Feb 22, 2016

2016.01.13 「ノバルティス ヴァクシンズ アンド ダイアグノスティクス v. 特許庁長官」 知財高裁平成27年(行ケ)10016

インフルエンザワクチンの発明の進歩性: 知財高裁平成27年(行ケ)10016

【背景】

「細胞培養物において増殖されたインフルエンザウイルスから調製された非ビリオン抗原を含むアジュバントワクチン」に関する特許出願(特願2008-538417号、特表2009-514838号、WO2007/052055)の拒絶審決取消訴訟。争点は、進歩性判断の当否(顕著な作用効果の有無)。

補正発明:
インフルエンザウイルス感染に対して保護するための免疫原性組成物であって,該組成物は,
(i)細胞培養物において増殖されたウイルスから調製された,精製された表面抗原を含む非ビリオンインフルエンザウイルス抗原;および
(ii)該組成物を受容した患者において誘発されるT細胞応答を増強するように機能し得るアジュバントを含み,該アジュバントは,5容量%のスクアレン,0.5容量%のポリソルベート80,および,0.5容量%のSpan 85を含有し,かつ,サブミクロンの小滴を有する水中油型エマルションを含み,
ここで,該組成物は,ニワトリDNA,オボアルブミンおよびオボムコイドを含まない,免疫原性組成物。
本願補正発明と引用発明との相違点は、上記下線部分について引用発明がそうであるかどうかが明らかでない点であった。

【要旨】

主 文
1 原告の請求を棄却する。
裁判所の判断
取消事由(顕著な作用効果を看過した誤り)について

「補正発明の相違点に係る構成について,以上のとおり容易想到なものと認められるとしても,引用発明と比較した補正発明の有利な効果が,当業者の技術水準から予測される範囲を超えた顕著なものと認められる場合には,補正発明の進歩性を肯定すべきである。そこで,以下,補正発明及び引用発明の効果等について,検討する。

~本願明細書には,細胞培養物で増殖されたウイルスから調製した抗原を使用しつつ,MF59をアジュバントとして使用した場合に関するT細胞応答の効果の有無及び程度に関し,他のアジュバントを使用した場合やアジュバントなしの場合との比較はされているが,使用した抗原の培養場所が細胞培養物以外の場合との比較という観点からの記載はない。
この点について,引用発明自体は,細胞培養物で抗原を培養することを除外していないが,仮に引用発明が鶏卵において培養された抗原を用いて調製されたワクチンであるとしても,本願明細書からは,上記のとおり,使用した抗原の培養場所の違いによるT細胞応答の効果の違いを読み取ることはできないから,補正発明におけるT細胞応答の効果が,引用発明の効果と対比して顕著ということはできない。

また,~引用発明におけるTh細胞の誘導の割合は不明であるが,ワクチンとして実用可能であった以上,引用発明でも,Th細胞の誘導があったと認められる。他方,図1で示された補正発明におけるTh細胞の誘導の割合が,本件優先日の技術常識上,ワクチンとしての効果の差をもたらすような高い値を示していると判断することはできない。そうすると,図1で示された補正発明のTh細胞の誘導の割合が,引用発明におけるそれと質的,量的な差異があることを読み取ることはできない。
~本件優先日当時において,アジュバントのメカニズム自体は明らかではないが,Th1誘導の増加等は,アジュバントのみが関与しているという技術常識はなく,一緒に投与される抗原の種類や性質もこれに関与していると考えられていた(弁論の全趣旨)。~したがって,図1,6及び8は,特定の抗原を用いた場合に限られ,補正発明全体における効果とはいえない上に,異なる抗原を用いた場合の効果と比較することもできず,この記載を,補正発明の顕著な効果の根拠とすることはできない。」
【コメント】

特許庁が主張するとおり、そもそも引用発明も補正発明もアジュバントとしてMF59を含むワクチンであるから、アジュバントとして優れたものであるとしても、引用発明に対する補正発明の効果の顕著性を主張できていないという点が問題だった。

ノバルティスのインフルエンザワクチン事業のCSLへの売却は完了している。

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