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2006.07.04 「シェーリング・プラウ v. 特許庁長官」 知財高裁平成17年(行ケ)10715

モメタゾンフロエート(Mometasone furoate)吸入剤の発明は認められるか?: 知財高裁平成17年(行ケ)10715

【背景】

吸入用エアゾール組成物に関する発明について、進歩性なし、との拒絶審決に対してが提起した審決取消訴訟。出願人はSchering-Plough。

引例発明との相違点は、含有する医薬が、本願発明ではモメタゾンフロエート(Mometasone furoate)であるのに対し、引用例1ではモメタゾンフロエートに特定されていない点のみであった。

請求項5:

「吸入用エアゾール組成物であって:
A.モメタゾンフロエート;
B.1,1,1,2-テトラフルオロエタン;および
C.賦形剤;界面活性剤;保存剤;バッファー;酸化防止剤;甘味料;
および風味マスキング剤から選択される,場合により存在してもよい一つ
あるいは複数の成分
から本質的に成る組成物。」

【要旨】

引例1の吸入用エアゾール製剤に使用する医薬として、ステロイド系副腎皮質ホルモンのベクロメタゾン等に代えて、ステロイド化合物で抗炎症剤として使用することのできる引例2記載のモメタゾンフロエートを用いることは、本願優先日当時、当業者であれば容易に想到することができたものと認められる。

原告は、

「引例2は、モメタゾンフロエートという特定化合物の安定性を考慮することなしに、化合物全般についてエアゾールへの製剤化の可能性に言及したに過ぎないから、引例1のベクロメタゾンをモメタゾンフロエートに置き換えようとは考えない」

との阻害要因の存在を主張したが、

裁判所は、

「モメタゾンフロエートが吸入用エアゾール組成物に適さないことをうかがわせる記載はなく、不安定で使用できないとの技術常識も認められない。」

として主張を退けた。

また、原告は、

「薬剤回収率が高いという顕著な効果」

を主張したが、

裁判所は、

「実施例には、原告が主張するような薬剤回収率に関する記載はなく、また、本願明細書には、薬剤としてモメタゾンフロエートを使用した場合に、にベクロメタゾンジプロピオネートを使用した場合と比べて、顕著な効果を奏する旨の記載もない。他にこれを認めるに足りる証拠はない。」

として、認めなかった。

請求棄却。

【コメント】

技術常識の存在を動機付けの阻害要因として主張するのであれば、しっかり技術常識として認められるよう主張しなければならないだろう。

また、顕著な効果を主張するのならば、客観的に。

参考:

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