May 5, 2016

2016.03.03 「デビオファーム v. 日本化薬」 東京地裁平成27年(ワ)12416

「包含」されるシュウ酸は組成物中に存在する全てのシュウ酸をいい、添加したシュウ酸に限定されない: 東京地裁平成27年(ワ)12416

【背景】

「オキサリプラチン溶液組成物ならびにその製造方法及び使用」に関する特許権(第4430229号)を有する原告(デビオファーム)が、被告(日本化薬)に対し、被告製品の生産等が特許権侵害に当たると主張して、被告製品の生産等の差止め及び廃棄を求めた事案。

本件発明:
A オキサリプラチン,
B 有効安定化量の緩衝剤および
C 製薬上許容可能な担体を包含する
D 安定オキサリプラチン溶液組成物であって,
E 製薬上許容可能な担体が水であり,
F 緩衝剤がシュウ酸またはそのアルカリ金属塩であり,
G 緩衝剤の量が,以下の:
(a)5×10-5M~1×10-2M,
(b)5×10-5M~5×10-3M
(c)5×10-5M~2×10-3M
(d)1×10-4M~2×10-3M,または
(e)1×10-4M~5×10-4M
の範囲のモル濃度である,組成物。
被告製品は構成要件Gに規定されているモル濃度の範囲内にある量のシュウ酸を含有するところ、このシュウ酸は添加されたものではなかった。原告は、「緩衝剤」であるシュウ酸はオキサリプラチン水溶液中に存在すれば足り、添加されたシュウ酸に限定されないから、被告製品は構成要件B、F及びGを充足すると主張するのに対し、被告は、「緩衝剤」であるシュウ酸はオキサリプラチン水溶液に添加されたものに限定されるから、被告製品は上記各構成要件を充足しないと主張した。


【要旨】

主 文
1 被告は,別紙被告製品目録記載1,2及び3のオキサリプラチン製剤の生産,譲渡又は譲渡の申出をしてはならない。
2 被告は,前項記載の各オキサリプラチン製剤を廃棄せよ。
3 訴訟費用は被告の負担とする。
4 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。
裁判所の判断
~オキサリプラチン水溶液に「包含」される緩衝剤であるシュウ酸等の量のみが規定され(構成要件G),シュウ酸等を添加することなど上記組成物の製造方法に関する記載はない。この「包含」とは「要素や事情を中にふくみもつこと」(広辞苑〔第六版〕参照)をいうことからすれば,オキサリプラチン水溶液に「包含」されるシュウ酸とは,オキサリプラチン水溶液中に存在する全てのシュウ酸をいい,添加したシュウ酸に限定されるものではないと解するのが相当である。
~そうすると,本件明細書の記載からは,本件発明が,従来既知のオキサリプラチン組成物(凍結乾燥粉末形態のものや乙1発明のように水溶液となっているもの)の欠点を克服し,改良することを目的とし,その解決手段としてシュウ酸等を緩衝剤として包含するという構成を採用したと認められるのであり,更にこの緩衝剤を添加したものに限定するという構成を採用したとみることはできない。
以上によれば,構成要件Gに規定されたモル濃度の範囲内にある量のシュウ酸を含んでいれば構成要件B,F及びGを充足すると解すべきところ,被告製品は前記前提事実(3)イのとおりこれを含有する。したがって,被告製品は本件発明の技術的範囲に属すると判断するのが相当である。
(争点(2)(新規性欠如、進歩性欠如、サポート要件違反について)は省略)
~被告製品はいずれも本件発明の技術的範囲に属するものであり,本件特許に無効理由があるとは認められないから,原告が本件特許権の行使を妨げられることはない。よって,原告の請求はいずれも理由があるから,これらを認容することとし,仮執行宣言については主文第2項に限り相当でないからこれを付さないこととして,主文のとおり判決する。
【コメント】

「製薬上許容可能な担体が水であり,緩衝剤がシュウ酸またはそのアルカリ金属塩」であるのだから、本件発明は、言い換えれば、「オキサリプラチン,有効安定化量のシュウ酸またはそのアルカリ金属塩および水を包含する安定オキサリプラチン溶液組成物であって,緩衝剤の量が,以下の(略)の範囲のモル濃度である,組成物」となる。特許請求の範囲の文言を素直に読めば、添加されたものか否かにかかわらず、「シュウ酸を包含する組成物」である。被告製品が本件発明の技術的範囲に属するとの裁判所の判断は妥当と思われる。

本件特許について、無効審判(請求人: ホスピーラ; 無効2014-800121)が請求されたが請求は成り立たない旨の審決がなされ、現在、知財高裁でその審決取消訴訟が係属しているようである(平成27年(行ケ)10167; 出訴日 2015.08.21)。

参考:

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