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2010.03.30 「ナイアダイン v. 特許庁長官」 知財高裁平成21年(行ケ)10158

親油性LogP値の差が0.5~1.5の補助エステル: 知財高裁平成21年(行ケ)10158

【背景】

「局所微量栄養素送達システムおよびその用途」に関する出願(特願2001-575962; 特表2004-519413)の拒絶審決取消訴訟。審決の理由は記載要件(実施可能要件及びサポート要件等)違反であった。

請求項1(本願発明1):

栄養素をヒトに伝達するための組成物の製造方法であって,前記組成物は,炭素原子数12~16のアルキル側鎖を持つニコチン酸アルキルエステル型の前記栄養素と,前記ヒトの皮膚細胞への前記栄養素の送達を促進するのに十分な量の補助エステルとを,前記補助エステルが,前記ニコチン酸エステルに対して,親油性LogP値が小さく,その差がLogP値において0.5~1.5であり,前記ニコチン酸アルキルエステル型の栄養素と前記補助エステルを混合する工程を含む,組成物の製造方法。」

請求項11(本願発明2):

栄養素をヒトに伝達するのに役立つ外用投与に適した剤形の組成物であって,
(ⅰ)炭素原子数12~16のアルキル側鎖を持つニコチンアルキルエステル型の前記栄養素,および
(ⅱ)補助エステルとを含み,前記補助エステルが,前記ニコチン酸エステルに対して,親油性LogP値が小さく,その差がLogP値において0.5ないし1.5である,組成物。」

【要旨】

裁判所は、

「本願明細書には,本願発明による課題解決をするに当たり,当業者において,本願発明で規定したLogP値の範囲内の化合物群の中から,どのような補助エステルを選定すべきかについて,明確かつ十分な記載がされていないと解される。~本願発明1,2を実施しようとする当業者は,本願発明のLogP値を満たし,かつ生物変換に関して微量栄養素(プロ栄養素)と効果的に競合する補助エステルを選択するためには,過度の試行錯誤を要することになる。本願明細書の発明の詳細な説明は,当業者が,発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえない。
本願発明1及び2について,特許法36条4項の要件を満たさないとした審決の判断に誤りはなく,原告主張に係る取消事由は理由がない。原告は,同項の違反について,その他縷々主張するが,いずれも理由がない。

したがって,審決のその余の判断の当否について検討するまでもなく,本件審判請求が成り立たないとした審決の判断に取り消すべき違法はない。」

と判断した。

請求棄却。

【コメント】

実施可能要件違反とされた事例。審決では種々の理由でサポート要件違反であるとも判断されていたが、判決ではサポート要件違反かどうかは判断されなかった。

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