Aug 29, 2015

2015.07.23 「興和 v. 東和薬品」 知財高裁平成26年(ネ)10138

ピタバスタチンのピタバとPITAVA(その9): 知財高裁平成26年(ネ)10138

【背景】

「PITAVA」の標準文字からなる商標(分割商標権第4942833号の2、指定商品はピタバスタチンカルシウムを含有する薬剤)の商標権者である控訴人(興和)が、被控訴人(東和薬品)に対し、「ピタバ」を付したPTPシートを包装とするピタバスタチンカルシウムを含有する薬剤の販売差止め及び廃棄を求めた事案。

原審: 2014.11.28 「興和 v. 東和薬品」 東京地裁平成26年(ワ)772

【要旨】

裁判所は、被控訴人が被控訴人の行為は商標的使用ではなく、本件商標権の侵害行為又は侵害とみなされる行為には該当しないと判断。請求棄却した原判決は相当であり本件控訴は理由がないとして棄却した。

(抜粋)
「被控訴人各商品において『ピタバ』の文字部分が強調されているのは,有効成分の語の特徴的部分を強調することによって,他種の薬剤との混同を可及的に防止するという意義を有するにすぎず,被控訴人各商品の販売名の一部であることを超えて,独立の標章ととらえられるものではない。そして,医師等又は薬剤師などの医療関係者にとって,~また,患者にとっても,『ピタバスタチン』又は『ピタバスタチンカルシウム』,あるいはこれを略記した『ピタバ』は,いずれも,出所識別機能又は自他商品識別機能を有しておらず,(中略)これらの標章は,他種の薬剤との混同を防止するという識別のために用いられているのであり(患者にとってみれば,その表示の意義を知らないでも,自分が飲むべき薬か否かの区別がつけば十分である。),他社の同種薬剤との混同の防止,すなわち,出所識別又は自他商品識別のために用いられているのではなく,かつ,そのような機能も果たし得ない。したがって,被控訴人標章1~10が,本件商標の使用に該当すると認めることはできない。」
【コメント】

原審(2014.11.28 「興和 v. 東和薬品」 東京地裁平成26年(ワ)772)と同じく商標的使用に該当せずと判断された。

関連判決(ピタバスタチンのピタバとPITAVA(その1~8):

Aug 22, 2015

イーライリリー エビスタ®の用途特許の無効審決の取り消し求め審決取消訴訟を提起

イーライリリーは、骨粗鬆症治療剤エビスタ®(一般名:ラロキシフェン塩酸塩(Raloxifene Hydrochloride)、選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM))の用途特許(特許第2749247号)に関する特許庁の特許無効審決(2015.04.15 無効2013-800139)に対し、これを不服として、同審決の取り消しを求め、知財高裁へ審決取消訴訟を提訴しました。

沢井製薬が無効審判請求人であり、特許庁が本件特許を無効と判断した理由は進歩性の問題でした。
訂正発明1(請求項1):
ラロキシフェンまたはその薬学上許容し得る塩を活性成分として含む、ヒトの骨粗鬆症の治療または予防用医薬製剤であって、タモキシフェンより子宮癌のリスクの低い医薬製剤。
特許庁は、本件訂正発明1と引用発明との一致点を「ラロキシフェンまたはその薬学上許容し得る塩を活性成分として含む医薬製剤」、相違点のひとつを、本件訂正発明1は「タモキシフェンより子宮癌のリスクの低い」のに対し、引用発明はこの点についての記載がない点(相違点2)であると認定した上で、上記「タモキシフェンより子宮癌のリスクの低い」との記載は、単に、「ラロキシフェンまたはその薬学上許容し得る塩を活性成分として含む医薬製剤」が本来備えている性質を記載したものであると認められ、引用発明のラロキシフェンを活性成分として含む医薬製剤も、当然、備えている性質であると認められることから、この点で、本件訂正発明1が引用発明と異なる発明である、とすることはできないとするなど、本件訂正発明1は、引用発明および優先日における技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないと判断しました。
2015年8月17日付け沢井製薬のpress releaseによれば、エビスタ®錠60mgの後発品(ラロキシフェン塩酸塩錠 60mg「サワイ」)は承認され、本年12月に薬価収載し、販売を開始する予定とのことです。とはいえ、知財高裁で審決が取り消され、特許が有効であるとの判断が下された場合には販売中止となる可能性もあり、知財高裁の判断を待たずに12月に薬価収載して販売に踏み切るのかどうか、状況を見守りたいと思います。

テバ、東和薬品も同特許に対して無効審判を請求していました(無効2013-800209(請求日2013.11.05、審判請求取下2014.07.16)、無効2014-800140(請求日2014.08.27))。

この用途特許の存続期間満了日は、5年の存続期間延長登録が認められたため、2018年7月28日となっています。

エビスタ®の2014年度の日本売上高は205億円(日本イーライリリー press release: 2015.04.08 「日本イーライリリー 2014年度 売上高は2,105億円を達成 ~対前年比売上7%増、既存製品好調で成長路線を継続~」)。2014年通年の「エビスタ」の世界全体での売上は、前年比 60%減の4億1,980万ドル、米国での売上は2014年3月にエビスタの特許期間が満了したために73%減の2億720万ドルとなっています(日本イーライリリー press release: 2015.02.10 「米国イーライリリー社、2014年第4四半期および通年の業績を報告」)。

参考:


Aug 18, 2015

塩野義がアイセントレスを販売するMSDに対して特許侵害訴訟を提起

2015年8月18日の塩野義製薬のpress releaseによれば、同社が保有するドイツ特許及び日本特許(第5207392号)に基づき、アイセントレス®(有効成分はラルテグラビルカリウム(raltegravir potassium)、HIVインテグラーゼ阻害剤)を販売するMSD社に対し特許侵害訴訟を提起したとのことです。

Aug 15, 2015

2015.07.16 「興和 v. Meiji Seikaファルマ」 知財高裁平成26年(ネ)10098

ピタバスタチンのピタバとPITAVA(その8): 知財高裁平成26年(ネ)10098

【背景】

「PITAVA」の標準文字からなる商標(分割商標権第4942833号の2、指定商品はピタバスタチンカルシウムを含有する薬剤)の商標権者である控訴人(興和)が、「ピタバ」を付したピタバスタチンカルシウムを含有する薬剤を販売する被控訴人(Meiji Seikaファルマ)の行為が商標権侵害に該当すると主張して、被控訴人薬剤の販売差止め及び廃棄を求めた事案。

原審: 2014.08.28 「興和 v. Meiji Seikaファルマ」 東京地裁平成26年(ワ)770

【要旨】

裁判所は、被控訴人各商品の錠剤に付された被控訴人各標章は、「需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができる態様により使用されていない商標」(商標法26条1項6号)に該当し、また、商品の「品質」又は「原材料」を「普通に用いられる方法で表示する商標」(同項2号)に該当するものと認められ、控訴人が有する本件分割商標権の効力は被控訴人各標章に及ばないものと認められるから、控訴人の請求は、いずれも理由がないものと判断した。

【コメント】

原審では、被控訴人標章は被控訴人商品の出所を表示するものではなく、有効成分の説明的表示であると認識すると考え、被控訴人標章の使用は、商標的使用に当たらず、本件商標権を侵害するものではないとした。こうした、いわゆる「商標的使用」でない商標の使用については商標権侵害を構成しないものとする裁判例はこれまで数多く蓄積されていたが、こうした裁判例は商標法上の特定の規定を根拠とするものではなかった(平成26年法律改正(平成26年法律第36号)解説書「第4章 商標法の保護対象の拡充等」p181)。

しかし、2015年4月1日付で施行された平成26年特許法等改正法(平成26年5月14日法律第36号)で商標法26条6号が新設され、いわゆる「商標的使用」がされていない商標に対しては商標権の効力が及ばないことが明文化されたことで、本件について知財高裁は商標法上の規程を根拠として原審と同じ結論を出すことができたわけである。

参考:

(商標権の効力が及ばない範囲)
第二十六条 商標権の効力は、次に掲げる商標(他の商標の一部となつているものを含む。)には、及ばない。
一 (略)
二 当該指定商品若しくはこれに類似する商品の普通名称、産地、販売地、品質、原材料、効能、用途、形状、生産若しくは使用の方法若しくは時期その他の特徴、数量若しくは価格又は当該指定商品に類似する役務の普通名称、提供の場所、質、提供の用に供する物、効能、用途、態様、提供の方法若しくは時期その他の特徴、数量若しくは価格を普通に用いられる方法で表示する商標
三~五 (略)
六 前各号に掲げるもののほか、需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができる態様により使用されていない商標

関連判決(ピタバスタチンのピタバとPITAVA(その1~7):


Aug 7, 2015

2015.06.24 「和氣技術研究所 v. 新光」 知財高裁平成26年(行ケ)10206

共同出願違反で無効: 知財高裁平成26年(行ケ)10206

原告(和氣技術研究所)が保有する「袋入り抗菌剤」に関する特許(5172002号)について被告(新光)が無効審判を請求した。発明特定事項hを有する本件発明はいずれもBが発明の完成に貢献したものであり、AとBの共同発明に該当するにもかかわらず、本件特許出願はAの単独名義でされたものであるから共同出願(特許法38条)違反であるとして本件特許は無効とすべきとした審決(無効2013-800078)の取消訴訟。

裁判所は、審決がBを本件発明の共同発明者として認定した点に誤りはなく、原告の取消事由の主張には理由がないから、審決にはこれを取り消すべき違法はないものと判断した。

Aは製品販売代理店候補の一社として被告の代表者Bを紹介された後、BはAの事務所に出入りするようになり、Bに対してAは製品の問題点、改良品の製造を考えていること等を話した。それ以降Bはアイデアや設計図を提案することとなったわけである。

発明の帰属に関する取り決めもしていなかったようである。他者と共同で何らかの事業を進めていくに当たり、発明の帰属をしっかり整理せずに、出願してしまい問題となってしまった典型的な例といえる。

参考: エンブロイ(株) webpage


Aug 1, 2015

2015.06.10 「国 v. レクサン」 知財高裁平成26年(コ)10004; 10005

補正ミスに気付かず特許査定に。特許査定を取り消せるのか?: 知財高裁平成26年(コ)10004; 10005

(原審: 2014.03.07 「レクサン v. 国」 東京地裁平成24年(行ウ)591

【背景】

「1-[(6,7-置換-アルコキシキノキサリニル)アミノカルボニル]-4-(ヘテロ)アリールピペラジン誘導体」に関する特願2007-542886(WO2006/054830; 特表2008-520653)について、出願人である本件被控訴人(レクサン及びコーリアリサーチ)は、誤った内容を記載した手続補正書を提出したまま特許査定(2011年11月7日)となったことに気付き、特許査定の取消しを求める旨の行政不服審査法に基づく異議申立てをした(2012年1月6日)が、特許庁長官は却下決定をした(同4月26日)。本件被控訴人は、この却下決定の取消し等を求めて訴訟を提起した(同8月27日)。

本件特許査定の取消しの訴えの適法性についての控訴人(国)の主張骨子は下記のとおり。
本件特許査定の取消しの訴えは、被控訴人らが処分があったことを知った日(特許査定謄本の送達日である2011年11月7日)から6か月(行訴法14条1項)を経過して提起されたものであることは明らかであり、出訴期間を経過した不適法なものである。
そして、行服法4条1項ただし書は「・・・他の法律に審査請求又は異議申立てをすることができない旨の定めがある処分については,この限りでない。」として、行服法による不服申立てができない場合を規定しているところ、特許法195条の4は「査定又は審決及び審判又は再審の請求書の却下の決定並びにこの法律の規定により不服を申し立てることができないこととされている処分については、行政不服審査法による不服申立てをすることができない。」と規定しているから、「査定」については、行服法による不服申立てをすることはできないこととされており、本件異議申立てをしたとしてもそれ自体不適法である。
原審は、特許法195条の4の「査定」には特許査定の全てが含まれるのではなく、処分に審査官の手続違背があると主張される場合の特許査定は含まれないものと解し、被控訴人らがした上記異議申立ては適法であるからこれを不適法とした本件却下決定は誤りであると判断した。

控訴人(国)は、原判決が被控訴人らの請求を一部認容した部分を不服として控訴した。特許法195条の4の「査定」に特許査定が含まれるか否かが主な争点のひとつである。

【要旨】

主 文
1 本件控訴について
(1) 原判決中,控訴人敗訴部分を取り消す。
(2) 被控訴人らの予備的請求のうち,特許庁審査官がした特許査定の取消しを求める部分に係る訴えを却下する。
(3) 被控訴人らの予備的請求のうち,特許庁長官がした行政不服審査法による異議申立てを却下する旨の決定の取消しを求める部分に係る請求を棄却する。
2 本件附帯控訴について(略)
裁判所の判断

1.本件特許査定の取消しの訴えの適法性について
法における「査定」の用法,法195条の4の規定の制定経過等に照らして,「査定」の文言は文理に照らして解することが自然であり,このように解しても,特許査定の不服に対する司法的救済の途が閉ざされるものではないこと,特許査定に対し,司法的救済のほかに行政上の不服申立ての途を認めるべきかどうかは立法府の裁量的判断に委ねられており,その判断も不合理とはいえないことからすれば,法195条の4の「査定」が拒絶査定のみに限定され,あるいは,処分に審査官の手続違背があると主張される場合の特許査定はこれに含まれないと解すべき理由があるとは認めることができない。
そうすると,法195条の4の規定により,本件特許査定に対して行服法による不服申立てをすることは認められないから,本件異議申立ては不適法なものであって,これを前提として,本件訴訟における本件特許査定の取消しの訴えについて行訴法14条3項の規定を適用することはできない。
そして,本件特許査定の取消しの訴えが,本件特許査定謄本の被控訴人らへの送達から6か月を経過した後に提起されていることは,前記(1)のとおりである。また,その期間の徒過に正当な理由があることについては,被控訴人らから何らの主張立証もない。
よって,本件特許査定の取消しの訴えは,行訴法14条1項の定める出訴期間を徒過して提起された不適法な訴えであるといわざるを得ず,却下を免れない。
したがって,予備的請求に係る本件特許査定の取消しの訴えについて,出訴期間を遵守した適法な訴えであるとした原判決は,取消しを免れない。
2.本件却下決定についての取消事由の有無について
前記1において説示したとおり,法195条の4の「査定」には拒絶査定のみならず特許査定も含まれると解される。そうすると,特許査定は,行服法4条1項ただし書の「他の法律に審査請求又は異議申立てをすることができない旨の定めがある処分」に当たる。したがって,本件特許査定に対して行服法に基づく異議申立てをすることは認められないから,本件異議申立ては,同項に違反し不適法であり,却下を免れない。
そうすると,これと同旨の理由に基づき,本件異議申立てを却下した本件却下決定に誤りはなく,同決定に取消事由があるということはできない。
したがって,原判決中,予備的請求に係る本件却下決定の取消請求を認容した原判決は,取消しを免れない。
3.本件附帯控訴について
不適法または理由がないからいずれも却下または棄却。
【コメント】

補正書の作成時における代理人の問題もあるが、出願人もfinal draftをしっかり確認する必要がある。開発化合物が補正ミスで保護できなくなってしまったら・・・出願人(会社)側としては知財担当者だけの責任問題では済まされない。想像するだけで恐ろしい(原審(2014.03.07 「レクサン v. 国」 東京地裁平成24年(行ウ)591)のコメント参照)。

特許査定の取消しを求める旨の行政不服審査法に基づく異議申立てをしたのが2012年1月6日。
このときはまだ、処分があったことを知った日(特許査定謄本の送達日である2011年11月7日)から6か月は経過していなかった(行訴法14条1項)。
特許法195条の4の「査定」には、通常、特許査定も含まれるというのが、もともと一般的な解釈であったはずであるから、なぜその時査定取消しのための法的手段として、行訴法での処分取消し訴訟を選択しなかったのだろうか。出願人(代理人)の判断に疑問がある。補正書の記載ミスだけでなく、法手続きの選択にもミスがあったのか(それともその時、敢えて行訴法での取消し訴訟を提起しなかった特別な理由があったのだろうか)。

参考:
行政不服審査法 第4条1項
行政庁の処分(この法律に基づく処分を除く。)に不服がある者は、次条及び第六条の定めるところにより、審査請求又は異議申立てをすることができる。ただし、次の各号に掲げる処分及び他の法律に審査請求又は異議申立てをすることができない旨の定めがある処分については、この限りでない。
特許法 第195条の4
査定、取消決定又は審決及び特許異議申立書、審判若しくは再審の請求書又は第百二十条の五第二項若しくは第百三十四条の二第一項の訂正の請求書の却下の決定並びにこの法律の規定により不服を申し立てることができないこととされている処分については、行政不服審査法 による不服申立てをすることができない。
行政事件訴訟法 第14条1項
取消訴訟は、処分又は裁決があつたことを知つた日から六箇月を経過したときは、提起することができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。