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2019.08.27 「アルコン・協和キリン v. X」 最高裁平成30年(行ヒ)69

化合物の医薬用途に係る特許発明の進歩性の有無に関し当該特許発明の効果が予測できない顕著なものであることを否定した原審の判断に違法があるとされた事例最高裁平成30年(行ヒ)69

【背景】

「アレルギー性眼疾患を処置するためのドキセピン誘導体を含有する局所的眼科用処方物」に関する特許(第3068858号)に対する無効審判請求の不成立審決取消訴訟において、原審(2017.11.21 「X v. アルコン リサーチ, 協和発酵キリン」 知財高裁平成29年(行ケ)10003)は、本件各発明の効果は当業者において引用発明1及び引用例2記載の発明から容易に想到する本件各発明の構成を前提として予測し難い顕著なものであるということはできないから本件各発明の効果に係る本件審決の判断には誤りがあるとして本件審決を取り消した。本件特許を共有する上告人ら(アルコン、協和キリン)は最高裁に上訴した。

【要旨】

最高裁は、原審の上記判断には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令違反があり原判決を破棄し、本件各発明についての予測できない顕著な効果の有無等につき更に審理を尽くさせるため本件を原審に差し戻した(以下判決文一部抜粋)。

「原審は,本件他の各化合物が存在することが優先日当時知られていたということ以外に考慮すべきとする諸事情の具体的な内容を明らかにしておらず,その他,本件他の各化合物の効果の程度をもって本件化合物の効果の程度を推認できるとする事情等は何ら認定していない。そうすると,原審は,結局のところ,本件各発明の効果,取り分けその程度が,予測できない顕著なものであるかについて,優先日当時本件各発明の構成が奏するものとして当業者が予測することができなかったものか否か,当該構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものであるか否かという観点から十分に検討することなく,本件化合物を本件各発明に係る用途に適用することを容易に想到することができたことを前提として,本件化合物と同等の効果を有する本件他の各化合物が存在することが優先日当時知られていたということのみから直ちに,本件各発明の効果が予測できない顕著なものであることを否定して本件審決を取り消したものとみるほかなく,このような原審の判断には,法令の解釈適用を誤った違法があるといわざるを得ない。」

【コメント】

進歩性の判断において発明の効果が予測できない顕著なものであることを否定する場合には、その特許発明として予測できる効果の範囲がどの程度なのかを推認できる事情等を認定する等の丁寧な検討が必要とされる。差し戻された本件が、知財高裁でどのように再検討されるか注目したい。

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