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2008.08.06 「スキーペンズ アイ リサーチ v. 特許庁長官」 知財高裁平成19年(行ケ)10304

局所投与の有用性を裏付ける記載: 知財高裁平成19年(行ケ)10304

【背景】

「シェーグレン症候群における眼のアンドロゲン療法」に関する特許出願(WO93/20823; 特表平07-508716)について、明細書の記載要件を満たしていないと判断された拒絶審決の取消しを求めた事案。

本願明細書には、アンドロゲン等の有用性に関する薬理試験として、マウスを用いた「全身投与」の実験結果の記載があるのみだった。

請求項1:

局所適用において有効量のアンドロゲンまたはアンドロゲン類似体,および当該アンドロゲンまたはアンドロゲン類似体を患者の眼球表面または眼の直ぐ近傍に局所的に投与するための賦形剤を含む医薬的に許容できる物質を含む,当該患者の眼の乾性角結膜炎の症状を治療する治療組成物。

【要旨】

原告は、種々の理由を挙げて、全身投与の実験結果の記載であっても局所投与に係る本件有用性を裏付けるものである旨主張した。

しかし、裁判所は、

(5) 全身投与と局所投与との関係について、

「薬剤の全身投与においては,注射等により直接血管に注入され,あるいは消化器系を通じるなどして血液中に取り込まれた薬剤が,全身の血管系を循環し,全身の臓器,器官等を経由しつつ,標的とされる病変部位に到達するものであるから,そのような過程を経ない局所投与が,全身投与と本質的に異なるものであることは明らかである。また,とりわけ,シェーグレン症候群のような全身性の疾患においては,現実に症状が発現している具体的な部位以外の部位(全身性の疾患の根源と考えられる部位)に薬剤が到達することにより,当該薬剤の効果が生じるということも十分に考えられるところである。そうすると,シェーグレン症候群に基づく乾性角結膜炎について,全身投与において有用であった薬剤が,直ちに,局所投与においても有用であるということができないことは明らかであり~」

と判断するなど、

最終的に、

「アンドロゲン等の有用性に関する薬理試験として,マウスを用いた全身投与の実験結果の記載があるのみである本願明細書の発明の詳細な説明に,局所投与に係る本件有用性を裏付ける記載があるといえる旨の原告の各主張は,いずれも採用することができず,その他,本願明細書の発明の詳細な説明に,本件有用性を裏付ける記載があるものと認めるに足りる証拠はない。」

として、実施可能要件(特36条4項)を満たさないと判断した。

請求棄却。

【コメント】

投与方法の実施可能要件が争われた。

医薬発明である以上、実施可能要件を満たすためには、医薬用途を裏付ける実施例として、通常、薬理試験結果の記載が求められる。局所投与が発明の特徴なのであれば、局所投与による薬理試験結果を明細書に記載しておくべきだった。

特許・実用新案審査基準 第VII部 第3章 医薬発明 1.2.1 実施可能要件 参照。

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