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2012.08.31 「宇部興産 v. 国」 東京地裁平成23年(行ウ)443

存続期間延長分の特許料納付期限徒過: 東京地裁平成23年(行ウ)443

【背景】

原告が「ピペリジン誘導体,その製造方法並びにそれを含む抗ヒスタミン剤」に関する特許権(出願番号: S63-175142、公告番号: H05-033953、登録番号: 第1821360号、出願日: 昭和63年7月15日、出願公告年月日: 平成5年5月20日、登録年月日: 平成6年2月10日)の第17年分特許料の追納期間経過後に特許料納付書を提出して特許料及び割増特許料の納付手続をしたのに対し、特許庁長官が同特許料納付書を却下する処分をしたことについて、原告が、被告に対し、上記追納期間の徒過は、原告が特許管理のために用いていた日立制作の特許管理システムの瑕疵によるものであって、原告の責めに帰することができない理由があると主張し、本件却下処分の取消しを求めた事案。

本件特許権の存続期間は平成20(2008)年7月15日までであったが、存続期間の延長登録の出願がされ(出願番号2000-700108、2000-700109、2000-700110、2002-700032、2002-700033)、平成13(2001)年6月20日及び平成15(2003)年3月5日に、延長の期間を5年とする存続期間の延長登録がされ、本件特許権の存続期間は平成25(2013)年7月15日まで延長された。

本件特許権の第17年分の特許料の納付期限は平成21(2009)年5月20日であり、追納期間の満了日は平成21(2009)年11月20日であった。

【要旨】

主 文
原告の請求を棄却する。(他略)

裁判所は、特許料112条の2第1項「その責めに帰することができない理由」の存否について下記のとおり判断した。

「原告新システムに瑕疵が存在することを認め難い。それにもかかわらず,本件においては,本件特許の第16年分特許料納付により,原告新システム上,特許料を完納した旨のコードが設定され,次回納付期限日(第17年分特許料納付期限日)が設定されなかったというのであるから,その原因は明らかではなく,~その原因としては,種々の事情が考えられるというべきこととなる。

~いずれにしても,~原因を明確に特定するに足りる立証はなく,上記原因が特定されない以上,原告が,上記原因に関し,通常の注意力を有する当事者が通常期待される注意を尽くしたこと及び上記原因が上記注意にもかかわらず避けることができないと認められる事由に当たることを認めるに足りる主張及び立証もないものといわざるを得ない。
なお,上記原因として考えられる可能性の一つとして,本件移行作業が適切なものではなかった可能性が挙げられることは前記のとおりであるところ,前記第3の1(2)イのとおり,本件移行作業は,原告が日立情報システムズに委託して行われたことが認められる。しかし,本件移行作業に問題があったとしても,上記の点が,受託者の判断に係るものではなく,受託者からの報告に基づき原告が指示した事項に起因するような場合には,上記の点は,委託者である原告自身の過失によるものとみるのが相当であり,原告が,通常の注意力を有する当事者として通常期待される注意を尽くしたものということはできないこととなる。また,上記問題点が,受託者の作業上の誤りなど,受託者の過失によるものとみるべきものであったとしても,原告は,上記移行作業を自ら行い又は第三者に委託するなどのいずれの形態を採用するか,または第三者に委託する場合にどのような者を選択するかについて,自己の判断に基づき自由に選択することができる状況の下で,自己の判断に基づき本件移行作業を第三者に委託することを選択したものである上,前記第3の1(2)ウのとおり,日立情報システムズは,原告に対し,作業の各段階において文書で作業内容を報告していたことが認められるのであるから,上記過失は,原告側で生じたものとみるべきであり,当該過失に起因する事情により追納期間を徒過した場合には,特許法112条の2第1項所定の「その責めに帰することができない理由」によるものとは認められないものというべきである。」

【コメント】

存続期間が延長された場合には、その情報を年金納付の管理システムに間違いなく反映させることである。

本件特許は、タリオン錠(ベシル酸ベポタスチン)を保護する特許。存続期間の延長登録により、本件特許権の存続期間は2013年7月15日まで延長されたはずだったが、年金未納により2009年5月20に本権利は消滅となってしまった。

2012年8月にタリオンの後発品が製造承認されたが、同年12月の後発品追補収載はされていないようである。

参考:

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