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2014.10.14 「沢井製薬 v. ベーリンガー インゲルハイム」 判定2014-600007; 2014-600008

単剤承認で延長された特許権の効力は配合剤に及ぶか?: 判定2014-600007; 2014-600008

請求人(沢井製薬)が求める請求の趣旨は、判定請求書の記載によれば、「別紙イ号製品目録に記載された医薬品は、平成15年6月25日登録に係る存続期間延長された特許第2709225号の技術的範囲に属しない、との判定を求める」というもの。

同特許はベーリンガーインゲルハイムが開発したアンジオテンシンII受容体拮抗薬テルミサルタン(telmisartan)の化合物特許であり、テルミサンタンを有効成分とする商品名ミカルディスの承認に基づき特許期間が延長登録された(出願番号2002-700137、2002-700138)。

つまり、延長登録において処分の対象となった物は「テルミサンタン」であった。

一方、イ号製品は、「テルミサルタン/アムロジピンベシル酸塩配合錠」であった。

特許庁は、

「判定について、特許法71条1項には「特許発明の技術的範囲については、特許庁に対し、判定を求めることができる。」と規定されている。そして、この規定に基づき判定を求めることができる対象である「特許発明の技術的範囲」については、平成14年改正前の特許法70条1項に「特許発明の技術的範囲は、願書に添付した明細書の特許請求の範囲の記載に基づいて定めなければならない。」と規定され、同2項には「前項の場合においては、願書に添付した明細書の特許請求の範囲以外の部分の記載及び図面を考慮して、特許請求の範囲に記載された用語の意義を解釈するものとする。」と規定されている。これに対して、本件特許第2709225号の特許請求の範囲及び明細書の特許請求の範囲以外の部分(図面の添付はない)の記載は、平成15年6月25日登録に係る存続期間の延長の前後において変わらないのであるから、「平成15年6月25日登録に係る存続期間延長された」という事実は、特許法70条の規定に基づいてなされるものである、本件特許発明の技術的範囲の判断には影響を及ぼさない。よって、本件判定の請求の趣旨は、「イ号製品目録に記載された医薬品が、特許第2709225号の技術的範囲に属しない、との判定を求める」ものであると解し、以下判断を行う。」

と前置きしたうえで、本件請求項1及び7に係る発明とイ号製品を対比した結果、イ号製品は、本件請求項1及び7に係る発明の構成要件を充足するから、特許第2709225号発明の技術的範囲に属する、と判定した。

なお、特許庁は、

「判定請求書において、請求人は、「現在本件特許権の効力は特許法68条の2,70条に基づいて、その技術的範囲が解釈される。」との前提の下、イ号製品には本件特許権の効力が及ばない旨の判定を求めているようであるが、特許法68条の2の規定による特許権の効力が及ぶ範囲について、特許庁に判定を求めることができる旨の規定は特許法に存在しないから、特許法68条の2の規定による本件特許権の効力が及ぶ範囲について、請求人は、特許庁に対して判定を求めることはできない。」

として、延長された特許権の効力が及ぶ範囲については判断をしなかった。

【コメント】

当該特許(出願日1992年2月5日)の存続期間は4年11月20日延長され、満了日は2017年1月25日。延長された特許権の効力が仮にミカルディスにしか及ばず、テルミサルタンと他剤との配合剤には及ばないとなれば、出願からすでに20年経過した現在において、同特許はテルミサルタンと他剤との配合剤に対して無力ということになる。

延長された特許権の効力範囲について、本件で特許庁は判断しなかったため、やはり侵害事件として裁判の場での判断が待ち望まれる。

関連事件: 判定 2014-600018; 2014-600019; 2014-600020

コメント

  1. 匿名 より:

    裁定も門前払いの上に、差止請求権不存在確認訴訟も、門前払いだったと思います。

    実質的に、薬事承認当局が延長された特許の効力範囲を決めているという異常事態です。

    • Fubuki Fubuki より:

      コメントありがとうございます。
      “差止請求権不存在確認訴訟も、門前払い”の訴訟とは、最近のハラヴェン®(エリブリン)の事件(ニプロ v. エーザイ)のことでしょうか(今、その内容を眺めております)。
      厚生労働省が特許権の効力を判断しているシステム(しかも課長通知に依拠した運用)は、特に海外の目から見たら、異常であり、説明困難ですよね。

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