Dec 3, 2017

ファイザー リネゾリド Meiji Seikaファルマ後発品で特許侵害訴訟提起

2017年11月30日付ファイザー(株)のプレスリリースによると、ファイザーは、ザイボックス®注射液およびザイボックス®錠(一般名:リネゾリド)の後発品(リネゾリド点滴静注液600mg「明治」およびリネゾリド錠600mg「明治」)に関して、Meiji Seika ファルマ(株)に対し、特許専用実施権の侵害を理由として上記製品販売の部分差止等および損害賠償を請求する訴訟を11月29日付で東京地裁に提起し、併せて上記製品販売等の部分差止等の仮処分命令の申立てを行ったとのことです。

ファルマシア・アンド・アップジョン・カンパニーは、リネゾリドの有効成分に関する特許をMRSA感染症適応医薬に関して保有しており、ファイザー(株)は、本特許権の専用実施権者として、ザイボックス注射液600mgおよびザイボックス錠600mgを製造販売しているとのことです。

参考:
ザイボックス(一般名:リネゾリド(linezolid)):
米国ファイザー社(旧ファルマシア・アップジョン社)で合成されたオキサゾリジノン系骨格を有する新しいクラスの合成抗菌薬。作用機序は、既存の抗菌薬とは異なり、細菌の蛋白合成の早期段階を阻害するため、既存の各種抗菌薬に耐性を示すグラム陽性球菌(MRSA、VRE等)に対しても抗菌活性を示します。日本においては、2001年4月4日に「本剤に感性のバンコマイシン耐性エンテロコッカス・フェシウム」による「各種感染症」を適応症として承認され、2006年4月20日には、適応菌種として「本剤に感性のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)」、適応症として「敗血症、深在性皮膚感染症、慢性膿皮症、外傷・熱傷及び手術創等の二次感染、肺炎」とする効能追加が承認されました。ザイボックス®注射液およびザイボックス®錠の効能又は効果は下記の通り。
1. <適応菌種>
本剤に感性のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)
<適応症>
敗血症、深在性皮膚感染症、慢性膿皮症、外傷・熱傷及び手術創等の二次感染、肺炎
2. <適応菌種>
本剤に感性のバンコマイシン耐性エンテロコッカス・フェシウム
<適応症>
各種感染症
J-PlatPatで確認したところ、2006年のMRSA追加効能承認時の特許権存続期間延長登録出願として、物質特許と思われる特許3176630についての延長登録出願(2006-700049、2006-700050)がなされていました。処分の対象となった物として「リネゾリド」、処分の対象となった物について特定された用途として「<適応菌種>本剤に感性のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)及び<適応症>敗血症、深在性皮膚感染症、慢性膿皮症、外傷・熱傷及び手術創等の二次感染、肺炎」に基づき、4年9月17日の存続期間延長が認められ、特許3176630の満了日は2019年6月2日となっています(無効審判請求はされていません)。すなわち、MRSAを適応菌種とした適応症が承認されており、MRSA適応については上記特許権の効力は有効に働いていることになります。従って、現在承認されている後発品には、下記の通り、MRSAを適応菌種とした適応症は効能又は効果として認められていません。
  • リネゾリド点滴静注液600mg「明治」: 2015年2月承認、6月薬価収載、製造販売
    <適応菌種>
    本剤に感性のバンコマイシン耐性エンテロコッカス・フェシウム
    <適応症>
    各種感染症
  • リネゾリド錠600mg「明治」: 2015年8月承認、12月薬価収載、製造販売
    <適応菌種>
    本剤に感性のバンコマイシン耐性エンテロコッカス・フェシウム
    <適応症>
    各種感染症
  • リネゾリド注射液600mg「サワイ」: 2017年2月承認、6月薬価収載、9月製造販売
    <適応菌種>
    本剤に感性のバンコマイシン耐性エンテロコッカス・フェシウム
    <適応症>
    各種感染症
  • リネゾリド錠600mg「サワイ」: 2017年8月承認、薬価未収載
    <適応菌種>
    本剤に感性のバンコマイシン耐性エンテロコッカス・フェシウム
    <適応症>
    各種感染症
ところで、薬剤耐性菌の出現と蔓延の抑制には抗菌薬の適正使用が不可欠です。上記の通り、リネゾリド後発品の適応取得菌種はいずれもVREのみであって、ザイボックス®のようにMRSAを適応としていないため、後発品の使用開始は頻用の一因になる恐れがあるとして、日本感染症学会・日本化学療法学会・日本臨床微生物学会は医療現場へ後発品の適正使用を呼びかけていました。この適正使用に取り組む組織として2015年に発足した日本感染症医薬品協会リネゾリド研究会にはファイザーの他、Meiji Seikaファルマ及び沢井製薬もメンバーとなっています。

ファイザーの主張内容の詳細は定かではありませんが、先発品と後発品の効能違いに起因する医薬品の不適正使用問題のおそれに対して切り込んでいくのだとしたら、特許権の効力をどのような行為に対して主張していこうとしているのか、大変興味深いところです。

参考:

No comments: