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WTO閣僚会議 COVID-19ワクチン対象にTRIPS waiver採択 製薬団体は「科学者への冒涜」、「逆行」、「有害な先例」と痛烈に批判

2022年6月12日からジュネーブで開催されていた第12回WTO閣僚会議(MC12)では、現在国際社会が直面する重要課題について議論が行われ、これら議論を踏まえて、参加した164の国・地域の代表が一致して閣僚宣言を発出し、17日に閉会しました。

閣僚会議はWTOの最高意思決定機関です。

COVID-19の影響で開催が延期され、今回は約4年半ぶりの開催となったわけですが、主要な議題の一つは、その延期の原因となったCOVID-19パンデミックへの取り組みについて、特に、南アフリカとインドが、知的財産権で保護されているCOVID-19治療薬やワクチン等技術の使用に関して、知的財産に関して取り決めた多国間条約である「知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(Trade-Related Aspects of Intellectual Property Rights Agreement; TRIPS)」の一時的な適用除外/履行義務免除(以下、「TRIPS waiver」)を求めた提案についてでした。

「TRIPS waiver」に関する議論は最終合意に至りましたが、その合意内容に対して、閣僚宣言に至ったことを自画自賛するWTO閣僚及び外交官とは対照的に、各製薬団体はこの決定を「科学者への冒涜」、「空っぽ」、「逆行」、「有害な先例」と痛烈に批判、失望する声明を出しています。

しかし、製薬団体からの声明には、批判だけでなく、本当に取り組まなければならない重要な問題への指摘と主張が示されているように思えます。

本記事では、この「TRIPS waiver」に関してWTO閣僚会議で合意された内容と、それを受けての閣僚及び各製薬団体等の声明を眺めていきます。

なお、合意文書や声明の記述については要約している場合もありますので、正確な記述に関しては原文をご参照ください。

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1.「TRIPS waiver」が議論となった背景

※COVID-19パンデミックが起きるずっと前、20年以上前から知的財産と公衆衛生との関係でWTOにおいて議論されてきたTRIPS協定の話題について知りたい方は、記事「TRIPS協定及び公衆衛生に関する宣言(ドーハ宣言)から20年」をご参照ください。

TRIPS協定及び公衆衛生に関する宣言(ドーハ宣言)から20年
「TRIPS協定(Trade-Related Aspects of Intellectual Property Rights Agreement 知的所有権の貿易関連の側面に関する協定)及び公衆衛生に関する宣言」(Declaration on the TRIPS agreement and public health; 以下、「ドーハ宣言」ともいう。)がWTO閣僚会議において採択されたのが2001...

2020年10月、COVID-19に対する治療薬やワクチンがしっかり世界中の人々のもとにまで届いていないという医薬品アクセス問題の原因が特許権等の知的財産権の存在にあると主張して、南アフリカとインドが、TRIPS協定において定められた知的財産保護に関する規程(第II部の第1、4、5及び7節)の一時的な適用除外/履行義務免除(「TRIPS waiver」)を求める提案をWTOにて行いました(2020.10.02 Council for Trade-Related Aspects of Intellectual Property Rights – IP/C/W/669: WAIVER FROM CERTAIN PROVISIONS OF THE TRIPS AGREEMENT FOR THE PREVENTION, CONTAINMENT AND TREATMENT OF COVID-19 – COMMUNICATION FROM INDIA AND SOUTH AFRICA)。

12. In these exceptional circumstances, we request that the Council for TRIPS recommends, as early as possible, to the General Council a waiver from the implementation, application and enforcement of Sections 1, 4, 5, and 7 of Part II of the TRIPS Agreement in relation to prevention, containment or treatment of COVID-19.

※参照: 2020.10.02 Council for Trade-Related Aspects of Intellectual Property Rights – IP/C/W/669: WAIVER FROM CERTAIN PROVISIONS OF THE TRIPS AGREEMENT FOR THE PREVENTION, CONTAINMENT AND TREATMENT OF COVID-19 – COMMUNICATION FROM INDIA AND SOUTH AFRICA

このような議論に反応して、各製薬業界団体は、COVID-19に関連して強制実施権を付与する等の知的財産制度の弱体化への動きに懸念を表明しました(2020.12.03記事「知的財産権とCOVID-19についての製薬団体のステートメント」)。

知的財産権とCOVID-19についての製薬団体のステートメント
1.はじめに 製薬産業にとって、知的財産権はイノベーションの原動力であり、成功確率が極めて低い挑戦にも敢えて膨大な投資ができるインセンティブを与えてくれます。いまだに有効な治療法が見つかっていない病気に対する、新しい治療薬や診断薬等(アンメット・メディカル・ニーズ)への挑戦と投資が繰り返され、幾多の発明が生まれては消え、患者様や医療現場に至るものは極僅か。それでも世の中に出た医薬品には患者様や医療...

このWTOでの南アフリカとインドからの提案と議論を受けて、2021年5月5日、米国通商代表部(USTR)のタイ代表は、バイデン政権がCOVID-19ワクチンについて「TRIPS waiver」を支持することを表明しました。

科学技術のイノベーションの推進と知的財産の保護政策をグローバルリーダーとして推進してきた米国政府が、このような方向性を打ち出したことは驚きであり、各製薬業界団体はさらに反対と失望の声明を出すこととなりました(2021.05.06記事「COVID-19ワクチンの知的財産権の放棄を支持したバイデン政権と各製薬業界団体の失望・・・将来のパンデミックに対するイノベーションは誰が担うのか?」)。

COVID-19ワクチンの知的財産権の放棄を支持したバイデン政権と各製薬業界団体の失望・・・将来のパンデミックに対するイノベーションは誰が担うのか?
2021年5月5日、米通商代表部(USTR)のタイ代表は、WTOでの議論(TRIPS協定において定められた知的財産保護に関する規程の適用除外/履行義務免除(waiver)を求める提案)を受けて、バイデン政権がCOVID-19ワクチンの知的財産権保護の放棄(前記waiver)を支持することを発表しました。その発表に対して各製薬業界団体は反対と失望の声明を出しています。 バイデン政権の安全で効果的なワ...
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2.「TRIPS waiver」に関して合意された内容

「TRIPS waiver」に関してWTO閣僚会議(MC12)において合意された内容(現時点でドラフト)を以下に眺めていきます。

参照: 2022.06.17 WTO News: WTO members secure unprecedented package of trade outcomes at MC12

  • a Ministerial Declaration on the WTO Response to the COVID-19 Pandemic and Preparedness for Future Pandemics (WT/MIN(22)/W/13); and  
  • a Ministerial Decision on the Agreement on Trade-related Aspects of Intellectual Property Rights (WT/MIN(22)/W/15/Rev.2)

DRAFT MINISTERIAL DECISION ON THE TRIPS AGREEMENT(WT/MIN(22)/W/15/Rev.2)

The Ministerial Conference,

Having regard to paragraphs 1, 3 and 4 of Article IX of the Marrakesh Agreement Establishing the World Trade Organization.

Noting the exceptional circumstances of the COVID-19 pandemic;

Decides as follows:

1. Notwithstanding the provision of patent rights under its domestic legislation, an eligible Member1 may limit the rights provided for under Article 28.1 of the TRIPS Agreement (hereinafter “the Agreement”) by authorizing the use of the subject matter of a patent2 required for the production and supply of COVID-19 vaccines without the consent of the right holder to the extent necessary to address the COVID-19 pandemic, in accordance with the provisions of Article 31 of the Agreement, as clarified and waived in paragraphs 2 to 6 below.

国内法における特許権の規定にかかわらず、適格国1 は、TRIPS協定(以下「協定」)第31条の規定に従い、COVID-19パンデミックに対処するために必要な範囲で、権利者の同意なしにCOVID-19ワクチンの製造及び供給に必要な特許の対象2 の使用を認めることにより、協定第28条1項に規定する権利を制限できるものとする。以下の第2項から第6項に明確化と免除を定めるものとする。

  • ここで、全ての開発途上国が「適格国1」であるとしています(脚注1)。但し、COVID-19ワクチンを製造する既存の能力を有する開発途上国は、本決定を利用しないことを拘束力のある約束として行うことが奨励されるとしています。このような拘束力のある約束には、2022年5月10日の総会での発言など、適格国による総会への発言が含まれ、TRIPS理事会によって記録され、WTOウェブサイト上でまとめて公開される予定であるとしています。COVID-19ワクチンを製造する既存の能力を備えた加盟国(例えば、中国やインド。しかし中国やインドは開発途上国でしょうか。)が本決定を利用することへの懸念から、このような脚注が盛り込まれているのかもしれません(2022.06.17 The Wall Street Journal: Biden’s Patent Gift to Beijing; 2022.06.17 SpicyIP: Breaking: 12th WTO Ministerial Conference concludes with a Draft Decision on TRIPS (waiver?))。
  • 「協定第31条」は、加盟国の国内法令により、特許権者の許諾を得ていない特許の対象の他の使用(政府による使用又は政府により許諾された第三者による使用を含む。)を認める場合について規定しています。2001年11月14日にWTO閣僚会議において採択されたドーハ宣言(TRIPS協定及び公衆衛生に関する宣言(Declaration on the TRIPS agreement and public health))採択後、特許権者以外の者が感染症に関する医薬品を生産し、医薬品の生産能力が不十分な国に輸出することを可能とするよう、加盟国がこのような生産等を認めるための条件を緩和する規定を追加するTRIPS協定の改正議定書の発効(2017年1月23日)を経て、現在のTRIPS協定第31条及び第31条の2(強制実施権に関する)が規定されています(特許庁 TRIPS協定)。
  • 「特許の対象2」には、COVID-19ワクチンの製造に必要な成分や製法も含まれると理解されるとしています(脚注2)。
  • 「協定第28条1項」は、特許は特許権者に、特許の対象が物である場合には、特許権者の承諾を得ていない第三者による特許の対象の使用等を防止する排他的権利を与える旨を規定しています。
  • 本決定は、「COVID-19ワクチン」について規定するものであり、「COVID-19診断薬」、「COVID-19治療薬」及びその他の技術については規定されていません。「COVID-19診断薬」及び「COVID-19治療薬」については本決定から6カ月以内にその適用範囲について一定の決議がされる予定とされています(後述第8項)。

2. For greater clarity, an eligible Member may authorize the use of the subject matter of a patent under Article 31 without the right holder’s consent through any instrument available in the law of the Member such as executive orders, emergency decrees, government use authorizations, and judicial or administrative orders, whether or not a Member has a compulsory license regime in place. For the purpose of this Decision, the “law of a Member” referred to in Article 31 is not limited to legislative acts such as those laying down rules on compulsory licensing, but it also includes other acts, such as executive orders, emergency decrees, and judicial or administrative orders.

より明確にするために、適格国は、加盟国が強制実施権制度を導入しているか否かにかかわらず、執行命令、緊急命令、政府使用許可、司法・行政命令など加盟国の法律で利用可能な手段により、権利者の同意なしに協定第31条に基づく特許の対象の使用を許可することができるものとする。本決定において、協定第31条にいう「加盟国の国内法令」とは、強制実施権に関する規則を定めたものなどの立法行為に限らず、執行命令、緊急命令、司法・行政命令などの他の行為も含まれる。

3. Members agree on the following clarifications and waiver for eligible Members to authorize the use of the subject matter of a patent in accordance with paragraphs 1 and 2:

加盟国は、第1項及び第2項に従って特許の対象の使用を許可するために、以下の明確化及び適格国のための免除に合意する。

(a) An eligible Member need not require the proposed user of the subject matter of a patent to make efforts to obtain an authorization from the right holder as set out in Article 31(b).

適格国は、特許の対象の使用予定者に対し、協定第31条(b)に定める権利者から許諾を得る努力をすることを要求する必要はない

  • 「協定第31条(b)」は、特許権者の許諾を得ていない特許の対象の他の使用(政府による使用又は政府により許諾された第三者による使用を含む。)は、他の使用に先立ち、使用者となろうとする者が合理的な商業上の条件の下で特許権者から許諾を得る努力を行って、合理的な期間内にその努力が成功しなかった場合に限り、認めることができることを規定しています。加盟国は、国家緊急事態その他の極度の緊急事態の場合又は公的な非商業的使用の場合には、そのような要件を免除することができるとも規定していますが、国家緊急事態その他の極度の緊急事態を理由として免除する場合には、特許権者は、合理的に実行可能な限り速やかに通知を受けることとされています。公的な非商業的使用を理由として免除する場合において、政府又は契約者が、特許の調査を行うことなく、政府により又は政府のために有効な特許が使用されていること又は使用されるであろうことを知っており又は知ることができる明らかな理由を有するときは、特許権者は、速やかに通知を受けるとも規定されています。

(b) An eligible Member may waive the requirement of Article 31(f) that authorized use under Article 31 be predominantly to supply its domestic market and may allow any proportion of the products manufactured under the authorization in accordance with this Decision to be exported to eligible Members, including through international or regional joint initiatives that aim to ensure the equitable access of eligible Members to the COVID-19 vaccine covered by the authorization.

適格国は、協定第31条に基づき許可された使用が主としてその国内市場に供給されるという協定第31条(f)の要件を免除し、その許可の対象となるCOVID-19ワクチンへの適格国の公平なアクセスを確保することを目的とした国際又は地域の共同イニシアティブを通じて、本決定に従ってその許可に基づき製造された製品の任意の割合を他の適格国に輸出することを許可することができる。

  • 「協定第31条(f)」は、特許権者の許諾を得ていない特許の対象の他の使用(政府による使用又は政府により許諾された第三者による使用を含む。)は、主として当該他の使用を許諾する加盟国の国内市場への供給のために許諾されることを規定しています。この第3項(b)は、協定第31条(f)の国内市場向け要件を免除し、他の適格国に輸出することも可能にするものです。
  • 「国際又は地域の共同イニシアティブ」とは、例えば、COVID-19ワクチンを複数国で共同購入して公平に分配するための国際的な枠組みであるCOVAXが挙げられると考えられます。このような仕組みを活用して他の適格国へのワクチンの普及を図ることが趣旨と考えられます。

(c) Eligible Members shall undertake all reasonable efforts to prevent the re-exportation of the products manufactured under the authorization in accordance with this Decision that have been imported into their territories under this Decision.3 Members shall ensure the availability of effective legal means to prevent the importation into, and sale in, their territories of products manufactured under the authorization in accordance with this Decision, and diverted to their markets inconsistently with its provisions, using the means already required to be available under the TRIPS Agreement.

適格国は、本決定に従ってその許可に基づき製造され、本決定に基づき自国に輸入された製品の再輸出を防止するためにあらゆる合理的努力を払うものとする3。加盟国は、TRIPS協定の下で既に利用可能とされている手段を用いて、本決定に従ってその許可に基づき製造され、その規定に反して自国市場へ転用された製品の自国への輸入及び自国市場での販売を防止する有効な法的手段の利用可能性を確保しなければならない。

  • 再輸出を防止する規定ですが、例外的に、適格国は、適格国が第5項に従って通達する限り、人道的かつ非利益目的のために、COVID-19ワクチンを他の適格国に再輸出することができるとされています(脚注3)。

(d) Determination of adequate remuneration under Article 31(h) may take account of the humanitarian and not-for-profit purpose of specific vaccine distribution programs aimed at providing equitable access to COVID-19 vaccines in order to support manufacturers in eligible Members to produce and supply these vaccines at affordable prices for eligible Members. In setting the adequate remuneration in these cases, eligible Members may take into consideration existing good practices in instances of national emergencies, pandemics, or similar circumstances.4

協定第31条(h)に基づく適切な報酬の決定は、適格国の製造者が適格国のために手頃な価格でCOVID-19ワクチンを製造し供給することを支援するために、COVID-19ワクチンへの公平なアクセスを提供することを目的とした特定のワクチン配布プログラムの人道的かつ非営利的な目的を考慮することができる。これらの場合における適切な報酬を設定する際、適格国は、国家緊急事態、パンデミック、又は同様な状況における既存の良い慣行を考慮することができる。4

4. Recognizing the importance of the timely availability of and access to COVID-19 vaccines, it is understood that Article 39.3 of the Agreement does not prevent an eligible Member from enabling the rapid approval for use of a COVID-19 vaccine produced under this Decision.

COVID-19ワクチンのタイムリーな入手と利用の重要性を認識し、協定第39条3項は、適格国が本決定に基づいて製造されたCOVID-19ワクチンの使用を迅速に承認することを妨げないものと理解される。

  • 「協定第39条3項」は、加盟国は、新規性のある化学物質を利用する医薬品又は農業用の化学品の販売の承認の条件として、作成のために相当の努力を必要とする開示されていない試験データその他のデータの提出を要求する場合には、不公正な商業的使用から当該データを保護することを規定しています。更に、加盟国は、公衆の保護に必要な場合又は不公正な商業的使用から当該データが保護されることを確保するための措置がとられる場合を除くほか、開示されることから当該データを保護することも規定されています。すなわち、第4項は、医薬品データ保護制度が、適格国でのCOVID-19ワクチンの承認を妨げないことを規定しています。

5. For purposes of transparency, as soon as possible after the adoption of the measure, an eligible Member shall communicate to the Council for TRIPS any measure related to the implementation of this Decision, including the granting of an authorization.5

透明性のため、適格国は、措置の採択後できるだけ速やかに、許可の付与を含む本決定の実行に関連するあらゆる措置をTRIPS理事会に通知しなければならない。

  • 提供される情報には、許可を受けた事業者の名称及び住所、許可された製品並びに許可の有効期間が含まれなければならず、許可された数量及び製品が供給される国は、その情報が入手可能になった後、できるだけ速やかに通知されなければならないとされています(脚注5)。

6. An eligible Member may apply the provisions of this Decision until 5 years from the date of this Decision. The General Council may extend such a period taking into consideration the exceptional circumstances of the COVID-19 pandemic. The General Council will review annually the operation of this Decision.

適格国は、本決定の日から5年間、本決定の規定を適用することができる。一般理事会は、COVID-19のパンデミックの例外的状況を考慮して、この期間を延長することができる。一般理事会は、本決定の運用を毎年見直す。

  • つまり、今回の「TRIPS waiver」は本決定の日から5年間の一時的な特別措置ということになります。この5年間という期間が短いかどうかという議論はありますが、WTO一般理事会(General Council)は延長することができるとされています。一般理事会は、WTOの全加盟国の代表によって構成される組織です。

7. Members shall not challenge any measures taken in conformity with this Decision under subparagraphs 1(b) and 1(c) of Article XXIII of the GATT 1994.

加盟国は、この決定に従って講じられた措置について、1994年GATT第23条第1項(b)及び第1項(c)の下で異議を唱えないものとする。

  • GATT第23条第1項」は、締約国は、(a)他の締約国がこの協定に基く義務の履行を怠つた結果として、(b)他の締約国が、この協定の規定に抵触するかどうかを問わず、なんらかの措置を適用した結果として、又は(c)その他のなんらかの状態が存在する結果として、この協定に基き直接若しくは間接に自国に与えられた利益が無効にされ、若しくは侵害され、又はこの協定の目的の達成が妨げられていると認めるときは、その問題について満足しうる調整を行うため、関係があると認める他の締約国に対して書面により申立又は提案をすることができ、この申立又は提案を受けた締約国は、その申立又は提案に対して好意的な考慮を払わなければならないことが規定されています。

8. No later than six months from the date of this Decision, Members will decide on its extension to cover the production and supply of COVID-19 diagnostics and therapeutics.

本決定の日から6カ月以内に、加盟国は、COVID-19診断薬及び治療薬のその製造と供給の適用範囲の拡大について決議をするものとする。

  • COVID-19ワクチンだけではなく、診断薬や治療薬についても、6カ月以内に議論され、何らかの適用範囲について決議されることになりそうです。

9. This Decision is without prejudice to the flexibilities that Members have under the TRIPS Agreement, including flexibilities affirmed in the Doha Declaration on the TRIPS Agreement and Public Health, and without prejudice to their rights and obligations under the TRIPS Agreement, except as otherwise provided for in paragraph 3(b). For greater certainty, this Decision is without prejudice to the interpretation of the above-mentioned flexibilities, rights and obligations outside the scope of this Decision.

本決定は、第3項(b)に別途定める場合を除き、TRIPS協定と公衆衛生に関するドーハ宣言で確認された柔軟性を含むTRIPS協定の下で加盟国が有する柔軟性を損なうことなく、また、TRIPS協定に基づく権利及び義務を害することのないものである。より確実にするため、本決定は、本決定の範囲外における上記の柔軟性、権利及び義務の解釈を害するものでない。


1 For the purpose of this Decision, all developing country Members are eligible Members. Developing country Members with existing capacity to manufacture COVID-19 vaccines are encouraged to make a binding commitment not to avail themselves of this Decision. Such binding commitments include statements made by eligible Members to the General Council, such as those made at the General Council meeting on 10 May 2022, and will be recorded by the Council for TRIPS and will be compiled and published publicly on the WTO website.

2 For the purpose of this Decision, it is understood that ‘subject matter of a patent’ includes ingredients and processes necessary for the manufacture of the COVID-19 vaccine.

3 In exceptional circumstances, an eligible Member may re-export COVID-19 vaccines to another eligible Member for humanitarian and not-for-profit purposes, as long as the eligible Member communicates in accordance with paragraph 5.

4 This includes the remuneration aspects of the WHO-WIPO-WTO Study on Promoting Access to Medical Technologies and Innovation (2020), and the Remuneration Guidelines for Non-Voluntary Use of a Patent on Medical Technologies published by the WHO (WHO/TCM/2005.1).

5 The information provided shall include the name and address of the authorized entity, the product(s) for which the authorization has been granted and the duration of the authorization. The quantity(ies) for which the authorization has been granted and the country(ies) to which the product(s) is(are) to be supplied shall be notified as soon as possible after the information is available.

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3.各国・地域政府の声明

(1)米国通商代表部 (USTR)・タイ代表の声明

“Last May when I announced the Biden Administration’s support for a waiver of intellectual property protections for vaccines as part our comprehensive effort to end the pandemic, many doubted that the WTO could rise to the occasion and reach an outcome. But that’s exactly what we have done.”

昨年5月、バイデン政権がパンデミック終息への包括的努力の一環としてワクチンの知的財産権保護の放棄を支持すると発表したとき、多くの人がWTOがこの機会に立ち上がって成果を上げることができるかどうか疑っていました。しかし、私たちはまさにそれを成し遂げたのです。

米国通商代表部(The Office of the United States Trade Representative, USTR)は、そのプレスリリースで、COVID-19パンデミックにおける知的財産対応に関するWTOでの議論が結論に至ったことを受けてのUSTRタイ代表(Ambassador Katherine Tai)の声明を伝えました(2022.06.17 米国政府 press release: Statement from Ambassador Katherine Tai on an Intellectual Property Response to the COVID-19 Pandemic)。

Tweet from @AmbassadorTai:

2021年5月にバイデン政権がパンデミック終息への包括的努力の一環としてワクチンの知的財産権保護の放棄を支持すると表明したときの記事は「COVID-19ワクチンの知的財産権の放棄を支持したバイデン政権と各製薬業界団体の失望・・・将来のパンデミックに対するイノベーションは誰が担うのか?」をご参照下さい。

COVID-19ワクチンの知的財産権の放棄を支持したバイデン政権と各製薬業界団体の失望・・・将来のパンデミックに対するイノベーションは誰が担うのか?
2021年5月5日、米通商代表部(USTR)のタイ代表は、WTOでの議論(TRIPS協定において定められた知的財産保護に関する規程の適用除外/履行義務免除(waiver)を求める提案)を受けて、バイデン政権がCOVID-19ワクチンの知的財産権保護の放棄(前記waiver)を支持することを発表しました。その発表に対して各製薬業界団体は反対と失望の声明を出しています。 バイデン政権の安全で効果的なワ...

(2)欧州委員会の声明

“the agreement maintains a functioning intellectual property framework with incentives for investment, research and transfer of technology. This environment is indispensable for the development of new vaccines and medicines and should contribute to the strengthening of the production capacity of African countries.”

欧州委員会は、そのプレスリリースで、この協定は、投資、研究、技術移転のためのインセンティブを備えた機能的な知的財産の枠組みを維持し、このような環境は、新しいワクチンや医薬品の開発に不可欠であり、アフリカ諸国の生産能力の強化に貢献するはずであると述べています(2022.06.17 EU press release: WTO 12th Ministerial Conference secures key outcomes on fisheries subsidies, pandemic response, WTO reform, food security and e-commerce)。

(3)英国・トレビリアン国際貿易大臣の声明

“The UK is a long-standing champion of equitable access to vaccines. However, we could only accept an outcome on TRIPS that was operable and did not undermine the existing Intellectual Property framework. That is why the UK fought hard to clarify the exact intent and scope behind the TRIPS Decision. After intense negotiations, we are satisfied the final text is sufficiently workable.

Let me be clear: this is not about waiving IP rights. This decision should make it easier for developing countries to export the vaccines they produce within existing flexibilities.”

EUから離脱して初めての閣僚会議となった英国のトレビリアン国際貿易大臣(Anne-Marie Trevelyan)は、そのプレスリリースで、これは知的財産権を放棄するということではなく、この決定により、開発途上国が既存の柔軟性の範囲内で生産したワクチンを輸出することが容易になるはずだと述べています(2022.06.17 英国政府 press release : UK statement following the conclusion of the WTO Ministerial Conference)。

Tweet from @annietrev:

https://twitter.com/annietrev/status/1537692719572738048?s=20&t=Z_FqUmScx3X0JSNXR_MQNw

(4)インド商工省(Ministry of Commerce & Industry)の声明

“On the global fight against the Covid19, Shri Goyal said the Trade-Related Aspects of Intellectual Property Rights (TRIPS) decision will boost vaccine equity, accessibility & affordability. It will enable ease of authorisation for production of patented vaccines and India can produce for domestic requirements and exports.”

インド商工省は、プレスリリースにおいて、この決定により、ワクチンの公平性、入手しやすさ、購入しやすさが向上するとともに、特許取得済みワクチンの製造認可が容易になり、インドは国内需要および輸出のために製造することができるようになると述べました(2022.06.17 インド商工省 press release: India leads and delivers at the WTO 12th Ministerial Conference: Shri Piyush Goyal)。

(5)南アフリカ・パテル貿易産業競争大臣の声明

“TRIPS waiver will allow African companies to export products to other countries.”

“TRIPS Waiver agreement is for a minimum of 5 years, with possibility of extension should conditions around Pandemic require such. A legal process will be followed.”

“Investments are a critical part of the process to enable manufacturers to produce vaccines.”

“TRIPS waiver agreement available to all developing countries except those who voluntarily declare they will not need it. So far no country has indicated it will not need to utilise the waiver.”

“In these agreements we tried to deal with the issues in a balanced manner to enable citizens of developing nations access to vaccines. Focus was not just on dealing with Pharmaceutical monopolies.”

「TRIPS waiver」の成果について南アフリカのパテル貿易産業競争大臣(Ebrahim Patel)がメディア向けに発言した内容と思われる貿易産業競争省のTwitterアカウント上のツイートには、南アフリカから他国へCOVID-19ワクチンの輸出、そしてそのための投資への意欲がうかがえます(参考: 2022.06.18 news24: Patel: WTO deal not first prize, but will help SA against new Covid variants)。

Tweet from @the_dti:

(6)日本・萩生田経済産業大臣の声明

世界経済の成長を促すとともに、各国における保護主義的措置を防ぎ、さらに、パンデミックへの対応、デジタル化、気候変動といった経済社会の課題や変化に貿易面で適切に対処するためには、WTOを中心とした多角的貿易体制の維持、強化が不可欠です。今回の合意は、そのための大きな一歩です。グローバルな課題への対応を進めるため、今回の成果の具体化に向け、WTO加盟各国と議論を続けていきます。

WTO閣僚会議には、日本からは、細田経済産業副大臣、武部農林水産副大臣、三宅外務大臣政務官が出席しました(2022.06.17 経済産業省ニュースリリース)。WTO閣僚会議閉幕を受けての日本の萩生田経済産業大臣からの声明に、残念ながら「TRIPS waiver」に対する日本のスタンスや成果を伺うことができません(2022.06.17 経済産業省 大臣談話・声明: (萩生田大臣)第12回WTO閣僚会議について)。

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4.各業界団体の声明

(1)国際製薬団体連合会(IFPMA)の声明

“The decision is a disservice to the scientists that left no stone unturned and undermines manufacturing partnerships on every continent.”

この決定は、あらゆる手段を講じてきた科学者への冒涜である。

IFPMAは、TRIPS waiverの採択が決定されたことに深い失望を表明しました(2022.06.17 IFPMA press release: Pharmaceutical industry expresses deep disappointment with decision on waiving intellectual property rights adopted at the World Trade Organization Ministerial Conference)。

  • WTO MC12での決定は、知的財産がパンデミック対策を実現させるものとしてではなく、障壁である、という誤ったメッセージを送るものである。
  • 知的財産は、COVID-19に対するいくつかの効果的なワクチンの迅速な研究開発を可能にし、380以上のボランタリーパートナーシップを支えてきた一方、貿易障壁はワクチンを最も必要とする人々に届けるための集団的努力を著しく損なわせてきた。
  • ワクチン不足に影響を与える唯一最大の要因は、知的財産権ではなく、貿易である。WTOは、この問題に十分取り組んでいない。
  • 産業界は、このような「空っぽ」で事実無根の決定が、技術革新と世界の健康安全保障に深刻な結果をもたらすと警告する。

(2)欧州製薬団体連合会(EFPIA)の声明

“The decision is a serious retrograde step in our collective ability to tackle the COVID-19 pandemic and future global health threats.”

将来のパンデミックという脅威に立ち向かおうと皆で力を合わせるべき時に、深刻にも逆行する一歩を踏み出してしまった。

EFPIAは、TRIPS waiverの採択が決定されたことに深い失望を表明しました(2022.06.17 EFPIA press release: EFPIA and Vaccines Europe are deeply disappointed about the decision taken by World Trade Organization (WTO) at the Ministerial Conference (MC12) to endorse a TRIPS waiver for COVID-19 vaccines)。

  • COVID-19に取り組むための解決策をもたらした唯一の効果的な対応は、研究、開発、イノベーションに根ざしたものであることは明確で、それはIPの枠組みを持つことで築かれている。
  • このパンデミック時に記録的な速さで行われた前例のない数のパートナーシップ、ボランタリーライセンス、知識共有を促進したまさにその枠組みを解体することは、将来への波及効果をもたらす可能性があり、製薬業界だけでなく、すべての革新的な産業に危険なシグナルを送るものである。
  • 国際社会が対処しなければならない問題は、私たちのワクチン製造能力ではなく、世界中でワクチン接種プログラムを実施するための能力やインフラ、そして貿易障壁であって、イノベーターの重要な推進力を取り除くことではない。

(3)米国研究製薬工業協会(PhRMA)の声明

“We are severely disappointed that the Biden administration helped lead this charge and gave away valuable American technologies to foreign competitors, undermining the millions of American jobs supported by our industry.”

バイデン政権がこの動きを先導し、貴重なアメリカの技術を外国の競争相手に譲り渡し、我々の産業が支える何百万ものアメリカの雇用を損なったことに、我々は激しく失望している。

PhRMAは、TRIPS waiverの採択が決定されたことへの失望とともに、外交官のWTOでの議論やバイデン政権を痛烈に批判しました(2022.06.17 PhRMA press release: PhRMA Statement on the TRIPS Waiver Agreement)。

  • ラストワンマイルの流通の問題により、世界中の国々が未使用のワクチンを廃棄したり、寄付を断ったりしている。
  • 外交官たちは、こうした問題を解決するどころか、この1年半、WTOで、COVID-19ワクチンの世界規模での製造を可能にした何百もの共同開発を可能にした知的財産権を根底から覆す方法について議論している。
  • 世界中の政策立案者がより大きな目的意識を持ち、余剰のワクチンを患者が入手するのを阻む流通や管理の障壁を解決することを望む。

(4)バイオテクノロジーイノベーション協会(BIO)の声明

“The decision at the WTO is nothing more than a distraction from the real work that needs to be done.”

WTOの決定は、なすべき本当の仕事から目をそらすものにほかならない。

BIOは、TRIPS waiverの採択が決定されたことへの失望とともに、外交官のWTOでの議論やバイデン政権を痛烈に批判しました(2022.06.17 BIO press release: WTO Decision on Waiving Intellectual Property Rights is a Distraction from the Real Work that Needs to be Done)。

  • 決定は、発展途上国におけるCOVIDワクチン接種率の向上には何の役にも立たず、同時に、世界の次のパンデミックへの対応能力にとって有害な先例を作ってしまうことになる。
  • 知的財産は技術革新と世界的な科学的協力の推進役である。知的財産は、世界中の患者に医学上のブレークスルーをもたらすために必要な信頼を築き、パートナーシップを促進する。
  • 米国を含むジュネーブの貿易担当者が、知的財産権がCOVID-19の世界的大流行を食い止める妨げになるという誤ったシナリオの犠牲になっているのは残念なことである。
  • 南アフリカやインドなど、IP Waiverを要求していた国々でさえ、今では手頃な価格のワクチンが十分に供給されていることを認めている。実際、アフリカの国々を含め、何億回分もの投与が見送られている。
  • ワクチン接種率が遅れている地域で、より多くの予防接種を受けられるようにするためには、世界的なワクチンへのためらいを克服し、地域の医療システムを強化する必要がある。

(5)国境なき医師団(MSF)の声明

“Despite lofty political commitments and words of solidarity, it has been discouraging for us to see that wealthy countries failed to resolve the glaring inequities in access to lifesaving COVID-19 medical tools for people in low- and middle-income countries. “

高尚な政治的コミットメントや団結の言葉にもかかわらず、富裕国が中低所得国の人々の命を救うCOVID-19医療器具へのアクセスにおける明白な不平等を解決できなかったことに失望した。

国境なき医師団(MSF)は、COVID-19医療器具へのアクセスにおける明白な不平等を解決できなかったことについて失望したとの声明を出しました(2022.06.17 MSF press release: Inability to agree a real pandemic intellectual property Waiver at WTO is a devastating global failure for people the world over)。日本版はこちら(WTO閣僚宣言:全てのコロナ医薬品での知財保護免除に至らず 世界を救う解決策の欠如に失望)。

  • 今回の決定で示された措置は、医薬品の独占に対処するものではなく、救命医療器具への安価なアクセスを確保するものでもない、将来の世界的な健康危機やパンデミックに対して負の前例となるものである。
  • 政府は、COVID-19医療機器の知的財産の停止、主要医療技術の強制実施権の発行、ジェネリック医薬品の生産・供給を支援するために必要な必須技術情報の開示を確保するための新たな法律や政策の採用など、利用可能なあらゆる法的・政策的選択肢の活用を検討する必要がある。
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5.コメント

これまで以下の記事で「TRIPS waiver」に関する話題を取り上げ、毎回同じことを繰り返し述べていますが、知的財産権による保護を放棄することがパンデミックを終わらせるわけではありません。

今まさに利用可能となったワクチンや医薬品をいかに現地で流通させるか、そのための現地インフラ構築、現地国民へのワクチン接種等の重要性の啓蒙、各国の援助も含めた取り組みなど、具体的な課題に向けた議論が必要なのではないでしょうか。

(1)2020.12.03記事「知的財産権とCOVID-19についての製薬団体のステートメント

知的財産権とCOVID-19についての製薬団体のステートメント
1.はじめに 製薬産業にとって、知的財産権はイノベーションの原動力であり、成功確率が極めて低い挑戦にも敢えて膨大な投資ができるインセンティブを与えてくれます。いまだに有効な治療法が見つかっていない病気に対する、新しい治療薬や診断薬等(アンメット・メディカル・ニーズ)への挑戦と投資が繰り返され、幾多の発明が生まれては消え、患者様や医療現場に至るものは極僅か。それでも世の中に出た医薬品には患者様や医療...

(2)2020.12.29記事「2020年、医薬系”特許的”な出来事を振り返る。
 1.COVID-19パンデミック危機に対するイノベーションのレジリエンス

2020年、医薬系”特許的”な出来事を振り返る。
2020年の医薬系"特許的"な出来事を振り返りました。 COVID-19に対するイノベーションのレジリエンス、パテントリンケージシステムの不透明感、進歩性の顕著な効果、抗PD-1/PD-L1抗体発明の帰属をめぐる争い、プラルエント®販売停止発表・・・振り返るといろいろあったよね・・・ 1.COVID-19パンデミック危機に対するイノベーションのレジリエンス 今年初めから世界的に蔓延した新型コロナウ...

(3)2021.05.06記事「COVID-19ワクチンの知的財産権の放棄を支持したバイデン政権と各製薬業界団体の失望・・・将来のパンデミックに対するイノベーションは誰が担うのか?

COVID-19ワクチンの知的財産権の放棄を支持したバイデン政権と各製薬業界団体の失望・・・将来のパンデミックに対するイノベーションは誰が担うのか?
2021年5月5日、米通商代表部(USTR)のタイ代表は、WTOでの議論(TRIPS協定において定められた知的財産保護に関する規程の適用除外/履行義務免除(waiver)を求める提案)を受けて、バイデン政権がCOVID-19ワクチンの知的財産権保護の放棄(前記waiver)を支持することを発表しました。その発表に対して各製薬業界団体は反対と失望の声明を出しています。 バイデン政権の安全で効果的なワ...

(4)2021.11.14記事「TRIPS協定及び公衆衛生に関する宣言(ドーハ宣言)から20年

TRIPS協定及び公衆衛生に関する宣言(ドーハ宣言)から20年
「TRIPS協定(Trade-Related Aspects of Intellectual Property Rights Agreement 知的所有権の貿易関連の側面に関する協定)及び公衆衛生に関する宣言」(Declaration on the TRIPS agreement and public health; 以下、「ドーハ宣言」ともいう。)がWTO閣僚会議において採択されたのが2001...

(5)2021.12.21記事「2021年、医薬系”特許的”な出来事を振り返る。
 2.人類の叡智(知的財産)を結集したイノベーションが世界を変える
 3.公共の利益と知的財産権とのあいだで揺れた一年
 (1)医薬品アクセスとTRIPS waiver

2021年、医薬系”特許的”な出来事を振り返る。
2021年の医薬系”特許的”な出来事を振り返ります。 2021年も残すところあとわずか。 2021年の医薬系”特許的”な世相を漢字一文字で表すとしたら、何を思い浮かべますか? え? 「金(カネ)」ですか!? ※パテントサロン様が企画する知財系 もっと Advent Calendar 2021に参加しております(本記事を12/21枠で投稿)。 ※このブログは、医薬品に関連した知財判決やニュースを中心...

コメント

  1. Fubuki Fubuki より:

    大学入学共通テスト2023 現代社会に、「先進国と開発途上国の医療資源の格差問題」(医薬品アクセス)に関するクラスのディスカッションにおける同級生の対立意見を読んで、空欄に入る政策を選択させる問題が出されました(第1問の問7)。

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