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Compulsory License in Russia・・・ロシアで施行された「国家安全保障等のために国内事業者に強制実施権を許可した際の対価に関する決議」のおさらい

ロシアがウクライナへの侵攻を開始した日(2022年2月24日)からちょうど半年が経過した。

そして、今日は、旧ソビエト連邦からのウクライナ独立記念日でもある。

侵攻開始から間もなくの3月7日、ロシアで施行された「国家安全保障等のために国内事業者に強制実施権を許可した際の対価に関する決議」の内容について、今一度おさらいしておきたい。

ウクライナ侵攻前から、ロシアでは以下のように特許権等に対する強制実施権制度が存在する。

  • ロシア連邦民法典第1360条第1項では、国家安全保障等のために権利者の同意なく特許権等を実施することを、ロシア連邦政府が許可する権利を有する旨、許可する場合については、特許権者に対して合理的な対価が支払われることを条件とする旨を規定している。
  • 同条第2項では、「対価の額を決定するための手順およびその支払い手順」は、ロシア連邦政府によって承認される旨規定している。
  • 2021年10月18日付ロシア連邦政府令第1767号では、その「対価の額を決定するための手順およびその支払い手順」を規定している。

しかし、侵攻後の2022年3月7日、ロシア連邦政府は、同政府令1767号の第2項に、

  • 「当該特許権等の保有者が非友好国に登録地を有する等の場合に、対価の額を特許権等の実施者の実際の収益の0%とする」

ことを追加する決議を公表し、同日施行した。

すなわち、ロシア連邦政府が国家安全保障等のために国内事業者に権利者の特許権等を実施することを許可する場合には(もともと権利者の同意なく許可できる)、これまで権利者に対して合理的な対価の額が支払われることとなっていたところ、非友好国に登録地を有する権利者に対しては、対価の額は0(ゼロ)となることとなった。

このロシア連邦政府による決議は、強制実施権を許可する場合には権利者が「適当な報酬を受ける」ことを規定しているTRIPS協定(第31条)に違反することになると考えられる。

ロシアにおいて、先発医薬品の特許権に対する強制実施権の許可・要請自体は、ウクライナ侵攻開始前、例えば、2018年に免疫調節薬レナリドミド(Lenalidomide)、2019年及び2020年に抗癌剤スニチニブ(Sunitinib)、そして2021年にCOVID-19治療薬レムデシビル(remdesivir)を対象として実績があったようだ。

レナリドミド及びスニチニブについては、対価の額としてロイヤルティ率は30%及び10%に設定されたようである。

しかし、ロシア連邦政府がまさに「国家安全保障等のため」に初めて許可した強制実施権ケースといえるレムデシビルについては、対価としてどの程度の額が設定されたのか、また、上記決議施行後に0%とされてしまったのかまでは把握できていない。

参考:

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