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2012.09.24 「帝國製薬 v. 特許庁長官」 知財高裁平成24年(行ケ)10005

グルコサミン含有パップ剤の進歩性: 知財高裁平成24年(行ケ)10005

【背景】

「グルコサミン含有パップ剤」に関する特許出願(特願2001-317930号)の拒絶審決(不服2009-5037)取消訴訟。争点は進歩性。

請求項1:

少なくとも水溶性高分子化合物2~30重量部,水20~80重量部,架橋剤0.01~5重量部,およびpH調整剤0.5~10重量部を必須成分とする架橋型含水ゲルに,有効成分としてグルコサミンを配合するとともに,
前記架橋型含水ゲルのpHを5以下とし,
前記水溶性高分子化合物がポリアクリル酸および/またはその塩類とそれ以外に他の高分子化合物を併用するものであり,かつ,ポリアクリル酸および/またはその塩類と他の水溶性高分子化合物との配合比が,ポリアクリル酸および/またはその塩類を1としたときに0.1~3である,
ことを特徴とするグルコサミン含有パップ剤。

審決では、本願発明における有効成分は「グルコサミン」であるのに対し、特開2001-64175号公報(引用例A、出願人は原告)に記載された引用発明Aにおける有効成分は美白作用として機能するL-アスコルビン酸である点を相違点1として認定し、引用発明Aについて、美白作用成分として、L-アスコルビン酸とともに美白剤として従来から公知でもあるグルコサミン(引用例B)を使用してみることは、当業者が容易になし得ることである、と判断された。

【要旨】

主 文

特許庁が不服2009-5037号事件について平成23年11月22日にした審決を取り消す。(他略)

取消事由2(相違点1に関する判断の当否)について

「引用発明Aは,有効成分としてビタミンC又はその誘導体を用いる場合に特有の問題点を解決するために,そのような目的に適する架橋剤を限定したものであって,特定の有効成分と架橋剤の組み合わせに特徴があるパップ剤である。そして,引用例B(特開平11-246339号公報,甲2)に,グルコサミンとビタミンC(L-アスコルビン酸)はともに代表的な美白剤として従来から知られていることが開示されているとしても,グルコサミンは,ビタミンCと化学構造等の理化学的性質が類似するわけではないから,パップ剤中での金属架橋剤との相互作用が同様であるとは考えられない。

したがって,ともに美白剤として知られているというだけで,当業者にとって,引用発明Aの有効成分であるビタミンC又は誘導体をグルコサミンに変更することが容易に想到し得るとはいえず,取消事由2は理由がある。」

【コメント】

公知有効成分Xについての製剤発明に関する出願の審査において、

「その有効成分と同じ作用を有する他の公知有効成分Yの製剤に関する引用発明(本願とは、有効成分のみが相違し、他の製剤成分そのものは一致)について、同作用成分として、公知の有効成分Xを使用してみることは、当業者が容易になし得ることである。」

というような進歩性に関する拒絶理由は典型的な例かもしれない。

本判決が示したように、

「引用発明は、有効成分Yを製剤に用いる場合の特有の問題点を解決するために、そのような目的に適する製剤成分を限定したのであって、有効成分Xは有効成分Yと化学構造等の理化学的性質が類似するわけではないから、有効成分Xと製剤成分との相互作用が同様であるとは考えられない。」

という主張は、上記のような拒絶理由を解消する手段として有効かもしれない。

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