May 28, 2017

2017.04.27 「デビオファーム v. 日医工」 知財高裁平成28年(ネ)10111

対応外国出願の禁反言が特許発明の技術的範囲に適用されるのか: 知財高裁平成28年(ネ)10111

【背景】

「オキサリプラチン溶液組成物ならびにその製造方法及び使用」に関する特許権(第4430229号)を有する控訴人(一審原告: デビオファーム)が、被控訴人(一審被告: 日医工)に対し、日医工各製品の製造販売等が特許権侵害に当たると主張して、日医工製品の製造等の差止及び廃棄を求めた事案。原判決(2016.10.28 「デビオファーム v. 日医工」 東京地裁平成27年(ワ)28468)は、日医工各製品はいずれも本件発明の技術的範囲に属しないとしてデビオファームの請求を棄却したため、デビオファームは控訴した。

日医工各製品は、オキサリプラチンが溶媒中で分解して生じたシュウ酸(解離シュウ酸)が本件発明に規定されているモル濃度の範囲内で含有するものだが、このシュウ酸は外部から添加されたもの(添加シュウ酸)ではなかった。日医工各製品における「解離シュウ酸」が、本件発明にいう「緩衝剤」に含まれるかどうかが争点。

【要旨】

知財高裁は、本件発明における「緩衝剤」としての「シュウ酸」は、添加シュウ酸に限られ、解離シュウ酸を含まないものと解されるから、解離シュウ酸を含むのみで、シュウ酸が添加されていない日医工各製品は、構成要件の「緩衝剤」を含有するものではなく、したがって、本件発明の技術的範囲に属しないものと判断した。控訴棄却。

【コメント】

知財高裁は、判断の理由を、原判決を一部補正するほか原判決の記載のとおりであるからこれを引用した。すなわち、下記部分も引用しており、知財高裁は、クレームの用語の意義を対応外国出願の審査過程における出願人の主張内容も参酌して解釈する、ということを排除していない。

原判決41頁11行目~:
「確かに,対応米国特許及び対応ブラジル特許は本件特許とは異なる国における別個の出願であるから,それぞれの国の手続において成立する特許発明の範囲に差異がでることは否定できないものの,本件特許と同じ国際出願を基礎とするものである以上,その技術思想は基本的には共通すると考えられるところ,本件発明における「緩衝剤」としての「シュウ酸」が添加したものに限られず,解離シュウ酸をも含むものと解すると,上記対応米国特許及び対応ブラジル特許の技術思想とは整合しなくなり不合理である。」
原判決:

May 21, 2017

2017.04.27 「デビオファーム v. サンド」 知財高裁平成28年(ネ)10103

オキサリプラチンが溶媒中で分解して生じたシュウ酸と特許発明の技術的範囲: 知財高裁平成28年(ネ)10103

【背景】

「オキサリプラチン溶液組成物ならびにその製造方法及び使用」に関する特許権(第4430229号)を有する控訴人(一審原告: デビオファーム)が、被控訴人(一審被告: サンド)に対し、サンド製品1及び2の生産等が本件発明1の技術的範囲に属し特許権侵害に当たると主張して、サンド製品の生産等の差止め及び廃棄を求めた事案。原判決(2016.09.12 「デビオファーム v. サンド」 東京地裁平成27年(ワ)28849)は、サンド製品1及び2はいずれも本件発明1の技術的範囲に属しないとしてデビオファームの請求を棄却したため、デビオファームは控訴した。また、デビオファームは、サンド製品3についても特許侵害に当たる旨及びサンド各製品が本件発明2の技術的範囲に属する旨の追加の訴えを申し立てた。

サンド製品は、オキサリプラチンが溶媒中で分解して生じたシュウ酸(解離シュウ酸)が本件発明に規定されているモル濃度の範囲内で含有するものだが、このシュウ酸は外部から添加されたもの(添加シュウ酸)ではなかった。サンド製品における「解離シュウ酸」が、本件発明にいう「緩衝剤」に含まれるかどうかが争点。

【要旨】

知財高裁は、本件発明1における「緩衝剤」としての「シュウ酸」は、添加シュウ酸に限られ、解離シュウ酸を含まないものと解されるから、解離シュウ酸を含むのみで、シュウ酸が添加されていないサンド製品1及び2は、構成要件の「緩衝剤」を含有するものではなく、したがって、サンド製品1及び2は本件発明1及び本件訂正発明2の技術的範囲に属しないものと判断した。控訴棄却。

また、知財高裁は、デビオファームの追加の訴えの申し立てを却下しなかったが、本件発明2は、本件発明1の「緩衝剤」であるという構成を含むものであるから、サンド各製品は、その余の点を判断するまでもなく、いずれも本件発明2の技術的範囲にも属さないと判断した。

【参考】

原判決:

May 14, 2017

2017.04.25 「グロービア v. ナチュラルビューティー」 知財高裁平成28年(ネ)10106

フェルガードとフェルゴッド知財高裁平成28年(ネ)10106

【背景】

「フェルガード」と標準文字で書してなる商標(指定商品: フェルラ酸とガーデンアンゼリカを主成分とする粉末及びカプセル状の加工食品。)に関する商標権(第5059677号)を保有するグロービアが、ナチュラルビューティーに対して東京地裁に提起した商標権侵害訴訟において非侵害の判決を受けたため、控訴した事案。争点は、フェルラ酸含有商品を販売するナチュラルビューティーの各標章は本件商標に類似するかであった。

【要旨】

裁判所は、
「本件商標と被告各標章は,外観は異なり,いずれも特定の観念を生じさせるものではなく,その称呼においても,全体の語調,語感において,異なる印象を与えるものである。そして,原告商品及び被告各商品の具体的な取引の実情を踏まえつつ,本件商標と被告各標章が,その外観,観念,称呼等によって需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に考察した場合,本件商標と被告各標章について,需要者に,商品の出所につき誤認混同を生じさせるおそれがあるということはできない。」
として控訴を棄却した。

「被告各商品は,原告商品を故意に似せて作ったものであり,その販売形態が類似している。サプリメントは需要者が誤って商品を購入すれば,その生命や身体に多大な影響を及ぼすことなどから商標法による保護が一層重要である」等のグロービアの主張に対して、裁判所は、
「被告各商品は,原告商品と外箱のデザインなどが類似しているほか,インターネット上のウェブサイトにおいて,被告各商品が「フェルガードに替わるフェルラ酸含有食品」などと紹介されており,また,検索サイトで原告商品である「フェルガード」を検索すると,「フェルゴッド」との標章を有する被告各商品が表示されることが認められる。しかし,これらの事情は,他の法律の規制を受けることの一事情になり得るとしても,これらの事情によって,本件商標と被告各標章との間で,商標法上,出所の誤認混同のおそれを生じさせるに至るということはできない。」
と判断した。

【コメント】

原告の主張によれば、「被告各商品は,かつて原告と取引関係にあり,原告商品を販売していた株式会社サンユーコーポレーションの関係者が,原告との取引解消直後に,関連会社をして「フェルゴッド」との文字からなる商標に係る商標権を取得させ,さらに,被告を設立してこれを販売元として販売を開始しているのであって,原告商品又は本件商標の有するブランド力を利用する目的で作られたことが明らかである。」(原審より引用)との事情があったようである。

ところで、グロービアの商品に関連する判決として以下のものがある。

May 11, 2017

臨床開発中のemicizumabの米国内製造等が特許侵害にあたるとしてバクスアルタ社が中外製薬を提訴

中外製薬のニュースリリースによると、臨床開発中の血友病Aに対する新薬候補物質「emicizumab」(開発コード:ACE910)がバクスアルタ社保有の米国特許第7,033,590号に触れるとし、米国における上記emicizumabの製造、使用、譲渡の申出、譲渡、輸入の差止め等を求める訴えが中外製薬および米国ジェネンテック社に対して米国デラウェア州連邦地方裁判所において提起されたとのことです。

バクスアルタ社は、米国内でのemicizumab製造、販売および輸入等がバクスアルタ社の米国特許を侵害すると主張しているようですが、中外製薬は、emicizumabがバクスアルタ社の特許を侵害しないものと確信しており、当該特許の非侵害及び無効の主張、その他適切な反論を行っていく方針であるとのことです。

米国特許第7,033,590号のclaim 1:
1. An isolated antibody or antibody fragment thereof that binds Factor IX or Factor IXa and increases the procoagulant activity of Factor IXa.
Emicizumab(開発コード:ACE910):
中外製薬にて創製された抗factor IXa/X バイスペシフィック抗体(注射剤)であり、血友病Aを予定適応症として、現在、第III相(国際共同治験)の段階。
ちょうど昨年の今日、日本での行為に対して訴訟が提起されたというニュース(バクスアルタ社が国内臨床試験中emicizumabの製造・使用を特許侵害にあたるとして中外製薬を提訴)がありました。

参考:

May 8, 2017

2017.03.23 「DKSH v. ザ トラスティーズ オブ コロンビア ユニバーシティ・中外製薬」 知財高裁平成28年(行ケ)10101

マキサカルシトールの製造方法の進歩性: 知財高裁平成28年(行ケ)10101

【背景】

ザ トラスティーズ オブ コロンビア ユニバーシティ及び中外製薬が保有する「ビタミンDおよびステロイド誘導体の合成用中間体およびその製造方法」に関する特許(第3310301号)に対して、DKSHがした無効審判請求を不成立とした審決(無効2015-800057)の取消訴訟。争点は進歩性の有無及びサポート要件違反の有無。

【要旨】

請求棄却。進歩性の有無についての裁判所の判断(一部)は下記のとおり。

原告は、
「甲1発明は,「甲1記載の化合物(9)を用い,SN2反応を経由してマキサカルシト-ル(1α,25-(OH)2-22-オキサ-D3。以下「OCT」ともいう。)を製造する方法」と認定されるべきである。…甲1には「化合物(9)を用いたOCTの製造方法」の発明が記載されていることが認められるところ,第1級ハロゲン化アルキルとアルカリ金属アルコキシドのような求核性化合物との反応がSN2反応となることは,技術常識であるから,「化合物(9)を用い,SN2反応を経由するOCTの製造方法」は,甲1に記載されているに等しい事項であり,原告主張の甲1発明が認定できる。仮に,ステロイド-20(S)-アルコールからOCTを得るまでの工程として,審決認定の甲1発明以外に具体的な記載が甲1にないとしても,審決認定の甲1発明の上位概念たる原告主張の甲1発明を認定することは,当然に許される。」
と主張した。

しかし、裁判所は、
「ウィリアムソン反応がSN2反応の一種であることが技術常識であったとしても,甲1に,ウィリアムソン反応ではない反応も含むSN2反応について記載されているとは認められず,また,ウィリアムソン反応ではない反応も含むSN2反応が,甲1に記載されているに等しい事項であるとも認められないのであって,甲1に,「甲1記載の化合物(9)を用い,SN2反応を経由して,OCTを製造する方法」が記載されているとは認められないし,これが記載されているに等しい事項であるとも認めることはできない。
また,以上に述べたところからすると,甲1発明を原告が主張するような上位概念として認定することも相当ではない。」
と判断した。

また、原告は、
「甲1発明と甲2に記載された事項とは,技術分野,課題,作用・機能が共通する」
と主張した。

しかし、裁判所は、
「甲1発明と甲2に記載された事項の技術分野,課題,作用・機能が共通するのは,前記イ(ウ)a~cのとおり,アルコール類と第1級のハロゲン化アルキルとの反応であり,その反応がいずれもSN2反応であるという限度においてである。アルコール類も第1級のハロゲン化アルキルも多数存在し,SN2反応をする化合物は,ウィリアムソン反応の対象となる化合物に限られないにもかかわらず,前記の限度での共通性をもって,甲1発明に甲2に記載された事項を適用する動機付けと認めることはできない。」
と判断した。

【コメント】

原告は、引用例に記載された発明から、技術常識に基づいて記載されているに等しい事項として、或いは、上位概念として、原告主張の発明が認定されるべきであることを主張したが、裁判所は認めなかった。

参考: