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2006.11.29 「花王 v. 特許庁長官」 知財高裁平成18年(行ケ)10227

「シワ形成抑制」という用途は新たな用途か?: 知財高裁平成18年(行ケ)10227

【背景】

請求項1:
「アスナロ抽出物を有効成分とするシワ形成抑制剤。」

とする本願発明について、「シワ形成抑制」という用途が、新たな用途を提供したといえるかどうか争われた拒絶審決取消訴訟。

審判では、同抽出物を有効成分とする美白化粧料組成物を引例として、特29条1項3号(新規性なし)により特許性を否定された。

(引例との一致点)
「アスナロ抽出物を有効成分とする皮膚外用組成物」である点。

(引例との相違点)
本願発明は当該組成物が「シワ形成抑制剤」であるのに対し,引用発明は「美白化粧料組成物」である点。

【要旨】

引用発明を皮膚に適用すれば、「美白作用」と同時に「シワ形成抑制作用」を奏しているとしても、本出願までにその旨を記載した文献が認められないことからすると、「シワ形成抑制作用」を奏していることが知られていたと認めることはできない。「シワ」と「美白」が異なることは前記のとおりであって、皮膚適用との共通点があるからといって、当業者が、出願当時、引用発明につき、「シワ」についても効果があると認識できたとは認められない。「シワ形成抑制」という用途は、「美白化粧量組成物」とは異なる新たな用途を提供したということができる。
審決取消。

【コメント】

審決が取り消された事例。

皮膚に外用する化粧料として一致しているため、一見新たな用途を提供していないかのようであるが、実際のところは、「シワ形成抑制」と「美白」は独立した作用であったということ。

用途発明の捉え方について参考になる。

特許・実用新案審査基準(第Ⅱ部 第2章 新規性・進歩性)には、具体例として、「美白用」ではなく「保湿用」と「シワ防止用」との用途の区別が、当該分野における技術常識に基づいてどう判断されるか記されている。

1.5.2 特定の表現を有する請求項における発明の認定の具体的手法
(2) 物の用途を用いてその物を特定しようとする記載(用途限定)がある場合

例6:「成分Aを有効成分とする肌のシワ防止用化粧料」
「成分Aを有効成分とする肌の保湿用化粧料」が、角質層を軟化させ肌への水分吸収を促進するとの整肌についての属性に基づくものであり、一方、「成分Aを有効成分とする肌のシワ防止用化粧料」が、体内物質Xの生成を促進するとの肌の改善についての未知の属性に基づくものであって、両者が表現上の用途限定の点で相違するとしても、両者がともに皮膚に外用するスキンケア化粧料として用いられるものであり、また、保湿効果を有する化粧料は、保湿によって肌のシワ等を改善して肌状態を整えるものであって、肌のシワ防止のためにも使用されることが、当該分野における常識である場合には、両者の用途を区別することができるとはいえない。したがって、両者に用途限定以外の点で差異がなければ、後者は前者により新規性が否定される。

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