の薬事法41条も同趣旨)に基づき定める医薬品の規格基準書であり,原告の挙げる各文献中の記載も,上記法律の目的とする保健衛生の向上という公益的見地から医薬品の同一性等を判断する基準として記載されたものと解される。これに対し,医薬品等に係る特許発明の技術的範囲は,明細書の記載及び図面を考慮し当該発明に係る特許請求の範囲の記載に基づいて定めるべきものであるから(特許法70条1項,2項),日本薬局方の記載と常に一致しなければならないものではない。したがって,上記②の主張も理由がない。さらに,上記③の主張は,原告の主張する回折角の解釈を前提とするものであるから,明らかに失当である。

以上によれば,その余の点について判断するまでもなく,原告の請求はいずれも理由がないから,これを棄却することとして,主文のとおり判決する。
【コメント】

特許を取得するために結晶形の粉末X線回折ピークの本数とそれらの回折角の数値を特定しすぎた結果、特許発明の技術的範囲が狭くなりすぎてしまった。

この結晶特許出願に相当する欧米出願状況を確認したところ、米国では未だに拒絶理由を解消することができず継続出願でつないでいる状況である。一方、欧州では、審査段階で"Observations by third parties"が数回提出されたが、最終的には下記結晶形クレームが成立し(EP1697326B1)、異議申立は行われなかった。
Claim 13. Crystal of a compound of the following formula (1):(略)
which contains from 5 to 15% of water and which shows, in its X-ray powder diffraction as measured by using CuKα radiation, a peak having a relative intensity of more than 25% at a diffraction angle (2θ) of 30.16°.
Pitavastatinのorangebookには結晶特許US8557993がリストされている。これは、本件特許5186108の審査段階で特許法29条の2の拒絶理由として引用された引用文献2(後にチバ スペシャルティ ケミカルズから2008年3月31日に日産化学へ出願人名義変更。その後審査を経て成立。特許5192147)に相当する米国特許である。
2013.08.28 謹告 ピタバスタチンカルシウムに関する特許権について」によれば、こちらの結晶特許5192147についても言及していることから、日本における後発メーカーとの特許係争では、結晶特許5192147での権利行使の状況はどうなっているのか気になるところである。この特許5192147は、沢井製薬からの無効審判請求を受けたが、請求不成立との審決に至っている(無効2013-800212)。

参考:

Apr 4, 2015

2015.01.22 「エフ. ホフマン-ラ ロシュ v. 特許庁長官」 知財高裁平成25年(行ケ)10286

イバンドロネート多形Bの同一性: 知財高裁平成25年(行ケ)10286

【背景】

「イバンドロネート多形B」に関する特許出願(特願2007-553501)の拒絶審決(不服2012-2606)取消訴訟。審決理由は、本願発明は先願発明(特願2006-536948(出願人: テバ ファーマシューティカル))と同一であるので特許法29条の2により特許を受けることができないというものだった。

本願発明(請求項1):
角度2θで表される,
角度2θ±0.2°
9.7°
12.2°
14.4°
16.8°
25.8°
の特徴的なピークを有する,CuKα放射線を用いて得られたX線粉末回折パターンにより特徴付けられる,3-(N-メチル-N-ペンチル)アミノ-1-ヒドロキシプロパン-1,1-ジホスホン酸一ナトリウム塩一水和物(イバンドロネート)の結晶多形。
【要旨】

主 文
1 特許庁が不服2012-2606号事件について平成25年6月10日にした審決を取り消す。(他略)
裁判所の判断
1 取消事由1(先願発明の認定の誤り,一致点の認定の誤り及び相違点の看過)について
先願明細書には,フォームQQは一水和物~三水和物の範囲で存在することができる旨記載されているところ,熱重量分析(TGA)による重量損失が約5~12%であること,異なる複数の調製方法により調製できることからすれば,フォームQQが一水和物とは異なる水和形態で存在し得る結晶形であることは明らかである。~したがって,本件審決が,先願発明であるフォームQQを一水和物と認定したことには誤りがあるというほかない。~そして,本件審決は,先願発明を一水和物であると誤って認定した結果,次の相違点(以下「相違点B’」という。)を看過した誤りがある。
相違点B’:本願発明は3-(N-メチル-N-ペンチル)アミノ-1-ヒドロキシプロパン-1,1-ジホスホン酸一ナトリウム塩の一水和物であるのに対して,先願発明においては水分子の存在形態が不明である点。
そして,この相違点B’により,本願発明は先願発明と同一であるとはいえないことから,本件審決による先願発明の認定の誤り,一致点の認定の誤り及び相違点の看過は,審決の結論に影響を及ぼすものである。
2 取消事由2(相違点についての判断の誤り)について
本願明細書には「特徴的なピーク」又は「特性ピーク」という用語について特段の説明や定義はないが,「特徴的な」又は「特性」の通常の用語例からすれば,「その結晶を特徴づける特有のピーク」と解するのが相当であり,先願明細書において「特徴づけられる」として挙げられ,図18からも看取できる上記10個のピークも,これと同様の意味で用いられているものと解される。そうすると,先願明細書には,フォームQQの特徴的なピークとして,2θが9.7±0.2°,12.2±0.2°及び14.4±0.2°のものが記載されているということはできない。
また,先願明細書中でフォームQQが「特徴づけられる」ピークであるとして挙げられている10個のピークは,いずれも,図18において相応の強度を有し,明確に把握できるものである。これに対して,図18において,本件審決が特徴的なピークとして挙げた2θが9.7±0.2°,12.2±0.2°及び14.4±0.2°の位置には,たとえピークが把握できるとしても強度が低いものであり,先願明細書においても指摘されていないのであるから,ことさらこれらを「特徴的なピーク」として取り上げるべき事情は見出せない。
したがって,本件審決が,先願発明は特徴的なピークを示す角度2θ±0.2°として「9.7°」,「12.2°」及び「14.4°」も含むものであり,本願発明と先願発明との前記第2の3(3)イの相違点は実質的な相違点ではないと判断したことには誤りがあるというべきである。
3 結論
以上によれば,原告主張の取消事由1及び2はいずれも理由があるから,取消事由3について検討するまでもなく,本件審決は取消しを免れない。
【コメント】

下記X線粉末回折パターンの上部は本願発明である多形Bのものであり、下部は先願発明フォームQQのものである。本願発明の特徴的ピークとして挙げられている5つの位置(角度2θ±0.2°が9.7°、12.2°、14.4°、16.8°、25.8°)とそれらに該当する位置にある先願発明フォームQQのピークを赤線にて見比べた。


X線粉末回折パターンを比べれば同じものなのでは?そもそも「特徴的なピーク」と指摘したか指摘していないかで同一か否かの判断が分かれてしまうというのは腑に落ちない感じがある。確かに、先願発明は水和物の形態も含めて何だかよくわからない不明の形態であるということが明らかな場合には、引用発明の適格性に問題があろう。

しかし、(先願であるテバからの立場で考えれば)せっかく結晶多形の発明をして出願した(特許になった)にもかかわらず、マイナーなピークを特徴的なピークとして指摘していなかったがために、第三者による後願でそのようなマイナーピークを特徴的ピークとして同一の結晶形発明の特許を取られてしまうという事態が起こりうることには納得がいかないだろう。このようなケースを回避するために、マイナーなピークもすべて特徴的なピークだとして明細書に指摘しておくということも一つのアイデアかもしれないが、果たしてそんなことまでしなければいけないのだろうか…。

関連判決:

2015.01.22 「エフ. ホフマン-ラ ロシュ v. 特許庁長官」 知財高裁平成25年(行ケ)10285