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【速報】2023.05.18 「Amgen v. Sanofi」 米国最高裁No. 21–757 - Amgenの抗PCSK9抗体特許 実施可能要件非充足を理由に無効としたCAFC判決を米国最高裁も支持 -

2023年5月18日、米国最高裁判所は、Gorsuch判事による全会一致の意見として、Amgenの抗PCSK9抗体に関する米国特許8,829,165及び8,859,741は実施可能要件(enablement requirement)を満たさないから無効であるとした米国連邦巡回区控訴裁判所(CAFC)の判決を支持しました。

  • May 18 2023 Adjudged to be AFFIRMED. Gorsuch, J., delivered the opinion for a unanimous Court.

Amgenの米国特許を巡る裁判は、10年近く続いており、とうとう決着することになります。

問題となったAmgenの米国特許のクレームは、別記事(2023.01.26 「リジェネロン v. アムジェン」 知財高裁令和3年(行ケ)10093 ―「参照抗体と競合する」抗体クレームのサポート要件充足性と発明特定事項の意義―)で紹介した日本ファミリーの特許のような「参照抗体と競合する」という発明特定事項をもつクレームではなく、以下のように、その抗体を、(a)PCSK9の特定のアミノ酸残基(エピトープ)に結合する及び(b)PCSK9とLDLRの結合をブロックするという構成で、機能的に表現するものでした。

米国特許8,829,165

Claim 1:  An isolated monoclonal antibody, wherein, when bound to PCSK9, the monoclonal antibody binds to at least one of the following residues: S153, I154, P155, R194, D238, A239, I369, S372, D374, C375, T377, C378, F379, V380, or S381 of SEQ ID NO:3, and wherein the monoclonal antibody blocks binding of PCSK9 to LDLR.

米国特許8,859,741

Claim 1:  An isolated monoclonal antibody that binds to PCSK9, wherein the isolated monoclonal antibody binds an epitope on PCSK9 comprising at least one of residues 237 or 238 of SEQ ID NO: 3, and wherein the monoclonal antibody blocks binding of PCSK9 to LDLR.

これまでの米国Amgen v. Sanofiの裁判(21-757)の経緯:

  • 2021年2月11日、米国連邦巡回控訴裁判所(CAFC)が、当該特許は実施可能要件違反を理由に無効であるとしてSanofiを支持する判決(No. 20-1074 (Fed. Cir. 2021)
  • 2022年11月4日、米国最高裁判所がAmgenによる裁量上訴の申し立て受理
  • 2023年3月27日、米国最高裁判所が口頭弁論を開催。

米国最高裁判所が述べた点を以下に要約します。

  • Amgenの請求の範囲は、アミノ酸配列によって特定される26の例示的な抗体よりもはるかに広範囲に及んでいる。Amgenは、実験の合理的な程度を考慮しても、クレームした内容をすべて実現できていない。
  • Amgenが主張する“roadmap”は、機能的な抗体を見つけるためのAmgen独自の試行錯誤の方法を段階的に説明したものに過ぎない。
  • また、Amgenが主張する“conservative substitution”は、科学者が、機能することが知られている抗体のアミノ酸配列に置換を加え、得られた抗体も機能するかどうかをテストすることを要求するものであり、技術常識からすると不確実な見通しである。
  • これらAmgenの主張は、他の人が機能的な組み合わせを作り、使うことを可能にするものではなく、代わりに「ランダムな試行錯誤の発見」に任せることであって、Amgenが当業者に提供するのは、「試行錯誤」を行うためのアドバイスに過ぎない。
  • 当裁判所は、法律上の実施可能性基準がひとつであることに原則的に同意するが、本件におけるCAFCの判断は、議会の指令および当裁判所の先例と完全に一致している。
  • Amgenは、不利な判決は画期的な発明をもたらすインセンティブを破壊する危険があると警告しているが、1790年以来、議会は、発明者にインセンティブを与え、公衆がそのイノベーションの恩恵を十分に受けることを保証するというバランスを達成するために設計された多くの機能の中のうちのひとつとして実施可能性の義務付けを盛り込んできた。この件に関して、裁判所の義務は、その義務を忠実に適用することである。

日本特許関連記事:

2023.01.26 「リジェネロン v. アムジェン」 知財高裁令和3年(行ケ)10093 ―「参照抗体と競合する」抗体クレームのサポート要件充足性と発明特定事項の意義―
Summary 抗PCSK9モノクローナル抗体アリロクマブ(alirocumab)を有効成分とするサノフィの高コレステロール血症治療剤プラルエント®を特許権侵害訴訟で販売停止に追い込んだアムジェンの抗体特許に対して、今度はリジェネロンが同特許の無効を求めて再挑戦してきた無効請求不成立審決取消訴訟で、サノフィとの別件訴訟でアムジェン勝訴判決を下してきた知財高裁は、一転、リジェネロンが主張した取消事由...

参照:

コメント

  1. とくめいさん より:

    欧州でのSanofi v. Amgenの件は、UPCで取消訴訟となるようです

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