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2010.03.17 「X v. 特許庁長官」 知財高裁平成21年(行ケ)10207

喘息治療薬吸入器: 知財高裁平成21年(行ケ)10207

【背景】

「呼子付喘息治療薬吸入器」に関する出願(特願2003-121760; 特開2004-195191)の拒絶審決取消訴訟。審決の理由は、本願発明は引用発明1に引用発明2及び周知技術を適用することにより当業者が容易に発明をすることができたものである、としたものである。

本件補正発明:

微細粉末状薬剤が分包されたロタディスクを穴を覆うように載せディスクカバーで覆った本体と,
前記ディスクカバーの針部でロタディスクを突き刺し微細粉末状薬剤を吸入する際の吸入経路であり,空気を取り入れるための左右小孔が空けられ,微細粉末状薬剤を拡散するための格子が設けられたマウスピースと,
前記左右小孔のいずれかに取り付けた吸気肺活量と微細粉末薬剤吸入経路の空気流量の差を補正するための空気の流れで音を発する呼子とからなり,
十分に微細粉末状薬剤を吸入できたときだけ音が発生するようにしたことを特徴とする呼子付喘息治療薬吸入器

本件補正発明には、空気の流れで音を発する呼子、が設けられているのに対し、引用発明1には設けられていなかった。

【要旨】

裁判所は、
「この種の薬剤吸入装置において,必要,かつ,十分な量の薬剤を吸入することができるようにすることは一般的な課題であると認められるところ~引用発明2には~これを解決するために音響学的な笛等を利用するという技術思想が開示されているばかりでなく~吸入装置の空気用バイパスに指示装置を結合させて所望の空気流割合において使用する例についても開示されているということができるのである。そうすると~引用発明1に接した当業者~が,同じく吸入装置の発明である引用発明2に接した場合,引用例2に開示された上記のような技術思想を引用発明1に適用し,~引用発明2の技術思想を引用発明1において実現しようとすることは容易であるといわなければならない。」
と判断した。

原告は、本件補正発明の効果が顕著であるとも主張したが、裁判所は、引用発明1と引用発明2の効果を組み合わせた以上のものではないとして、原告の主張を退けた。

請求棄却。

【コメント】

特にコメントなし。参考までに本願発明と引例は下記の通り。

本願発明(下図は呼子付喘息治療薬吸入器。1a: 本体; 1b: ディスクカバー; 2: マウスピース; 3: 呼子; 4: ロタディスク)

引用例1(特開昭62-41668号)はグラクソ社が出願した喘息治療薬吸入器。

引用例2(特開昭49-124893号)は、十分な作動が確保できているかどうかを確認するために使用者が吸気によって所望の空気流を発生された場合に笛やプロペラによる音が発生し、これを聞き取ることができるようにした指示装置と組み合わせた吸入装置の発明である(下図41が笛)。

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