スポンサーリンク

2007.08.08 「ファリスバイオテック v. 日本スキャンティボディ」 知財高裁平成18年(行ケ)10406

hPTH(1-37)配列由来のペプチド: 知財高裁平成18年(行ケ)10406

【背景】

原告(ファリスバイオテック )は、「hPTH(1-37)配列由来のペプチド」を発明の名称とする特許第3457004号の特許権者であり、29条2項違反等により無効とする審決が下されたため、審決取消訴訟を提起した。

【要旨】

裁判所は、
取消事由4(相違点の判断の誤り)についての
(1) 相違点(a)の判断の誤りについて

「原告は,本件発明1と引用例発明とは,生物活性を有するhPTHのみを診断するか否かという点において,大きく相違する旨主張する。
しかし,以下のとおり,原告の上記主張は理由がない。
本件明細書の請求項1には,「生物活性を有するhPTH(1-37)を診断するための」と記載されているが,「生物活性を有する」ことは「hPTH(1-37)」が本質的に有する性質であるから,請求項1には「hPTH(1-37)」が診断できることが規定されているにすぎず,hPTH(1-37)をhPTH(3-37)と区別して診断できること(すなわち,hPTH(1-37)を検出するが,hPTH(3-37)は検出しないこと)は,本件発明1の要件として規定されていない。したがって,1,2位のアミノ酸を欠失したhPTHを検出するものであるか否かは,本件発明1とは無関係の事項というべきである。
また,本件明細書の発明の詳細な説明には,「hPTHのN-末端の最初のアミノ酸に結合し,2個のアミノ酸,即ち,hPTHのアミノ酸配列の1番目のセリンと2番目のバリンが欠失すると親和性の実質的な消失が生じる」「該抗体又は抗体フラグメント」が実質的に開示されているともいえない。そうすると,診断対象について,本件発明1と引用例発明とが実質的に相違しないとした審決の判断に誤りはない(なお,原告も,本件発明1と引用例発明とは,hPTH(1-37)の検出を試みる発明であるという限りにおいては,相違はないことを認めている。)。」

と判断した。

また、
(2) 相違点(b)に関する容易想到性の判断の誤りについての
オ 効果について

「原告の主張は,本件発明1により製造される抗体が,1,2位のアミノ酸を備え生物活性を有するhPTH(1-37)のみと反応し,これらのアミノ酸を欠くhPTHとは反応しないものであることを前提とするものであるが,前記のとおり,本件発明1は,製造される抗体が,1,2位のアミノ酸を欠くhPTHとは反応しないことを要件とするものではないから,原告の主張はその前提において誤りがあり,失当というべきである。なお,仮に,本件発明1が上記事項を要件とするものであったとしても,前記1のとおり,1,2位を欠くhPTHとは反応しない抗体については,本件明細書の発明の詳細な説明に開示されていないから,本件発明1が原告主張のとおりの効果を奏するものとは認められない。」

と判断した。

請求棄却。

【コメント】

原告は、製造される抗体が「1,2位のアミノ酸を欠くhPTHとは反応しない」ことを構成要件としたうえで、そのようなことを示すデータを揃えておくべきだった。

参考:

コメント

スポンサーリンク
タイトルとURLをコピーしました