2019/10/15

シロドシン製剤特許を巡るジェネリックメーカーの動き

「シロドシンの苦味をマスキングした経口投与製剤」に関する特許(日本特許第6392207号; 存続期間満了日2034年3月25日(延長なし))の有効性を巡り、キッセイ薬品工業と小林化工が特許無効審判で争っている(無効2019-800015; 請求日2019年2月22日)。小林化工は、本件特許の無効審決を得て、シロドシンを有効成分とする前立腺肥大症に伴う排尿障害改善薬ユリーフ®のジェネリックの販売に製剤特許の問題がないことの確信を得たいと考えているようだ。しかし、ユリーフ®のジェネリックを販売開始している他のジェネリックメーカーは無効審判を請求していない。
【請求項1】
シロドシンの微粉末を含有する薬物粒子を、非腸溶性高分子を含有するコーティング剤で造粒又は被覆して得られるマスキング粒子であって、非腸溶性高分子含量が、シロドシン100質量部に対して80質量部~400質量部であり、かつ該マスキング粒子中の非腸溶性高分子含量が、15~30質量%である、口腔内崩壊製剤用のマスキング粒子。
【請求項12】
請求項1~11のいずれかに記載のマスキング粒子を含有する経口投与製剤。
【請求項13】
口腔内崩壊製剤である、請求項12記載のマスキング粒子を含有する経口投与製剤。
【請求項14】
剤形が錠剤である、請求項13記載のマスキング粒子を含有する経口投与製剤。

また、キッセイ薬品工業は、「光安定性に優れたシロドシン含有経口固形製剤」に関する特許(日本特許第6427634号)も保有しているが、異議申立(異議2019-700058; 申立日2019.01.25)されている。現在、特許は合議の結果取り消すべきものであるとの取消理由通知書が出されている。
【請求項1】
シロドシンを含有するマスキング粒子と光安定化剤をそれぞれ別個に含有する口腔内崩壊錠であって、
光安定化剤が黄酸化鉄、黄色三二酸化鉄、褐色酸化鉄、三二酸化鉄、食用黄色4号、食用黄色5号、食用黄色4号アルミニウムレーキ、食用赤色2号、食用赤色3号及び食用赤色102号からなる群から選択される1以上である、口腔内崩壊錠。

また、ジェネリックメーカーである大原薬品工業は、「光安定性を向上したシロドシン含有着色錠剤」に関する特許(日本特許第6321314号)を保有しているが、異議申立(異議2018-700877; 申立日2018.11.01)されている。現在、訂正を認めた上で特許を取り消すとの取消理由通知書が出されている。
【請求項1】
シロドシン及び遮光剤を含有する口腔内崩壊錠であって、該遮光剤が黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄より選ばれる口腔内崩壊錠。

その他、沢井製薬の「シロドシン含有粒子の製造方法及びシロドシン含有口腔内崩壊錠の製造方法」に関する特許出願(特開2018-83809)、武田テバファーマの「不快な味がマスキングされた経口医薬組成物」に関する特許出願(特開2018-150287)、共和薬品工業の「シロドシンを含有する固形医薬組成物」に関する特許出願(特開2019-94283)、東和薬品の「シロドシン含有医薬組成物とその製造方法」に関する特許出願(特開2018-65752)もあったりする(いずれも審査請求はまだされていない)。

シロドシンは前立腺肥大症に伴う排尿障害改善薬ユリーフ®の有効成分。ユリーフ®はキッセイ薬品工業が創製し、第一製薬(現:第一三共)と共同開発(第Ⅲ相臨床試験以降)・共同販売する前立腺肥大症に伴う排尿障害改善薬である。ユリーフ®の再審査期間は2006年1月23日~2014年1月22日で終了しており、2018年12月には特許が満了した(2019.05.08 キッセイ2019年3月期 決算短信より)ため、2019年2月には10社を超えるジェネリックメーカーがシロドシン錠又はシロドシンOD錠の承認を得て、6月には薬価基準収載・販売に至っている。

オーソライズド・ジェネリックが2018年8月15日に承認(キッセイ press release: 2018.08.16 「前立腺肥大症に伴う排尿障害改善薬「ユリーフ®錠、同OD錠」のオーソライズド・ジェネリック(AG)の事業化について」)、2019年3月に発売されているが、先発品ユリーフ®の2020年3月期(通期)の売上は、ジェネリックの発売に伴い大きな減少が見込まれている(2019.07.30 キッセイ決算補足資料2020年3月期第1四半期より)。

ユリーフ®売上推移(百万円)
2007年3月期通期実績: 1,417
2008年3月期通期実績: 4,106
2009年3月期通期実績: 6,288
2010年3月期通期実績: 8,706
2011年3月期通期実績: 9,723
2012年3月期通期実績: 11,156
2013年3月期通期実績: 11,714
2014年3月期通期実績: 13,331
2015年3月期通期実績: 14,087
2016年3月期通期実績: 15,473
2017年3月期通期実績: 16,164
2018年3月期通期実績: 17,235
2019年3月期通期実績: 17,810
2020年3月期通期予想: 6,200

参考:

2019/10/12

ポーラファルマ: ヘパリン類似物質外用泡状スプレーに関する特許権について

2019年10月8日、(株)ポーラファルマより「ヘパリン類似物質外用泡状スプレーに関する特許権について」の謹告文が掲載された(参照: 日刊薬業website: 【謹告】ヘパリン類似物質外用泡状スプレーに関する特許権について)。

(株)ポーラファルマは、ヘパリン類似物質を有効成分とするヘパリン類似物質外用泡状スプレー0.3%「PP」を製造販売している。
「ヘパリン類似物質は、ブタの気管軟骨を含む肺臓から抽出されたムコ多糖の多硫酸化エステルで、D-グルクロン酸と N-アセチル-D-ガラクトサミンからなる二糖を反復単位とする多糖体を SO3-で多硫酸化したものである。
薬理的には、血液凝固抑制作用、血流量増加作用、線維芽細胞増殖抑制作用などが確認されている。また、その構造中に硫酸基、カルボキシル基、水酸基などの多くの親水基を持ち、高い保湿能を有しており、臨床的には皮脂欠乏症、進行性指掌角化症、肥厚性瘢痕・ケロイドの治療と予防、血行障害に基づく疼痛と炎症性疾患などに広く用いられている。
ヘパリン類似物質ローション 0.3%は、手にとって塗布するため、直接塗布することができない。また、直接噴霧することができるヘパリン類似物質外用スプレー0.3%があるが、広範囲に塗布する場合は、何度もスプレーする必要があるため、過量に噴霧することとなり液垂れするといった欠点がある。これらの製品の欠点を補うため、直接噴霧することができ、かつ、液垂れしにくい泡状のポンプスプレー剤を開発した。
ヘパリン類似物質外用泡状スプレー0.3%「PP」は、標準製剤(ローション剤 0.3%)の追加剤形として開発され、2016年8月に製造販売承認を取得し、2016年12月に発売した。」(医薬品インタビューフォームより)

製剤の組成:
(1) 有効成分(活性成分)の含量
1g中ヘパリン類似物質3.0mgを含有する。

(2) 添加物
基剤: 1,3-ブチレングリコール、グリセリン、D-ソルビトール
発泡剤: ラウロマクロゴール
溶解補助剤: ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 60、ステアリン酸ポリオキシル 40
湿潤剤: 精製ヒアルロン酸ナトリウム
保存剤: パラオキシ安息香酸メチル
緩衝剤: クエン酸水和物、クエン酸ナトリウム水和物

(株)ポーラファルマは、ヘパリン類似物質を有効成分とする泡状外用組成物およびスクリーンフォーマー用外用組成物に関する以下の特許権を保有している。
  • 特許第6368834号(最先優先日2014年12月24日、登録日2018年7月13日)
    請求項1: 非イオン性界面活性剤としてポリオキシエチレンアルキルエーテル及び/又はポリオキシエチレンアルケニルエーテルとポリオキシエチレン脂肪酸エステル及び/又はポリオキシエチレン硬化ヒマシ油との組み合わせを含み、非イオン性界面活性剤を組成物全量に対し2.5~15質量%含有し、
    前記非イオン性界面活性剤全量のHLBが10以上であり、
    1,3-ブチレングリコールを10~25質量%含み、
    塗布後除去しない態様で使用するためのものであることを特徴とする、スクリーンフォーマー用の外用組成物。
  • 特許第6396231号(優先日2014年1月27日、登録日2018年9月7日)
    請求項1: 1)極性溶剤と、2)非イオン性界面活性剤と、多価アルコールと、を含有する外用医薬組成物であって、界面活性剤として、前記非イオン性界面活性剤のみを含み、
    前記極性溶剤は、炭素数1~4のアルキル鎖を有するN-アルキルピロリドン、炭酸ジエステルより選択される1種又は2種以上であり、
    前記非イオン性界面活性剤ポリオキシエチレンが付加されていても良い脂肪酸モノグリセリド、ポリグリセリンの脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンが付加されていてもよいソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンのアルキル乃至はアルケニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、脂肪酸ジエタノールアミド及び水素添加されていても良いポリオキシエチレンヒマシ油より選択される1種または2種以上であり、
    前記多価アルコールは1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール及び1,2-ペンタンジオールから選ばれる1種または2種以上であり、
    使用時に泡状であり、洗浄行為を伴わない態様で使用されることを特徴とする外用医薬組成物(但し噴射ガスを含む形態を除く)。
  • 特許第6460988号(優先日2013年7月11日、登録日2019年1月11日)
    請求項1: 1)有効成分と、2)N-アルキル-2-ピロリドン及び/又は炭酸ジエステルと、3)非イオン性界面活性剤、とを含有する外用医薬組成物をポンプ式フォーマーに充填してなる、外用医薬。

ヘパリン類似物質を有効成分とする外用泡状スプレー製剤としては、他に下記の医療用医薬品が承認されている。ポーラファルマのヘパリン類似物質外用泡状スプレー0.3%「PP」の2016年12月発売から遅れること約2年、2018年9月13日に先発品のヒルドイド®のフォーム剤が販売開始している。
  • ヒルドイド®フォーム0.3%(2018年9月13日販売)
    添加物
    原液:グリセリン、マクロゴール、ポリソルベート65、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸プロピル、pH調節剤 噴射剤:LPG
  • ヘパリン類似物質外用泡状スプレー0.3%「日医工」(承認、薬価基準未収載)
    添加物: カルボキシビニルポリマー、ヒプロメロース、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、グリセリン、トリエタノールアミン、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸プロピル
  • ヘパリン類似物質外用泡状スプレー0.3%「ニットー」(2016年12月9日販売)
    添加物: 1,3-ブチレングリコール、グリセリン、ラウロマクロゴール、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、ステアリン酸ポリオキシル40、D-ソルビトール、精製ヒアルロン酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸メチル、クエン酸水和物、クエン酸ナトリウム水和物
  • ヘパリン類似物質外用泡状スプレー0.3%「日本臓器」(2016年12月9日販売)
    添加物: グリセリン、精製ヒアルロン酸ナトリウム、1,3−ブチレングリコール、ラウロマクロゴール、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、ステアリン酸ポリオキシル40、D−ソルビトール、パラオキシ安息香酸メチル、クエン酸水和物、クエン酸ナトリウム水和物

参照:

2019/10/03

ヘムライブラ®に対する特許侵害訴訟 - バクスアルタの控訴棄却

2019年10月3日付の中外製薬のプレスリリースによると、中外製薬の血友病A治療薬「ヘムライブラ®」(一般名:エミシズマブ)がバクスアルタ社保有の「第Ⅸ因子/第Ⅸa因子の抗体および抗体誘導体」に関する特許権(特許第4313531号; 存続期間満了日は2020年9月13日)に触れるとして上記ヘムライブラの製造等差止・廃棄を求め、バクスアルタ社が中外製薬を被告として提起した特許侵害訴訟について、バクスアルタ社は、東京地裁判決(2018.03.28 「バクスアルタ v. 中外製薬」 東京地裁平成28年(ワ)11475)を不服として、2018年5月10日、知財高裁に控訴していましたが、2019年10月3日、知財高裁はバクスアルタ社の控訴を棄却する(中外製薬勝訴)判決を下したとのことです。