Jun 29, 2017

オキサリプラチン特許侵害訴訟 日本化薬の侵害認めず(知財高裁)

2017年6月29日付の日本化薬のプレスリリースによると、日本化薬から製造販売されている「オキサリプラチン点滴静注液50㎎『NK』」、「オキサリプラチン点滴静注液100㎎『NK』」、「オキサリプラチン点滴静注液200㎎『NK』」に関して、デビオファーム社及びヤクルト本社が特許権及び専用実施権の侵害を理由に損害賠償を請求していた訴訟において、2017年6月28日、知財高裁は、東京地裁の判決(2016.10.31 「ヤクルト・デビオファーム v. 日本化薬」 東京地裁平成28年(ワ)15355)を支持し、デビオファーム社及びヤクルト本社の控訴を棄却する判決を言い渡したとのことです。

なお、2016年12月8日付リリースのとおり、「オキサリプラチン点滴静注液50mg『NK』」等について、上記訴訟とは別に、デビオファーム社より特許侵害訴訟が提起されていましたが、知財高裁は、同訴訟に対しても、日本化薬による特許権等の侵害を否定していました(過去記事: オキサリプラチン特許侵害差止訴訟 日本化薬の侵害認めず(知財高裁)2016.12.08 「日本化薬 v. デビオファーム」 知財高裁平成28年(ネ)10031))。

参照:

Jun 24, 2017

田辺三菱 ジレニア®(Gilenya®)米国特許訴訟で勝訴

2017年6月20日付けの田辺三菱製薬のプレスリリースによると、2017年6月9日、米国デラウェア連邦地方裁判所は、「製品名「ジレニア®(Gilenya®)」の有効成分であるフィンゴリモド塩酸塩(Fingolimod hydrochloride)を保護する米国特許(US5,604,229)は有効であり、本件特許が満了する2019年2月18日(小児臨床試験実施に基づく6か月間の排他期間の追加の可能性あり)より早く、米国において後発品は承認されない」との判決を下したとのことです。この判決は、被告である後発品会社6社が、後発品をFDAに簡略申請するに当たり、本件特許の無効を主張してきたものの、本件特許は有効であり、原告3社(田辺三菱製薬、ノバルティス社(米国新薬申請ホルダー)および三井製糖(共有特許権者))の権利行使が可能であると認めたものであるとのことです。

ジレニア®:
フィンゴリモド塩酸塩を有効成分とする1日1回経口投与カプセル剤。フィンゴリモド塩酸塩は、スフィンゴシン 1-リン酸(S1P)受容体を標的とする多発性硬化症治療剤であり、田辺三菱製薬による開発着手の後、ノバルティス社に導出。米国においては、2010年9月21日に承認、日本(製品名「イムセラ®/ジレニア®」)をはじめ、欧州、カナダ等80か国以上で承認されている。
ジレニア®のOrangebookによると、リストされている特許は4つ。
  • 5,604,229 (Patent Expiration: Feb 18, 2019)
  • 6,004,565 (Patent Expiration: Sep 23, 2017)
  • 8,324,283 (Patent Expiration: Mar 29, 2026)
  • 9,187,405 (Patent Expiration: Jun 25, 2027)

US8,324,283は製剤特許。IPRでの無効判断がCAFCでも容認された(Novartis AG v. Torrent Pharmaceuticals. Ltd., No. 2016-1352 (Fed. Cir. Apr. 12, 2017))。

US9,187,405は用途特許。2015年11月17日に成立した。Apotexが2017年2月3日、Argentumが2017年6月9日に、IPRをfileしたようである(IPR2017-00854; IPR2017-01550)。

参考:
2017.06.20 田辺三菱製薬プレスリリース: 「米国におけるフィンゴリモド塩酸塩 特許侵害訴訟の地裁勝訴について


Jun 11, 2017

2017.05.16 「メソ スケール テクノロジーズ v. 特許庁長官」 知財高裁平成28年(行ケ)10196

イムノアッセイの連続交互プロセス: 知財高裁平成28年(行ケ)10196

【背景】

「アッセイ装置,方法,および試薬」に関する特許出願(特願2014-23320; 特開2014-130151)の拒絶審決(不服2015-12712)取消訴訟。争点は進歩性。具体的には、引用発明との相違点2(コンピュータを実装したプロセスが,本願補正発明では,「連続交互プロセス」であるのに対し,引用発明では,そのように特定されていない点)の容易想到性が争われた。


本願補正発明(請求項1):
マルチウェルプレートにおいてアッセイを実施するための方法であって,ここで前記方法は,(a)光検出サブシステム;(b)液体操作サブシステム;(c)プレート操作サブシステム,およびソフトウェアのスケジューラーへと動作可能に接続されたコンピュータを含有する装置を用い,

前記方法が,前記マルチウェルプレートの個々のウェルにおいて実施される以下のステップ:
(i)期間nを含有するサンプル添加フェーズの間に前記個々のウェルに対してサンプルを添加するステップ;
(ii)期間mを含有する放置フェーズの間に前記個々のウェル中に前記サンプルを放置するステップ;
(iii)期間pを含有する試薬添加フェーズの間に前記個々のウェルへと試薬を添加するステップ;ならびに
(iv)前記ソフトウェアのスケジューラーによって前記マルチウェルプレートの個々のウェルに対するステップ(i)~(iii)の状態をトラックするステップ,

を含有するコンピュータを実装した連続交互プロセスを含有し,

ここでステップ(i)が,サンプルを添加するステップの前に前記個々のウェルのシールを穴開けするステップをさらに含有し,

ここで前記マルチウェルプレートの第一のウェルがステップ(i)~(iii)へと供され,そして前記第一のウェルの少なくともステップ(i)が完了したのちに前記マルチウェルプレートの一つもしくはそれ以上の追加のウェルにおいてこれらのステップ(i)~(iii)が繰り返され,
かつ
期間n,mもしくはpの一つもしくはそれ以上が,前記マルチウェルプレートの一つもしくはそれ以上のウェルにおいて,前記ソフトウェアのスケジューラーによって調整できる,方法。

【要旨】

引用発明1に引用例2に記載された技術事項を適用することについて、裁判所は、
「引用例1と引用例2(甲2)は,共にイムノアッセイに係る技術であり,イムノアッセイにおける全作業時間を短縮させるという課題は,イムノアッセイ全般の一般的な技術課題にすぎない。したがって,引用例2に記載されている,マルチウェルプレートの第一のウェルに反応開始に必要な液体を添加するステップを行ってイムノアッセイの処理を開始し,その第一のウェルでのインキュベーション期間に,前記マルチウェルプレートの一つの追加のウェルに反応開始に必要な液体を添加するステップを行ってイムノアッセイの処理を開始し,マルチウェルプレートにおけるイムノアッセイの全作業時間を短縮することを,引用発明に適用することは,当業者が容易になし得たことである。
そうすると,引用例2に記載された技術事項を適用した引用発明は,「第一のウェル」に対するステップ(ii)中に「前記マルチウェルプレートの一つもしくはそれ以上の追加のウェルにおいて,」少なくともステップ(i)を行い,その後で,「第一のウェル」に対するステップ(iii)を行う,つまり「連続交互プロセス」を含有することになる。
よって,相違点2の容易想到性についての本件審決の判断に誤りはない。」
と判断した。請求棄却。

【コメント】

本出願についてINPADOC patent familyを見てみると、下記日本出願群が存在しているようである。
  • 優先権US 61/123,975 ⇒PCT/US2009/002244(WO2009/126303)
    ⇒特願2011-504004(特表2011-518323)
    ⇒拒絶審決

    ⇒特願2011-504004の分割⇒特願2014-23320(特開2014-130151)
    ⇒拒絶審決(本願
  • 優先権US 60/752,745; 60/752,513: 11/642,968 ⇒PCT/US2006/049049(WO2008/057111)
    ⇒特願2008-547613(特表2009-533650)
    ⇒特許5080494

    ⇒特願2008-547613の分割⇒特願2012-158378(特開2012-230122)
    ⇒拒絶審決

    ⇒特願2012-158378の分割⇒特願2014-148593(特開2014-211450)
    ⇒特許5885788

    ⇒特願2012-158378の分割⇒特願2015-237447(特開2016-048260)
    ⇒審査係属中
  • 優先権US 60/752,745; 60/752,513; 11/642,970 ⇒PCT/US2006/049048(WO2007/076023)
    ⇒特願2008-547612(特表2009-521686)
    ⇒特許5345854

    ⇒特願2008-547612の分割⇒特願2012-179913(特開2013-007751)
    ⇒特許5845156

    ⇒特願2012-179913の分割⇒特願2015-144598(特開2015-232568)
    ⇒特許6113788

    ⇒特願2015-144598の分割⇒特願2016-200778(特開2017-026635)
    ⇒審査係属中

Jun 4, 2017

2017.05.10 「コスメディ製薬 v. バイオセレンタック」 大阪地裁平成27年(ワ)11759

敗訴となった訴訟行為が不法行為を構成するのか大阪地裁平成27年(ワ)11759; 別紙1

【背景】

本件は、バイオセレンタックが提起した特許権侵害訴訟(バイオセレンタックが敗訴。東京地裁平成25年(ワ)4303; 知財高裁平成26年(ネ)10109)の被告であったコスメディと同社の代表取締役であるP1が、同訴訟の原告であったバイオセレンタック、同訴訟でバイオセレンタックを代表した代表取締役のP2、バイオセレンタックの代表取締役であり本件特許の発明者であるP3並びに同訴訟で訴訟代理人を務めたP4に対し、バイオセレンタックが「コスメディによる本件特許権侵害及び研究成果盗用」という虚偽の事実をコスメディの取引先である岩城製薬及び資生堂に告知した行為は不競法2条1項14号(現行法では15号)の不正競争に該当する或いは上記告知がP1の名誉を棄損したと主張して、不競法4条、民法709(719条1項)または会社法429条1項に基づき損害賠償の支払を求めた事案である。

「告知行為」に関するコスメディの主張は主に下記の点であった。
  • 「被告バイオは,別件侵害訴訟において,原告コスメディの取引先である岩城製薬を共同被告として訴えていたから,同訴訟を通じて,原告コスメディの営業上の信用を害する虚偽の事実を岩城製薬に継続的に告知したといえる。」
  • 「原告ら製品は,原告コスメディから資生堂に販売され,資生堂で製品として完成されて岩城製薬に販売される関係にあるので,原告コスメディは,別件侵害訴訟の情報を資生堂に提供せざるを得なかったが,被告バイオは上記取引関係を認識しながら岩城製薬を共同被告にしたのであるから,被告バイオは虚偽の事実を資生堂にも告知していたといえる。」
【要旨】

主 文
1 原告らの請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告らの負担とする。

裁判所の判断(抜粋)

1.資生堂に対する関係での告知行為について
「不正競争防止法2条1項14号にいう「告知」とは,自己が関知した一定の事実を特定の人に知らせる伝達行為をいうところ,そもそも資生堂に対する関係で被告バイオが告知したわけではないことは原告コスメディも認めているところである。また原告コスメディは,取引関係上,同原告が資生堂に同事実を伝えざるを得なかったことを指摘するが,もし,そうであったとしても,そのことをもって被告バイオが告知したことになるわけではない。」
2.岩城製薬に対する関係での告知行為について
「被告バイオは,原告ら製品の販売が本件特許権の侵害行為に該当するとして岩城製薬を共同被告として訴えているところ,岩城製薬に対する請求を理由づけるためには,岩城製薬が販売している原告ら製品が本件発明の技術的範囲に属するという事実を主張立証する必要があり,その事実関係を具体的に主張立証するためには,結局,共同被告である原告コスメディによる原告ら製品の製造販売が本件特許権の侵害行為であること,すなわち原告ら製品が本件特許権の侵害品であることを主張立証すべきことは避けようがない。

したがって,別件侵害訴訟における原告ら製品が本件特許権の侵害品である旨の事実主張が,共同被告である岩城製薬との関係で不正競争防止法2条1項14号の虚偽事実の告知に該当するということはできない(仮に岩城製薬だけを被告として本件特許権侵害を理由に訴訟を提起したとしても,岩城製薬が販売する製品が本件特許権の侵害品である旨主張することは,その購入先を知っている岩城製薬にとっては,原告ら製品が本件特許権の侵害品であるとの事実指摘を受けたと同じになるから,原告コスメディの論が失当であることは明らかである。)。

なお,被告バイオによる別件侵害訴訟の提起が,権利又は法律関係が事実的,法律的根拠を欠くことを知りながら又は通常人であれば容易にそのことを知り得たのにあえて提起したことなどを理由として裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くため違法な行為といえるような場合には,同訴訟の被告それぞれに対する訴訟提起が不法行為を構成するとともに,取引先である岩城製薬を共同被告とされた原告コスメディに対する関係では,訴訟制度を濫用的に利用した不正競争防止法2条1項14号に該当する虚偽の事実の告知として不正競争となる余地はあり得ると考えられる。しかし,…別件侵害訴訟の審理経過に照らせば,同訴訟提起が違法な行為であるという余地がないことは明らかであり,そうであれば,やはり岩城製薬を原告コスメディの共同被告として提起された別件侵害訴訟においてなされた原告ら製品が本件特許権の侵害品である旨の事実主張は,不正競争防止法2条1項14号に該当する余地はないというほかない。」
3.研究成果の盗用指摘について
「仮に上記記載事実が虚偽であるとしても,…上記事実は,別件侵害訴訟の審理判断の上で,全く不要な事実であったとはいえないし,全く根拠のない推認に基づくものであったとも,また原告コスメディをもっぱら誹謗中傷するような態様で主張されたものとも認められないから,民事訴訟が,事実関係を究明するため,紛争当事者が攻撃防御方法として相互に立証命題となるべき事実主張を尽くすことが求められるものである以上,これらの事実主張は,訴訟行為として適法というべきであって,これをもって不正競争防止法2条1項14号に該当する「虚偽の事実を告知」したものということはできないというべきである。」
4.名誉棄損の成否について
「原告P1が名誉棄損である旨指摘する引用に係る別紙一覧表の各記載内容は,要するに,原告P1がアクセスして得た被告P3の研究に係る技術情報を不正に利用して原告ら製品を開発したことを指摘するものであるから,原告P1が原告コスメディの代表取締役であるとともに,大学研究室に所属して研究者としても活動している者であることからすると,その指摘に係る事実は,原告P1の社会的評価を低下させるものであり,その名誉を棄損するものということができる。

しかし,これらの事実指摘のうち別紙一覧表記載3ないし5に係る事実については,いずれも別件侵害訴訟において,被告バイオの訴訟活動の一環としてなされたものであり,その事実が別件侵害訴訟の審理判断の上での必要性が肯定されるべきことは上記…で説示したとおりであり,別紙一覧表記載1,2の各事実も結局,同じ問題であるので,その事実を主張することが名誉棄損として不法行為を構成するものということはできない。」
【コメント】

下記裁判でも同事件が取り扱われている。

民事訴訟を提起した者が敗訴の確定判決を受けた場合において、「その訴えの提起が相手方に対する違法な行為といえるのは、訴えの提起が裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くと認められるときに限られる」という観点で、その訴えに関連する行為の違法性の当否が判断されるということであろう。

1988.01.26 最高裁昭和60(オ)122
「民事訴訟を提起した者が敗訴の確定判決を受けた場合において、右訴えの提起が相手方に対する違法な行為といえるのは、当該訴訟において提訴者の主張した権利又は法律関係(以下「権利等」という。)が事実的、法律的根拠を欠くものであるうえ、提訴者が、そのことを知りながら又は通常人であれば容易にそのことを知りえたといえるのにあえて訴えを提起したなど、訴えの提起が裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くと認められるときに限られるものと解するのが相当である。」