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2008/01/16

2006.03.27 「ユーローセルティーク v. 特許庁長官」 知財高裁平成17年(行ケ)10303

投与期間に特徴のある医薬の進歩性は?: 知財高裁平成17年(行ケ)10303

【背景】
「ブプレノルフィンによる持続的痛覚消失」の発明(特願平10-536980号)について、進歩性なしとの拒絶審決に対して取消訴訟を提起。引例とは「ブプレノルフィンの経皮送達システムの皮膚への適用により疼痛を治療する」という点で一致、本件発明は、3日間にさらに少なくとも2~6日の追加の投与期間を維持するとの構成要件であったが、引例は投与期間については言及されていなかったという点で相違していた。

請求項35:
ブプレノルフィンを含む経皮送達システムをヒト患者の皮膚上に適用し,3日間の投与期間にわたって該経皮送達システムの皮膚への接触を維持することによる中程度から重篤な疼痛を有するヒト患者を治療する方法のための薬剤の製造におけるブプレノルフィンの使用であって,前記経皮送達システムが適当な相対放出速度を維持して約3日間だけヒト患者に有効な痛覚消失を与えるのに十分なブプレノルフィンの量を含み,前記経皮送達システムは前記3日間の投与期間の後の少なくとも2~約6日の追加の投与期間,前記ヒト患者の皮膚への接触が維持され,これによりヒト患者が有効な痛覚消失を受け続けるものである,前記使用。

【要旨】
薬物動態を確認することは当業者が当然に思考する作業であり、本件投与期間を適用することも周知技術に照らして容易に相当することができる。皮膚への適用を継続すれば所定の効果が一定期間持続することは当業者であれば当然に予測したといえる。
請求棄却。

【コメント】
投与期間を持続すれば効果も持続することは、当業者が当然に予測できるといえる。本件投与期間の維持によって、何か予想できない効果があれば良かったのでは。
投与方法等で限定されたクレームが一定の条件のもと用途発明として認める旨を明確化した「医薬発明」の審査基準が「第VII部 特定技術分野の審査基準」の第3章として2005年4月に公表されたが、米国に比べ日本においては、まだまだこの点で争われた判決の蓄積が少ないので、本事案は今後の用法・用量に関する進歩性主張を検討する題材として参考になる。

ちなみに、現在、日本では、塩酸ブプレノルフィン(buprenorphine hydrochloride)は、鎮痛剤「レペタン注」、「レペタン坐剤」として大塚製薬から市販されており、既にジェネリック医薬品が参入している。本件出願人であるEuro-Celtique SAは、徐放性製剤技術に強いNapp/Purdue/Mundipharma independent associated companiesのpatent holding agentであり、ブプレノルフィン経皮吸収剤の臨床試験が現在実施中のようである。

参考:

  • Euro-Celtique SA website: http://www.euro-celtique.com/


  • Mundipharma website: History and Timeline


  • 久光製薬ニュースリリース: 2007.8.6 「Norspan®」の独占的な販売権に関するプレスリリース


  • 審査基準: 「第VII部 特定技術分野の審査基準、第3章 医薬発明、2.3 進歩性」

  • (4) 投与間隔・投与量等の治療の態様により特定しようとする医薬
    特定の対象患者群、又は特定の適用範囲に対して、薬効増大、副作用低減といった当業者によく知られた課題を解決するために、医薬の使用の態様(投与間隔・投与量等)を好適化させることは、当業者の通常の創作能力の発揮である。したがって、請求項に係る医薬発明において、引用発明との比較で新規性が認められるとしても、引用発明と比較した有利な効果が当業者の予測し得る範囲内である場合は、その進歩性は否定される。しかし、引用発明と比較した有利な効果が、技術水準から予測される範囲を超えた顕著なものであること等、他に進歩性の存在を推認できる場合は、その発明の進歩性は肯定される(事例8)。

2007/12/23

2005.11.16 「千寿製薬・大塚製薬 v. 特許庁長官」 知財高裁平成17年(行ケ)10184

既存薬の改良製剤特許は延長登録の対象になるか?: 知財高裁平成17年(行ケ)10184

【背景】
先発メーカーの先の薬事承認処分(オキシグルタチオン、眼手術時の洗浄)の後、別メーカーが本件薬事承認処分(オキシグルタチオン含有キット、販売名:オペガードネオキット(Opeguard neo kit))に基づいて、新規包装体特許(特許第3116118号)の延長登録を試みたが、特68条の2における「物」すなわち「有効成分」について、本件処分前に同用途において実施できたとされ、拒絶審決を受けたため、審決取消訴訟を提起した。

【要旨】
本件特許発明の実施のために、「物(有効成分)」及び「用途(効能・効果)」という観点から、本件処分を受けることが必要であったということができない。先の処分に対応する特許権者が別人であろうと関係ない。請求棄却。

【コメント】
存続期間の延長登録要件として、延長登録の特許権の効力に関する規定(特68条の2)から、「物(有効成分)」及び「用途(効能・効果)」という観点から判断するという判決。既存薬の有効成分及び効能・効果に変更が無い限り、新規製剤に関する承認を得るために該製剤をカバーする製剤特許権を実施できなかったとしても、該製剤特許権の存続期間を延長することはできない。

個人的な感想であるが、登録要件を権利の効力の規定(特68条の2)を持ち出して判断し、さらに「用途」という要件を一義的に「効能・効果」であると解釈するという、存続期間延長登録要件に関する下記一連の判決内容にはいまいち納得いかない感じを受けるのは私だけであろうか? 既存薬の毒性を低減させたり、有効性を持続させたり、医師・患者の使い勝手を向上させたりするための改良薬は、益々強く望まれるようになってきている一方、多大な開発費用を要するのは事実である。存続期間延長制度の立法当時には、このような実情を想定していなかったとしても、登録要件を権利の効力の規定から説き起こすのはやはり乱暴ではなかろうか? また、既存薬の組成や用法・用量等を改善した用途発明の特許権も、承認が得られるまで実施できないという点では同様であるのだから、その処分が既存薬の効能・効果と同一だからという理由によって存続期間延長登録の対象にならないとするのは、そもそもの存続期間延長制度の趣旨に反するのではなかろうか? 用途発明として、効能・効果に限らず、用法用量や製剤に特徴がある"用途"発明が医薬発明として認められている(「医薬発明」の審査基準においても明記されいるところである)ことを踏まえれば、仮に延長登録出願の登録要件として"用途"の同一性を判断するとしても、その"用途"を一義的に医薬品の"効能・効果"とする解釈は、医薬発明の"用途"の解釈と食い違っている。

参照:


2007/11/26

2005.01.28 「Merck v. Teva (アレンドロネート事件)」 CAFC Docket No. 04-1005

「About」の解釈が自明性の判断に問題となった事案(アレンドロネート事件): CAFC Docket No. 04-1005

【背景】
Merckはビスフォスフォネートに関する米国特許(
5,994,329号)を所有しており、FDA認可を得て、アレンドロ酸ナトリウム水和物の週1回投与用製剤について販売(商標名Fosamax)。TevaによるANDA提出に対し、Merckが271(e)(2)(A)に基づく侵害を主張し、連邦地裁に訴訟を提起。特許侵害を認めた地裁判決に対してTevaが控訴した。

Claims:

23. A method for treating osteoporosis in human comprising orally administering about 70 mg of alendronate monosodium trihydrate, on an alendronic acid basis, as a unit dosage according to a continuous schedule having a dosing interval of once-weekly.

37. A method for preventing osteoporosis in human comprising orally administering about 35 mg of alendronate monosodium trihydrate, on an alendronic acid basis, as a unit dosage according to a continuous schedule having a dosing interval of once-weekly.

【要旨】
クレームの"About"という語について十分な定義を記載していなかったため、"approximately"という意味であると解釈され、特許は、prior artによりobviousであり、無効であると判断されてしまった。

【コメント】
クレームの用語については、細心の注意を払ってその定義を記載しなくてはならない。特に先行技術文献が非常に近くに存在する場合はなおさらであろう。

Fosamax:
アレンドロン酸ナトリウム水和物(Alendronate sodium hydrate)を有効成分とする骨粗鬆症治療薬(日本では万有製薬が販売名フォサマック(Fosamac)として販売している。)。

See also

2007/11/24

2007.10.18 「メルク v. ユーロドラッグ」 知財高裁平成18年(行ケ)10378

アレンドロネートの用法・用量をカバーする特許の進歩性は?: 知財高裁平成18年(行ケ)10378

【背景】

「骨吸収を抑制する方法」に関する特許(特許第3479780号)に係る発明について、特29条2項違反を理由に無効審決が下されたため、特許権者である原告(メルク)が同審決の取消しを求めた事案。

請求項1:
アレンドロネート,薬剤として許容できるその塩およびこれらの混合物より成る群の中から選択されるビスホスホネートを,アレンドロン酸活性体基準で約35~約70mg含み,週一回の投与間隔を有する連続スケジュールに従う経口投与に用いるための,哺乳動物における骨粗鬆症を治療または予防する薬剤組成物。

請求項5:
哺乳動物における骨粗鬆症を治療または予防するためのキットであって,週一回の投与間隔を有する連続スケジュールに従う経口投与により使用すべき旨の指示を含み,単位用量としてアレンドロネート,薬剤として許容できるその塩およびこれらの混合物より成る群の中から選択されるビスホスホネートをアレンドロン酸活性体基準で約35~約70mg含み,かかる単位用量を少なくとも1回分収容する,キット。

【要旨】
原告は、
「引用例3の記載(3c)を含むパラグラフ(以下「パラグラフ1」という。)には,~用法・用量に関し,~単なるオプションが,臨床的意義についての説明もなく列挙されているにすぎず,理論的な根拠や実験による裏付けも示されていない。~したがって,当業者が,引用例3の上記記載に接したとしても,~重大な問題である上部消化管障害という副作用を軽減させるための解決手段として,その用法・用量を採用することを動機づけられることもなければ,その記載によって何かを示唆されることもあり得ない。」
と主張した。
これに対して裁判所は、
「引用例3は,確かに,原告の主張するとおり,上部消化管障害の軽減との関連において,週1回40mgのアレンドロネート投与の有用性に係る,理論的根拠の明示的な記載や実験的な裏付けを伴うものではない。しかしながら,~消化管障害の副作用は,消化管と接触する薬剤の量が多く,接触する時間が長いほど,また,接触頻度が高いほど生じやすく,悪化しやすいことは容易に理解されるところである。したがって,投与間隔を長くする(毎日投与から週2~3回,あるいは週1回投与とする)間欠投与の提案は,それ自体として,上部消化管障害軽減の理論的根拠を示唆するものであり,少なくとも,当業者がこれを試みる動機付けとなるものということができる。」
と判断した。

また、原告は、
「皮下注射による投与においては,胃腸に対する副作用は生じないことが,本件特許出願当時の技術常識であったから,副作用等を引き下げるための方法として,~皮下注射における用法・用量を論ずる引用例3の記載は首尾一貫しておらず,引用例3の著者が,文献23の内容を十分に理解して,パラグラフ1を記載したものではない」
と主張した。
しかし裁判所は、
「皮下注射実験であるとしても,パラグラフ1ないし引用例3の記載が首尾一貫していないとか,引用例3の著者が,文献23の内容を十分に理解していないなどといった非難は当たらない。」
として原告の主張を認めなかった。

さらに原告は、
「アレンドロネートを一日一回連続的に経口投与する場合には,消化管障害という副作用の懸念のために,一定の連続スケジュールに従う高用量(20mgを超える用量)投与を避けることが,優先権主張日当時,当業者の技術常識であったから,引用例2,3に,週1回40mgの投与が記載されていたとしても,当業者が,これを採用することについては,重大な阻害事由があり,容易ではない」
と主張した。
しかし裁判所は、
「原告主張の上記技術常識は,それが認められるとしても,~消化管内壁が,例えば40mgのアレンドロネートと,連続して毎日接触する状態と,接触しない日が6日間続く(その間に,自然治癒力による回復がある)状態とを同列に論ずることができないことは明らかである。したがって,原告主張の上記技術常識は,当業者が,引用例2,3記載の投与方法を試みるに当たって妨げとなるようなものということはできず,これを阻害事由とする原告の主張は失当である。」
と判断した。

また、裁判所は、
「一定の範囲内で,ビスホスホネートの投与量と骨疾患に対する治療効果との間に相関関係があることは明らかであるから,毎日投与の方法を,投与間隔を空ける間欠投与の方法に変更しようとする場合に,治療効果を維持しようとすれば,間欠投与の方法で投与するビスホスホネートの総量を,同一治療期間に係る毎日投与の方法による投与総量と同じにすること(間欠投与の方法による1回当たりの投与量を,そうなるように設定すること)は,当業者が最初に試みることであるといえる。~本来の治療効果を確保するため,間欠投与における1回当たりの投与量を,毎日投与における単位用量を基礎として,投与間隔として空ける日数に応じ比例的に設定することを検討する場合においては,参考とする上記実験例が,皮下注射による投与方法であるかどうかや,上部消化管障害の副作用を生ずるかどうかは,直接関係する事項ということはできない。」
と言及した。

請求棄却。

【コメント】
用法・用量に関して進歩性が争われたケース。
投与方法等で限定されたクレームが一定の条件のもと用途発明として認める旨を明確化した
「医薬発明」の審査基準が「第VII部 特定技術分野の審査基準」の第3章として2005年4月に公表されたが、米国に比べ日本においては、まだまだこの点で争われた判決の蓄積が少ないので、本事案は今後の用法・用量に関する進歩性主張を検討する題材として参考になる。
なお、引例中の記載が理論的根拠の明示的な記載や実験的な裏付けを伴うものではない点や、引例の内容の首尾一貫性や引例著者の理解不十分といった点を理由とする、進歩性判断における引例適格性が無い旨の主張は、新規性判断における引例適格性と違ってなかなか難しいだろう。

アレンドロネート、すなわちアレンドロン酸ナトリウム水和物(Alendronate sodium hydrate)を有効成分とする骨粗鬆症治療薬は日本においては万有製薬より販売されている(販売名: フォサマック、Fosamac)。

See also

  • 万有製薬ホームページより
    【用法・用量】
    通常、成人にはアレンドロン酸として35mgを1週間に1回、朝起床時に水約180mLとともに経口投与する。 なお、服用後少なくとも30分は横にならず、飲食(水を除く)並びに他の薬剤の経口摂取も避けること。


  • 2005.01.28 「Merck v. Teva」 CAFC Docket No. 04-1005
    本件特許第3479780号のファミリーである米国特許もCAFCで無効とされた。