Dec 27, 2017

2017年、医薬系"特許的"な判決を振り返る。

(1) 先発医薬品メーカー同士の主導権争い

2017年、日本においては、均等の成否の判断における第5要件(特段の事情)の判断基準について示された最高裁判決(2017.03.24 「マキサカルシトール事件(均等の第5要件)」 最高裁平成28年(受)1242)や延長された特許権の効力範囲とその類型が示された知財高裁大合議判決(2017.01.20 「デビオファーム v. 東和薬品」 知財高裁平成28年(ネ)10046)など、先発医薬品メーカーと後発品メーカーとの特許係争における大きな判決がありました。

一方で、先発医薬品メーカー同士の日本を含めた世界的な特許係争の進展も2017年では顕著だったように思います。

特許権侵害という違法行為に対して差止請求権を行使することは特許権者の正当な権利です。しかし、差止請求権行使によって抗癌剤や抗エイズ薬のような患者の生命に極めて関わるような代替性の無い新薬を市場から排除することが患者の利益を害しはしないかという観点から裁判所の判断や特許権者である各製薬メーカーの態度が気になっていました。

2017年初めには、抗PD-1抗体であるオプジーボ(Opdivo)®(有効成分はニボルマブ、nivolumab)を販売する小野薬品・BMS社と、同じ抗PD-1抗体であるキイトルーダ(Keytruda)®(有効成分はペムブロリズマブ、pembrolizumab)を販売するMSD社との間で起きていた世界的な特許係争は和解という形で決着しました。小野薬品とBMS社は、MSD社によるキイトルーダの販売を阻止するつもりはないとして実施料の請求を主張していました。

HIVインテグラーゼ阻害薬であるテビケイ(Tivicay)®(有効成分はドルテグラビル、dolutegravir)を販売するViiV社に資本参加している塩野義製薬と、同じHIVインテグラーゼ阻害薬であるアイセントレス(Isentress)®(有効成分はラルテグラビル、raltegravir)を販売するMSD社との間で起きていた世界的な特許係争が大きく進展しました。塩野義はMSD社に対して金銭的な請求の他、アイセントレスの販売差止も請求しました。しかし、ドイツでは裁判所がMSDに塩野義特許の強制実施権を認め、その後も欧州特許庁において塩野義欧州特許は無効と判断されたため、差止・損害賠償を求めて塩野義が提訴していたドイツ、英国、オランダ、フランスでの訴訟も塩野義の敗訴判決が出される見込みとのプレスリリースが出されました。日本においても塩野義特許は無効理由の存在により権利行使できないとして塩野義によるアイセントレスの差止・廃棄請求を棄却する東京地差判決が12月に出されたところです。

(2) 2017年、医薬系"特許的"な判決を賑わせた製品は・・・
抗悪性腫瘍剤エルプラット(Elplat)®(一般名:オキサリプラチン(Oxaliplatin))でした。


オキサリプラチンに関する別々の特許係争(主に特許発明の技術的範囲について争われたいわゆる「解離シュウ酸事件」と延長された特許権の効力について争われたいわゆる「水溶液事件」)において知財高裁判決が出され、昨年に引き続き、この一年話題となりました。

オキサリプラチン(Oxaliplatin)は白金錯体系抗悪性腫瘍剤。本剤はDebiopharm 社(スイス)がライセンスを保有しており、欧米における開発・販売権はSanofi-Aventis社が保有している(商品名: ELOXATIN)。日本における開発・販売権はヤクルトが取得し、商品名エルプラット(ELPLAT)として製造販売しています。2010年6月には水溶性製剤(点滴静注液)を発売し、既存の凍結乾燥製剤(注射用)からの切り替えを行っています。

ブログで取り上げたオキサリプラチン(Oxaliplatin)に関する記事等はこちら


(3) 過去の「医薬系"特許的"な判決を振り返る。」
  • 「2016年、医薬系"特許的"な判決を振り返る。」はこちら
  • 「2015年、医薬系"特許的"な判決を振り返る。」はこちら
  • 「2014年、医薬系"特許的"な判決を振り返る。」はこちら
  • 「2013年、医薬系"特許的"な判決を振り返る。」はこちら
  • 「2012年、医薬系"特許的"な判決を振り返る。」はこちら
  • 「2011年、医薬系"特許的"な判決を振り返る。」はこちら
  • 「2010年、医薬系"特許的"な判決を振り返る。」はこちら
  • 「2009年、医薬系"特許的"な判決を振り返る。」はこちら
  • 「2008年、医薬系"特許的"な判決を振り返る。」はこちら


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