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2007.03.28 「大正薬品 v. アステラス製薬」 知財高裁平成18年(行ケ)10427

ハルナールとハルンナート: 知財高裁平成18年(行ケ)10427

【背景】

大正薬品(原告)は、「ハルンナート」の片仮名文字と「HARNNAT」の欧文字とを上下二段に書してなり指定商品を第5類「薬剤」とする登録商標の商標権者であったが、アステラス製薬(被告(請求人))の「前立腺肥大症の排尿障害改善剤」を表示するものとして「ハルナール」、「HARNAL」又は「Harnal」との標章(使用標章)が使用されており、商品の出所混同を生じさせるから商4条1項15号違反であるとして無効審判請求された。

無効とすべき審決に対して原告は取消訴訟を提起した。

【要旨】

裁判所は、

「本件商標と使用標章の称呼、外観の類似性の高さの程度に、使用標章の著名性及び本件商標と使用標章の取引者、需要者の共通性を考慮すれば、本件商標は、これを指定商品である薬剤について使用した場合には、その取引者、需要者に、商品の出所について混同を生じさせる恐れがあると認めることができ、本件商標の登録は商4条1項15号に違反してされたものであるとした審決の判断に誤りはないというべきである。」

と判断した。

原告は、

「医師等は医薬品の取扱いに相当の注意力を有する専門家であること、患者に対して医療用医薬品を提供するには必ず医師の処方箋が必要であること、医療用医薬品において、一字違い又はこれに近い商品名のものが合計58件もあり、「ハル」を含む医療用医薬品が現在販売されているものでも、本件商標及び引用商標が付された2件のほかに、「ハルトマン」等8件、合計10件もあることなどから、本件商標と引用商標の相違が強調され、出所の混同のおそれはない」

と主張した。

しかし、裁判所は、

「本件商標と使用標章の類似性、使用標章の著名性に、医療用医薬品に関する取引の実情を併せ考慮すれば、医療関係者が医薬の知識を有する専門家であるとしても、~本件商標を使用した薬剤が、被告又は被告と資本関係ないし業務提携関係にある者の業務に係る商品(被告商品)であるかのように混同するおそれがあることを否定することはできない」

し、一字違い又はこれに近い商品名のものが合計58件あるとしても、

「出所の混同のおそれがないとの事実について明らかになっているわけではないから、~原告主張の事実だけでは、~取引者、需要者において出所の混同のおそれがないことを認めるに足りない。」

と判断した。

請求棄却。

【コメント】

アステラス製薬のハルナール(米国での販売名:Flomax、一般名:塩酸タムスロシン(TAMSULOSIN HYDROCHLORIDE)、α1ブロッカー、前立腺肥大症に伴う排尿障害)のジェネリック医薬品は日本では既に多数販売されているが、大正製薬のハルンナートもそのひとつ。

今回の商標権無効とする判決がその後のハルナールの売り上げにどの程度好影響を与たのか・・・

ちなみに、アステラス製薬は、ハルナールについてカプセル剤から口腔内崩壊錠(ハルナールD錠)に剤型変更を果たしている。

ハルナールD錠における血漿中未変化体濃度の推移がハルナールカプセルの場合とほぼ同じであり、生物学的に同等であることを示すことで承認を獲得したわけであるが、ジェネリックメーカーも同様に、薬価削除となったハルナールカプセルとの生物学的同等性を示すことでジェネリック医薬品の承認を得て販売している。

参考:

ハルナールに関するアステラス製薬の最近のプレスリリース:

Wikipedia: Tamsulosin

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