プロダクト・バイ・プロセス・クレーム(product by process claim)は公知プロダクトにより新規性を失うか?: 知財高裁平成17年(行ケ)10781
【背景】
製造方法に特徴を有する「プラバスタチンナトリウムを含有する組成物」の原告(三共)の特許発明(特許第3463875号)について、先願明細書(国際出願PCT/US01/31230(国際公開WO02/030415。出願人はテバであり、日本では特表2004-510817号公報として公表、登録となった(特許3737801))に記載された発明と同一であるから特29条の2に違反するとされ無効とされた審決の取消訴訟。
請求項1:
「菌により生成されたプラバスタチン類を含む培養濃縮液から,有機溶媒を用いて,プラバスタチン類を抽出する工程において,有機溶媒として,
式CH3CO2R(上記式中,Rは炭素数3又は4のアルキル基を示す。)を有する溶媒を使用し,並びに,不純物を無機酸を用いて分解する工程,不純物を無機塩基を用いて分解する工程及び結晶化を行う工程を組み合わせることにより得られる,一般式(I)
[化1]
を有する化合物を,プラバスタチンナトリウムに対して0.1重量%以下の量で含有することを特徴とする,工業的に生産されたプラバスタチンナトリウムを含有する組成物。」
【要旨】
「プロダクト・バイ・プロセス・クレーム」であり、結局、組成物そのものの発明ということになる。従って、先願明細書に記載された発明と同一であり、特29条の2違反である。三共は、発明未完成等を理由に引例は29条の2先願の適格性が無い旨主張したが、裁判所は認めなかった。
請求棄却。
【コメント】
プロダクト・バイ・プロセス・クレーム(product by process claim)は、いくらプロセスを限定しても、プロダクトそのものとして特許性の判断がなされる。
一方、プロダクト・バイ・プロセス・クレーム(product by process claim)の権利解釈についても同様に、特許権の効力がクレームの製法に限定されるとする「限定説」よりも、製法がどうであれプロダクトそのものが同一であれば特許権の効力が及ぶとする「同一性説」が原則と考えた方がよいだろう。
本件は、不純物が議論された点でも興味深い。
参考:(3) 製造方法によって生産物を特定しようとする記載がある場合(プロダクト・バイ・プロセス・クレーム)
請求項中に製造方法によって生産物を特定しようとする記載がある場合には、1.5.1(2)にしたがって異なる意味内容と解すべき場合を除き、その記載は最終的に得られた生産物自体を意味しているものと解する(注)。したがって、請求項に記載された製造方法とは異なる方法によっても同一の生産物が製造でき、その生産物が公知である場合は、当該請求項に係る発明は新規性が否定される。
(注)このように解釈する理由は、生産物の構造によってはその生産物を表現することができず、製造方法によってのみ生産物を表現することができる場合(例えば単離されたタンパク質に係る発明等)があり、生産物の構造により特定する場合と製造方法により特定する場合とで区別するのは適切でないからである。したがって、出願人自らの意思で、「専らAの方法により製造されたZ」のように、特定の方法によって製造された物のみに限定しようとしていることが明白な場合であっても、このように解釈する。
スタチンではリピトール®(Lipitor、一般名: Atorvastatin)のシェアが圧倒的。
メバロチンの世界売上高推移
2003年度:2054億円
2004年度:1667億円
2005年度:1432億円
2006年度: 935億円
2007年度: 790億円(予測)
2008/01/20
2006.06.26 「三共 v. テバ」 知財高裁平成17年(行ケ)10781
2007/11/16
2003.10.08 「ピジョン v. 特許庁長官(人工乳首事件)」 東京高裁平成14年(行ケ)539
実施例補充型の優先権主張の効果は認められるのか?(人工乳首事件): 東京高裁平成14年(行ケ)539
【背景】
「人工乳首」に関する発明についての、拒絶審決取消訴訟。審決の内容は、本事案において、いわゆる実施例補充型の優先権主張の効果を認めず、特29条の2違反で特許を受けることができないとするものであった。
【要旨】
裁判所は、「後の出願に係る発明が先の出願の当初明細書等に記載された事項の範囲のものといえるか否かは,単に後の出願の特許請求の範囲の文言と先の出願の当初明細書等に記載された文言とを対比するのではなく,後の出願の特許請求の範囲に記載された発明の要旨となる技術的事項と先の出願の当初明細書等に記載された技術的事項との対比によって決定すべきであるから,後の出願の特許請求の範囲の文言が,先の出願の当初明細書等に記載されたものといえる場合であっても,後の出願の明細書の発明の詳細な説明に,先の出願の当初明細書等に記載されていなかった技術的事項を記載することにより,後の出願の特許請求の範囲に記載された発明の要旨となる技術的事項が,先の出願の当初明細書等に記載された技術的事項の範囲を超えることになる場合には,その超えた部分については優先権主張の効果は認められないというべきである。」と判示し、本件については、「後の出願の当初明細書等に本願発明1の実施例として記載された~人工乳首は,先の出願の当初明細書等に明記されていなかったばかりでなく,先の出願の当初明細書等に現実に記載されていた~実施例に係る人工乳首の奏する効果とは異なる~特有の効果を奏するものである。したがって,当該~人工乳首の実施例を後の出願の明細書に加えることによって,後の出願の特許請求の範囲に記載された発明の要旨となる技術的事項が,先の出願の当初明細書等に記載された技術的事項の範囲を超えることになることは明らかであるから,その超えた部分については優先権主張の効果は認められないというべきである。」とし、優先権主張の効果を認めず、請求棄却。
【コメント】
医薬に関する事案でないが、実施例補充型優先権主張の効果に関して非常に重要な判決。実施例補充型の優先権を主張した際、補充された実施例が先の出願当初明細書等に記載された技術的事項の範囲を超えると判断された場合には、その部分については優先権主張の効果は認められない。本判決において、その「技術的事項の範囲を超える」との判断のポイントは、補充実施例が先の出願当初明細書に記載の効果とは異なる特有の効果もさらに奏するかどうか、ということであり、つまり、優先権主張の効果の判断に、後の出願の明細書等の記載も考慮するという点である。この判断については今後の判決の蓄積が待たれる。新たな実施例や作用効果を「補充」する際には、先の出願の「技術的事項の範囲」を超えるものでないかどうか注意深く検討し、上位概念クレームの優先権主張の効果を失うリスクとその補充する内容の重要性等を勘案することによって個々の事案毎に出願のストラテジーを検討することになると思われる。
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